中国FliggyのAI予約機能が春節に800%増と急拡大し、旅行予約は従来の検索からAIによるタスク実行へとパラダイムが変化している。
中国の大手オンライン旅行会社Fliggy(フリギー)が提供するAI予約機能が、急速な普及を見せている。今年の春節(旧正月)大型連休において、スマートフォン搭載のAIアシスタントを通じた旅行・ホテル予約が前年比で800%の増加を記録した。従来の「検索」から、AIによる「タスク実行」へと旅行予約のパラダイムが大きく変化していることが浮き彫りとなっている。
スマートフォンに直接組み込まれたシームレスな体験
アリババグループの旅行部門であるFliggyは、親会社のAIアプリ「Qwen」の基盤を活用し、AIインターフェースを通じた直接予約システムを本格稼働させた。
今年、同社はオープンソースの旅行スキル「flyai」を展開し、ファーウェイ、シャオミ、OPPO、Honorといった中国主要スマートフォンメーカーのネイティブAIスキルストアに直接組み込んだ。これにより、ユーザーはFliggyのアプリをわざわざ開く必要がなくなり、スマートフォンに標準搭載されたAIアシスタントに対して、音声やテキストで旅行の意図を自然言語で伝えるだけで済むようになった。
AIがユーザーの好みに合わせた宿泊施設を提案し、在庫確認から実際の予約手配までを自動で処理する。データによると、このAIインターフェース経由でのオーダーは今年の春節期間に急増し全体で800%増となったほか、観光地のチケット予約に至っては24倍という驚異的な伸びを示した。さらに、航空券や鉄道、ホテルのコンバージョン率(成約率)も、数十年の歴史を持つ従来型オンライン旅行会社(OTA)の検索・予約システムと同等の水準に達している。親会社のAIアプリであるQwenを通じたAIネイティブなショッピング注文は、春節期間中だけで2億件を超えており、消費者のAIに対する信頼と利用頻度の高さがうかがえる。
なぜAIによる旅行予約が急拡大しているのか
この急激な成長の背景には、消費者のデジタル行動の明確な変化がある。2025年頃まで、AIは旅行のアイデア探しや旅程作成といった「計画・情報収集」の用途にとどまっていた。しかし、AIが各社の決済システムやライブの在庫データと深く統合されたことで、消費者はAIに対して実際の「予約・決済の実行」までを委ねるようになっている。
従来のOTAサイトでは、複数の条件を絞り込み、大量の検索結果からホテルを比較検討する手間がかかっていたが、対話型AIはこれらのプロセスを一気に短縮する。さらに、旅行手配がオンラインショッピングや食事のデリバリー、映画のチケット購入といった日常のライフスタイルサービスとAIを通じてシームレスに連携し始めたことも、利用のハードルを大きく下げている。
旅行業界に与える影響と予測される未来
こうした中国発の「AIアシスタントによる直接予約」のトレンドは、世界の旅行・ホスピタリティ業界に多大な影響を与えることが予測される。
旅行者と宿泊施設をつなぐ入り口が、従来のウェブブラウザやOTAアプリから、対話型のAIインターフェースへと移行しつつある。この未来においては、ホテルや観光事業者は人間向けの魅力的なウェブサイトを構築するだけでなく、AIエージェントが自社の在庫や価格データを正確かつ瞬時に読み取れるよう、最適化されたAPI連携や構造化データ(スキーマ)の整備を迫られることになる。これに対応できない事業者は、AIの提案リストから漏れ、大きな機会損失を生む可能性がある。
また、間もなく迎える9月末からの国慶節(スーパーゴールデンウィーク)をはじめ、今後の大型連休においてAI経由の旅行手配はさらに一般化し、取扱高も大きく跳ね上がると予想される。
グローバル市場のホテルや旅行業界にとっても、インバウンド旅行者の獲得において「どの予約サイトに掲載されているか」だけでなく、「どのAIエコシステムに情報が組み込まれているか」が問われる新しい局面に入ったと言えるだろう。旅行の計画から実行までをAIがすべて担う「オムニ・インテリジェント・トラベル」の時代は、すでに現実のものとなっている。

