欧州議会は、フライト欠航や大幅遅延に直面した旅行者の金銭的保護を強化する新ルールを可決しました。
旅行者の金銭的保護を大幅に強化する新ルールの全貌
2026年10月21日、欧州議会はフライトの欠航や大幅遅延に直面した旅行者を保護するための、包括的な旅客権利保護改革案を圧倒的多数(賛成652票、反対2票、棄権8票)で可決しました。これまで責任の所在が曖昧になりがちだったオンライン旅行代理店(OTA)などの第三者を経由した航空券の払い戻しルールが厳格化されます。
具体的には、フライトのキャンセルが発生した場合、航空会社は7日以内にOTAへ全額を返金し、OTAはそこからさらに7日以内に旅行者へ返金することが義務付けられます。これにより、旅行者は最大14日以内に確実にお金を取り戻せるようになります。さらに、OTAがこの14日という期日内に返金を完了しなかった場合、航空会社が直接旅行者に対して立て替えて支払う義務も明記されました。
新たな規制が導入された背景
長年にわたり、EU圏内では「EU261/2004」という規則に基づき、フライトの遅延やキャンセル時の返金、および飛行距離に応じて250ユーロから600ユーロの補償額が定められていました。しかし、OTAなどの仲介業者を経由した予約に関しては、航空会社とOTAの間で責任の押し付け合いが発生し、旅行者が返金を受けるまでに数ヶ月を要するケースが常態化していました。
特に2020年以降のパンデミック時には、膨大な数のフライトがキャンセルされ、多くの旅行者が多額の資金を回収できない事態が発生しました。このような企業間の「たらい回し」による消費者の不利益を解消し、航空会社の利益よりも市民の権利を優先することが、今回の抜本的改革の最大の理由です。
予測される未来:OTA業界への影響とキャッシュフローの課題
この新規則は、EU理事会の正式承認を経て2027年10月23日からの適用が予定されています。旅行者にとっては安心感が高まる一方、OTA業界には迅速なシステム改修と財務面での厳格な対応が迫られます。
旅行代理店や予約プラットフォームは、返金管理フローの完全な自動化が不可欠となります。航空会社からの入金が期日より遅れた場合でも、法的な期限を守るために自社のキャッシュフローから一時的に旅行者へ立て替えるリスクを抱える可能性があります。また、払い戻し額にはOTAの仲介手数料も含めることが義務化されるため、一部の中小規模の旅行代理店にとっては収益と資金繰りの両面で厳しい環境になることが予想されます。
旅行者にとってのメリットと今後の展望
今回の改革では、払い戻しの迅速化だけでなく、EU圏内における全交通機関(航空、鉄道、バス、フェリー)共通の標準化された請求フォームの導入や、障害のある旅行者の同伴者に対する無料フライトの提供なども盛り込まれています。
旅行業界全体として、顧客対応のスピードと透明性が高まることは間違いありません。旅行者はOTAを利用してパッケージや航空券を予約する際も、航空会社から直接購入するのと同じ水準の保護を迅速に受けられるようになります。Arigatripでは、2027年10月の適用開始に向けて、各航空会社やOTAがどのようなシステム対応を見せるのか、引き続き業界の動向を注視していきます。

