シドニー西部に約40億ドルを投じて建設された西シドニー国際空港が25日に開港しますが、航空各社は需要に慎重で、1日わずか数便という深刻な就航便不足に直面しています。原油高や機材納入遅延に加え、都心からの高速鉄道開通が2027年以降にずれ込むなどアクセスも不便なため、当面は利用が伸び悩む見込みです。しかし、24時間運用可能な強みがあり、鉄道開通後は長距離路線やLCCハブとして再評価される可能性を秘めています。
オーストラリア・シドニー西部に約40億ドルを投じて建設された西シドニー国際空港(ナンシー・バード・ウォルトン空港)が、今月25日に初の旅客便受け入れを迎えます。長年の計画を経て誕生した最新鋭のインフラですが、航空各社は需要の先行きに対して慎重な姿勢を崩しておらず、深刻な就航便不足という厳しい船出となることが明らかになりました。
1日わずか数便にとどまる厳しい現状
航空データ分析会社のCiriumが発表した最新のデータによると、西シドニー国際空港で予定されている今後1年間の定期旅客便数は、1日あたり6便以下にとどまる見通しです。
オーストラリアの主要キャリアであるカンタス航空は、当面は傘下の格安航空会社(LCC)ジェットスターを主力に据え、自社便としては2027年3月以降でも1日平均1便強の国内線スケジュールを組むにとどめています。また、同国第2位のヴァージン・オーストラリア航空に至っては、需要や既存ネットワークとの適合性を懸念し、現時点での就航を見送っています。 国際線については、今月末からのニュージーランド航空を皮切りに、シンガポール航空、ベトジェットエア、フィジー・エアウェイズなどが順次就航を予定していますが、いずれも週数便程度の運航計画にとどまっており、全体の便数拡大を牽引するには至っていません。
新空港を苦しめるコスト増とアクセスの課題
航空各社が新拠点への供給拡大をためらう背景には、世界的な航空業界の逆風があります。原油高に伴う運航コストの増加に加え、航空機メーカーからの新造機の納入遅延が慢性化しており、航空会社にとって需要が不透明な新空港へ余剰機材を振り向ける余裕がないのが実情です。
さらに、旅行者にとって大きなハードルとなるのがアクセス面の不便さです。シドニー中心部から約50キロメートル内陸に位置する同空港と都心部を結ぶ予定の高速鉄道(シドニーメトロ)の開業は、2027年以降に遅れる見込みとなっています。現状、都心からの公共交通機関による直通の移動手段はシャトルバスなどに限られ、所要時間は約1時間、費用も片道約55豪ドルと割高です。都心から約20分でアクセスできる既存のシドニー空港(キングスフォード・スミス空港)と比較すると、その利便性の差は明白です。
予測される未来と旅行市場への影響
現段階では、限定的なフライトスケジュールとアクセスの課題から、旅行者や旅行会社が西シドニー国際空港を利用したツアーや旅程を造成するインセンティブは乏しいと言わざるを得ません。当面の間は、旅行業界における選択肢の拡大には時間を要する情勢です。
一方で、西シドニー国際空港はオーストラリアの主要空港では珍しい「24時間運用可能(深夜帯の離着陸制限なし)」という強力なポテンシャルを秘めています。今後、航空各社の機材供給不足が正常化し、世界の航空需要が安定すれば、深夜・早朝便を活用した長距離路線の拠点やLCCのハブとして再評価される可能性は十分にあります。2027年以降に予定されている鉄道アクセスの開業によってシドニー都心部との結びつきが強化されるタイミングが、この新空港が真の価値を発揮し、オーストラリアへの渡航の選択肢を大きく変える転換点となることが予測されます。

