中国のオンライン旅行大手Fliggyは、自然言語で対話し、航空券やホテルの手配などを自律的に完結させる次世代AI旅行アシスタントを発表
中国のオンライン旅行大手でありアリババグループ傘下のFliggy(フリギー)が、2026年8月、次世代のAI旅行アシスタントを発表しました。従来の「提案型」AIから一歩踏み込み、ユーザーとの自然言語による対話を通じて、航空券やホテルの手配といった具体的なタスクを自律的に完結させる「エージェントAI」としての機能性を備えています。本機能は、旅行計画から予約、さらには旅行後のサポートに至るまで、ユーザー体験をシームレスにつなぐ旅行業界の新たなマイルストーンとして注目を集めています。
エージェントAIへの進化と背景
これまでオンライン旅行会社(OTA)の主力は、豊富な選択肢からユーザー自身が比較検討して選ぶ検索主導のモデルでした。しかし、昨今のAI技術の飛躍的な進化により、Fliggyは自社を従来の「OTA」から「オムニインテリジェント・トラベルエージェント(全方位型AI旅行代理店)」へと進化させる戦略を掲げています。
2025年4月に発表された前世代のAIアシスタント「AskMe」では、主に旅行の旅程作成や提案に焦点が当てられていました。今回発表された次世代アシスタント(開発呼称:Fliggy Bangbang)はアリババの巨大言語モデル「Qwen」をベースに構築されており、結果の有用性スコアは前世代と比較して70%以上向上しています。
この開発の裏には、AIを活用した予約に対する確かな需要の急増があります。2026年の春節(旧正月)期間中、FliggyにおけるAIを経由した予約数は全体で800%増加し、観光スポットのチケット予約に限っては24倍という驚異的な伸びを記録しました。こうした消費者行動の変化が、単なる情報提供から「予約の実行(フルフィルメント)」までを担うAIの開発を強力に後押ししています。
次世代AIアシスタントの主要な機能
次世代AIアシスタントの最大の特徴は、複数のステップを伴う複雑なタスクを自律的に実行できる点です。
- 予約管理の自動化:航空券やホテルの新規手配だけでなく、座席指定、ホテルの客室アップグレード、予約の変更やキャンセル、空港送迎の手配から請求書の発行までを対話形式で完結させます。
- 長期的な記憶と文脈の理解:ユーザーの過去の好みを記憶し、リアルタイムのニーズと結びつける能力が強化されています。これにより、家族旅行や高齢者同伴の旅行といった「歩き回るのが少なく、乗り換えが便利なホテル」などの非標準的で複雑なリクエストに対しても、意図を正確に汲み取り的確なサービスを手配できます。
- B2Bエコシステムとの連携:Fliggyは消費者向けだけでなく、ホテル事業者向けのAIアシスタントも提供しており、2026年5月時点ですでに11万軒以上のホテルがこのシステムを導入しています。導入したホテルでは業務効率が70%向上したというデータもあり、供給側と需要側の双方でAIによる最適化が進められています。
予測される旅行業界への影響と未来
Fliggyの次世代AIアシスタントの登場は、旅行プラットフォーム間の競争軸を「トラフィック(集客)の獲得」から「フルフィルメント(確実な実行と手配)」へとシフトさせる転換点となります。
Fliggyの最高技術責任者(CTO)であるアレックス・チェン氏は、AI技術の成熟に伴ってAIエージェントがさらにインテリジェントになり、受動的な対応から旅行のあらゆる段階での「自発的なサポート」へと進化していくと予測しています。ユーザーは自ら細かな検索条件を入力して多数のタブを行き来する必要がなくなり、専属の優秀なコンシェルジュに要望を伝えるだけで、すべてが手配される時代が到来しつつあります。
また、これにより従来は高コストだった「パーソナライズされた非標準的な旅行手配」が、大規模かつ低コストで一般消費者向けに提供可能となります。Fliggyの取り組みは、AIがどのようにしてユーザーの言語的意図と実際のサプライチェーンを結びつけ、次世代の旅行体験を構築するかの強力なユースケースとなっており、世界の旅行プラットフォーム各社の戦略に今後大きな影響を与えていくと予想されます。

