アリババ傘下のフリギーは、旅行アプリに自律型AIエージェント機能を本格導入した。旅行者が自然言語で目的や予算を入力するだけで、AIが最適な宿泊施設を比較・選定し、リアルタイムの在庫と価格に基づいて予約決済まで完結させる。
アリババグループ傘下のオンライン旅行会社であるフリギーは2026年9月29日、国際業界カンファレンスにおいて、旅行アプリに自律型AIエージェント機能を本格導入したと発表した。旅行者が旅の目的や予算を自然言語で入力するだけで、AIが最適な宿泊施設を自律的に比較・選定し、リアルタイムの在庫と価格に基づいて予約決済までを完結させる新システムである。
キーワード検索からAIによる意思決定代行への転換
これまで旅行者は、オンライン旅行会社のサイト上で目的地や日付を入力し、多数の検索結果から条件を絞り込んで自らホテルを決定する必要があった。フリギーが今回発表した自律型AIエージェントは、ユーザーの要望を文脈から理解し、具体的な予約行動へと変換する。
単なるレコメンド機能にとどまらず、エージェントが自ら空室状況や価格変動などのリアルタイムデータを取得し、最も条件に合致する施設を選択して決済まで実行する点が特徴である。従来の「AIが選択肢を提示する」モデルから「AIが代わりに意思決定を行う」商取引への本格的な移行を示す動きとなっている。
フリギーのAI戦略と急成長する取引データ
フリギーは近年、従来のオンライン旅行会社からオムニインテリジェントな旅行エージェントへの脱皮を進めている。今年に入り、開発者向け旅行AIスキル「flyai」の提供や、次世代AIトラベルアシスタントの展開などを通じて、スマートフォンのAIエコシステムへの統合を推し進めてきた。
その効果は具体的なデータにも表れている。2026年の春節期間中には、フリギーにおけるAI主導の注文数が800%急増し、従来の販売チャネルと同等のコンバージョン率を達成したことが報告されている。今回の機能導入は、こうしたAIに対する消費者の適応の速さと技術的な裏付けをもとに、取引の完全自動化へ踏み切ったものと位置づけられる。
ホテル業界への影響と予測される未来
AIエージェントが予約を代行するシステムの普及は、ホテル側の販売戦略やデータ管理に抜本的な変革を迫ることになる。旅行者の目に留まるためにプラットフォーム内で広告費を投じ、魅力的な写真やキャッチコピーで訴求する従来のマーケティング手法は、AIを介した取引においては効果が薄れる可能性がある。
今後のホテルビジネスでは、AIエージェントにいかに正確に評価され、選ばれるかが重要となる。そのためには、リアルタイムでの正確な在庫および価格データの連携、キャンセルポリシーの標準化、そして機械が読み取りやすい形式での施設情報提供が不可欠である。
これはオンライン旅行会社への過度な依存から脱却を図るホテルにとって、自社システムをAIエージェントの規格に適合させる新たな直販戦略の活路となる可能性がある。一方で、データ連携の整備が遅れた施設は、AIの選択肢から完全に除外されるリスクもはらんでいる。フリギーによる自律型AIの本格導入は、旅行ビジネスの主戦場が人間の検索トラフィック獲得からAI向けのデータ最適化へとシフトする明確な転換点となるだろう。

