5月の訪日外国人旅行者数は、中国人観光客が前年比60.4%減と大幅に落ち込んだ影響で、2ヶ月連続の減少となった。
中国市場の大幅な落ち込みが全体を押し下げ
日本の観光庁および日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2026年5月の訪日外国人旅行者数は前年同月比3.6%減の355万9,900人となりました。これにより、先月4月に続き2ヶ月連続で前年を下回る結果となっています。
この減少の最大の要因は、中国人観光客の急減です。今年5月の中国からの訪日客数は約31万3,000人にとどまり、前年同月比で60.4%の大幅なマイナスを記録しました。この背景には、二国間の緊張関係や中国政府による日本への渡航に関する注意喚起、それに伴う航空路線の減便などが複合的に影響していると考えられます。
韓国・台湾・米国など他市場は引き続き堅調
中国市場が大きく縮小する一方で、その他の国や地域からの訪日客数は順調な伸びを見せています。
近隣のアジア諸国では、韓国からの旅行者が前年同月比15.2%増の約95万1,300人となり、国別で最大のシェアを維持しました。台湾も同14.6%増の約61万6,800人と好調に推移しています。また、欧米市場においても米国からの旅行者が前年比7%の増加を見せるなど、合計19の市場で5月としての過去最多記録を更新しました。
中国市場単独での減少幅が極めて大きかったものの、多方面の国々からの堅調な需要増加が下支えとなり、インバウンド全体の減少幅を最小限に食い止める形となっています。
特定市場への依存リスクと求められる多様化戦略
今回の動向は、日本の観光業界における「特定の国・市場への依存リスク」を改めて浮き彫りにしました。外交摩擦などの地政学的リスクや、他国の内部事情が、日本の観光地や関連企業の収益に直接的なダメージを与える構造が明白になっています。
今後のインバウンド市場において予測される影響として、リスクヘッジを目的とした「誘客市場の分散化」が急加速していくでしょう。観光業界は、すでに好調な欧米や近隣アジアだけでなく、単月で過去最高の来日数を記録している中東やインドといった新興・富裕層市場へのプロモーションを一段と強化していく必要があります。
また、単純な来訪者の頭数に依存するのではなく、滞在日数の延長や地方への周遊促進、高付加価値な体験型コンテンツの充実を図る戦略への転換が不可欠です。多様な国籍の旅行者が持つ異なるニーズに応えうる受入環境を整備することが、外部環境の波に左右されにくい強靭な観光立国を築くためのカギとなります。

