マリオットは、中東地域の地政学的リスクによる収益の急減を受け、第3四半期の利益予測を下方修正しました。米国市場は好調で、地域間の旅行需要の偏りが鮮明になっています。しかし、通年のRevPAR成長率予測は上方修正しており、全体的な成長には自信を見せています。世界の旅行市場は安全な地域へのシフトが加速しており、人気エリアでは客室単価の高止まりと早期予約の重要性が増すでしょう。
世界最大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルは2026年8月3日、今年の第3四半期における利益予測を発表し、市場の事前予想を下回る見通しであることを明らかにしました。地政学的リスクを背景とする特定地域での落ち込みが全体の利益水準を押し下げる結果となっており、グローバルな旅行市場における需要の偏りが鮮明になっています。
中東市場の急減と米欧の好調による明暗
利益予測を引き下げる最大の要因となったのは、中東地域における著しい収益の低下です。同地域では地政学的リスクの高まりが懸念されており、マリオットの発表によると収益は43%減という大幅な落ち込みとなりました。この深刻なマイナスが、順調に推移していたヨーロッパ地域での収益増を完全に相殺する形となっています。
一方で、米国市場は記録的な活況を呈しています。現在開催中の「FIFAワールドカップ2026」による巨大な特需に加え、夏の旅行シーズンが本格化したことで、宿泊需要は極めて高い水準を維持しています。OTA(オンライン旅行代理店)を経由した予約も堅調に推移しており、地域によって旅行需要のばらつきがかつてなく拡大している状態です。
具体的な業績予測データと上方修正の背景
今回発表された財務予測データを見ると、需要の不均衡が数値にも明確に表れています。マリオットは第3四半期の調整後1株当たり利益(EPS)を、2.74ドルから2.82ドルの範囲になると予測しました。これは、アナリストらが事前に見込んでいた2.87ドルという予想に届かない水準です。
しかしながら、ネガティブな要素ばかりではありません。好調な米国市場などの恩恵を受け、同社は2026年通年の1室あたり収益(RevPAR)の成長率予測を上方修正しました。従来の2%から3%増という見通しから、3%から3.5%増へと引き上げており、ホテル業界における最重要指標である客室単価と稼働率の総合的な成長には依然として強い自信を見せています。
背景と今後の旅行市場への影響
今回のマリオットの発表は、世界の旅行市場におけるトレンドの変化を如実に示しています。旅行者は渡航先の安全性をよりシビアに選定するようになっており、地政学的リスクが懸念されるエリアから、メガイベントが開催されインフラが安定している北米やヨーロッパへの「旅行者のシフト」が加速しています。
今後予測される影響として、国際的なホテルチェーン各社は、リスクの高い地域でのプロモーション戦略や新規投資の大幅な見直しを迫られる可能性が高いでしょう。同時に、北米や欧州などの人気エリアにおいては需要の集中により、RevPARの上昇が示す通り客室単価の高止まりが予想されます。
一般の旅行者にとっては、人気エリアにおいて希望の宿泊施設を確保するための早期予約の重要性がさらに増しています。OTAを通じた予約は引き続き活発ですが、需要の二極化は2026年後半以降も継続すると見られており、旅行業界全体が地域ごとの柔軟な価格戦略と供給コントロールを問われる局面に入っています。

