欧州の観光市場が大きな転換期を迎えています。これまで市場を牽引してきた米国人観光客の勢いに陰りが見える一方、中国とインドからの旅行者がその穴を埋める形で急増しており、欧州の観光勢力図が塗り替えられようとしています。欧州旅行委員会(ETC)が発表した最新の調査から、その変化と未来の姿を読み解きます。
パンデミック後のブームは終焉へ?変化する米国人旅行者の動向
パンデミック後、力強い米ドルと旺盛な旅行意欲に支えられ、欧州には多くの米国人観光客が訪れました。しかし、そのブームも落ち着きを見せ始めています。
ETCのレポートによると、米国人の欧州旅行への熱意は、経済的な懸念や地政学的な不安定さによって減退する可能性があります。インフレの長期化による家計への影響や、国際情勢の緊張が、海外旅行、特に遠距離となる欧州への旅行をためらわせる要因となっているようです。
この結果、これまで欧州のインバウンド市場の回復を力強く支えてきた米国人観光客の伸びは、今後鈍化していくと予測されています。
新たな主役の登場:急増する中国・インドからの旅行者
米国からの旅行者の伸びが鈍化する一方で、アジアからの旅行者がその存在感を急速に高めています。特に中国とインドからの旅行者の増加は目覚ましく、欧州観光の新たなエンジンとなることが期待されています。
驚異的な回復力を見せる中国市場
ETCの予測では、2025年にかけて中国から欧州への旅行者数は、前年比で28%という大幅な増加を記録する見込みです。パンデミックによる長期間の渡航制限が解除された反動に加え、中間所得層の拡大が欧州への旅行需要を力強く後押ししています。彼らの欧州文化への強い関心は、今後の市場を牽引する重要な要素となるでしょう。
安定した成長が期待されるインド市場
インドからの旅行者もまた、前年比で9%の増加が見込まれています。堅調な経済成長を背景に、可処分所得が増加したインド国民の間で海外旅行がより身近なものとなっています。航空路線の拡充も追い風となり、安定した成長が期待される市場として注目されています。
欧州観光の未来:旅行者数と旅行支出から見えること
旅行者の国籍構成が変化する一方で、欧州観光市場全体は成長を続けると予測されています。
「量」から「質」へシフトする旅行スタイル
ETCは、2026年の欧州への海外旅行者到着数が全体で6.2%増加すると予測しています。さらに注目すべきは、旅行者の消費額です。2025年には、欧州における旅行支出が9.7%増加すると見込まれており、これは旅行者一人ひとりがより多くのお金を使う傾向にあることを示唆しています。
単に観光地を巡るだけでなく、その土地ならではの文化や食、アクティビティといった「体験価値」を重視する高付加価値な旅行への需要は、国籍を問わず依然として堅調です。このトレンドは、今後の欧州の観光戦略においてさらに重要性を増していくでしょう。
今後の影響と私たちへの関わり
この勢力図の変化は、欧州現地のサービスにも影響を与える可能性があります。観光地では多言語対応が進み、特に中国語の案内やモバイル決済の導入が加速するかもしれません。また、レストランやホテルの選択肢も、アジアからの旅行者の嗜好を反映して多様化していくことが考えられます。
私たち日本の旅行者にとっても、これは無関係ではありません。混雑する時期や人気の観光地が変化する可能性や、新たなサービスが登場することで、これまでの欧州旅行とは少し違った体験ができるようになるかもしれません。欧州観光市場のダイナミックな変化に注目し、次の旅行計画を立ててみてはいかがでしょうか。

