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    コロンビアの秘境ベトゥリアへ。激辛の旅を休んで見つけた、魂を癒すスローな時間

    この記事の内容 約6分で読めます

    世界中の激辛料理を巡る旅で疲弊した筆者は、癒しを求めてコロンビアのサン・ファン・デ・ベトゥリア村を訪れる。

    世界中の「辛さ」の頂を目指す旅の途中、僕の胃は悲鳴をあげていました。メキシコの悪魔、インドの亡霊、タイの火山。数々の激辛料理との死闘は、舌に栄光を、しかし体には確かなダメージを刻みつけます。そんな時、ふと地図上で見つけた名もなき村、サン・ファン・デ・ベトゥリア。今回は刺激的なスパイスではなく、魂を癒す時間を求めて、コロンビアの片田舎へと向かうことにしたのです。そこには、カラフルな家々と、ロバが土埃をあげる未舗装の道、そして穏やかな笑顔がありました。この村で過ごした時間は、僕の旅の価値観を静かに、しかし大きく揺さぶるものとなります。都会の喧騒や刺激的な日常から離れ、本当の豊かさとは何かを見つめ直す旅の記録です。

    その旅で刻まれた静寂な思いは、遠くアンデスに息づく秘境オリバルの歴史と信仰と溶け合い、新たな感動を呼び起こします。

    目次

    都会の喧騒から逃れ、時が止まった村へ

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    サン・ファン・デ・ベトゥリアへ向かう道のりは、決して簡単ではありません。最寄りの都市シンセレホからバスに揺られ、でこぼこした道を数時間かけて進みます。車窓の風景は、近代的なビル群からどこまでも広がる緑豊かな平原や素朴な農家へと変わり、日常の喧騒が徐々に遠のいていくのを実感します。バスを降り立ったその場所は、まさに「陸の孤島」と呼ぶにふさわしい環境でした。

    舗装されたアスファルトの道はほとんどなく、土埃が舞う中をロバや馬がゆっくりと歩いています。家々は赤や青、黄色といった鮮やかな色彩で彩られており、まるで絵本の世界から飛び出してきたかのような趣があります。スマホの電波はかろうじて一本立つかどうかで、ここではデジタル機器からの切り離し、いわば「デジタルデトックス」が半ば強制的に始まるのです。しかしながら、その状況がどこか心地よく感じられました。

    村の中心にある広場では、子供たちが裸足でサッカーに熱中し、老人たちは木陰のベンチに腰掛けて穏やかに語り合っています。すれ違う人々は、見慣れない東洋人である私に対して誠実な笑顔を向けてくれました。ここには効率や生産性といった言葉は存在しないかのような、のんびりとした時間が流れていました。私がこれまで追い求めてきた刺激的な世界とはまったく異なる空気感が、この村を包み込んでいたのです。

    ベトゥリアの日常に溶け込む、心身を整える体験

    この村には、観光客向けの派手なアクティビティはほとんどありません。旅の魅力は、村人たちの日常に静かに触れさせてもらうことにあります。彼らの生活の一端を体験する中で、数多くの発見がありました。

    アレパ作りを通じて感じる、コロンビアの家庭のぬくもり

    滞在先の民家でお世話になったマリアさんに「手伝わせてください」とお願いすると、彼女は笑顔で「アレパを一緒に作りましょう」と言って台所へ招いてくれました。アレパは、トウモロコシの粉を使って作るコロンビアの食卓に欠かせないパンのような存在です。

    スーパーで市販の粉を買うのではなく、乾燥トウモロコシを石臼で挽くところから体験がスタートしました。石を回すゴリゴリという作業は思った以上に力が入り、すぐに汗がにじみ出します。マリアは僕の不慣れな動きを見て微笑みながら、ちょうど良い力加減を教えてくれました。彼女のたくましい腕からは、家族の食を支えてきた長い歴史が感じられました。

    粉になったトウモロコシに水と塩を混ぜてこね、手のひらで丸く平らに成形します。鉄板で焼き上げると、香ばしい香りが台所に広がりました。焼きたてのアレパにチーズを挟んで口に運ぶと、素朴ながらも奥深い味わいが広がります。普段は唐辛子の刺激で味覚を使いすぎている僕には、その優しい甘さがじんわりと胃の奥まで染み渡るように感じられました。特別なスパイスはなくても、手間と愛情こそが最高の調味料だと実感したのです。

    スポット情報詳細
    体験名地元の家庭でのアレパ作り体験
    場所サン・ファン・デ・ベトゥリア村内の民家(宿泊先などで相談)
    所要時間約2〜3時間
    料金材料費程度のお礼(交渉可能)
    注意事項衛生観念は日本とは異なる場合があります。体験を楽しむ心構えが重要です。

    馬の背に揺られ、カカオ農園の深奥へ

    ベトゥリア村の周辺では、移動手段は徒歩か馬が主流です。僕は村の青年ホセに案内を頼み、彼の愛馬に乗って近くのカカオ農園へ向かいました。車やバイクのエンジン音はなく、聞こえるのは馬のひずめの音と鳥のさえずりだけ。馬の背から見下ろす景色は普段より少し高く、風が頬を心地よく撫でていきます。

    カカオ農園では、カカオポッドの収穫風景を観察させてもらいました。ラグビーボールのような形のカカオポッドを鉈で割ると、中から白い果肉に包まれたカカオ豆が顔を出します。果肉を少し味わってみると、ライチのようなフルーティーで甘酸っぱい味が広がりました。これがチョコレートの原料だとは、すぐには信じ難い味わいです。

    収穫されたカカオ豆は、発酵・乾燥・焙煎といった長いプロセスを経て、私たちが知るチョコレートの香りへと変わっていきます。農園主が振る舞ってくれた自家製のホットチョコレートは、砂糖をほとんど使わず、カカオ本来の力強い苦味と豊かな香りが際立つ大人の味わいでした。世界中のスパイスを味わってきた僕の舌も、この複雑で奥深い風味には自然と感動を覚えました。

    スポット情報詳細
    体験名馬に乗って訪れるカカオ農園見学
    場所サン・ファン・デ・ベトゥリア村周辺のカカオ農園
    所要時間半日程度
    料金ガイドのホセへの心付け(交渉可)
    注意事項乗馬未経験者でも問題ありませんが、動きやすい服装が必要です。

    村人との言葉を超えた交流が、旅を豊かにする

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    ベトゥリアでの毎日は、村人たちとの温かい交流に満ちていました。僕のスペイン語はまだ不十分で、村人の多くは英語を話せませんでしたが、それが大きな障害にはなりませんでした。

    夕方、村の小さな食堂で夕食を取っていると、隣の席にいたおじいさんが「兄ちゃん、どこから来たんだい?」と話しかけてきました。僕が「ハポン(日本)」と答えると、彼は驚いた表情で周囲の客に「日本から若者が来たぞ!」と大声で知らせました。するとすぐに多くの人が集まってきました。

    彼らから次々と質問が飛びますが、ほとんど理解できませんでした。それでも、身振り手振りやスマホの翻訳アプリを使いながら、なんとか意思疎通を図りました。僕がこれまでに食べた激辛料理の写真を見せると、みんな驚きの声をあげ、中には「クレイジーだ!」と言いながら僕の背中を叩く人もいました。彼らにとって僕は「遠い国から来た面白い若者」であり、その好奇心に満ちたまなざしはとても温かかったのです。

    その食堂でいただいた「サンコーチョ」というスープの味は忘れがたいものでした。鶏肉やジャガイモ、トウモロコシ、ユカ芋などがごろごろと入ったコロンビアの家庭料理で、スパイスは控えめながら素材の旨味がじんわりと溶け出した優しい塩味です。激辛料理で疲れた胃に、このスープの滋味がしみわたり、癒してくれました。特別なご馳走ではありませんが、村人たちの笑顔という最高のスパイスが加わり、僕の旅の思い出に深く刻まれる一皿となったのです。

    何もしない贅沢。スローな旅だからこそ見えてくるもの

    ベトゥリアに滞在していた間、「何かをしなければ」という焦燥感を抱くことは一度もありませんでした。むしろ、この地では「何もしないこと」こそが、究極の贅沢だったのです。

    ある日の午後、僕はただ家の前のハンモックに身を任せ、空を流れる雲をぼんやりと眺めて過ごしました。遠くからはニワトリの鳴き声が響き、時折、ロバを連れた村人が通り過ぎていきます。まるで時間が無限に続くかのような、静かで満ち足りた感覚。普段は次の激辛チャレンジのことばかり考えている僕ですが、その時だけは思考を手放し、ただ「今ここにある」という感覚を堪能していました。

    日常生活で効率や成果が求められる環境では、このような時間は「無駄」として切り捨てられてしまうかもしれません。しかし、本当にそうなのでしょうか。心と身体をリセットし、自然のリズムに身をゆだねる時間こそ、次の一歩を踏み出す力を蓄えるための貴重なエネルギーとなるのではないでしょうか。ベトゥリアの青空の下で、僕はそのシンプルな真実に気づかされました。この村の魅力は、美しい景観や珍しい文化だけではありません。訪れる人に「立ち止まる勇気」を与える、その空気感にこそ価値があると感じています。

    胃と心に優しい、ベトゥリアという名の処方箋

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    サン・ファン・デ・ベトゥリア。それは、世界中の辛さを探し求める僕が、偶然に見つけた心の安らぎの場所でした。この村には、鋭く舌を刺激するような激しいスパイスは存在しません。しかし、人々の温かい心遣い、優しい自然、そしてゆったりと流れる時間という、心に深く染み入る「スパイス」が満ちていました。

    激辛料理との戦いで疲れきった僕の胃と心は、この村の素朴な料理と穏やかな日々にふれて、間違いなく癒されました。旅の目的とは、単に何かを成し遂げることや征服することだけではない。時には立ち止まり、自分自身を見つめ直し、心身を労わることも旅の大切な一部であると気づいたのです。この体験は、僕の「スパイスハント」の旅に新たな深みをもたらしてくれるでしょう。

    もしあなたが日々の喧騒に疲れ、心の休息が必要だと感じているなら、ベトゥリアのような場所を訪れてみるのも良いかもしれません。そこには、あなたの明日を優しく照らす、静かで力強い光が待っているはずです。

    さて、僕の旅には胃腸薬が欠かせません。激辛チャレンジの後はもちろんですが、今回のような旅でも環境が変わることでお腹の調子を崩すことがあります。そんな時に頼りになるのが、日本の「太田胃散」です。生薬の穏やかな効果が、どんな状況でも胃をスッキリと整えてくれます。皆さんも旅に出る際は、信頼できる胃腸薬をお守り代わりに一つ持っていくことをおすすめします。

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    この記事を書いた人

    「その国で最も辛い料理を食べる」をモットーに世界を巡るフードファイター。体を張った食レポは常に読者の興味を惹きつける。記事の最後は、必ずおすすめの胃腸薬の紹介で締められる。

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