MENU

    潮風とアートが薫る週末。オーストラリア・フリーマントルのマーケットで心を満たす旅

    西オーストラリア州の玄関口、パースから電車に揺られて約30分。インド洋の風が心地よく頬をなでる港町、フリーマントルに到着します。歴史を感じさせるビクトリア朝の建築物と、自由でボヘミアンな空気が混じり合うこの街は、まるで一つの大きなアート作品のよう。そんなフリーマントルの心臓部ともいえるのが、週末にだけ現れる魔法のような空間、「マーケット」です。今回は、ただの買い物では終わらない、五感をフルに使って楽しむフリーマントルのマーケット巡りの旅へとご案内します。地元の人々の笑顔、採れたての食材の香り、そして世界に一つだけのアートとの出会いが、あなたの旅を忘れられないものにしてくれるはずです。

    フリーマントルでインド洋の潮風を感じたら、さらにその先にある手つかずの楽園、ココス諸島への旅も思い描いてみてはいかがでしょうか。

    目次

    まずは知りたい!フリーマントルってどんな街?

    fremantle-aerial-view

    週末マーケットの魅力を伝える前に、まずはその舞台となるフリーマントルという街について少しだけ紹介させてください。地元の人々から「フリオ(Freo)」という愛称で親しまれているこの街は、西オーストラリア州で最も歴史の深い港町の一つです。

    19世紀のイギリス植民地時代、多くの囚人がこの地に送り込まれました。彼らの手によって築かれたのが、現在も残る美しい石灰岩の建造物です。街を歩くと、まるで時間が巻き戻ったかのような感覚にとらわれます。中でも特に知られているのが、世界遺産にも登録されている「フリーマントル刑務所」。この重厚な建物は、街の成り立ちを静かに物語っています。

    しかし、フリーマントルの魅力は歴史だけにとどまりません。港町特有の開放的な雰囲気に惹かれ、世界中からアーティストやミュージシャン、自由なライフスタイルを求める人々が集まってきました。その結果、ユニークでクリエイティブな文化が根付いています。街の随所に見られるストリートアート、個性的なブティック、こだわりのカフェなど、歴史的な重厚さと現代的な軽やかなカルチャーが見事に調和しているのがフリオの最大の魅力です。

    人に話したくなるフリオの豆知識

    ここで一つ、街歩きがもっと楽しくなる豆知識を。フリーマントルの多くの建物に使われている淡いクリーム色の石は「タムラ・ライムストーン」と呼ばれる石灰岩です。この石は、囚人たちが近くの海岸から自ら切り出し運び出したものなのです。つまり、街全体が囚人たちの汗と努力の結晶でできているといえるでしょう。建物の壁にそっと触れてみれば、遠い昔の物語が風に乗って聞こえてくるかもしれません。

    また、街の中心を走るメインストリートは「カプチーノ・ストリップ」と呼ばれています。第二次世界大戦後、多くのイタリア系移民がこの地に移住し、本格的なエスプレッソ文化をもたらしました。彼らが開いたカフェがこの通りに集中したことから、こう呼ばれるようになったのです。今でも美味しいコーヒーが楽しめるカフェが立ち並び、テラス席でのんびり人間観察をするのがフリオ流の休日の過ごし方です。歴史を知ることで、街の風景がより一層鮮やかに映ることでしょう。

    週末の主役!活気あふれるフリーマントル・マーケットへ

    それでは、いよいよ本題のフリーマントル・マーケットに足を踏み入れてみましょう。サウス・テラスとヘンダーソン・ストリートの交差点に堂々と佇むこの市場は、1897年に建てられたビクトリア朝様式の歴史的な建造物の中にあります。毎週金曜日から日曜日まで開かれ、150を超える屋台がひしめき合う様子は圧巻の光景です。ここは単なる市場ではなく、地元の人々にとっての社交の場であり、観光客にとってはフリーマントルの文化を肌で感じられる絶好のスポットと言えるでしょう。

    マーケットの建物は大きく二つのエリアに分かれています。新鮮な食材やグルメが揃う「The Hall(ザ・ホール)」と、アートやクラフト、ファッション雑貨が集まる「The Yard(ザ・ヤード)」。どちらから見て回るかを考えるだけで、胸が踊ることでしょう。

    スポット情報
    **名称**フリーマントル・マーケット (Fremantle Markets)
    **住所**South Terrace & Henderson St, Fremantle WA 6160, Australia
    **営業時間**金 9:00-20:00、土・日 9:00-18:00 (祝日等で変動あり)
    **公式サイト**fremantlemarkets.com.au

    ここだけのマーケットトリビア

    このマーケットの建物は、実は国の遺産リストにも登録されている貴重な文化財です。正面玄関の上にある時計台はマーケットのシンボルですが、実はこの時計、一度も正確な時を示したことがないというユニークなエピソードがあります。設置以来ずっと「だいたいの時間」を指しているとのこと。時間に縛られず、のんびりとしたフリーマントルの雰囲気を楽しんでほしいというメッセージが込められているのかもしれませんね。正確さより感覚を大切にする、そんな遊び心こそがフリオらしさを感じさせます。

    さらに、このマーケットでは質の高い音楽を奏でるバスカー(路上演奏者)たちが演奏しています。彼らは誰でも演奏できるわけではなく、マーケットが主催する厳密なオーディションをクリアした実力派ばかり。無料で聴けるレベルの高い生演奏も、このマーケットの大きな魅力の一つです。もしかすると、将来のスターの演奏に出会えるかもしれませんよ。

    The Hallで味わう!五感を刺激するフリーマントルの食文化

    fremantle-food-culture

    まずは「ザ・ホール」から冒険を始めてみましょう。扉を開けた瞬間に、焼きたてのパンの香ばしい香りや色鮮やかな新鮮なフルーツや野菜、そして人々の明るい会話が一気に広がります。ここは、西オーストラリアの豊かな大地がもたらす恵みが一堂に会した、まさに食の楽園と言える場所です。

    ローカルグルメの宝庫を探訪

    通路の両側には、見ているだけで心が弾むようなお店がびっしり並んでいます。真っ赤に熟したイチゴが山のように積まれ、つややかなオリーブ、地元の農家が心を込めて育てたオーガニック野菜も揃います。店主とおしゃべりをしながら試食させてもらうのは、こうしたマーケットならではの醍醐味です。「このトマトは甘いよ!」「このチーズは赤ワインに最高だよ」など、気さくに声をかけてくれます。

    特におすすめしたいのが、ハチミツ専門のショップです。西オーストラリアは、ユニークな固有植物が多い地域で、ユーカリの一種であるジャラやカリーの花から採取されるハチミツは、抗菌作用が高いことでも知られています。花の種類ごとにハチミツの味わいや香りが異なり、何種類も試飲しながら自分だけの一品を見つけるのは、まるで宝物探しのような楽しさです。

    世界の味が揃うストリートフード

    お腹が空いたら、ホールの中央にあるフードコートエリアへ向かいましょう。ここでは世界中の味覚が一堂に会しています。

    • Levi’s Doughnuts: 1950年代から変わらないレシピで作られる、ふわふわでもちもちのドーナツ。揚げたてにシナモンシュガーをまぶしたシンプルな味わいは、一度味わうと忘れられません。長い列ができることもありますが、待つ価値は十分にあります。
    • The Honeycake: 東ヨーロッパの伝統的なハチミツケーキをフリーマントルで提供。何層にも重ねられたハチミツ風味の生地とキャラメルクリームが絶妙に絡み合い、控えめな甘さがコーヒーともよく合います。
    • Gozleme a la Turka: トルコ伝統の焼き餅「ギョズレメ」。薄く伸ばした生地にほうれん草とフェタチーズ、またはひき肉を包み、鉄板で焼き上げます。熱々の一口でチーズがとろけてとても幸せな気持ちにさせてくれます。
    • Dosukoi Ramen: まさかオーストラリアで本格的な日本のラーメンが味わえるとは驚きですね。旅の途中で日本の味が恋しくなったら、ぜひここに足を運んでみてください。

    様々な国の食文化が、このマーケットという一つの場所で自然に共存しています。これは、多様な移民が暮らすオーストラリア、そしてフリーマントルらしい風景の一つと言えるでしょう。

    The Yardで出会う!世界に一つの宝物

    美味しい食事でお腹が満たされたら、次は隣接する「ザ・ヤード」で心を満たす時間を過ごしましょう。ここは地元のアーティストやデザイナーが手がける、個性豊かな作品が並ぶクリエイティブな空間です。一歩足を踏み入れると、その独特な世界観に自然と惹き込まれます。

    唯一無二のアートを求めて

    ザ・ヤードの魅力は、その多彩さにあります。フリーマントルの美しい風景を描いた水彩画、流木やリサイクル素材を使ったユニークな彫刻、そしてオーストラリアの国石であるオパールをあしらった手作りアクセサリー。どれも作り手の情熱とこだわりが込められた、ここでしか手に入らない一点物です。

    特に注目したいのは、オーストラリア先住民アボリジニのアーティストたちの作品です。彼らの「ドット・ペインティング」と呼ばれる点描画には、代々受け継がれてきた創世神話「ドリームタイム」の物語が込められています。一つ一つの点や模様に意味があり、その背景をアーティスト本人から直接聞けるのは、市場ならではの貴重な体験といえるでしょう。単なるお土産以上に、その土地の文化や歴史の一部を共有するような特別な感覚を味わえます。

    作り手との会話を楽しもう

    ザ・ヤードを心から楽しむには、勇気を出してアーティストに話しかけることがポイントです。「この作品にはどんな想いが込められているのですか?」と尋ねれば、きっと喜んでその背景を教えてくれます。作品にまつわる物語を知ることで、その品は単なる「物」ではなく、旅の思い出と深く結びつく「宝物」に変わるでしょう。

    価格交渉は基本的にマナー違反ですが、作り手との温かいやり取りそのものが、観光では味わえない最高の無形の価値を生み出します。言葉があまり得意でなくても、笑顔と「Beautiful!」という一言で、心はきっと通じ合うはずです。

    フリーマントル・マーケットだけじゃない!週末を彩るもう一つのマーケット

    fremantle-weekend-market

    フリーマントルの週末の楽しみは、実はフリーマントル・マーケットだけにとどまりません。港のすぐそば、ビクトリア・キーに位置する「E-Shed Markets(イーシェッド・マーケット)」も、ぜひ訪れてほしいスポットのひとつです。

    フリーマントル・マーケットと比べると少しコンパクトな規模ですが、こちらにはまた異なる魅力があります。倉庫をリノベーションした建物の中には、お土産物屋さんや雑貨店が並び、広々としたフードコートも設けられています。フリーマントル・マーケットが「ローカルの台所」とすれば、Eシェッド・マーケットは「港のフードコート」のような雰囲気です。

    スポット情報
    **名称**E-Shed Markets
    **住所**Peter Hughes Dr, Fremantle WA 6160, Australia
    **営業時間**金・土・日 9:00-17:00(祝日などで変更の場合あり)
    **公式サイト**eshedmarkets.com.au

    このマーケットの最大の魅力は、何と言ってもその立地です。フードコートのテラス席からは、フリーマントルの港が一望でき、行き交う船やヨットを眺めながら潮風を感じつつランチタイムを過ごすのは格別です。フィッシュアンドチップスやクレープなど、気軽に楽しめるメニューが豊富なので、ちょっと小腹が空いたときに訪れるのにも最適です。

    Eシェッド・マーケットの豆知識

    「E-Shed」という少し変わった名前、気になりませんか? これは元々、この建物が港で使用されていた貨物倉庫の「E棟(Shed E)」だったことに由来します。建物の歴史をそのまま名称にしたというのは、なんともユニークな発想ですね。今でも建物の内外には倉庫だった頃の面影が残っており、歴史ある港の風景に溶け込んだこのマーケットで、フリーマントルの海運史に思いを馳せるのも一興でしょう。

    マーケット巡りの達人になる!楽しみ方のヒント

    せっかくフリーマントルのマーケットを訪れるなら、思い切り楽しみたいものですよね。ここでは、マーケット散策をより快適かつ楽しめるためのいくつかのポイントをご紹介します。

    • 訪問は午前中が断然おすすめ!

    特に新鮮な食材を手に入れたいなら、品揃えが豊富な午前中の早い時間帯が狙い目です。昼に近づくほど混雑が増すため、ゆっくりお店を見て回りたい方は早めの訪問が理想的です。

    • エコバッグと現金を忘れずに持参を

    オーストラリアでは環境意識が高く、多くのお店でレジ袋は有料または用意されていません。お気に入りのエコバッグを持っていくことをおすすめします。また、小規模なお店ではカード決済ができない場合もあるため、ある程度現金を用意しておくと安心です。

    • 歩きやすい靴を選んで出かけよう

    市場は広く、見どころも満載。気づけば何時間も歩き回っていたということも珍しくありません。石畳の道が多いため、疲れにくい歩きやすい靴を履いていくのが賢明です。

    • 「フリオ・ドクター」に注意?

    フリーマントルでは「フリーマントル・ドクター」または「フリオ・ドクター」と呼ばれる有名な海風があります。これは夏の暑い日、インド洋から吹き込む涼しい風を指し、気温を一気に下げることから「医者(ドクター)」と称され、地元の人々に親しまれています。日中は暑くても、この風が吹くと肌寒さを感じることがあるため、薄手の羽織物を一枚持っておくと便利です。地元ならではのちょっとした豆知識として知っておくと良いでしょう。

    マーケットだけじゃない!周辺の寄り道スポット

    market-neighborhood-attractions

    マーケットを満喫した後は、ぜひフリーマントルの街を散策してみてください。徒歩で回れる範囲に、魅力あふれるスポットが数多く点在しています。

    カプチーノ・ストリップ (Cappuccino Strip)

    フリーマントル・マーケットの目の前から続く、街の主要な通りです。その名の通り、オープンテラスが魅力的なカフェやレストラン、パブがずらりと軒を連ねています。マーケットで歩き疲れたら、美味しいコーヒーを片手にここで一息つくのがおすすめ。通りすがりの人々を眺めながら、フリーマントルの活気あふれる日常を肌で感じられます。

    フリーマントル刑務所 (Fremantle Prison)

    マーケットの自由で明るい雰囲気とは対照的に、この街の歴史の陰の部分を物語る世界遺産の刑務所です。1991年まで実際に使用されていたことには驚きです。囚人たちが過ごした独房や絞首台を見学できるツアーは少しスリリングですが、フリーマントルの街をより深く理解するには欠かせない体験となるでしょう。ちなみに、この刑務所ではチャペルやトンネルを使った結婚式も挙げられるそうです。ユニークな場所での永遠の誓いは、忘れられない思い出になるに違いありません。

    バザーズ・ビーチ (Bathers Beach)

    街の中心部から徒歩圏内にある、小さくて美しいビーチです。インド洋に沈む夕日は息をのむほどの絶景。マーケットで買ったデリやドリンクを持ち寄り、ビーチでピクニックを楽しみながら一日を締めくくるのは贅沢な過ごし方です。オーストラリアのビーチでは公共の場での飲酒が法律で厳しく制限されていますが、バザーズ・ビーチの一部エリアでは、レストランでの飲食を条件にサンベッドでの飲酒が許可されています。沈みゆく夕日を眺めつつ、冷えた白ワインで乾杯する、大人の特別な時間を満喫できます。

    宝物のような時間を見つける旅へ

    フリーマントルの週末マーケットは、単なる売買の場ではありませんでした。そこは、作り手の情熱と買い手の笑顔が交わる場所であり、地元の人々が週末の会話を楽しみ、旅人がその土地の文化に触れる温かなコミュニティの中心地でもありました。

    新鮮なフルーツの甘酸っぱさを頬張った瞬間、アーティストが作品に込めた思いを語る声、心地よく耳に響くバスカーの音楽、そしてインド洋から運ばれてくる爽やかな風の香り。五感で味わうこれらすべてが、写真やお土産以上に色あせることなく、旅の記憶として深く刻まれます。

    もし次の旅先をお探しなら、ぜひフリーマントルを訪れてみてください。そして、週末マーケットをゆったりと散策してみてください。そこには、あなたの日常を少しだけ豊かに彩る、世界でたったひとつの宝物との素敵な出会いが待っていることでしょう。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    この記事を書いた人

    目次