中東のホテル市場は、地政学リスクで第2四半期に需要が大幅減も、冬のピークシーズンを前に急速な回復を見せています。
中東の旅行ピークシーズンを目前に控え、マリオット・インターナショナルやヒルトン・ワールドワイドといったグローバルホテルチェーンが同地域での需要回復の初期兆候を確認しています。ブルームバーグの報道によると、地政学リスクの影響で大きく落ち込んでいた宿泊需要は、2026年第4四半期に向けて力強い反発を見せる見通しです。Arigatripでは、この中東ホテル市場の急激な動向変化と今後の展望について紐解きます。
第2四半期の大幅減収から第4四半期は前期比60〜70%増へ
今年の中東ホテル市場は、地域的な紛争リスクやそれに伴うフライトの混乱により、厳しい逆風に直面しました。マリオット・インターナショナルが発表した2026年第2四半期の決算データによると、中東地域におけるRevPAR(販売可能客室あたり売上高)は前年同期比で43%の大幅な減少を記録しました。ヒルトンも同様に、中東での収益に約30%の打撃を受けたと報じられています。
しかし、気温が下がり旅行のベストシーズンとなる冬場のピーク期を前に、急速な回復の兆しが現れています。市場アナリストの予測では、第4四半期の中東地域におけるRevPARは、落ち込んだ第2四半期と比較してマリオットで約70%、ヒルトンで約65%という大幅な改善が見込まれています。依然として前年の2025年水準には届かないものの、底を打った市場が着実に上向いていることを示す強力なデータといえます。
欧州主要航空会社のドバイ便再開とサウジアラビアの底堅さ
この急速な需要回復を後押ししている最大の要因は、国際的な航空アクセスの改善と、域内・国内旅行の力強い下支えです。
国際的なフライト網については、ルフトハンザドイツ航空が今年10月下旬にドバイ便の運航を再開する予定であり、ブリティッシュ・エアウェイズも11月から限定的にドバイ便を再開する計画を発表しています。主要な欧州路線が段階的に回復することで、中東の主要ハブへのインバウンド需要が再び活性化し始めています。
同時に、国際需要が低迷していた期間の防波堤となったのが、サウジアラビアを中心とするビジネスツーリズムおよび宗教ツーリズムです。サウジアラビアでは国内および中東域内からの旅行者がホテル稼働率を下支えしており、強固な内需がグローバルチェーンの収益悪化を緩和するクッションとしての役割を果たしました。
OTAの販売動向好転と今後の市場予測
航空便の再開と足元の域内需要の安定に伴い、同地域を扱うOTA(オンライン旅行代理店)やホテル業界全体の販売動向にもポジティブな動きが広がっています。旅行者の予約行動が再開し、友人や親族を訪問する旅行(VFR)やビジネス目的の渡航が先行して戻りつつあります。
今後の展望として、ホテル市場調査会社STRの予測では、ドバイ、アブダビ、ジッダ、リヤドといった主要都市の第4四半期RevPARは、記録的な好調であった2025年同期と比較するとまだ約30%下回る水準にとどまると見られています。しかし、中長期的な視点で見れば、各ホテルチェーンの中東市場への強気な姿勢に揺るぎはありません。例えばヒルトンは、中東地域で新たに230以上のプロパティを開業する計画を推進しており、これにより約3万2000人の新規雇用が創出されると試算されています。
地政学的リスクによる短期的なボラティリティは残るものの、インフラ投資が続くサウジアラビアの経済転換プロジェクトや、ドバイの盤石な観光ブランド力を背景に、中東のホテル市場は急速な適応と成長のフェーズに入っています。今後、価格重視の旅行者をターゲットにしたOTAでのプロモーション戦略や、ラグジュアリー層の再獲得に向けた各ホテルの競争が激化することで、中東への旅行市場全体により魅力的な選択肢が増えていくことが予想されます。

