アコーは、中国市場でのホテル数を5〜6年で倍増させ、現在の830軒から1600軒に拡大する計画を発表しました。旅行需要の力強い回復を背景に、中国をグローバル成長の中心と位置付け、ラグジュアリー・プレミアムブランドの展開に注力します。H World Groupなど現地パートナーとの提携を強化し、4.3億人規模の会員基盤を構築することで、OTAに依存しない直接予約を加速させ、中国の高品質ツーリズムを牽引する狙いです。
アコーによる大規模な中国市場拡大計画
フランスを本拠地とする世界最大級のホスピタリティグループであるアコー(Accor)は、今後5〜6年以内に中華圏(グレーター・チャイナ)における運営ホテル数を現在の830軒以上から1600軒へと倍増させる大規模な事業拡大計画を発表しました。上海で開催された記者会見で明らかにされたこの計画は、同地域における旅行需要の力強い回復と将来性を見込み、中国を今後のグローバルな成長エンジンの中心と位置付けるアコーの強気な姿勢を示しています。
計画の背景にあるインバウンド需要の急回復と現在の事業規模
この野心的な目標の裏には、具体的なデータに裏付けられた市場への強い自信があります。2026年初頭から現在に至るまで、アコーが扱う中国本土へのインバウンド宿泊需要は前年同期比で46%増加しており、特にアジア太平洋地域、中東、そしてヨーロッパからの旅行者が成長を牽引しています。
現在、アコーは中華圏の50以上の都市において17のブランドを展開し、合計14万室以上の客室を擁する830軒以上のホテルを運営しています。国際的なホテルチェーンと中国国内のホテル事業者の間で激しい競争が繰り広げられる中、アコーは急速に変化する中国市場に深く根を下ろす戦略を選択しました。
ラグジュアリーおよびプレミアムブランドへの注力
今回の拡大戦略において特筆すべきは、「ラッフルズ」「ソフィテル」「フェアモント」「Mギャラリー」といったラグジュアリーおよびプレミアムブランドの展開に強い焦点を当てている点です。現在、アコーは中華圏ですでに50軒以上の高級ホテルを稼働させており、さらに40以上の高級ホテルプロジェクトを開発中としています。
新たな大型プロジェクトとして「フェアモント杭州華港」や「ソフィテル西安灞河」などの契約締結が発表されました。2026年内の動向としても、すでに「ソフィテル安吉」が開業を迎えたほか、年後半には「フェアモント大連」や「Mギャラリー成都金融城」などの注目物件のオープンが控えています。これらは従来の北京や上海といった大都市圏だけでなく、西安、杭州、成都など地方の経済・文化拠点へも国内外の富裕層の旅行需要が分散・拡大している傾向を色濃く反映しています。
強力なローカルパートナーシップによるエコシステム構築
中国国内での急速な成長を支える基盤となるのが、地元の巨大ホスピタリティ企業との戦略的提携関係です。
その中核となるのが、H World Group(旧華住集団)との提携拡大です。両社は直接予約システムおよびロイヤルティプログラムを統合・連携させるフェーズに入っており、アコーのメンバー約1億2000万人と、H Worldのメンバー3億1000万人を合わせ、合計4億3000万人規模という巨大な会員基盤による相互送客エコシステムを構築しています。
さらに、過去10年にわたり上海の「和平飯店(ピースホテル)」などの共同事業で実績のある錦江インターナショナルグループとも、新たな高級ホテルプロジェクトに向けた枠組み協定を締結しました。Sunmei Hotels Groupとも提携の幅を広げており、単独での進出リスクを抑えつつローカルプレイヤーの強力な販売網と開発力を活用するアセットライト戦略を鮮明にしています。
予測される未来とホテル業界への影響
アコーが推進する「6年以内のホテル数倍増」という計画は、中国市場における今後のホテル業界の勢力図やOTA(オンライン旅行会社)との力関係に多大な影響を及ぼすことが予測されます。
第一に、富裕層および中間層の旅行者に対するアプローチのパラダイムシフトです。中国からのアウトバウンド需要だけでなく、国内旅行およびインバウンド旅行において「プレミアムな体験」を求める声が急増しています。アコーが主要都市だけでなく地方の歴史的・経済的拠点にラグジュアリーホテルを相次いで展開することで、新たな高品質ツーリズムのルートが形成され、地域経済全体への波及効果が期待されます。
第二に、OTAを介さない直接予約の加速です。4億3000万人という途方もない規模のロイヤルティ会員基盤を活用した販売網の強化は、外部のOTAに依存せず自社チャネルで顧客を囲い込む強力な武器となります。これにより、他の外資系メガホテルチェーンも中国国内でのパートナーシップ戦略の抜本的な見直しや、会員プログラムのさらなる強化を迫られることになるでしょう。
2026年現在、世界の観光産業において中国市場はその重要性を再び高めています。中国を「世界中の旅行者が憧れるプレミアムな目的地」へと引き上げようとするアコーの戦略は、単なる客室数の拡大にとどまらず、アジア全域のトラベル市場における質の高い成長を牽引する重要な試金石となりそうです。

