MENU

    欧州の航空券が値上がりも?未来の燃料「eSAF」義務化、航空業界が直面する大きな壁

    欧州連合(EU)が推進する、環境に優しい未来の航空燃料「eSAF」の導入義務化が、航空業界に大きな波紋を広げています。2030年までに航空燃料の1.2%をeSAFに切り替えるという高い目標に対し、その実現性を危ぶむ声が上がっているのです。この動きは、今後のヨーロッパ旅行の航空券価格にも影響を与えるかもしれません。

    目次

    究極のクリーン燃料「eSAF」とは?

    「eSAF(イーサフ)」とは、持続可能な合成航空燃料(synthetic Sustainable Aviation Fuel)の略称です。太陽光や風力といった再生可能エネルギーから作られた水素と、工場などから回収したCO2(二酸化炭素)を合成して製造されます。

    燃焼時にCO2を排出する点は従来の燃料と同じですが、原料に大気中のCO2を再利用するため、全体としてCO2の排出量を大幅に削減できると期待されています。そのため、資源の制約があるバイオマス燃料などと比べても、「究極のクリーン燃料」として注目されています。

    高すぎる「理想」の壁:生産規模とコスト

    EUは「ReFuelEU Aviation」という規則で、2030年までに航空燃料全体の1.2%をeSAFとすることを義務付けました。しかし、この目標達成には二つの大きな壁が立ちはだかっています。

    存在しない生産プラント

    最も深刻な課題は、eSAFを商業規模で生産する施設が、現時点で世界に一つも存在しないことです。eSAFの製造には、数十億ユーロ(数千億円)規模の巨大なプラント建設が必要とされ、その建設には長い年月がかかります。2030年という期限まで時間が迫る中、インフラ整備が全く追いついていないのが現状です。

    従来の数倍にのぼるコスト

    仮に生産が可能になったとしても、そのコストは非常に高額です。現在の試算では、eSAFの価格は従来のジェット燃料の3倍から8倍にもなると言われています。このコストを誰が負担するのかは大きな問題です。

    待ったなしの目標と罰則

    EUが設定した目標は2030年の1.2%に留まりません。その割合は段階的に引き上げられ、2035年には5%、2050年には35%という、さらに厳しい目標が定められています。

    もし航空会社や燃料供給業者がこの目標を達成できなければ、高額な罰金が科される可能性があります。業界にとっては、莫大な投資をしてeSAFを導入するか、罰金を支払うかという厳しい選択を迫られることになります。

    私たちの旅行はどう変わる?今後の予測と影響

    このeSAFを巡る動きは、旅行者である私たちにも無関係ではありません。

    航空券価格への上乗せの可能性

    eSAFの導入にかかる莫大なコストは、最終的に航空運賃に転嫁される可能性が非常に高いと考えられます。「SAFサーチャージ」や「環境税」といった形で、航空券価格が上昇する未来が予測されます。欧州内のフライトだけでなく、日本から欧州へ向かうフライトにも影響が及ぶかもしれません。

    航空会社の戦略と競争の変化

    航空会社は、この環境規制にどう対応するかで戦略が分かれる可能性があります。積極的にeSAF導入を進め、「環境に優しい航空会社」としてブランド価値を高める企業も現れるでしょう。一方で、コスト増を懸念し、罰金を払いながら様子を見る企業も出てくるかもしれません。

    持続可能な空の旅を実現するため、EUは野心的な目標を掲げました。しかし、理想と現実の間には大きなギャップが存在します。技術革新がこの状況を打開するのか、あるいは航空業界全体が大きな負担を強いられることになるのか。環境問題と経済性の両立という難しい課題に、航空業界は直面しています。今後の動向が、私たちの旅行のあり方を大きく変えることになるかもしれません。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    この記事を書いた人

    目次