欧州で新しい出入国管理システム(EES)が導入されて以来、国境審査の待機時間が常態的に2時間以上、ピーク時には5時間に達し、フライト遅延や乗り継ぎ失敗が深刻化している。セキュリティ強化が目的の生体認証システムだが、人員不足とIT基盤の不安定さで処理が滞るのが原因だ。業界団体は、手続き簡素化や事前登録アプリの改善など6項目の緊急提言を提出。この混乱は欧州旅行市場に打撃を与えかねず、旅行者には乗り継ぎに3〜4時間以上の余裕を持つなど、自衛策が求められる。
深刻化する国境審査での混雑状況
2026年10月14日、欧州空港評議会(ACI Europe)と欧州の主要航空会社で構成される業界団体「A4E(Airlines for Europe)」は共同で声明を発表し、欧州の空港における出入国審査の危機的状況に強い警鐘を鳴らしました。 EUの新しい出入国管理システム(EES)が全面導入されてから半年が経過した現在でも、国境審査での待機時間が日常的に2時間を超える事態が続いています。交通量が集中するピーク時には最長で5時間に達するケースも報告されており、利用客が乗り継ぎ便に乗り遅れる事態やフライトの遅延が常態化しています。 ターミナル内の深刻な混雑は、旅行者の利便性を大きく損なうだけでなく、国境警備担当者や航空・空港スタッフに過度な負担を強いており、欧州圏内の円滑な移動や経済活動を妨げる大きな要因となっています。
生体認証出入国管理システム(EES)導入の背景
EES(Entry/Exit System)は、EU以外の第三国からシェンゲン協定加盟国を訪れる渡航者を対象に、パスポートのスタンプ押印を廃止し、指紋や顔写真といった生体認証データを用いてデジタルで出入国記録を管理するシステムです。国境のセキュリティ強化や不法滞在者の検知を目的とし、段階的な導入を経て今年2026年4月に全面稼働を開始しました。 システム導入により国境防衛の強化という目標は一定の成果をあげているものの、導入から約半年が経った現在も、深刻な運用上の課題が浮き彫りになっています。入国審査官などの慢性的な人員不足に加え、EESを支えるIT基盤の不安定さが処理スピードを大幅に低下させており、本来期待されていた「より迅速でシームレスな国境通過」という約束は果たされていません。
業界団体が突きつけた6項目の緊急提言
ACI EuropeとA4Eは、この事態を「もはや初期トラブルの域を超えている」と指摘し、旅行者や業界が回避可能な混乱の代償を払い続けることは容認できないと主張しています。両団体は欧州委員会および加盟国に対し、抜本的な運用・規制の見直しを求める6項目の緊急提言を提出しました。提言には主に以下の内容が含まれています。
- 重複する確認手続きの排除によるプロセスの簡素化
- 利用客が渡航前に手続きを済ませるための事前登録アプリの機能改善と普及拡大
- セルフサービスキオスクおよび自動化ゲートの配備拡充と利用促進
- 混雑が極限に達した際に生体認証のデータ収集を一時的に停止できる柔軟な法規対応の常態化
両団体は、対症療法的な対応を終わらせ、旅行者の混乱回避に向けてシステムの構造的欠陥を速やかに修正する決断を欧州当局に強く求めています。
予測される欧州旅行市場への影響と旅行者への対策
この混乱が長期化した場合、欧州の旅行市場や経済活動への打撃は計り知れません。入国に多大な時間を要する現状は、観光客やビジネス旅行者の「欧州離れ」を引き起こすリスクをはらんでおり、実際に今後の渡航先としてEUを敬遠する動きが出始めることも懸念されます。抜本的な改善がなされないまま年末年始などの旅行シーズンを迎えた場合、空港の処理能力が限界を超え、さらなる大規模なシステム遅延やフライトの運休に発展する可能性もあります。
Arigatripを通じて国際旅行を計画される読者の皆様におかれては、直近でシェンゲン協定加盟国へ渡航、または同エリアを経由する際、従来よりも大幅に余裕を持ったスケジュールを組むことが不可欠です。空港での審査に数時間単位の待機が発生することを前提とし、乗り継ぎ時間には最低でも3時間から4時間以上の猶予を持たせることや、事前登録アプリを活用して現地での手続きを減らすなどの自衛策を強く推奨します。

