EUは13年間の議論を経て、航空旅客の権利を大幅に強化する新規則に合意しました。2027年後半施行予定のこの規則では、3時間以上の遅延に対する補償維持に加え、航空会社が3時間以内に代替便を提供できない場合、乗客が自己手配し費用を請求できるようになります。また、14歳未満の子連れ家族や障害者への隣接座席確保、機内持ち込み手荷物料金の透明化、ノーショー・ペナルティ禁止など、旅行者の保護と利便性が大きく向上します。航空会社にはコスト負担増が懸念されています。
13年にわたる議論が結実、EU航空旅客の権利が大幅にアップデート
2026年6月15日、欧州連合(EU)の欧州議会と欧州理事会は、航空旅客の権利(通称EU261)を抜本的に見直し、旅行者保護を強化する新たな包括的規則について政治的合意に達しました。2004年に制定された現行規則の改定案が欧州委員会から最初に提出されたのは2013年のことであり、今回の合意は実に13年間にも及ぶ加盟国や航空業界との難航した交渉の末に実現した歴史的な節目となります。
新規則における具体的な変更点とデータ
今回の合意では、遅延やキャンセルに対する消費者の権利が明確化され、補償請求のプロセスが大幅に改善されます。旅行者に直結する具体的な数値基準と新たな権利として、以下の点が盛り込まれました。
遅延に対する補償の維持と情報提供の義務化
航空業界からの強い要望により基準の緩和が危惧されていた「3時間以上の遅延」に対する補償は維持されました。飛行距離に応じて250ユーロから600ユーロの補償金が引き続き適用されます。さらに、遅延が発生した場合、航空会社は到着後96時間以内に乗客へ電子的手段で補償の権利と請求手順を通知することが義務付けられました。請求を受けた航空会社は、ただちに受領を通知し、30日以内に支払いまたは拒否の理由を回答しなければなりません。
代替交通手段の自己手配と費用請求
重要な変更点として、フライトのキャンセルや深刻な遅延の際、航空会社が3時間以内に代替便を提供できない場合、乗客は自身で他の交通手段を手配し、その費用を航空会社に請求できる権利が明文化されました。これにより、空港での長時間の足止めリスクが軽減されます。
家族の隣接座席と弱者保護の強化
14歳未満の子供を同伴する家族や、障害を持つ乗客に対しては、追加料金なしで隣同士の座席を確保する権利が保証されます。また、移動補助器具が紛失・破損した際の無償交換や、乗機時の支援不足による乗り遅れに対する手厚い補償など、サポート体制が大幅に拡大されました。
手荷物料金の透明化とノーショー・ペナルティの禁止
すべての航空券の基本料金には、座席下に収まる手荷物だけでなく、機内持ち込み手荷物(キャビンバッグ)の枠が含まれていることを明確に表示するよう義務付けられ、旅行者にとっての価格の透明性が向上します。さらに、往路のフライトを利用しなかった場合でも復路の航空券を一方的に無効とする「ノーショー・ペナルティ」が禁止され、旅行者の旅程の柔軟性が保護されます。
予測される未来と旅行業界への影響
この新規則は、旅行者の旅程における不確実性を大幅に軽減し、より安心して国際旅行を楽しむための強力な盾となります。日本をはじめとするEU域外からの旅行者にとっても、EU圏内を移動する際やEUの航空会社を利用する際のトラブル対応がこれまで以上にスムーズかつ予測可能なものになることが期待されます。
一方で、航空会社側には厳格な対応とコスト負担が迫られます。国際航空運送協会(IATA)や欧州の地域航空会社協会(ERA)などは、悪天候や航空管制の不具合といった航空会社のコントロール外で起きる遅延に対しても重い負担がのしかかるとして、運用コストの増大や将来的な航空運賃への転嫁を強く懸念しています。
本規則は法的な文言の最終確認を経て正式に採択されたのち、一定の移行期間を置いて2027年後半ごろから完全に施行される見通しです。Arigatripでは、今後も欧州をはじめとする世界の最新トラベルニュースと、それが旅行者に与える具体的な影響を注視してお伝えしていきます。

