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    イビサ島の夜は終わらない。伝説のクラブで踊り明かす、音楽とダンスの巡礼地へ

    地中海に浮かぶ、スペイン・バレアレス諸島の一つ、イビサ島。その名は、紺碧の海と白砂のビーチが織りなす楽園のイメージと共に、もう一つの顔を世界に知らしめています。それは、「ダンスミュージックの聖地」としての顔。夏の間、この小さな島には世界中からトップDJと音楽を愛する人々が集結し、夜ごと熱狂的なパーティーが繰り広げられるのです。太陽が水平線に沈むと、島は巨大なダンスフロアへと姿を変え、重低音が夜の静寂を震わせ始めます。それは、日常を忘れ、音楽と一体になるための、神聖な儀式の始まりの合図。なぜこの島は、これほどまでに人々を惹きつけてやまないのでしょうか。その答えは、単なる享楽的なパーティーアイランドという言葉だけでは到底語り尽くせません。ヒッピーたちが愛した自由の精神、歴史が育んだ多様性、そして音楽の神々に愛されたかのような特別な空気が、この島には満ちているのです。さあ、今宵は私、万里と共に、イビサ島の心臓部である伝説のクラブへ。音楽とダンスに満ちた、情熱的な夜への旅に出かけましょう。

    旅の始まりは、夕陽から始まるチルアウトな大人の遊び方から知るのも一興です。

    目次

    イビサ島、ダンスフロアの楽園へようこそ

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    イビサ島と聞くと、多くの人はクラブやパーティーのイメージを抱くでしょう。しかし、この島の魅力はそれだけにはとどまりません。実はイビサ島は、「イビサ、生物多様性と文化」としてユネスコの世界遺産に登録されている、非常に特別な場所なのです。フェニキア時代の遺跡が残る旧市街「ダルト・ヴィラ」の歴史的価値、そして固有の生態系を形成する海草ポシドニア・オセアニカの草原が育む豊かな海の環境。この文化と自然の両面が評価されての世界遺産指定であり、この事実こそがイビサ島が単なる娯楽の島ではないことを示しています。

    1960年代から70年代にかけて、イビサ島は世界中のヒッピーたちを引き寄せ、自由と平和を尊ぶ彼らのコミューンが形成されました。既存の価値観から解き放たれたこの場で、彼らは独自の文化を育みました。このリベラルな精神こそが後のクラブカルチャーが花開くための肥沃な土壌となったのです。異なる文化や考え方を持つ人々を拒まず受け入れる。この寛容な雰囲気が、世界各国のアーティストやクリエイターたちを刺激し、新たな音楽や表現の誕生を支える揺りかごとなりました。

    鉄道に例えるなら、イビサ島は多様な路線が集まる巨大なターミナル駅のようなものです。世界中からやって来た人々という名の列車がこの島で交差し、新たなエネルギーを生み出し、それぞれの目的地へと出発していきます。クラブのダンスフロアは、そのエネルギーが最も凝縮し爆発するプラットホームと言えるでしょう。これからご紹介するクラブは、単なる音楽を流す場所ではなく、それぞれが独自の歴史や哲学を持ち、イビサの夜を彩る重要な舞台装置なのです。

    伝説の幕開け – 世界最高峰のクラブを巡る

    イビサの夜は、あまりにも多彩な選択肢があることがかえって頭を悩ませる理由です。どのクラブも独自の個性を持ち、毎晩のように世界的なトップDJたちがそのステージに立ちます。その中から、特に象徴的で「伝説」と称されるべき必訪スポットを厳選してご紹介します。各クラブの背景を知ることで、フロアに響く一音一音がより深く心に刻まれることでしょう。

    Ushuaïa Ibiza Beach Hotel – 太陽のもと踊るデイパーティーの王者

    イビサのパーティー文化に革命をもたらしたのが、ここ「Ushuaïa Ibiza Beach Hotel」です。従来、深夜から始まるのが常識だったクラブシーンに「デイパーティー」という新たなスタイルを持ち込み、瞬く間に島を代表する存在となりました。プラヤ・デン・ボッサのビーチフロントに位置し、ホテルとクラブが融合した複合施設です。大規模な野外ステージをプールが囲み、昼間から熱狂的なパーティーが繰り広げられます。

    Ushuaïaの魅力は、その圧倒的なスケール感と豪華絢爛な演出にあります。ステージから炎が噴き上がり、ダンサーたちが華やかなパフォーマンスを見せ、頭上を旅客機が低く飛び抜ける瞬間は圧巻の一言。この非日常的な光景の中で、デヴィッド・ゲッタやマーティン・ギャリックスなどのスーパースターDJのプレイを体験できるのは、まさに興奮必至です。夕暮れ時には刻々と変わる空の色を背景に音楽に身を任せる、ほかでは味わえない幻想的なひとときが訪れます。

    ここでひとつトリビアを。現在世界的ブランドとなったUshuaïaの始まりは、2008年にオープンした小さなビーチバーでした。創設者アベル・マテューテス・フアンの革新的なビジョンが多くの人を惹きつけ、数年で現在の巨大なエンターテイメント施設へと成長しました。「Ushuaïa」という名前は、南米大陸最南端のアルゼンチンにある「ウシュアイア」から取られています。「世界の果て」を意味するこの名前は、「遠くまで行かなくてもここで最高の体験ができる」というメッセージや、世界のダンスミュージックシーンの中心地になるという野望を込めているのかもしれません。いずれにせよ、その願いは現実のものとなりました。

    項目詳細
    名称Ushuaïa Ibiza Beach Hotel
    場所Platja d’en Bossa
    特徴デイパーティー、オープンエア、豪華な演出、ホテル併設
    音楽ジャンルEDM, House, Techno
    有名なパーティーANTS, David Guetta’s F*** Me I’m Famous!
    営業時間主に17:00 – 23:00
    公式サイトtheushuaiaexperience.com

    Hï Ibiza – Ushuaïaの夜を受け継ぐ最先端の聖地

    Ushuaïaのパーティーが終わる23時からが、イビサの夜の始まりです。向かいに堂々とそびえるのが「Hï Ibiza(ハイ・イビサ)」。これはUshuaïaを運営するThe Night Leagueによるナイトクラブで、かつて世界屈指のクラブとして知られた伝説「Space」の跡地に、2017年にオープンしました。

    内部はまさに未来のクラブといえる空間。一歩足を踏み入れると、最先端のサウンドシステムと、フロアを包み込むLEDスクリーンやレーザーの光の洪水に圧倒されるでしょう。本クラブは主に二つのフロアに分かれており、劇場のような広がりを持つ「Theatre」と、よりアンダーグラウンドな雰囲気漂う「Club Room」があります。どちらの空間も、その週のレジデントDJの世界観に合わせて内装や演出が頻繁に変わるのが特徴です。

    そしてHï Ibizaといえば、世界的に有名なトイレ「Wild Corner」は外せません。男女兼用のこのトイレにはDJブースが設置されており、ミラーボールのもとサプライズDJがプレイすることも。用を足すつもりが気付けばダンスフロアになっている、そんな不思議で最高の体験はSNSで瞬く間に拡散され、今やHï Ibizaのアイコン的存在となっています。

    補足ですが、この場所がかつての「Space」の跡地であることは非常に意味深いです。27年間にわたりイビサのクラブ文化を牽引してきたSpaceの閉鎖は惜しまれましたが、Hï Ibizaはその偉大な歴史に敬意を払いながらも過去に縛られることなく、テクノロジーを駆使し未来のクラブ体験を創り出す強い意志を持って設立されました。伝説の魂が宿る場所で新たな伝説を紡ぐ、Hï Ibizaこそがイビサの今を最も体感できる場所なのです。

    項目詳細
    名称Hï Ibiza
    場所Platja d’en Bossa (Ushuaïaの向かい)
    特徴先進的な音響・照明設備、トイレにDJブース、2つの主要フロア
    音楽ジャンルHouse, Techno, EDM
    有名なパーティーBlack Coffee, FISHER, The Martinez Brothers
    営業時間主に23:30 – 翌6:00
    公式サイトhiibiza.com

    Amnesia – 泡まみれの夜明けと陶酔の空間

    イビサのクラブシーン史を語るうえで欠かせないのが「Amnesia(アムネシア)」です。島の中央、サン・ラファエルに位置し、1976年の開業以来、イビサの音楽史を刻み続けてきました。

    Amnesiaは大きく2つのフロアに分かれています。1つは巨大なアイスキャノンが冷風を送り込む洞窟のような「Main Room」、もう1つはAmnesiaを象徴する「Terrace」です。ガラス張りの天井を持つテラスは深夜が更け朝日が差し始める頃、その真価を発揮します。DJのハイテンションなトラックと差し込む太陽光が混ざり合う瞬間は、言葉に尽くせない多幸感に包まれ、世界中から「夜明けのダンス」を求めて多くの人が集まります。

    さらにAmnesiaの名物と言えば、週に一度開催される「Espuma」、通称泡パーティー。巨大な泡キャノンからフロアに大量の泡が放出され、参加者は泡まみれて踊り狂う壮大な光景は圧巻。理性を忘れ、子どものように純粋に楽しむこのパーティーは、Amnesiaならではの超非日常的体験です。

    トリビアとして、クラブ名「Amnesia(記憶喪失)」は、創業者が「訪れる人が日常の悩みを忘れ、音楽に没頭できる空間を作りたい」との願いから名付けられたといわれます。その名のとおり、訪れる者に一夜限りの素敵な記憶喪失体験を与えてくれます。さらに音楽史的な観点から見ると、Amnesiaは80年代後半に誕生した「バレアリック・ビート」の発祥地の一つでもあります。ジャンルの枠にとらわれずロックやポップ、ダブなどを自在にミックスするスタイルは、ここでDJアルフレッドが確立し、世界のダンスミュージックに革命をもたらしました。今楽しんでいるクラブミュージックのルーツが、まさにここにあるのです。

    項目詳細
    名称Amnesia
    場所San Rafael
    特徴歴史ある名門クラブ、ガラス天井のテラス、泡パーティー(Espuma)
    音楽ジャンルTechno, House, Trance
    有名なパーティーelrow, Paradise, Pyramid
    営業時間主に23:00 – 翌6:00
    公式サイトamnesia.es

    Pacha – サクランボのロゴが誘う洗練された大人の夜

    イビサ・タウンの港近くに佇む、純白の壁に描かれた2つのチェリーのロゴで知られる「Pacha(パチャ)」。1973年にオープンしたイビサ最古ながら最もグラマラスなクラブで、世界中のセレブリティに愛され続けています。

    Pachaの魅力は、他の大型クラブとは一線を画す洗練された大人のムードです。元々は古いフィンカ(農家)を改装しており、店内は入り組んだ迷路のよう。メインフロアの周りには小部屋やテラスが点在し、探検するように歩くだけで多様な空間と出会えます。贅沢なVIPエリアも充実し、イビサに「VIPカルチャー」を根付かせた功績もPachaにあります。

    音楽面では、長年ハウスミュージックの聖地として君臨。伝説的なパーティー「Flower Power」では60~70年代のサイケデリックな世界観が再現され、親子三代で楽しむファンも珍しくありません。またSolomunやMarco CarolaなどのカリスマDJがレジデントを務めるイベントは常に最高の音楽体験を提供しています。

    Pachaのトリビアですが、象徴的なチェリーロゴは「禁断の果実」や人生の甘美さの象徴とされます。さらに「Pacha」という名前は、創業者リカルド・ウジェルの妻のジョークに由来するという説が有名です。「パシャ(中東の高官)みたいな贅沢な暮らしができるわね」というその言葉は、ヒッピー精神から商業的成功とラグジュアリーを両立させたPachaの哲学を象徴しています。世界中に支店を持つPachaですが、やはりイビサ本店の持つ独特のオーラと歴史は格別です。

    項目詳細
    名称Pacha
    場所Ibiza Town
    特徴アイコニックなロゴ、洗練されたグラマラスな空間、VIPカルチャー
    音楽ジャンルHouse, Tech House
    有名なパーティーSolomun +1, Music On, Flower Power
    営業時間主に23:59 – 翌6:00
    公式サイトpacha.com

    DC-10 – アンダーグラウンドの精神が息づく場所

    派手な広告も豪華なプロモーションもせず、それでも音楽好きが巡礼のように訪れるのが「DC-10(ディーシーテン)」です。イビサ空港の滑走路近くに位置し、元が飛行機の格納庫だったとの噂もある無骨で飾らない外観は、華やかなクラブとは一線を画します(実際は古い農家です)。

    DC-10の核となるのは、月曜日に開催される伝説のデイパーティー「Circoloco」です。派手さはなく、純粋な音楽とそれに応える熱狂的なクラウドのみ。赤い照明に照らされたシンプルなフロアで、ミニマルかつストイックなテクノやハウスが延々と流れます。頭上を轟音と共に飛び交う飛行機も、ここならではの非日常的な風景を演出しています。

    この場所ではDJと参加者の距離が近く、VIPエリアも控えめ。誰もが音楽の前では平等です。告知なしで大物DJが突然現れてプレイすることも珍しくなく、そのサプライズも伝説になっています。商業主義とは一線を画し、純粋なアンダーグラウンド精神を貫く姿勢が、世界中のコアなクラバーから熱い支持を得ています。

    DC-10の名前はもちろん航空機に由来しますが、開業時には正式な許可を得ず運営していたため極めてアンダーグラウンドでした。口コミで広がった評判が、今やイビサを代表するクラブのひとつへと押し上げました。Circolocoのシンボル「クレイジー・クラウン(道化師)」のロゴは、日常の枠を越え音楽に没頭する招待状。音楽だけを主役にした妥協なき聖域です。鉄道ファンの私の目には、時刻表に載らない謎の列車のように、いつ現れるかわからないけれど一度乗れば忘れられない旅を約束してくれる、そんな魅力が感じられます。

    項目詳細
    名称DC-10
    場所Las Salinas (空港近く)
    特徴アンダーグラウンド、無骨で飾らない雰囲気、滑走路隣接
    音楽ジャンルTechno, Minimal, Tech House
    有名なパーティーCircoloco, Solid Grooves
    営業時間パーティーにより変動(主に夕方~深夜)
    公式サイトcircoibiza.com (Circoloco)

    イビサの夜を120%楽しむための実践ガイド

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    伝説的なクラブの数々に心を躍らせたところで、次はイビサの夜を最大限に満喫するための具体的なコツをご紹介します。少しの知識と準備が、あなたの体験を格段に素晴らしいものへと導いてくれるでしょう。

    チケットを賢く手に入れる方法

    イビサの人気クラブのチケットは決して安価ではありませんが、上手に工夫すれば、お得に、そして確実に手に入れることができます。

    まず基本は、各クラブの公式サイトでの事前購入です。特に著名なDJが出演する夜はチケットがすぐに売り切れてしまうことも珍しくありません。オンラインで早めに購入するのが最も確実で、当日券よりも割安になるケースが多いです。

    現地に着いてからチケットを買いたい場合は、プラヤ・デン・ボッサやサン・アントニオの街中にある公式の販売所を活用しましょう。様々なクラブのチケットを取り扱っているため、複数のパーティー分をまとめて購入できることもあります。時にはあまり知られていない小規模なパーティーの情報が手に入ることもあります。

    また、ビーチやバーで活動している公式プロモーターから直接買う方法もあります。彼らはクラブのロゴ入りTシャツを着ているのですぐに見分けがつきます。割引リストバンドを配布していることもあるので、見かけたら声をかけてみるのもおすすめです。

    ここで少し昔話をひとつ。かつてはビーチで配られるフライヤーに割引券が付いていることが通例で、それを持ってクラブに向かうのが一般的でした。しかしインターネットの普及でその文化は徐々に薄れ、現在ではオンラインでの事前購入が主流となっています。時代の変化を感じさせるエピソードですね。

    ドレスコードは「自分らしさ」が鍵

    「クラブに行くとき、どんな服装が適している?」と悩む人は多いでしょう。しかしイビサの答えはシンプルです。「自分らしく自由に楽しむこと」が何よりのドレスコードです。

    基本的にUshuaïaやAmnesia、DC-10などのクラブはカジュアルなスタイルで問題ありません。Tシャツ、ショートパンツ、スニーカーなど、動きやすい服装が最適です。ただしビーチサンダルや水着では入場を断られる場合もあるので注意しましょう。

    一方、Pachaのように少しグラマラスな雰囲気のクラブでは、少しおしゃれを意識するとその場に馴染みやすいかもしれません。男性なら襟付きシャツやきちんとしたパンツ、女性ならお気に入りのワンピースなどがおすすめです。ただし、厳格なドレスコードがあるわけではないので、過剰に気にする必要はありません。

    知っておきたいのが、イビサ発祥のファッションスタイル「Adlib(アドリブ)」です。これはラテン語の「Ad Libitum(自由に)」に由来し、白を基調としたコットンやレースなどの自然素材を用いた、風通しがよくリラックスした装いを指します。この「自由に着こなす」精神がイビサのファッション文化の根幹となっています。個性的な衣装で自己表現をする人もいれば、シンプルな服装で音楽に没頭する人もいる、多様性を尊重する島なのです。あなたの個性こそが、イビサでの最高のファッションです。

    島内の移動方法のポイント

    イビサの主要クラブはイビサ・タウン、プラヤ・デン・ボッサ、サン・ラファエル、サン・アントニオなどのエリアに点在しています。クラブホッピングを満喫するためにも、効率的な移動手段を把握しておくことが大切です。

    最も便利でコスパに優れているのは、夜間に運行される「ディスコバス」です。主要クラブとリゾート地を結び、深夜から早朝にかけて頻繁に運行しています。料金も手頃で安全なのが魅力です。さらに、このバスは単なる移動手段にとどまらず、クラブへ向かう人々の興奮が漂う「動くプレパーティー会場」とも言えます。道中で他の旅行者と仲良くなることも多く、イビサならではの交流が生まれる場です。

    タクシーも便利ですが、深夜のピーク時には捕まえにくいことがあります。特にクラブの閉店時間が重なる早朝は長い行列ができることもあるので注意が必要です。料金はメーター制で透明ですが、一般的には日本より割高に感じることが多く、複数人での相乗りが一般的です。

    日中や自由に動きたい場合は、レンタカーやスクーターも良い選択肢です。ただしイビサの道は狭く曲がりくねった場所も多いため、運転には十分注意してください。そしてもちろん、飲酒運転は絶対に避けるべきです。楽しい夜を悲しい結末にしないために、お酒を飲む際は公共交通機関を利用しましょう。

    過ごし方のモデルスケジュール例

    イビサでの理想的な一夜を過ごすためのモデルプランを一つご提案します。あくまで一例ですが、イビサの時間の流れを掴む参考になると思います。

    • 19:00 – サンセット鑑賞:まずはサン・アントニオの「サンセット・ストリップ」へ。Cafe del MarやMamboなどの伝説的なバーで、チルアウトミュージックに耳を傾けながら世界屈指の美しい夕日を堪能します。太陽が水平線に沈む瞬間には、周囲の人々から自然と拍手がわき起こる感動的な光景が広がります。
    • 21:00 – ディナー:スペインではディナーの時間が遅めです。イビサ・タウンの旧市街やビーチ沿いのレストランで、新鮮なシーフードを使ったパエリアやタパスを味わいましょう。
    • 23:00 – プレパーティー:クラブに行く前に、ホテルの部屋やバーで友人たちと軽くドリンクを楽しみ、気分を盛り上げます。この時間帯は街のバーが最も賑わっています。
    • 深夜1:30 – クラブへ向かう:イビサのクラブは深夜2時~3時に最高潮に盛り上がり、メインDJもこの時間帯に登場します。少し早めに入場してフロアの雰囲気に慣れておくのもおすすめです。
    • 深夜2:00~6:00 – オールナイト・ダンス:音楽に身を委ねて踊り明かしましょう。疲れたらバーで休憩したり、別のフロアを移動したり。時間を忘れてその瞬間を存分に楽しんでください。
    • 早朝6:00以降 – 朝日とともに:Amnesiaのテラスやビーチで昇る朝日を浴びながら、余韻に浸る特別な時間を過ごします。このまどろみはイビサならではの体験です。その後ホテルに戻り、穏やかな昼間を過ごして、再び夜に備えるのです。

    ダンスフロアの向こう側 – 音楽が紡ぐ島の物語

    イビサのクラブで響き渡る音楽は、一晩の楽しみだけを目的としたものではありません。その背景には、この島が築き上げてきた豊かな音楽の歴史と文化が色濃く息づいています。ダンスフロアから少し視野を広げて、イビサという島と音楽が織り成す深い結びつきを紐解いてみましょう。

    バレアリック・ビートの誕生

    先に触れたAmnesiaの項目でも記した通り、1980年代のイビサは「バレアリック・ビート」あるいは「バレアリック・サウンド」と呼ばれる独特の音楽スタイルを生み出しました。これは特定のテンポやリズムを持つジャンルではなく、むしろジャンルの枠を超えて自由に行き来する「精神性」や「選曲のアプローチ」を意味します。

    その創始者として知られるのが、アルゼンチン出身のDJ、アルフレッド・フィオリートです。彼はAmnesiaのオープンエアテラスにて、当時の常識を覆す自由奔放なミックスを展開しました。ロックバンドThe Cureの楽曲に続けてラテンパーカッションを繋ぎ、その後に初期のシカゴハウスを披露。ポップスやソウル、レゲエ、アンビエントといったさまざまなジャンルが、彼のDJブースでは等しく扱われ、一つの心地良いグルーヴへと融合されていきました。このスタイルは、休暇でイビサを訪れていたイギリスのDJたちに強烈なインパクトを与え、彼らが持ち帰ったことから後のアシッドハウスムーヴメントやセカンド・サマー・オブ・ラブへと発展していきました。

    バレアリック・ビートの誕生には、ヒッピー文化が根付いたイビサの多様性が大きく影響しています。世界中から集まった人々が、それぞれの愛聴盤を持ち寄り、混沌としたその中から、DJアルフレッドのような才能が新たな調和を生み出したのです。これはまさに、イビサの寛容な精神が音楽として結実した瞬間でした。

    サンセットチルアウトの魔法

    イビサの音楽文化を語るうえで、激しいダンスミュージックと対をなすもう一つの重要な要素が「チルアウト」です。その代表的な場所がサン・アントニオのサンセット・ストリップ沿いに並ぶカフェで、特に「Café del Mar(カフェ・デル・マール)」が挙げられます。

    1980年にオープンしたこのカフェは、壮大な夕日とともに音楽を楽しむ文化を生み出しました。DJのホセ・パディージャらが奏でた、穏やかで美しいアンビエントやダウンテンポのサウンドは、やがて「チルアウト」というジャンルとして認識されるようになります。

    Café del Marが1994年に初めてリリースしたコンピレーションCDは、世界中で大ヒットを記録しました。イビサを訪れたことがない人でも、そのCDを通して島の魔法のような夕暮れの雰囲気を追体験できたのです。熱狂の夜の前奏として、または狂騒の夜明けの後のクールダウンとして、チルアウトミュージックはイビサの音楽風景に欠かせない存在となりました。太陽が水平線に沈むのを静かに見つめながら、美しいメロディに身をゆだねる時間。それはクラブでの歓喜と同じくらい、心を震わせる感動的な体験なのです。

    音楽の神々に愛された島で、忘れられない一夜を

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    イビサ島。それは単なる音楽の消費地ではありません。音楽が生まれ、育ち、そして世界へと発信される、生きたエコシステムそのものなのです。デイパーティーの太陽の光から深夜のクラブのレーザー照明、さらにはテラスに差し込む朝日まで、この島では一日を通して光と音が絡み合い、訪れる人々の五感を絶えず刺激します。ダンスフロアで隣り合った見知らぬ誰かと、国籍や言葉の壁を越えて笑顔を交わす瞬間。DJの一曲が、その場の全員の心を一つに結びつける魔法のような一体感。これらは、この島が秘める特別な力によって起こる奇跡かもしれません。

    鉄道好きの私、万里は、時折人里離れた秘境駅に魅了されます。そこには日常から切り離された独特の時間の流れと静けさが広がっています。そして、イビサのクラブにあるダンスフロアの真ん中にも、それと似た感覚が宿っているのです。轟音の中で自分の鼓動だけが聞こえてくるような、不思議な静寂。それは日常の喧騒から完全に解き放たれ、自分自身と、そして音楽に向き合うための神聖な空間と言えるでしょう。

    イビサの夜があなたを待っています。世界最高峰のDJたちが織り成すサウンドの波に身を委ね、自らを解き放ち、踊り明かす夜。きっとそれは、あなたの人生のサウンドトラックに忘れ難い一曲を刻む、情熱的かつかけがえのないひとときになるはずです。さあ、音楽の神々に愛されたこの楽園の島へ、巡礼の旅に出かけましょう。

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    この記事を書いた人

    子供の頃から鉄道が大好きで、時刻表を眺めるのが趣味です。誰も知らないような秘境駅やローカル線を発掘し、その魅力をマニアックな視点でお伝えします。一緒に鉄道の旅に出かけましょう!

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