「死」と聞くと、あなたは何を思い浮かべますか?
静寂、悲しみ、厳粛な黒、そして終わり。私たちの多くは、そんなイメージを抱いているかもしれません。私自身も、フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、二つの文化の中で死の捉え方の違いに触れてきましたが、その根底にあるのはやはり「別れの寂しさ」でした。ヨガや瞑想を通して心と向き合う中で、「生と死はコインの裏表」だと頭では理解していても、心で受け入れるのはまた別の話。
けれど、東欧の片隅、ルーマニアの小さな村に、その概念を根底からひっくり返してしまう場所があると聞いて、私の旅心は大きく揺さぶられました。
その名は「陽気な墓(Cimitirul Vesel)」。
墓が、陽気?矛盾しているようなその響きに導かれ、私はトランシルヴァニア地方のさらに北、ウクライナとの国境にほど近いマラムレシュ地方のサプンツァ村へと向かいました。そこで私が見たのは、悲しみの色ではなく、空よりも鮮やかな「サプンツァ・ブルー」に彩られた、無数の木の十字架が立ち並ぶ、まるで野外美術館のような光景でした。
一つひとつの墓標には、故人の生前の姿が素朴で愛らしい絵で描かれ、その下には人生を物語る詩が刻まれています。そこにあるのは、悲嘆ではなく、ユーモアと愛情に満ちた人間賛歌。死をタブー視するのではなく、人生のひとつのチャプターとして受け入れ、笑い飛ばしてしまうほどの生命力。
この場所は、訪れる者に問いかけます。「あなたは、どんな物語を生きていますか?」と。
さあ、この記事を読み終える頃には、あなたもきっと、この世界で最も不思議で、最も心温まる墓地への航空券を探し始めているはず。死生観がぐるりと反転するような、忘れられない旅へ、ご案内します。
死生観がぐるりと反転するような、忘れられない旅へ、ご案内します。人生の物語を巡る旅は、まるで夢のような感動が待つニューヨーク・ブロードウェイの魔法にも通じるかもしれません。
陽気な墓(Cimitirul Vesel)とは?死の概念を覆すアートの森

サプンツァ村に足を踏み入れると、まずその静かな風景に心が和みます。木造の民家、庭先で草を食む家畜、手仕事に励む村人たち。時間がゆったりと流れるこの村の中心部に、その墓地は位置しています。
教会の門をくぐると、目の前に広がるのは圧倒的な青の世界。そして、赤や黄、緑といった鮮やかな原色に彩られた無数の墓標が並び、まるで絵本の中に迷い込んだかのような光景が広がります。少し霊感がある私の感覚では、一般的なお墓で感じるようなひんやりとした空気は微塵もなく、むしろ温かく、ざわめく生命力とエネルギーで満ちあふれていました。まるでここに眠る魂たちが「よく来たね!」と歓迎してくれているかのような雰囲気です。
出発点は、ひとりの村人の哲学から
この独特な墓地は、1935年に当時十代だった彫刻家スタン・イオン・パトラシュによって創始されました。彼は、死をただ悲しむものとして受け入れる従来の慣習に疑問を抱いていたと言います。
ルーマニアのこの地域には、古代ダキア人の思想が深く根付いています。彼らは死を終わりとは見なさず、魂の不滅を信じていました。死とはより良い世界への旅立ちであり、悲しむべき事柄ではないという考えです。パトラシュはこの思想を受け継ぎ、墓標を故人の人生を祝う記念碑へと変えようと試みました。
彼はオーク材を彫刻し、鮮やかな色彩で彩りを添え、故人の仕事や性格、時には死因などを素朴な絵と一人称の詩で表現しました。その詩は時にユーモラスであり、時には皮肉を含み、また教訓的でもありました。完璧な人間はいないということを長所も短所も包み込んで、その人のありのままを愛情深く伝えています。
1977年に彼がこの世を去るまでに約700基の墓標を制作しました。彼自身もこの墓地に埋葬されており、その墓標には「私の一生は大変だった」と素直に刻まれているそうです。彼の死後は弟子であるドゥミトル・ポップ・ツィンク氏がその意思と技を受け継ぎ、現在もこの村で「陽気な墓」は増え続けています。
サプンツァ・ブルーに込められた想い
墓標の背景に鮮やかに施されている青は「サプンツァ・ブルー」と呼ばれ、希望や自由、そして天国を象徴しています。その他の色にも意味があり、緑は「生命」、黄色は「豊穣」、赤は「情熱」、黒は「死」そのものを表現しています。こうした色彩が組み合わさって、一つ一つの墓標が故人の人生を凝縮した縮図となっているのです。
この墓地は単なる観光名所ではありません。今なお村人たちが実際に使う場所です。訪れた人々は、墓標に刻まれた物語をたどりながら、知らない誰かの人生に思いを馳せます。それはまるで村の歴史書をめくるかのような、不思議な体験なのです。
墓碑が語る、村人たちの愛すべき人生の物語
陽気な墓の魅力は、何よりも一つひとつの墓標に刻まれた、赤裸々で人間味あふれる物語にあります。ガイドさんの説明を受けたり、翻訳アプリを頼りに読み解いたりしながら、いくつかの人生の断片に触れることができました。そこには、完璧ではないけれど懸命に生き抜いた人々の姿が浮かんできます。
姑への本音?正直すぎる嫁の告白
中でも特に有名で、多くの観光客が足を止めるのは、ある女性の墓標です。そこには、箒を手にした姑に髪を引っ張られる嫁の様子が描かれています。詩には、こんな内容が刻まれているそうです。
「ここに眠る私、名前はアナ。
お願いだから、邪魔しないで。私はここから出たくないの。
なぜなら、あの姑がすぐそばにいるから。
彼女が目を覚ましたら、また私の頭を叩くに違いない。
ねえ、どうか私のようにならないで。
良い姑を選び、仲良くしなさい。」
死してもなお続く(?)嫁姑問題。そのあまりの本音ぶりに、思わず苦笑してしまいます。しかし、これはただの悪口ではありません。生前の苦労をユーモアに変え、「みんな気をつけてね」と後世に伝える、温かな愛情の形なのかもしれません。
酒好き男性の最後の言葉
樽の隣で楽しげに酒を飲む男性が描かれた墓標も、印象的でした。
「私はシュテファン。酒が大好きだった。
隣人が訪ねてくれば、いつも一緒に飲んだ。
妻は文句を言ったけれど、仕方ないよね。
酒を飲んでいると、私は幸せだったから。」
欠点も隠さず、むしろ「これが俺の人生だった」と誇るような潔さ。どこか憎めない、愛すべき人物像が目に浮かびます。
悲劇さえも、物語として刻む
もちろん、陽気な墓には悲しい物語も刻まれています。たとえば、交通事故で若くして命を落とした少女の墓標。そこには車にひかれる瞬間の絵とともに、彼女の無念が綴られています。
「燃えるような地獄のタクシーよ!
どこへ向かっていたのか知らないけれど、
シゲトゥの近くで私をはねた。
悲しむ両親を残して、私はここを去った…。」
しかし、これもまた彼女が生きた証。悲劇を隠さずありのままに記録することで、彼女の人生が確かにあったことを伝えています。悲しい出来事ですら、人生という大きな物語の一部として受け止める。その力強さを感じさせる一文です。
羊飼いの誇り
羊飼いとして生涯を終えた男性の墓標には、羊たちに囲まれ誇らしげに立つ姿が描かれています。詩は、彼がどれほど自分の仕事と羊たちを愛していたかを物語り、その素朴な人生の豊かさを伝えてくれます。
これらの物語に触れると、いつの間にか私たちは、ここに眠る人々の隣人になったかのように感じられます。彼らの喜びや悲しみ、怒りや愛情。そのすべてが、この青い森の中で、今もなお生き生きと息づいているのです。日本の静かな墓地やフランスの壮麗な霊園とは異なり、ここはまさに人生が繰り広げられる野外劇場のようでした。
サプンツァ村への旅の計画:モデルプランとアクセス方法

この特異な墓地を訪ねる旅には、多少の準備が必要です。ルーマニアの最北端に位置し、アクセスが容易とは言えませんが、その分、現地に到着した際の感動は格別です。ここでは、具体的な旅の計画についてご案内します。
体験の見どころと所要時間
サプンツァ村の旅行で特に注目したいのは、言うまでもなく「陽気な墓」ですが、その周囲にはマラムレシュ地方の素朴な風景や文化が色濃く残っています。
- 陽気な墓(Cimitirul Vesel): 墓地の散策や写真撮影、そして墓碑に刻まれた詩の読み解きなどを含め、所要時間はおよそ1.5時間から2時間が目安です。じっくりと各墓碑の物語に触れるなら、もう少し時間に余裕を持つと良いでしょう。
- スタン・イオン・パトラシュ記念館: 陽気な墓の創始者パトラシュが実際に生活し、制作を行っていた住居を記念館として公開しています。彼の作品や創作道具が展示されており、墓地とセットで訪れることで理解が深まります。見学時間は約30分ほどです。
- マラムレシュ地方の木造教会群: この地域には、ユネスコの世界遺産にも登録された木造教会が点在しています。釘を使わずに建てられたという精巧な建築は壮観で、特にシュルデシュティやブルサナの修道院は必見です。これらの教会も旅程に組み込むのが望ましいでしょう。
モデルプラン:クルジュ=ナポカ発の日帰りツアー
マラムレシュ地方へは、トランシルヴァニア地方の中心都市であるクルジュ=ナポカを拠点とするのが一般的です。個人での移動はやや難しいため、現地発のガイド付き日帰りツアーに参加するのが最も効率的で安心です。
以下は、典型的な日帰りツアースケジュールの例です。
- 午前8:00 | クルジュ=ナポカ市内のホテル出発
ツアー会社専用の車がホテルまで送り迎えをしてくれます。長距離の移動があるため、車内で快適に過ごせる服装をおすすめします。
- 午前11:00頃 | シュルデシュティの木造教会に到着
世界遺産に登録された木造教会を見学。特徴的な高い尖塔が空にそびえ立ちます。案内役のガイドが歴史や建築様式について詳しく解説してくれます。
- 午後12:30頃 | 伝統的なレストランで昼食
マラムレシュ地方特有の郷土料理を堪能します。酸味のあるスープ「チョルバ(Ciorbă)」や、トウモロコシ粉を練った主食「ママリガ(Mămăligă)」など、素朴で味わい深い料理が楽しめます。(昼食代はツアー料金に含まれない場合が多いです)
- 午後2:30頃 | サプンツァ村の「陽気な墓」到着
旅のハイライトです。約1時間半から2時間をかけて墓地を自由に見て回ります。ガイドが有名な墓碑の物語や興味深い逸話を紹介してくれるので、より深い体験が可能です。
- 午後4:30頃 | スタン・イオン・パトラシュ記念館見学
墓地のすぐ近くにある記念館を訪れ、このユニークな文化を生み出した芸術家の世界観に触れます。
- 午後5:00 | サプンツァ村を出発
名残惜しいですが帰路につきます。車窓から眺めるマラムレシュの美しい田園風景もまた楽しみのひとつです。
- 午後8:00〜9:00頃 | クルジュ=ナポカ市内のホテルに到着
長い一日ですが、感動と発見に満ちた充実した体験となるでしょう。
全行程の所要時間は、移動を含めておよそ12時間から13時間です。
宿泊してゆっくり楽しむプラン
時間に余裕がある場合は、サプンツァ村近郊の町、シゲトゥ・マルマツィエイ(Sighetu Marmației)に1〜2泊するのがおすすめです。この町を拠点にすれば、公共交通機関やタクシーを使い、自分のペースで陽気な墓を訪れることができます。
また、この地域ならではの伝統的な宿泊施設「ペンシウネ(Pensiune)」と呼ばれる民宿に宿泊すると、ルーマニアの家庭料理を味わえたり、地元の人と交流したりと、より深い体験が可能です。
個人でのアクセス方法について
- 公共交通機関: ルーマニアの首都ブカレストから夜行列車でシゲトゥ・マルマツィエイまで移動し、そこからバスやタクシーでサプンツァ村へ向かうルートがあります。ただし、便数が限られ、乗り換えも複雑なため、時間に余裕があり冒険心旺盛な上級者向けの移動手段です。
- レンタカー: 自由度が高い点が魅力です。クルジュ=ナポカなどで車を借りることで、好きなタイミングで木造教会などを巡りながら旅を楽しめます。ただし、地方の道路は整備が不十分だったり、馬車が走っていたりする場合もあり、海外での運転に慣れた方に向いています。
ツアー料金と予約のすべて:賢く旅する準備
旅の計画で気になるポイントの一つが、やはり費用と予約方法です。ここではサプンツァ村へのツアーに関する具体的な情報をお伝えします。
料金の目安
クルジュ=ナポカ発の日帰りプライベートツアーの料金は、参加人数によって変わりますが、1人あたりおおよそ€100〜€180(約17,000円〜30,000円)程度が相場です。参加人数が増えるほど、一人あたりの料金は割安になる傾向があります。
- 基本料金: 上記の価格帯が参考となります。
- 子ども料金: ツアー会社によっては子ども向けの料金体系が設けられている場合もありますので、予約時にご確認ください。
- 陽気な墓の入場料: 多くのツアー料金に含まれていますが、個人で訪れる場合は別途必要となります。入場料は1人あたり約10レイ(約340円)とリーズナブルです。(2024年時点。料金は変更されることがあります)
料金に含まれるものと含まれないもの
ツアー内容は予約するプランによって異なりますが、一般的な日帰りツアーの例を以下に示します。予約前に詳細な内容を必ずご確認ください。
料金に含まれるもの
- クルジュ=ナポカ市内のホテルからの往復送迎(専用車利用)
- 英語対応のプロフェッショナルガイド
- 陽気な墓の入場料
- 行程内のその他観光スポット(例:木造教会など)の入場料(※プランによっては含まれない場合があるため確認が必要です)
- 燃料費や駐車料金
料金に含まれないもの
- 昼食代や飲み物代
- お土産代などの個人的な支出
- ガイドやドライバーへのチップ(欧米の習慣に準じ、良いサービスを受けた場合に渡すことが一般的ですが、必須ではありません)
- 写真撮影料(一部の施設で追加料金がかかる場合があります)
予約方法の選択肢
サプンツァ村へのツアーは、以下のような方法で予約可能です。
- オンライン予約サイト:
- GetYourGuideやViatorなどの国際的なアクティビティ予約サイトでは、複数の現地ツアー会社のプランを比較・予約できます。口コミも豊富で安心して選べます。
- 現地旅行会社の公式サイトから直接予約:
- クルジュ=ナポカやルーマニアの観光情報を発信する旅行会社のウェブサイトから直接申し込むことも可能です。たとえば「Romanian Friend」や「TravelMaker Romania」などは信頼性が高く、プランのカスタマイズも柔軟に対応してくれます。
- 政府観光局などの公式情報から探す:
- 陽気な墓には専用の公式ツアー予約ページはありませんが、ルーマニア政府観光局のサイトなどで現地認定のガイドや旅行会社情報を入手できます。最新の観光情報をチェックする際にも参考になるでしょう。
旅行の計画は早めのスタートがおすすめです。特に夏の観光シーズンはツアーが混雑しやすいため、できれば出発1ヶ月前までに予約を済ませておくと安心です。
旅の持ち物と心構え:マラムレシュ地方を快適に旅するために

準備をしっかり整えることで、旅はより快適で思い出深い体験になります。ルーマニアの田舎を訪れる際に必要な持ち物リストと現地のルールをまとめました。
必携アイテム
- パスポート: 当然ですが、有効期限も必ず確認しておきましょう。
- 現金(ルーマニア・レイ): ツアーで含まれない昼食代やお土産、トイレのチップなど、現金が必要となる場面が多々あります。都市部の両替所で事前に両替するか、ATMで引き出せる準備をしてください。クレジットカードが使えない小規模な店舗も少なくありません。
- 歩きやすい靴: 墓地や教会の敷地内には未舗装の場所もあるため、スニーカーやウォーキングシューズが理想的です。
- 海外旅行保険証: 病気や怪我に備え、必ず加入しておくことをおすすめします。
推奨される持ち物や準備
- カメラ: 美しい景色が多いので、お気に入りのカメラを持参しましょう。
- モバイルバッテリー: 長時間の移動中や写真撮影、地図アプリの使用でスマホのバッテリーが消耗しやすいため、必須のアイテムです。
- 羽織るもの: 山間部の天候は変わりやすく、夏でも朝晩は冷えることがあります。カーディガンや薄手のジャケットがあると安心です。
- 日焼け止め、サングラス、帽子: 強い日差しが照りつけることもあるので、特に夏は紫外線対策を忘れずに。
- 虫除けスプレー: 自然豊かな環境のため、夏場は持参すると役立ちます。
- 酔い止め薬: 山道を走る長時間の車移動があることもあるため、乗り物酔いが心配な方は準備しておくと安心です。
- ウェットティッシュ、除菌ジェル: 外出先で手を清潔に保ちたい時に便利です。
- 簡単なルーマニア語フレーズ集や翻訳アプリ: 「Bună ziua(ブナ・ズィワ / こんにちは)」や「Mulțumesc(ムルツメスク / ありがとう)」など簡単な挨拶を覚えておくと、現地の人々との距離がぐっと縮まります。
服装のポイントやマナー
- 動きやすい服装: 長時間のドライブや散策に適した、快適でリラックスできる服装がおすすめです。ジーンズやコットン素材のパンツが向いています。
- 教会訪問時の服装マナー: 木造教会など宗教施設を訪れる際は、敬意を表す服装が求められます。肩や膝が露出するタンクトップやショートパンツは避けましょう。ストールやカーディガンを携帯しておくと、さっと覆えて便利です。
禁止事項や現地の規則
- 敬意を払うこと: 陽気な墓は観光名所であると同時に、今も村人たちが使用している神聖な場所です。大声を出したり、墓石に不用意に触れたり、ゴミを捨てたりする行為は厳禁です。
- 写真撮影のマナー: 基本的には撮影可能ですが、お祈りをしている方や他の訪問者が写り込まないよう配慮しましょう。プライバシーの尊重が大切です。
- ドローン使用の禁止: 無許可でのドローン飛行は認められていません。必ず事前の許可を取得してください。
旅の心構えとして大切なのは、「お邪魔させていただく」という謙虚な気持ちです。この村の独特な文化を尊重し、静かにその雰囲気に浸ることで、より深い旅の体験が得られるでしょう。
旅人が抱く疑問を解決!陽気な墓Q&A
未知の土地への旅には、不安や疑問がつきものです。ここでは、サプンツァ村への訪問を検討している方が抱きやすい質問に、私自身の経験を交えながらお答えします。
Q1: 英語は通じますか?
A: ブカレストなどの大都市や観光スポットでは英語が通じることが多いですが、サプンツァ村のような田舎では、英語が話せる人は限られています。ツアーに参加すればガイドが通訳してくれるため心配はありませんが、個人で訪れる場合は翻訳アプリや指差し会話帳がとても役立ちます。村の小さなお店やペンションでは、簡単なルーマニア語の挨拶が交流のきっかけとなり、非常に喜ばれますよ。
Q2: ルーマニアの治安はどうですか?
A: 外務省の海外安全情報によると、ルーマニアの治安はヨーロッパ諸国の中でも比較的良好と言われています。ただし、ブカレストの駅周辺や観光客が多く集まる場所では、スリや置き引きなどの軽犯罪が報告されています。マラムレシュ地方は非常に穏やかで安全な雰囲気ですが、貴重品の管理など、海外旅行の基本的な注意は怠らないようにしましょう。夜間の一人歩きは控えるのが賢明です。
Q3: 旅行のベストシーズンはいつですか?
A: マラムレシュ地方を訪れるなら、気候が穏やかで緑が最も美しい5月から9月の春〜秋にかけてが最適な時期です。日も長く、快適に観光を楽しめます。一方で、冬(11月〜3月)は厳しい寒さが続き、雪によって道路が閉ざされることもあり、アクセスが難しくなる場合もあります。雪景色も素晴らしいですが、旅行のしやすさを考えると春から秋がおすすめです。
Q4: 食事が心配です。どんな料理がありますか?
A: ルーマニア料理は、東欧やバルカン諸国、トルコの影響を受けた素朴で滋味深い味わいが特徴です。発酵食品が苦手な私でも、ルーマニア料理は新鮮な野菜やハーブ、グリルした肉料理が中心で、とても美味しくいただけました。代表的な料理には以下のようなものがあります。
- チョルバ・デ・ブルタ(Ciorbă de burtă): 牛の胃袋(ハチノス)を使った、やや酸味のあるクリームスープ。見た目よりも食べやすく、人気の高い一品です。
- サルマーレ(Sarmale): ひき肉と米をブドウやキャベツの葉で包んだルーマニア風ロールキャベツ。家庭料理として国民的な存在です。
- ミティティ(Mititei): 牛や豚のひき肉を使った小ぶりのグリルソーセージ。ジューシーで、マスタードを添えていただきます。
- ママリガ(Mămăligă): トウモロコシの粉を練って作るポレンタに似た付け合わせ。チーズやサワークリームと一緒に食べることが多いです。
どの料理も日本人の味覚に合いやすいと思いますので、ぜひ現地で味わってみてください。
Q5: 現金はどのくらい必要ですか?カードは使えますか?
A: クルジュ=ナポカなど都市部では、ホテルやレストラン、大型スーパーなどでクレジットカードが広く利用可能です。しかし、サプンツァ村やその周辺の小さなお店、市場、個人経営のペンション、観光地の入場料などでは現金(ルーマニア・レウ)オンリーの場合がほとんどです。日帰りツアーでも昼食代やお土産代、チップを考慮して、1人あたり200〜300レウ(約7,000〜10,000円)程度の現金を用意しておくと安心です。両替は都市部の銀行や両替所で行うのが安心です。
死生観をアップデートする旅へ:サプンツァ村が残す深い余韻

ルーマニアの澄んだ青空の下、色とりどりの墓標が並ぶ森を歩きながら、私は「死」と「生きること」について、これほど穏やかで明るい気持ちで向き合ったことがあっただろうかと考えていました。
この陽気な墓地は、単なる珍しい観光地ではありません。ここは人生の喜怒哀楽すべてを受け入れ、祝福する場所であり、故人の欠点や失敗さえも愛おしい物語として語り継がれる、壮大なコミュニティの記録なのです。
墓標に刻まれた詩を一つひとつ読み解くたびに、見知らぬ村人たちの人生がまるで映画のワンシーンのように心の中へ流れ込んできます。彼らの物語に笑い、時に胸を熱くしながら気づかされるのは、完璧な人生など存在せず、不器用で間違いだらけでも、一日一日を懸命に生きた積み重ねこそが、その人だけの美しい物語になるということです。
この旅は、私のマインドフルネスの見方にも新たな光を投げかけてくれました。「いま、この瞬間」を大切に生きることはもちろんですが、それと同じくらい、過去の自分を許し愛すること、そして未来に訪れる「死」を過度に恐れるのではなく、それもまた自分自身の物語の一つの終章として、穏やかに受け入れる強さが必要だと教えてくれたのです。
サプンツァ村の人々は、この考え方を日常の暮らしの中で、ごく自然に体現しているのかもしれません。
過去を笑い、今を慈しみ、未来を恐れない。 そんな生き方のヒントが、この青い墓標の森には確かに存在していました。
もしあなたが日々の喧騒に少し心疲れていたり、人生の意味に思いを巡らせることがあれば、次の旅先として、この世界で最も陽気な墓地へ赴き、自分だけの人生賛歌を見つけに出かけてみてはいかがでしょうか。きっとそこには、あなたの心を少しだけ軽くしてくれる温かい笑顔が待っているはずです。

