2026年、旅行業界ではAIが旅程作成から決済まで自律的に行う「エージェンティックAI」へと劇的に進化しました。GoogleやBooking.comなどの大手プラットフォームが生成AIを実装し、対話形式でシームレスに予約を完結できる新しい顧客体験が定着しつつあります。旅行者の半数以上が既にAIを利用し、約75%が今後も利用したいと回答するなど、消費者行動は急速に変化。業界はAIモデルへの情報提供やパーソナライゼーション強化が急務であり、対応が今後の競争優位を左右すると予測されます。
生成AIが再定義する旅行計画の新たなスタンダード
2026年現在、旅行業界における人工知能(AI)の活用は単なる情報収集の補助ツールから、旅程の作成から決済までを自律的に実行する「エージェンティックAI」へと劇的な進化を遂げています。これまで旅行者は複数のサイトを巡回してフライトやホテルを比較検討していましたが、検索エンジンやOTA(オンライン旅行会社)の大手各社が相次いで高度な生成AI機能を実装したことで、対話形式でシームレスに予約を完結できる新しい顧客体験が定着しつつあります。
大手プラットフォームの最新動向
Google:検索の「AIモード」に直接予約機能を本格実装
Googleは2026年8月下旬、Google検索の「AIモード」における旅行関連機能を大幅にアップデートし、米国での試験運用を経て本格的な展開を開始しました。新たな機能では、ユーザーが自然言語で希望の旅行を伝えるだけで、航空券の価格追跡、マイルやポイント利用時の換算、そしてホテルの直接手配が可能となっています。マリオットなどの大手ホテルチェーンに加え、Booking.comやExpediaなどのOTAとも連携しており、ユーザーはAIとの対話を途切れさせることなく予約プロセスを完了できます。
Booking.com:ChatGPTとの強力な連携とサービス領域の拡大
Booking.comは、OpenAIのChatGPTとの統合を一段と深めています。自社アプリ内でのAIトリッププランナーの提供にとどまらず、ChatGPT内で直接動作するアプリとして機能を提供しています。さらに2026年5月にはレンタカー予約にもAIアシスタントを導入し、複雑な利用条件の確認から予約管理、カスタマーサポートに至るまで、24時間体制でAIが旅行者をアシストする仕組みを構築しました。
Expedia:AI専用ブラウザの投入とB2B展開
Expediaは「検索して比較する」という従来のパラダイムから「対話して確定する」というアプローチへ事業の軸足を移しています。同社が開発したAI搭載の旅行専用ブラウザ「Comet」は、自然言語での曖昧なリクエストから瞬時に旅程の提案と予約リンクを生成します。さらに2026年5月にはB2B向けのAIツールキットも発表しており、提携先の企業が自社サービス内にExpediaの高度なAI旅行体験を容易に組み込めるインフラ構築を進めています。
データが示す旅行者のAIシフト
消費者の行動変化は、業界の予想を上回るスピードで進行しています。2026年8月に発表されたMindtripやMMGY Travel Intelligenceなどの共同調査によると、すでに旅行者の54%が旅行計画にAIを利用した経験を持っています。さらに、今後の旅行でAIを利用したいと回答した割合は75%に達しました。
特に若い世代での普及が顕著であり、ミレニアル世代の69%、Z世代の63%が「ソーシャルメディアと同じ頻度でAIアシスタントを旅行計画に利用している」と回答しています。また、AIの提案によって実際に旅行先を変更したと答えた旅行者も29%にのぼり、AIが単なる予約手配にとどまらず、旅行のインスピレーションや意思決定そのものに強い影響力を持ち始めていることがわかります。
予測される未来と旅行業界への影響
この急速なAIシフトは、旅行業界全体のデジタル戦略にパラダイムシフトを迫っています。
第一に、顧客接点と集客戦略の変化です。旅行者が従来の旅行サイトを直接訪問せず、AIチャットボットやAIアシスタント上で旅行計画を完結させるようになれば、自社サイトへの直接流入は減少する可能性があります。航空会社やホテル、地域をPRするDMO(観光地域づくり法人)は、自社の一次情報や独自コンテンツをいかにして主要なAIモデルに正確に読み込ませ、推奨候補として提示させるかという新たな最適化対応が急務となります。
第二に、パーソナライゼーションの高度化です。これからのAIは、ユーザーの過去の旅行履歴、予算感、アレルギー情報、好みの座席などを総合的に記憶・分析し、専属のコンシェルジュのように先回りして最適な提案を行うようになります。
一方で、前述の調査ではDMOのうちAIを活用した旅行計画機能を提供しているのはわずか22%、明確なAI戦略を持っている組織は26%にとどまるなど、受け入れ側である業界の対応遅れも浮き彫りになっています。旅行者の約75%がAI利用に意欲を示す今、最新技術をいち早く自社の顧客体験に統合し、独自のデータ連携を構築できる企業が、今後の国際旅行市場において圧倒的な競争優位性を確立していくと予測されます。

