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    心と魂を洗い流す、聖なる水の奇跡。バリ島ウブド、ティルタ・エンプルで沐浴体験

    日常という名の戦場で、知らず知らずのうちに心に蓄積されていく見えない澱。都会の喧騒、鳴り止まない通知音、そして複雑に絡み合う人間関係。サバイバルゲームでジャングルを駆け抜けるような刺激的な非日常を求める一方で、私の魂の奥底では、静寂と浄化を渇望していました。そんな想いを抱えて降り立ったのが、神々の島、バリ。数ある聖地の中でも、特に私の心を捉えて離さなかったのが、ウブドの北東に位置するティルタ・エンプル寺院でした。「聖なる泉」をその名に冠するこの場所には、心身を清め、魂を洗い流すと言われる聖水が、千年以上もの間、絶え間なく湧き出しているといいます。それは、単なる観光ではない、自己の内面と深く向き合うための巡礼。今回は、この神秘的なティルタ・エンプルでの沐浴体験を、その歴史や作法、そして私が聖なる水から受け取った感覚のすべてを、余すところなくお伝えしたいと思います。この旅が、あなたの心を解き放つ一助となれば幸いです。

    バリ島での内面への旅をさらに深めたい方には、ティルタ・エンプルでの神秘的な沐浴体験について詳しくまとめた記事もご覧ください。

    目次

    ティルタ・エンプルとは? 聖なる泉が湧き出る、神々の伝説が息づく場所

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    バリ島の中心地である芸術と文化の村ウブドから車で北東へ約30分進むと、緑豊かな渓谷に囲まれた静寂の中にティルタ・エンプル寺院が姿を現します。ここはただ美しいだけの寺院ではありません。バリ・ヒンドゥー教徒にとって最も神聖な聖地のひとつであり、その中心には今なお絶え間なく聖水が湧き出る泉が存在します。訪れる人は、その歴史の深さと空間に漂う神聖なエネルギーに触れ、自然と背筋が伸びることでしょう。

    寺院の歴史と伝承

    ティルタ・エンプル寺院の創建は西暦962年にまで遡るとされています。ワルマデワ王朝の時代に建立されたこの寺院は、バリ・ヒンドゥーの神話に基づいた壮大な伝説とともに語り継がれています。

    その物語は、善と悪の対立から始まります。かつてバリ島を支配していたマヤ・デナワという強力な魔王は、自らを神と称し、人々に神々の崇拝を禁じて圧政を敷いていました。この暴政に嘆いた神々は、雷と嵐の神インドラを天から遣わし、マヤ・デナワを討伐させようと試みます。

    激闘の末、劣勢に追い込まれたマヤ・デナワ王は夜の闇にまぎれて、インドラ神の軍が眠る野営地に忍び込み、毒を湧き出させる泉を作りました。翌朝、その泉の水を飲んだ兵士たちは次々と倒れてしまいます。

    部下の窮状を目の当たりにしたインドラ神は、大地に杖を突き立てました。するとその場所から生命力あふれる聖なる水、「アムリタ」と呼ばれる不老不死の水が湧き出したのです。インドラ神は聖水を兵士たちに与え、彼らを蘇らせて再び力を取り戻させ、最終的にマヤ・デナワ王を打ち破りました。

    このときインドラ神によって生み出された聖なる泉こそが、「ティルタ・エンプル」の始まりと伝えられています。「ティルタ」は聖水、「エンプル」は湧き出るという意味を持ち、この名称はまさにこの伝説の象徴なのです。この物語は単なる神話に留まらず、善が悪を制し、穢れを清める聖なる水の力を示す象徴として、今もなおバリの人々の心に深く刻み込まれています。

    バリ・ヒンドゥー教におけるティルタ・エンプルの役割

    バリ・ヒンドゥー教において「ティルタ(聖水)」は、あらゆる宗教儀式に欠かせない重要な要素です。寺院での祈りや人生の節目に行う儀式、さらには日々の浄化に至るまで、聖水は神と人間、そして自然界を結ぶ神聖な媒介とされています。

    中でもティルタ・エンプルの泉から湧き出る聖水は、バリ島全土で最も神聖な水と位置づけられ、その特別な力が信じられています。重要な儀式の際、多くの寺院がわざわざこの地まで聖水を汲みに訪れるほどです。

    この寺院で最も重要な儀式は、「ムルカット」と呼ばれる沐浴による浄化の行為です。ムルカットは身体の汚れだけでなく、精神的な穢れや不運、悪影響、心の迷いを洗い流し、魂を本来の清らかな状態へと戻すための儀式として行われます。病気の回復や人生の新たなスタートを迎える前に、多くのバリ・ヒンドゥー教徒がこの寺院を訪れ、祈りを捧げながら沐浴をします。

    近年ではこの聖なる場のスピリチュアルな力に惹かれ、世界中から観光客も多数訪れるようになりました。ただし、この場所は何より神聖な祈りの場であることに変わりありません。訪問者も単なる観光地としてではなく、バリの人々の信仰と文化に敬意を払い、その神聖な空気を肌で感じつつ、静かにその空間に身をゆだねることが求められています。

    スポット情報詳細
    名称ティルタ・エンプル寺院 (Pura Tirta Empul)
    所在地Jl. Tirta, Manukaya, Tampaksiring, Kabupaten Gianyar, Bali 80552, Indonesia
    創建年西暦962年
    宗教バリ・ヒンドゥー教
    主な儀式ムルカット(沐浴による浄化)
    営業時間8:00~18:00(宗教行事により変更の可能性あり)
    入場料大人 50,000ルピア、子供 25,000ルピア(2024年時点、変動の可能性あり)

    聖なる沐浴体験への誘い – 準備から心構えまで

    ティルタ・エンプルでの沐浴は、単なる水浴びとは全く異なり、神聖な儀式に参加するという厳かな体験です。そのためには、事前に知っておくべき作法や準備、そして何よりも敬虔な心構えが欠かせません。最高の体験を味わうために、私が現地で学び感じ取ったことを具体的にお伝えします。

    訪問前に心得ておきたいこと

    ティルタ・エンプルは現役の祈りの場として機能しています。訪れる際は、現地の文化や宗教に対して深い敬意を示すことが求められます。特に以下のポイントは忘れずにご注意ください。

    • 適切な服装について

    寺院の敷地内に入るには、肌の露出を控えた服装が求められ、肩と膝を覆うことが最低限のマナーです。Tシャツは許容されますが、タンクトップやショートパンツ、ミニスカートなどは避けましょう。万が一服装が適切でなくても、入口で無料のサロン(腰布)やスレンダン(腰帯)を借りて着用することができますので安心してください。

    • 生理中の女性の扱いについて

    バリ・ヒンドゥーの教えでは、血液を「スンブッル(不浄)」とされているため、生理中の女性は寺院の神聖な区域、特に沐浴場への立ち入りが固く禁じられています。これは差別的意図ではなく、神聖な場所の清浄さを保つための宗教的な重要規則です。文化的背景を理解し、敬意を持って尊重してください。同様に出血を伴う怪我がある場合も、沐浴は控えるべきとされています。

    • 持ち物リスト

    沐浴を体験する際に用意しておくと便利なものはこちらです。

    • 着替え一式: 沐浴後は全身が濡れるため、下着も含め替えの服を持参しましょう。
    • タオル: 体を拭くためのタオルは、速乾性のあるものが特におすすめです。
    • 防水バッグやビニール袋: 濡れた衣服やタオルを入れるために必要です。
    • スマートフォン用の防水ケース: 神聖な雰囲気を写真に収めたい場合は欠かせません。
    • 少額の現金: ロッカー利用料(任意)、お供え物購入、沐浴後の飲み物代などに使えます。

    沐浴の作法と手順 — 敬意を込めて聖なる水と対峙する

    寺院に到着し沐浴を終えるまでには、一連の決まった流れと作法が存在します。これを理解しているかどうかで、体験の深みが大きく変わるため、以下の手順に沿って心を込めて儀式に臨んでみてください。

    • 寺院入場と祈り

    まずチケットを購入し、サロンとスレンダンを身に着けて敷地内に入ります。沐浴を希望する場合は、観光客の多くが直接ロッカールームへ向かいがちですが、正しい作法ではまず寺院の内院(ジュロアン)に赴き、沐浴を許していただくことへの感謝を神に祈るのが丁寧な流れです。地元の人々に倣い、静かに手を合わせましょう。

    • チャナン(お供え物)

    寺院の入り口近くでは、ヤシの葉で作られた小皿に花や線香をのせた「チャナン」と呼ばれるお供え物が販売されています。必須ではありませんが、これを購入し祈りを捧げることでバリの文化により深く触れられます。チャナンを祭壇に供え、線香の煙で祈りを天に届け、聖水を頭に数滴かけてもらう儀式が心を清め、沐浴の準備を整えます。

    • ロッカールームと着替え

    祈りを終えたら、沐浴場の手前にあるロッカールームへ向かいます。ロッカーは有料(約15,000~20,000ルピア)ですが、貴重品の管理に役立ちます。ここで水着に着替えるのではなく、沐浴用の緑色のサロンをレンタル(約10,000ルピア)し、下着の上から巻いて身に着けます。男女別の簡易更衣室があるため、そこで着替えを済ませましょう。

    準備が整ったら、濡れても問題ないサロンをまとい、タオルや防水ケースに入れたスマートフォンだけを持って、いよいよ聖なる水の待つ沐浴場へ進みます。冷たい石の床の感触が、これから始まる特別な体験への期待感とわずかな緊張を高めてくれるでしょう。

    いざ、聖なる泉へ – 心身を浄化する沐浴の全記録

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    沐浴用のサロンを腰にきつく巻き直し、深く一度呼吸を整えた。目の前には、エメラルドグリーンに輝く長方形の沐浴場が広がっていた。石壁に彫られた複数の吐水口からは、絶え間なく聖なる水が流れ落ち、その清らかな水音が周囲の空気を優しく震わせている。すでに多くの人々が、国籍や年齢、肌の色を問わず静かに水の中に佇み、ひたむきに祈りを捧げていた。その様子は単なる宗教儀式というよりも、人間が根源的に求める「清め」の普遍的な姿を映し出しているように感じられた。アマゾンの奥地で感じた大自然への畏怖とは異なり、この場所には人間の信仰が生み出す神聖なエネルギーが満ちあふれていた。

    最初の沐浴場 – 過去を洗い流す聖なる水の流れ

    ティルタ・エンプルの沐浴場は、大きく二つに分かれている。私が最初に訪れたのは、向かって左側に位置する広く、多くの吐水口が並ぶ沐浴場だった。ここでの浄化は、左端から順に右へと進むのが決まりと聞いていた。

    石の階段をゆっくりと降り、水に足を踏み入れた瞬間、ひんやりとした清涼な感触が体中に広がった。バリの熱帯で火照った肌には心地よく、それでいて心が引き締まるような冷たさだ。水底の石は苔で少し滑りやすく、一歩一歩、慎重に足元を確かめながら進む。

    最初の吐水口の前に立ち、周囲のバリの人々の動作を真似た。まず両手を合わせ、静かに目を閉じ心のなかで祈りを捧げる。祈る内容は人それぞれだが、私は日々の生活で積もったネガティブな感情や過去の後悔が洗い流されることを願った。そして流れ落ちる水の下に頭を差し出す。水が頭頂を打ち、肩や背中へと伝う感触は、まるで心の澱を物理的に洗い流してくれているかのようだった。

    作法では、吐水口の水を両手ですくい、まず3回飲む。土の香りが漂う澄んだ天然水だ。続いてその水で顔を3度洗う。最後に頭全体を3回浸し、浄化を完了させる。この一連の作法を各吐水口で繰り返すのだ。

    列に並び、一つずつ吐水口を移動しながら浄化を進めていく。それぞれの吐水口には異なる意味や効力があると信じられており、人々はそれぞれの願いに合わせて祈りを捧げているようだった。興味深かったのは、すべての吐水口で沐浴をするわけではなく、途中に2か所、沐浴をせずに飛ばされる吐水口があったことだ。ガイドに尋ねると、これらは亡くなった方のためや特別な儀式用に用いられており、通常の浄化には使わないとのことだった。このようなルールを知らずにいると、知らず知らずのうちにマナー違反をしてしまう恐れがあるため、現地の人々の動きをよく観察する重要性を実感した。

    水の中で過ごす時間が増すにつれ、不思議な感覚に包まれていった。頭の中を支配していた雑念が、水の流れる音にかき消されていくように感じた。過去の失敗や人間関係の悩み、未来への不安といった思いが、流れ落ちる水とともに自分の身体から溶け出し、流れ去っていくような心地よい解放感。それは、戦いに突っ込むときの興奮とは対照的な、静かで深い浄化の体験だった。

    第二の沐浴場 – 現在を見つめ、未来へ向け祈りを捧げる

    最初の沐浴場で十数か所の吐水口での浄化を終えた後、隣にある二つ目の沐浴場へと向かった。こちらは規模こそ小さいが、より穏やかで瞑想的な雰囲気が漂っていた。ここでの沐浴は、現在と未来に意識を向けた浄化であり、ポジティブなエネルギーを身体に取り込むためだとされている。

    作法は先ほどと同様だ。吐水口の前で祈りを捧げ、聖なる水を体に受ける。過去のネガティブなものを洗い流した後だからだろうか、こちらの水は優しく温かみを感じさせた。もちろん水温が変わるわけではないが、心が軽やかになったことで、水の受け止め方が変化したのだろう。

    ここではこれからの自分の人生を静かに思い描いた。健康であることへの感謝、家族や友人との絆、そして新たな挑戦に向かう勇気。具体的な願いというよりも、自分がより良い方向に歩めるようにと願う、抽象的でありながらも切実な祈りだ。

    隣で沐浴していた老婦人が、目を閉じて静かに穏やかな微笑みを浮かべているのを見かけた。その表情は深い安らぎと喜びに満ちていた。また別の場所では、若いカップルが互いの健康を祈り合っている様子だった。ここでは誰もが素直な心で自分や大切な人のために祈りを捧げている。内気な私も、この神聖な水の流れのなかでだけは、自分の内なる声に正直になれる気がした。言葉にしなくとも、祈りは水を通して天に届くという確信が、胸の奥から湧き上がってきたのだ。

    沐浴を終えて – 新たに生まれ変わったような感覚

    すべての吐水口での沐浴を終えて水から上がったときの感覚は、今も鮮明に覚えている。全身ずぶ濡れで少し肌寒いはずなのに、なぜか体の芯からぽかぽかと温かなエネルギーが湧き上がるようだった。そして何よりも、心身が驚くほど軽やかだ。まるで長年背負ってきた重い荷物をようやく下ろせたかのようだった。視界が澄み渡り、周囲の緑や寺院の石像がいつもより鮮やかに映った。

    更衣室で乾いた服に着替えると、その爽快感はさらに増した。心も体もリフレッシュされ、「生まれ変わった」と感じるのにふさわしい瞬間だった。寺院の出口近くにあるワルン(小さな食堂)で温かいバリ・コーヒーを一杯注文し、湯気越しに緑豊かな境内を眺めながら、さきほどの体験をゆっくりと反芻した。あれは単なる冷水浴ではなく、千年の時を超えて湧き続ける聖なる水と、人々の祈りが織りなすエネルギーフィールドに身を浸す、魂の洗濯だったのだと、改めて実感したのだった。

    ティルタ・エンプルの沐浴場以外の見どころ

    ティルタ・エンプル寺院の魅力は、沐浴体験に留まりません。清らかな心で浄化を終えた後、境内をゆったりと歩くと、バリ・ヒンドゥー独特の宇宙観と芸術性が融合した美しい風景に出合えます。沐浴の前後に時間をとって、ぜひ寺院全体をじっくり味わってみてください。

    荘厳な割れ門と内院の建築美

    ティルタ・エンプルは、いくつかのエリア(マンダラ)に分かれて構成されています。外苑(ジャバ・ピサン)から中庭(ジャバ・トゥンガ)、そして最も神聖とされる内院(ジュロアン)へ進むほど、空気はますます清らかで神々しいものになります。

    中でも特に目を引くのが、「チャンディ・ブンタル」と呼ばれる、中央で二つに割れた壮大な門です。これは善と悪、陽と陰といった二元的な宇宙観を象徴しているとされ、この門をくぐることは俗世から神聖な領域へと足を踏み入れることを意味します。門に施された繊細かつ力強い彫刻は、訪れる者を圧倒するほどの迫力を放っています。

    内院に足を踏み入れると、「メル」と呼ばれる多重塔や、伝統的な茅葺屋根を持つバレ(東屋)が多数目に入ります。儀式の際には音楽を奏でる「バレ・ゴング」や、村人に時を知らせるための鐘楼「クルクル」など、それぞれの建物には明確な役割と意味があります。何世紀にもわたり人々の祈りを受け止めてきた柱や壁には、時間が創り出した深い風格が漂い、その場に立つだけで心が静かに落ち着いていくのを感じられるでしょう。

    聖なる泉が湧き出る源泉

    沐浴場のすぐそばには、寺院の心臓部とも言える、聖水が湧き出す源泉を見ることができる特別な場所があります。澄んだ池の底からは黒い砂が舞い上がりながら、力強く絶え間なく水が湧き出しています。その風景はまるで地球の生命エネルギーが視覚化されたかのようで、神秘的という言葉を超えた感動を覚えます。

    千年以上もの間、絶えることなく湧き続けてきたこの源泉に対して、自然の偉大さへの畏敬の念が湧いてきます。この泉は、インドラ神が杖を突き立てたとされる場所だと想像すると、神話と現実が繋がっているかのように感じられます。源泉の周囲はとりわけ神聖視されており、そのエネルギーを静かに感じ取ることに集中してみてください。池の水面に触れることは禁じられていますが、そのすぐそばに立つだけで、清らかな力が伝わってくるようです。

    鯉が泳ぐ池と緑豊かな庭園

    沐浴と寺院参拝を終えたら、出口へ向かう途中にある広大な池と庭園で一息つくことをおすすめします。この池には、多彩な色彩の大きな鯉が悠然と泳ぎ、その様子は訪れる人々の心を和ませてくれます。近くの売店では鯉の餌を購入して与えることも可能です。

    池の周りは手入れの行き届いた熱帯植物に囲まれており、沐浴で浄化された心身を落ち着かせるのに最適な環境です。木陰のベンチに腰かけ、優雅に泳ぐ鯉や緑豊かな景観を眺めながら、ティルタ・エンプルでの体験をゆっくり振り返る時間も、この巡礼の大切なひとときとなります。丘の上には、かつてインドネシア初代大統領スカルノが賓客をもてなす目的で建てた別荘(現在は政府所有)が見え、寺院の歴史の別の側面を垣間見ることもできます。

    ティルタ・エンプルを訪れる際の注意点とマナー

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    ティルタ・エンプルでの体験を誰もが忘れられない素晴らしいものにするためには、訪れるすべての人が現地の文化や宗教を重んじ、適切なマナーを守ることが不可欠です。この場所は神聖な祈りの場であることを常に意識し、敬意を持って行動しましょう。ここで改めて重要なポイントを整理します。

    服装のルールの確認

    寺院の敷地内では、肩と膝を必ず覆う服装を心掛けてください。これは参拝者としての最低限のマナーとなります。入場時にサロンを借りることも可能ですが、特に女性の場合、下にショートパンツなどを着用していると、沐浴後の着替えで不便を感じることがあります。できれば最初からロングスカートやゆったりしたパンツなど、肌の露出を抑えた服装で訪れるのがおすすめです。沐浴の際は、水着ではなくレンタル可能な専用のサロンを身に付けるのが正式な作法です。

    宗教施設としての敬意を払う

    境内では常に静粛に行動してください。大声での会話や走り回る行為は禁じられています。特に沐浴場や内院など、熱心に祈りを捧げる方々が集まる場所では、神聖な雰囲気を損なわないよう細心の注意が必要です。ほかの参拝者の迷惑にならないように静かに順番を待ち、自分の番を尊重しましょう。現地のバリ・ヒンドゥー教徒は訪問者を温かく受け入れていますが、それは私たちが彼らの信仰に敬意を示すことが前提となっています。

    写真撮影のマナーについて

    美しい寺院や儀式の様子を撮りたい気持ちは理解できますが、撮影にもルールがあります。祈っている人を無断で、とくに正面から撮影することは非常に無礼です。撮影する場合は必ず本人の許可を得るか、周囲に迷惑をかけないよう遠くから雰囲気を捉える程度にとどめましょう。また、多くの寺院でフラッシュ撮影は禁止されています。内院など特に神聖な場所では撮影自体が制限されていることもあるため、現地の指示に注意してください。何より、カメラ越しに夢中になるのではなく、まずは自身の目でその場の空気を感じ、心に刻むことを大切にしましょう。

    生理中の女性に関する規則

    前述の通り、バリ・ヒンドゥー教の教えにより、生理中の女性は寺院の神聖な区域、特に沐浴場や内院への立ち入りが禁じられています。これは差別ではなく、神聖な場所のエネルギーを清めるための重要な宗教的・文化的ルールです。該当する場合は決して無理に入ろうとせず、外から寺院の雰囲気を楽しむにとどめてください。こうした規則を尊重することが、バリ文化への深い理解と敬意の表れとなります。

    沐浴の作法を大切に

    沐浴は神々とつながるための神聖な儀式であり、単なる水遊びや観光のアトラクションではありません。現地の人々のやり方をよく観察し、その動作を真似ることが大切です。祈りの作法や水のかけ方など細かいルールがありますので、不安があれば現地の公認ガイドを利用するのも良いでしょう。彼らは作法や寺院の歴史について詳しく説明してくれるため、より深く、正しい形で儀式に参加することができます。

    ティルタ・エンプル周辺のおすすめスポットとアクセス

    ティルタ・エンプルはウブドからの日帰り旅行に最適なスポットですが、その周辺にも魅力的な名所が点在しています。せっかく訪れるなら、これらのスポットを組み合わせて一日のプランを立てると、バリ島中部での体験がより豊かになるでしょう。

    アクセス方法

    ウブド中心部からティルタ・エンプル寺院までは、約15km、車で30分から40分ほどかかります。主な移動手段は以下のとおりです。

    • チャーターカー

    最も快適かつ効率的な手段です。半日(4〜6時間)や一日(8〜10時間)単位で車とドライバーを貸し切れます。料金は交渉次第ですが、半日で40万〜60万ルピア前後が目安です。ドライバーは簡単な案内役も兼ねることが多く、荷物を車内に置けるので、沐浴時も安心して利用できます。複数の観光スポットを自由に回りたい方におすすめです。

    • バイクタクシー(Gojek/Grab)

    一人旅や気軽な移動に便利です。配車アプリで簡単に行き先指定ができ、料金も明快です。ウブドからの片道は5万〜8万ルピア程度が目安。ただし、沐浴後の濡れた体で乗ることや、帰りの車をすぐ手配できるかどうかは考慮が必要です。

    • スクーターレンタル

    バリの道路に慣れている方なら、自分でスクーターを運転して行くのも自由度が高く、最も経済的な方法です。ただし、交通量が多く路線も複雑なため、海外での運転に不安がある方にはおすすめできません。国際運転免許証の携帯もお忘れなく。

    周辺の観光スポット

    ティルタ・エンプル訪問と併せて訪れたい、近隣のおすすめスポットをいくつかご紹介します。

    • グヌン・カウィ (Gunung Kawi)

    ティルタ・エンプルから車で約5分の場所にある古代王家の霊廟です。緑豊かな渓谷沿いに立地し、巨大な石造のチャンディ(記念碑)が圧巻です。美しい田園風景を望みながら階段を下るアプローチも魅力的で、まるで探検気分を味わえます。

    • テガララン・ライステラス (Tegalalang Rice Terrace)

    ウブド観光の目玉の一つであり、世界遺産にも登録された美しい棚田です。ティルタ・エンプルからウブドへ戻る途中に立ち寄るのにちょうど良い場所。壮大な緑のグラデーションは絶景で、散策やブランコ、ジップラインなどのアクティビティ、または景色の良いカフェでの休憩も楽しめます。

    • ゴア・ガジャ (Goa Gajah)

    「象の洞窟」として知られる11世紀ごろの古代遺跡です。入り口の岩に彫られた大きな顔のレリーフが強い印象を残します。洞窟内はヒンドゥー教と仏教の神々が祀られており、バリの宗教的歴史の深さが感じられます。境内には沐浴場や美しい庭園も広がっています。

    食事処やカフェ

    このエリアには、美しい自然を眺めながら食事や休憩が楽しめる素敵なスポットが豊富にあります。

    • 寺院周辺のワルン

    ティルタ・エンプルの出口近くには、ナシゴレンやミーゴレンなどのインドネシアのローカルフードをリーズナブルに味わえるワルンが軒を連ねています。沐浴で冷えた体に、温かい食事がほっと染み渡るでしょう。

    • テガラランのカフェ

    ライステラスを見下ろす崖沿いには、絶景を誇るカフェやレストランが数多くあります。風光明媚な景色を眺めながら、フレッシュジュースやバリコーヒーで一息入れるのは格別のひとときです。

    • Tampaksiring Kitchen & Bar

    ティルタ・エンプルから比較的近く、田園風景を望む開放的なレストランです。伝統的なインドネシア料理から西洋料理まで幅広いメニューが揃っており、落ち着いた雰囲気の中で食事を楽しめます。

    聖なる水が教えてくれたこと – 旅の終わりに

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    ティルタ・エンプルの聖なる泉を出たとき、私は確かに何かが変わったのを感じました。それは劇的な変化ではなく、むしろ本来の自分に戻ったというような感覚でした。日々の暮らしの中で、私たちはどれほど多くの不要な鎧をまとっているのでしょうか。人の評価や社会的役割、過去の記憶や未来への不安。聖なる水は、それらの重荷を一枚ずつ優しく剥がし、洗い流してくれたかのように感じられました。

    この体験は、私がこれまでに味わったどの旅とも明らかに異なりました。アマゾンのジャングルで直面したのは、外界の過酷な自然環境でした。そこで求められたのは、生き抜くために研ぎ澄まされた五感の感受性でした。しかしティルタ・エンプルで向き合ったのは、自分自身の内面の世界。ここでは心を静め、内なる声に耳を傾ける感性が試されたと言えます。

    水の中で祈る人々に囲まれているとき、国籍や宗教、文化といった壁がどれほど表面的なものかを深く実感しました。誰もが幸せを願い、苦しみからの解放を求め、より良い自分でありたいと祈っている。その根源的な願いの姿は、あまりにも純粋で美しいものでした。普段は人見知りで、女の子の前では少し恥ずかしがり屋の私も、そこでは何の気兼ねもなく、素直な心で祈りに没頭することができました。聖なる水には、私たちの心をありのままに、無防備に、そして純粋にしてくれる力があるのかもしれません。

    日常に戻れば、また新たな悩みやストレスがやってくるでしょう。しかし私の内側には、ティルタ・エンプルで得たあの静かで澄んだ感覚が確かに残っています。心が曇りそうになったとき、私はあの水の冷たさと耳元で響いていた清らかな音を思い出すことができます。そして、自分の中にある聖なる泉へと立ち返り、心を洗い清めることができるでしょう。

    もしあなたがバリ島を訪れる機会があれば、ぜひティルタ・エンプルに足を運んでみてください。それは単なる観光地巡りの一環ではありません。自分自身の魂と対話し、心身をリセットするためのかけがえのない巡礼体験となるはずです。千年の時を超えて湧き続ける聖なる水は、きっと優しくあなたを包み込み、新たな一歩を踏み出す力を与えてくれるでしょう。

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    この記事を書いた人

    未踏の地を求める旅人、Markです。アマゾンの奥地など、極限環境でのサバイバル経験をもとに、スリリングな旅の記録をお届けします。普通の旅行では味わえない、冒険の世界へご案内します!

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