東南アジアを代表する観光大国タイが、2025年に大きな試練を迎えるかもしれません。最新の予測によると、2025年のタイへの外国人旅行者数は、2024年の見込みである3,980万人から約7%減少し、3,670万人に落ち込む可能性があると報告されています。観光収入も2兆3,800億バーツから1兆9,900億バーツへと大幅な減少が見込まれており、タイ経済への影響が懸念されます。
主要市場からの旅行者が軒並み減少
この予測の背景には、タイにとって重要な主要市場からの旅行者数の減少があります。特に落ち込みが著しいと予測される国は以下の通りです。
- アメリカ: 16%減
- 中国: 12%減
- 韓国: 10%減
- インド: 8%減
- ロシア: 5%減
- マレーシア: 4%減
これまでタイの観光業を力強く牽引してきたこれらの国々からの旅行者が同時に減少することは、業界にとって大きな打撃となります。特に、パンデミックからの回復の鍵を握ると期待されていた中国人旅行者の減少予測は、タイの観光戦略に再考を迫るものとなりそうです。
なぜ旅行者はタイから遠のくのか？
今回の減少予測には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
世界経済の不確実性と旅行トレンドの変化
米中をはじめとする世界経済の不確実性は、人々の旅行意欲に直接影響を与えます。特に長距離旅行となる欧米からの観光客は、経済的な懸念から旅行の予算や期間を縮小する傾向にあります。
また、旅行者の嗜好も変化しており、より近距離で短期間、かつ費用を抑えた旅行が好まれるようになっています。このトレンドは、同じ東南アジア地域内のベトナムやマレーシアといった競合国に有利に働く可能性があります。これらの国々は独自の観光資源とコストパフォーマンスを武器に、タイからの観光客獲得を狙っています。
タイが抱える国内の課題
国外の要因だけでなく、タイ国内にも課題が存在します。過去に報告された観光客を狙った犯罪などによる安全性への懸念や、一部の観光地におけるインフラ整備の遅れは、旅行先の選択においてマイナス要因となり得ます。旅行体験の質を高め、安全な環境を提供し続けることが、これまで以上に重要になっています。
今後の影響とタイ観光業の未来
観光業は、タイのGDPの約2割（パンデミック前）を占める基幹産業です。今回の予測通りに観光客と収入が減少すれば、ホテル、航空会社、レストラン、小売業など、幅広い分野で深刻な影響が出る可能性があります。
この厳しい見通しを受け、タイ政府および観光業界は、新たな対策を講じる必要に迫られるでしょう。
- 新たな市場の開拓: 従来の主要市場への依存を減らし、中東や東ヨーロッパなど、新たな市場からの観光客誘致を強化する動きが加速する可能性があります。
- 付加価値の高い観光の推進: 単純な価格競争から脱却し、ウェルネス、医療ツーリズム、サステナブルな観光など、付加価値の高い体験を提供することで、客単価の向上を目指す戦略が求められます。
- 国内観光の促進: 外国人観光客の落ち込みを補うため、タイ国民向けの国内旅行キャンペーンがより一層強化されることも考えられます。
タイの観光業は今、大きな転換期を迎えています。旅行者にとっては、今後のタイ政府の対応やプロモーション次第で、これまでとは違った魅力に触れるチャンスが生まれるかもしれません。今後の動向に注目が集まります。
