旅行のスタイルが「見る」から「体験する」へと大きくシフトする現代、ホテル業界に新たな成功方程式が生まれています。タイで行われた調査では、驚くべきことに92%ものホテルが「ローカライズ戦略」によって宿泊客一人当たりの支出増を達成したと報告されました。一方で、グローバルな展開も加速しており、タイ発のマイナー・ホテルズは「アヴァ二」ブランドをオーストラリアへ初進出させることを発表。
一見、逆方向にも見える「ローカライズ」と「グローバル化」。この二つの潮流から、これからの旅行とホテルの未来を読み解きます。
地域に深く根ざす「ローカライズ戦略」の絶大な効果
なぜ今、ローカライズなのか?
最近のタイのホテル業界の調査で、実に92%のホテルが、地域文化に根ざした体験の提供といったローカライズ戦略によって、ゲスト一人当たりの支出が増加したと回答しました。これは、旅行者が単に快適なベッドや豪華な食事を求めるだけでなく、その土地でしかできない「本物の体験」に価値を見出し、お金を払うようになったことの明確な証拠です。
パンデミックを経て、人々は旅の意味を再定義し始めました。SNSで誰もが訪れる名所を巡るだけでなく、地域のコミュニティと触れ合い、文化を深く理解するような、よりパーソナルで記憶に残る旅が求められています。
ローカライズ戦略の具体例
ホテルが実践するローカライズ戦略は多岐にわたります。
- 食文化体験: 地元の市場でシェフと一緒に食材を選び、ホテルのキッチンで伝統的なタイ料理を学ぶクッキングクラス。
- 伝統工芸との融合: 地元の職人を招いた陶芸や織物のワークショップをホテル内で開催。
- 地域コミュニティとの連携: ホテルが独自に企画する、観光地化されていない村への訪問ツアーや、マングローブの植樹といった環境保全活動への参加。
これらの体験は、宿泊客に深い満足感を与えるだけでなく、ホテルの付加価値を高め、結果として客単価の上昇に直結しているのです。
世界へ羽ばたくグローバル戦略:アヴァ二がオーストラリアへ
タイ発ブランド、オセアニア市場へ初進出
ローカルへの深耕が進む一方で、有力なホテルブランドは国境を越えた展開を加速させています。タイを拠点とするホスピタリティ企業「マイナー・ホテルズ」は、そのモダンでスタイリッシュなブランド「アヴァニ・ホテルズ&リゾーツ」を、オーストラリアのウォロンゴンに新規開業することを発表しました。
これは同ブランドにとってオーストラリア初進出となり、アジア太平洋地域におけるさらなる拡大戦略の重要な一歩と位置づけられています。これまでアジアや中東、アフリカを中心に展開してきたアヴァ二が、新たな市場でどのようなブランド体験を提供するのか、注目が集まります。
「ローカル」と「グローバル」が示す旅の未来
共通するキーワードは「特別な体験価値」
地域に密着する「ローカライズ」と、世界に展開する「グローバル化」。この二つの動きは、実は同じゴールを目指しています。それは、旅行者に「そこでしか味わえない特別な体験価値」を提供することです。
タイのホテルは、その土地の文化を深く掘り下げることでユニークな価値を創出しています。一方、アヴァ二のようなグローバルブランドは、世界中のどこにいても信頼できる品質とサービスを基盤としながら、進出先の都市の魅力を取り入れた新しい体験をデザインしていくでしょう。
これからのホテル選びの視点
このトレンドは、私たち旅行者のホテル選びにも新しい視点を与えてくれます。これからの旅では、以下の点をチェックしてみてはいかがでしょうか。
- そのホテルは、どのような地域連携プログラムや文化体験を提供しているか?
- レストランでは、地元の食材がどれくらい使われているか?
- ホテル全体が、その土地の歴史やアートをどのように表現しているか?
ホテルはもはや、単に眠るための場所ではありません。その土地の文化と世界をつなぐ「体験のハブ」へと進化しています。次の旅行では、ぜひホテルの提供する「物語」にも注目し、より深く、豊かな旅を計画してみてはいかがでしょうか。

