マリオットは、生成AIを活用した会話型検索ツール「Ask Bonvoy」のベータ版をリリースしました。
マリオット・インターナショナルは先月、生成AIを活用した新たな会話型検索ツール「Ask Bonvoy」のベータ版をリリースしました。このツールは、Marriott Bonvoyのアプリおよび公式ウェブサイト内で利用可能となっており、自然言語による質問を通じて、利用者の希望に最適なホテルや体験を提案する画期的な機能です。旅行計画の初期段階からパーソナライズされた情報を提供することで、これまで以上にシームレスな予約体験を実現します。
開発の背景と従来システムからの脱却
旅行業界では現在、テクノロジーを活用した顧客体験の向上が急務となっています。従来のホテル検索は、目的地、日付、人数などをドロップダウンメニューから選択し、価格やアメニティのフィルターを手動で適用する手間のかかるものでした。また、旅行者は旅行のインスピレーションを得るために、Googleなどの検索エンジンやChatGPTをはじめとする外部のAIツールに依存しがちです。
マリオットが「Ask Bonvoy」を導入した最大の狙いは、この「リサーチとブレインストーミング」の段階から顧客を自社エコシステム内に囲い込むことにあります。例えば「ゴシック地区から徒歩圏内で、屋上プールがあるバルセロナのホテルを探して」といった具体的な自然言語によるリクエストに対し、即座に最適な回答を提示することで、オンライン旅行代理店(OTA)や外部プラットフォームへの離脱を防ぐ狙いがあります。
独自データに基づく信頼性と具体的な機能
今回のベータ版リリースに伴い、いくつかの具体的なデータと機能の詳細が明らかになっています。
- 現在の提供範囲は米国英語のみとなっており、一部の会員と新規登録者を対象に展開されています。
- 世界中に展開する10,000軒以上のマリオット系列のプロパティから、利用者の旅行の目的(ビジネスやレジャーなど)に応じたホテルを直感的に検索できます。
- 一般的なウェブ情報を収集するオープンなAIとは異なり、マリオットが保有する検証済みの独自データのみを基盤としているため、AI特有の「ハルシネーション(事実と異なるもっともらしいウソ)」を防ぎ、ホテル設備やサービスに関する精度の高い情報を提供します。
- 全世界で約2億8300万人にのぼるBonvoy会員に向け、2026年後半には他言語への対応も含めたグローバルでの本格展開が予定されています。
- 今後のアップデートとして、ロイヤルティポイントを活用した宿泊検索機能の統合も見込まれています。
予測される旅行業界への影響と未来
「Ask Bonvoy」の導入は、今後のホテル業界全体における直販戦略の新たなベンチマークとなる可能性を秘めています。顧客の検索行動がキーワード型から対話型へと移行するなか、予約プロセスを最初から最後まで自社のアプリやウェブサイトで完結させることは、OTAへの送客手数料の大幅な削減とダイレクトブッキングの増加に直結します。
さらに、AIを通じて顧客の細かなニーズをテキストデータとして蓄積することで、ホテル側はこれまで以上に深い顧客理解を得ることができます。「愛犬と泊まりたい」「特定の景観を楽しみたい」といった詳細な要望を把握することで、到着前の段階からダイニングやスパ、周辺アクティビティのパーソナライズされた提案が可能になり、付帯収入(アップセル)の増加にも寄与するでしょう。
競合のメガチェーンも独自のテクノロジー展開を加速させており、今後は「いかに大量の宿泊施設を保有しているか」だけでなく、「いかに自社の資産から顧客の理想に合致する体験をAIで引き出し提供できるか」が、旅行者のロイヤルティを獲得するための重要な鍵となります。

