AIを悪用し、ホテルの公式サイトを偽装する「略奪的OTA」の広告が世界中で月間110万件も確認され、深刻な被害をも
ホスピタリティ向けテクノロジーソリューションを提供するOperto社は、2026年10月に発表した最新の報告書「State of Predatory OTAs 2026」において、ホテルの公式サイトを精巧に偽装して旅行者を誘導する「略奪的OTA(オンライン旅行代理店)」の広告が、世界規模で単月110万件確認されたと警告しました。AIツールを悪用した模倣サイトの大量生成が背景にあり、ホテル業界および旅行者にとって深刻な脅威となっています。
月間110万件に上る「略奪的OTA」の実態と被害規模
Operto社の調査は、2026年5月22日から6月21日までの31日間にわたるGoogle Ads Transparency Centerのデータを独自に分析したものです。このわずか1ヶ月の間に、ホテルブランドの検索キーワードを狙った略奪的広告が約110万件も検出されました。
被害は世界規模に及んでおり、影響を受けたホテルは約20万4000軒に上ります。被害に遭ったホテルは、自社ブランドの検索に対して平均3.9件の偽装広告と競合させられている状態です。特にアメリカ国内のホテルへの影響が顕著で、1軒あたり平均6.6件の略奪的広告の標的となっています。
報告書によると、検出された110万件の広告のうち、半数近くが「GuestReservations.com」という単一のウェブサイトから出稿されていました。他にも「Room77.com」や「HotelsOne.com」といったサイトが関与しており、ホテル名を無断で使用して検索結果の上位を占拠する手口が常態化しています。
AIが拍車をかける巧妙な手口と多大な代償
AI技術の進化により、正規のホテルサイトと見分けがつかないような模倣サイトや広告文の大量生成がかつてない速度で行われるようになりました。旅行者は「ホテルの公式サイトで直接予約している」と信じ込んで手続きを進めますが、実際には第三者の仲介サイトを経由させられています。
この事態は、ホテル側に複数の重大な損害をもたらしています。旅行者が直接予約したと誤認しているにもかかわらず、ホテル側は正規の直接予約であれば不要な高額の仲介マージンを搾取されます。さらに深刻な問題として、顧客データの断絶が挙げられます。偽装サイト経由での予約では、旅行者の正確なメールアドレスや連絡先がホテル側に共有されません。そのため、チェックイン前の事前案内や特別なリクエストへの対応など、適切な宿泊サービスを提供できない事態が発生しています。万が一のトラブル時にも、ホテル側と旅行者が直接連絡を取る手段が絶たれてしまうのです。
背後にある流通網の不透明性と法的課題
OpertoのCEOであるTim Major氏は、これらの略奪的サイトが予約体験全体を乗っ取っていると指摘しています。悪質な業者は旅行者からの問い合わせに対してすら「自分たちがホテルである」と偽って対応するケースが報告されています。
また、これらの略奪的OTAがアフィリエイト・ネットワークのグレーゾーンで活動していることも問題を複雑にしています。一部の巨大な正規OTAがこれら偽装サイトに空室在庫を供給している実態も指摘されており、業界内では大手OTAに対する訴訟も提起されるなど、流通網の不透明性が法的問題にまで発展しています。
予測される未来と宿泊流通の健全化に向けた課題
今後、AIを活用して模倣サイトを量産する悪質業者と、それを阻止しようとするホテル側との技術的ないたちごっこが激化すると予測されます。実際、Operto社などのテクノロジー企業は、自社のAIを用いて略奪的OTAの広告出稿をリアルタイムで検知し、ブランドの乗っ取りを自動的に報告・阻止する防衛ツールの提供を開始しています。
旅行業界全体としては、アフィリエイト網の透明性向上と厳格なルール作りが急務です。検索エンジン側にも、商標権を侵害するような不適切な広告出稿を事前により厳格にブロックする仕組みが求められるでしょう。
旅行者自身も、予約時にURLを注意深く確認し、本当にホテルの公式サイトであるかを自衛的に見極めるリテラシーがこれまで以上に必要とされる時代を迎えています。私たちArigatripとしても、読者が安全な旅行体験を享受できるよう、宿泊流通におけるデジタルリスクの動向を引き続き注視していきます。

