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    チリ、エルキ渓谷の星空紀行。ブドウ畑の香りに包まれ、宇宙に溶ける夜

    南米大陸を縦に貫く、細長い国チリ。その国土のほぼ中央、首都サンティアゴから北へ約500キロメートル。アンデス山脈の懐に抱かれるように、緑豊かな渓谷が広がっています。その名は、エルキ渓谷。ここは、世界中の天文学者がこぞって「地球上で最も星空が美しい場所」と讃える、天空に一番近い谷。澄み切った空気、年間300日を超える晴天率、そして文明の灯りが届かない完璧な暗闇。星を見るためだけに神様が創ったとしか思えない、奇跡のような場所です。

    夜になれば、頭上には言葉を失うほどの星々が溢れ、まるで宇宙船の窓から外を眺めているかのような錯覚に陥ります。しかし、エルキ渓谷の魅力は夜だけではありません。昼間は燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びて育つブドウ畑がどこまでも続き、その恵みから生まれる国民的なお酒「ピスコ」の芳醇な香りが谷を満たしています。日干しレンガで造られた素朴な家々が点在し、ゆったりとした時間が流れる村々も、旅人の心を優しく解きほぐしてくれるのです。

    今回は、そんなエルキ渓谷で体験する、星とブドウと静寂に包まれる旅の物語をお届けします。ただ星空を眺めるだけではない、この谷が持つ特別な空気、五感で味わう旅の過ごし方、そして宇宙の壮大さに触れる感動の瞬間を、一緒に旅するように感じていただけたら嬉しいです。さあ、まずは地図を広げて、この天空の谷への旅路を心に描いてみてください。

    エルキ渓谷のブドウ畑で育まれるピスコのように、アンデスの高地で生まれる奇跡の白ワイン『トロンテス』にも南米の風土が凝縮されています。

    目次

    首都から天空の谷へ、移りゆく景色に心を乗せて

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    エルキ渓谷への旅は、まずチリの首都サンティアゴからスタートします。日本の約20倍の広さを持つこの国において、500キロという距離は決して遠く感じません。サンティアゴの空港から国内線に搭乗し、約1時間のフライトで太平洋沿岸の街ラ・セレナへ向かいます。窓の外に広がる雄大なアンデス山脈の景色を楽しんでいると、あっという間に目的地に到着します。

    ラ・セレナの空港に降り立つと、サンティアゴの都会的な喧騒とは打って変わって、乾いた風と強い日差しが迎えてくれます。ここからエルキ渓谷への本格的な旅が始まります。いくつかの移動手段がありますが、渓谷の隅々まで自分のペースで巡りたいならレンタカーがおすすめです。国際免許証とクレジットカードがあれば手続きはスムーズで、空港のカウンターで予約した車を受け取れば、すぐに冒険の気分が高まります。

    ラ・セレナ市街地を抜けて内陸へ向かって車を走らせると、景色は劇的に変わります。沿岸部の緑が次第に消え、サボテンが点在する荒涼とした土地へと変わっていきます。まるで異世界に迷い込んだかのようなこの風景に、訪れる先への期待が自然と膨らみます。しばらく走ると、道はゆるやかな上り坂となり、やがて視界の先に乾いた大地を貫く緑の帯が現れます。これがエルキ渓谷、命の川エルキ川による豊かな緑の証です。

    渓谷の入り口に位置する町ビクーニャに近づくと、道の両側に延々と続くブドウ畑が姿を見せます。太陽の光をたっぷり浴びて輝く葉、実り豊かな果実。車の窓を開けると、甘く爽やかなブドウの香りが風に乗って漂ってきます。この香りがエルキ渓谷への序章となり、旅の間ずっとあなたを包み込んでくれるでしょう。

    ラ・セレナから渓谷の中心部までは、車で約1時間半から2時間。道の大半は舗装されており運転はしやすいものの、時折現れる急カーブや飛び出す家畜には注意が必要です。焦らず、ゆったりと変わりゆく景色を楽しみつつ、安全運転で天空の谷へ向かいましょう。バスを利用する場合は、ラ・セレナのバスターミナルからビクーニャやパイウアノなど主要な村行きの便が頻繁に出ています。地元の人々と乗り合わせながら車窓の風景を眺める旅も、また味わい深く素敵です。

    昼間の輝き:太陽とピスコがもたらす恵み

    「世界一の星空」という強烈なキャッチコピーのせいで、エルキ渓谷の魅力は夜だけに限られていると思われがちです。しかし、それは大きな誤解です。この谷は、太陽が燦々と輝く昼間の時間帯にも、訪れる人々を惹きつける素晴らしい体験を提供してくれます。むしろ、昼間に浴びる光と大地のエネルギーを全身で感じることこそ、夜に見る星空をより深く味わうための重要な準備となるのです。

    ピスコの故郷で、蒸留所の空気を感じる

    エルキ渓谷を訪れる際、必ず押さえておきたいのがチリの代表的な蒸留酒「ピスコ」の蒸留所(デスティレリア)巡りです。ピスコはブドウを蒸留して作られるブランデーの一種で、特にエルキ渓谷はその高品質からチリ国内でもトップクラスのピスコ産地としてよく知られています。

    谷沿いの道を走っていると、「PISCO」という看板を掲げた大小さまざまな蒸留所が次々と目に入ります。まるで日本の酒蔵巡りのように、気軽に立ち寄れるのが嬉しいポイント。多くの蒸留所では製造工程を見学できるガイドツアーが毎日開催されています。

    私が訪れたのは、この谷の中でも特に名高い蒸留所のひとつ。予約不要でふらっと立ち寄れるうえ、スペイン語と英語のツアーが1時間ごとに開催されていました。料金は日本円で約2,500円。その料金には見学だけでなく、数種類のピスコのテイスティングも含まれています。受付を済ませると、陽気な男性ガイドが出迎えてくれました。

    まず広大なブドウ畑へ案内されます。ここでは主にマスカット系の香り高い品種が栽培されているとのこと。遮るもののない青空の下、葉を揺らす風の音に耳を傾けながら、ピスコ造りの根幹をなすブドウの話を聞きます。続いて、発酵タンクが立ち並ぶ建物に入ると、むっとした熱気と共にフルーティーで甘いアルコールの香りが鼻孔をくすぐります。ここでブドウ果汁がワインに変わり、次の蒸留工程へと進んでいくのです。

    圧巻だったのは、年季の入った銅製の蒸留器が鎮座する部屋。丁寧に磨き上げられたそれは、まるで芸術作品のような美しさです。ガイドが情熱を込めて説明する製造へのこだわりを聞いていると、一杯のピスコに込められた人々の想いや土地の歴史が伝わり、これから試飲する一杯への期待感がどんどん高まっていきます。最後に待ち構えていたのはテイスティングタイム。熟成年数や樽の種類が異なる数種類のピスコを飲み比べます。グラスに注がれた透明な液体を口に含むと、マスカットの華やかな香りが一気に広がり、喉をすっと通り抜けていきます。アルコール度数は40度前後と高めですが、驚くほどなめらかでクリアな味わいです。カクテルのベースとしても有名なピスコですが、ストレートで味わうことでその真価がじっくりと実感できます。

    お土産には、ここでしか手に入らない限定ピスコの一本を購入。あのボトルを見るたびに、エルキ渓谷の太陽の光とブドウ畑の風景が鮮やかに蘇り、最高の思い出となりました。

    アドベ造りの村々を歩いて、谷の日常を感じる

    ピスコの蒸留所巡りとあわせて楽しみたいのが、渓谷に点在する小さな村々の散策です。中心都市ビクーニャをはじめ、パイウアノ、モンテ・グランデといった村々は、それぞれに独自の魅力を持っています。

    これらの村に共通して見られるのは、日干しレンガ(アドベ)で作られた素朴な家並み。乾いた土の色合いが、青空やブドウ畑の緑と美しく調和しています。村の中心には必ず広場(プラザ)があり、そこで地元の人々が木陰に集まり談笑したり、子どもたちが元気に走り回ったりしています。まるで時間が止まったかのような、のどかな光景が広がっています。

    特に印象深かったのは、ノーベル文学賞受賞者である詩人ガブリエラ・ミストラルの故郷、モンテ・グランデです。彼女が教壇に立っていた小さな学校や、生涯を紹介する博物館がひっそりと佇んでいます。華やかな観光地ではないものの、村全体が穏やかな空気に包まれていて、ただ目的もなく歩くだけで心がじんわりと満たされるのを感じました。

    散策の途中、少しお腹が空いたら村の小さな食堂に立ち寄るのがおすすめです。メニューは多くありませんが、どれも温かみのある家庭の味。特にぜひ味わってほしいのが、この地方の名物であるヤギのチーズ(Queso de Cabra)。少し塩気の効いた濃厚な風味は、パンにのせてもサラダに加えても絶品です。新鮮な野菜や果物を使った料理とともに、エルキ渓谷の素朴な恵みを存分に味わってみてください。ローカルな食堂での昼食は1,500円程度で十分満腹になれます。

    宵闇が誘う、宇宙へのプレリュード

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    昼間の太陽がアンデスの稜線に向かって傾き始めると、エルキ渓谷は一日のうちで最もドラマチックな表情を見せ始めます。強かった日差しが和らぎ、空は淡いオレンジ色から鮮やかな赤へと、さらに深い紫色へと、その色合いを刻々と変えていきます。いわゆる「マジックアワー」の幕開けです。

    谷を吹き抜ける風がひんやりと肌を撫で、ブドウ畑の緑はやがて濃いシルエットへと変化していきます。遠くの山肌の輪郭が鮮明に浮かび上がり、まるで一枚の絵画のような光景が広がります。日中の賑わいが嘘のように、谷全体が静寂に包まれていくこの時間帯。耳に入るのは、葉ずれの音と時折響く虫の声だけ。これまで世界各地の古びた建築物を巡り、その静けさに心を奪われてきましたが、ここにある静寂は命の息吹に満ちあふれた、あたたかな静けさです。

    宿泊しているカバニャのテラスに出て、温かいお茶を手にしながら、この空のグラデーションを静かに眺めるひとときは、何ものにも代えがたい至福の時間でした。都会の喧騒では決して味わえない、地球の自転を肌で感じ取れるような特別な瞬間。星が輝き始める前に、壮大な舞台装置がゆるやかに整っていく様子を、最高の場所で見守っているような気分になります。

    そして、空から最後の茜色が消え去り、完全な闇が訪れた瞬間、ふと見上げると息をのむような光景が広がっています。一つ、また一つと星が瞬き始め、その数はみるみる増えていき、気づけば空は無数の光の粒で埋め尽くされているのです。これからの数時間、自分が宇宙の壮大さに包み込まれるのだという予感に、胸が高鳴る瞬間でした。

    星屑のシャワーを浴びる夜:天文台と静寂の谷間にて

    ついに、エルキ渓谷がその真価を示す夜が訪れました。ここで味わえる星空は、「美しい夜空」と簡単に表現するにはあまりにも壮大です。それはまるで自分が宇宙空間に浮かんでいるかのような、圧倒的な没入感を伴う体験なのです。その感動を最大限に引き出す方法は大きく二つに分かれます。一つは専用の設備を備えた天文台ツアーに参加すること。もう一つは、自分だけの特別な場所で静かに星と向き合うことです。

    天文台の巨大な望遠鏡で、宇宙の神秘に触れる

    「世界屈指の天体観測地」であるエルキ渓谷には、研究用の大規模な天文台から観光客向けの施設まで、多彩な観測ポイントが点在しています。せっかくここまで足を運んだのなら、一度は本格的な天体望遠鏡を通して宇宙の姿をじっくり覗いてみることを強くおすすめします。

    私がおすすめするのは、観光客向けの中でも特に評判の高い「マンマルカ天文台」。ビクーニャの町からほど近い丘の上に位置し、アクセスも非常に便利です。このような人気の天文台ツアーは予約が必須で、特に星がよく見える新月の期間は数週間前から予約がいっぱいになることもあります。旅のプランを立てる際は、まず最初に天文台の予約を済ませておくのが賢明です。ツアー料金は約2時間で約6,000円と決して安くはありませんが、体験の価値は間違いなくそれ以上です。

    指定された時間に天文台へ向かうと、すでに多くの参加者が集まっていました。期待に胸を膨らませながらツアーがスタート。まずはレクチャールームで、専門のガイドがその夜見える星や星座について詳しく説明してくれます。南半球ならではの南十字星や、私たちの銀河の伴星ともいえる大小マゼラン雲。レーザーポインターで夜空を指し示しながら語られる宇宙の物語は、まるで壮大な神話を聞いているかのようで、知識欲を大いに刺激されます。

    いよいよドームの中へ入ります。暗闇に目が慣れると、そこに鎮座する巨大な天体望遠鏡の影が浮かび上がります。順番に接眼レンズを覗くよう案内され、心臓の鼓動が高まるのを感じつつ、そっとレンズに目を近づけました。

    その瞬間、思わず小さな感嘆の声が漏れました。そこに映っていたのは、はっきりと輪をまとった土星の姿。何度も図鑑や写真で見たあの土星と同じですが、印刷物とは全く異なる輝きでした。淡く光る本体と繊細な輪の隙間、それは今まさに何億キロもの彼方から届けられた光が結んだ像なのです。その事実が圧倒的なリアリティを伴い、胸に迫ってきました。隣の望遠鏡では木星の縞模様とガリレオ衛星がくっきりと見え、別の望遠鏡では数千の星が密集する球状星団が、まるで宝石箱をひっくり返したかのように輝いていました。自分の目が宇宙の深淵と直接つながったかのような、不思議で感動的な体験でした。

    ブドウ畑に寝そべり、天の川に溶け込む

    天文台の興奮が冷めやらぬ中、エルキ渓谷の星空を堪能するもう一つの方法は、よりシンプルで、よりプライベートなものです。

    天文台ツアーを終え宿泊先のカバニャに戻り、持参したレジャーシートを庭に広げます。周囲に人工的な光は一切なく、聞こえるのはかすかな風の音だけ。ゆっくりとシートに寝転び、星空を見上げました。

    そこには、さっき天文台から見た空とはまた違って、圧倒的なスケールの宇宙が広がっていました。視界を遮るものは何もなく、360度のパノラマ。闇の布にダイヤモンドの粉を惜しみなく撒き散らしたかのような無数の星々。星と星の間にも空白はなく、細かな光の粒がびっしりと埋め尽くしています。

    そして、夜空を横断する巨大な光の帯。天の川です。日本では条件の良い場所でかろうじて霞んだ帯のように見える天の川が、ここでは立体感を持ち、その濃淡までくっきりと認識できます。まるで星の大河が頭上を音もなく流れているかのよう。ときおり尾を引く流れ星が空を横切ります。一つ見つけるたびに願い事をする余裕はありません。数分に一度は必ずどこかで流れ星が現れるからです。

    ブドウの葉の香りが漂う中、ただただ星空を見つめ続けます。思考は次第に静まり、自分が地球という惑星上の小さな存在でありながら、この壮大な宇宙の一部であることを、理屈ではなく魂で感じとる瞬間。寒さも時間も忘れ、ただ宇宙と一体になる――これこそが、エルキ渓谷がもたらす最高の瞑想的体験なのかもしれません。

    旅立ちの前に:天空の谷を120%楽しむための心得

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    エルキ渓谷への旅を計画する際、いくつかのポイントを押さえておくだけで、より快適で記憶に残る体験ができるでしょう。ここでは、私の体験を基にした実用的なアドバイスをお伝えします。

    旅行時期と服装についての準備

    エルキ渓谷を訪れるのに最適な季節は、乾季に当たる春から秋、具体的には9月から4月頃がよいでしょう。この時期は晴れる日が多く、安定した美しい星空が望めます。特に気にしたいのは月の満ち欠けです。星空観賞が主な目的の場合、月明かりの影響を最小限に抑えられる新月の前後を狙うことがポイントです。満月の夜も幻想的な雰囲気がありますが、微かな星の光は月の輝きに埋もれてしまいます。簡単に確認したい場合は、インターネットで「月齢カレンダー」と検索すると便利です。

    そして何より重要なのが服装の用意です。エルキ渓谷は標高が高く、空気が乾燥しているため、昼夜の気温差が非常に大きいことが特徴です。昼間はTシャツ1枚で汗ばむほどの暖かさでも、日が沈むと一気に冷え込み、真冬のような寒さになることもあります。フリースや薄手のダウン、風を防ぐアウター、ニット帽や手袋まで用意しておくと安心です。日本の冬山に登る際の服装をイメージすると、ちょうどよいでしょう。足元もサンダルだけでなく、しっかりと足を包み込むスニーカーなどを用意しておくと安心です。夜の天体観測で体が冷えてしまうと、せっかくの星空も十分に楽しめません。

    宿泊先の選び方と星空観察のちょっとした工夫

    エルキ渓谷には、旅のスタイルに合わせて選べる個性的な宿泊施設が豊富にあります。星空観察をテーマにしたドーム型ホテルや、個別に天体望遠鏡が備えられたカバニャ(貸別荘)、ブドウ畑に囲まれた静かなロッジなど、多彩な選択肢があります。できれば街の明かりが届きにくい郊外の宿を選ぶと、より美しい星空を満喫できます。予約サイトの写真や口コミを参考にしながら、自分だけの星降る夜を過ごせる場所を探す過程も旅の楽しみの一つです。

    また、星空観察時に便利なアイテムとして「赤色のヘッドライト」をぜひ持って行ってください。人間の目は暗闇に慣れるのに時間がかかるため、一度白い光を浴びるとその慣れがリセットされてしまいます。一方、赤い光は暗順応を妨げにくい特徴があり、天体観察の場では赤色ライトの使用が望まれています。これがあれば、自分自身も周囲の人たちも、より深く星空に集中できるでしょう。さらに、温かい飲み物を入れた魔法瓶や地面からの冷気を遮る小さなマットがあると、より快適に観察できます。

    最後に、高地での過ごし方についても触れておきます。エルキ渓谷の標高は約1,000メートルから2,000メートルで、高山病のリスクは低いものの、体調によっては軽い頭痛などの症状が現れる場合があります。到着した日は無理をせず、ゆっくりと体を環境に慣らすことが大切です。また、こまめに水分補給を行いましょう。乾燥した空気は予想以上に体内の水分を奪うため、注意が必要です。

    星の記憶を胸に、日常へと還る

    エルキ渓谷を訪れる旅は、美しい景観や美味しいお酒を楽しむだけのものではありません。むしろ、自分という存在を壮大な宇宙のスケールの中で見つめ直す貴重な時間でもあります。

    この谷には、星空以外にももう一つの魅力があります。それは、UFO目撃情報が多数報告される場所であり、特別なエネルギーに満ちたパワースポットとして、世界中から多くの人々を引き寄せている点です。実際、ヨガや瞑想のリトリート施設も点在し、心身の癒しを求めて長期滞在する方も少なくありません。科学的な証明は別として、この谷を包む穏やかで澄み切った空気が、人々の心を特別な状態へと導く力を宿していることは、実際に訪れれば誰もが感じ取れるでしょう。

    天の川の圧倒的な光の帯、無数に降り注ぐ流れ星、望遠鏡越しに鮮明に浮かび上がる惑星の姿。エルキ渓谷で目にした光景は、きっと一生忘れられない記憶として、心の奥底に深く刻まれるに違いありません。

    そして旅を終え、日常に戻った時、ふとした瞬間に夜空を見上げる回数が増えている自分に気づくはずです。都会の空では見える星の数が限られているかもしれませんが、そのひとつひとつの星の向こう側には、あのエルキ渓谷で眼にした無限に広がる宇宙が広がっていることを、私たちはすでに知っています。この事実こそが、日常の悩みや不安をほんの少しだけ小さく感じさせてくれる、不思議な力を持っているのです。

    いつか人生に迷いが生まれたり、少しだけ疲れを感じたりした時には、どうか思い出してください。チリのアンデスの山あいで、今も満天の星々が静かに輝き続けていることを。その星たちの光は、いつでもあなたを照らし続けているのです。エルキ渓谷の旅は、そんなお守りのような記憶を私たちに授けてくれるのです。

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    この記事を書いた人

    大学時代から廃墟の魅力に取り憑かれ、世界中の朽ちた建築を記録しています。ただ美しいだけでなく、そこに漂う物語や歴史、時には心霊体験も交えて、ディープな世界にご案内します。

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