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    ブッキング・ホールディングス、欧州の新規制とAIの波に揺れる。2026年、試練の年へ

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    概要:OTAの巨人に迫る二つの逆風

    オンライン旅行会社(OTA)の世界的リーダーであるブッキング・ホールディングスが、大きな岐路に立たされています。2025年末にかけて同社の株価は競合他社と比較して伸び悩みを見せましたが、その背景には、欧州連合(EU)によるデジタル規制の強化と、急速に進化するAI技術という、二つの強力な逆風があります。旅行予約のあり方を根本から変える可能性を秘めたこれらの変化は、同社にとって2026年が厳しい試練の年になることを示唆しています。

    背景1:EUデジタル市場法(DMA)という名の規制強化

    「ゲートキーパー」指定がもたらす変化

    最大の懸念材料の一つが、EUで施行されたデジタル市場法(DMA)です。この法律は、巨大なプラットフォーム企業が市場を独占することを防ぐ目的で導入されました。ブッキング・ホールディングス傘下のBooking.comは、この法律における「ゲートキーパー(市場の門番)」に指定されています。

    ゲートキーパーに指定された企業は、公正な競争を促すための厳しい義務を負うことになります。特に大きな影響を及ぼすのが、「価格パリティ条項(最恵国待遇条項)」に対する制限です。

    価格パリティ条項の制限とホテル業界への影響

    これまで、多くのOTAはホテルとの契約で、自社サイトで提供する宿泊料金を、ホテルの自社サイトや他のOTAで提供する料金よりも不利にならないように(通常は同等かそれ以下に)設定することを求めてきました。これが価格パリティ条項です。

    しかし、DMAによってこの条項が制限されることで、ホテルは自社の公式ウェブサイトで、Booking.comよりも安い宿泊料金を自由に提示できるようになります。これは、消費者にとってはより安く宿泊できる機会が増える一方で、ブッキング・ホールディングスにとっては深刻な脅威となります。顧客がOTAを介さず、ホテルの公式サイトで直接予約する「ダイレクトブッキング」へ流出する可能性が高まるためです。

    ブッキング・ホールディングスの収益の大部分は欧州市場に依存していると言われており、この規制が業績に与えるインパクトは計り知れません。

    背景2:AI旅行プランナーの台頭

    Googleが変える旅行計画の常識

    もう一つの脅威は、Googleをはじめとするテクノロジー企業が開発を進めるAIを活用した旅行プランニング機能です。これまで旅行者は、行き先の情報を検索し、フライトやホテルを比較検討するためにOTAのプラットフォームを利用するのが一般的でした。OTAの強みは、この情報集約力と予約手続きの簡便さにありました。

    しかし、生成AIの登場により、この構図は大きく変わろうとしています。「6月にパリで美術館巡りを中心とした5日間の旅行プランを、予算30万円で提案して」といった自然言語での問いかけに対し、AIが最適なフライト、ホテル、観光ルートまで一括で提案し、そのまま予約まで完了できる未来がすぐそこまで来ています。

    このようなAIアシスタントが普及すれば、ユーザーはOTAのサイトを訪れることなく、検索エンジンやAIチャットの画面上で旅行計画の全てを完結させてしまうかもしれません。これは、OTAが長年築き上げてきたプラットフォームとしての優位性を根底から揺るがすものです。

    予測される未来と旅行業界への影響

    ブッキング・ホールディングスに迫る変化

    これら二つの大きな変化は、ブッキング・ホールディングスに以下のような影響を与えると予測されます。

    • 収益モデルへの圧力: ホテルとの価格競争が激化し、手数料収入が減少する可能性があります。また、顧客を自社プラットフォームに留めるためのマーケティング費用やポイント還元などのコストが増加することも考えられます。
    • ビジネスモデルの転換: 単なる予約プラットフォームから、より付加価値の高いサービスを提供する企業への転換が急務となります。独自のAI技術への投資や、旅行中の体験を豊かにするパーソナライズされた提案など、新たな価値創造が求められるでしょう。

    旅行者と業界全体へのインパクト

    一方で、これらの変化は旅行者や業界全体にとっては必ずしも悪い話ではありません。

    • 消費者にとってのメリット: ホテル公式サイトでの割引など、より多様で安価な選択肢が生まれる可能性があります。AIによるプランニングは、旅行計画の手間を大幅に削減してくれるでしょう。
    • ホテル業界の自立: ホテルはOTAへの依存度を下げ、独自の価格戦略やマーケティングを展開しやすくなります。これにより、宿泊施設の収益構造が改善される可能性があります。

    2026年は、ブッキング・ホールディングスが規制と技術革新という二つの巨大な波にどう立ち向かうのか、その真価が問われる年となりそうです。同社の戦略は、今後のオンライン旅行業界全体の未来を占う上で、重要な試金石となるでしょう。

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