MENU

    美食の都ボローニャを巡る旅:伝統の味と進化するヴィーガンパスタ、心と身体が満たされる食紀行

    イタリア北部、エミリア・ロマーニャ州の州都ボローニャ。この街には三つの愛称があります。「La Dotta(ラ・ドッタ:学問の都)」、「La Rossa(ラ・ロッサ:赤の都)」、そして「La Grassa(ラ・グラッサ:肥満の都)」。世界最古の大学が知性を育み、赤レンガの街並みが目に鮮やかなこの地は、同時に、訪れる者の胃袋を掴んで離さない、抗いがたい魅力を持つ美食の聖地なのです。今回は、そんなボローニャの奥深い食の世界へと皆様をご案内いたしましょう。何世紀にもわたり受け継がれてきた伝統の味はもちろんのこと、現代のウェルネス志向に応えるように生まれた、心と身体に優しいヴィーガンという新しい潮流まで。古きを尊び、新しきを受け入れるボローニャの懐の深さを、食を通して体感する旅の始まりです。

    ボローニャの魅力は食だけにとどまらず、欧州最古の大学が育んだ知性と、街を彩る赤レンガの回廊にも息づいています。

    目次

    なぜボローニャは「美食の都」と呼ばれるのか?その歴史的背景

    output-695

    ボローニャが「肥満の都」という、やや不名誉に響く愛称で呼ばれる背景には、深くて豊かな理由が存在しています。この地域の食文化の基盤は、その地理的および歴史的な状況と密接に結びついているのです。

    まず、ボローニャが位置するエミリア・ロマーニャ州自体が、イタリア屈指の「食の宝庫」である点が挙げられます。この州は、西側のエミリア地方と東側のロマーニャ地方から構成されており、肥沃なポー川流域の恩恵を受けて長い間、豊かな農産物や畜産物に恵まれてきました。ご存じの方も多い「パルミジャーノ・レッジャーノ」や「プロシュット・ディ・パルマ」、さらに芳醇な「アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ」など、イタリアを代表する食材の多くはこの地から生まれています。ボローニャは、こうした高級食材が集まるまさに中心地であり、交通の要所として周辺の都市から厳選された品々が運ばれ、街の食文化を一層豊かにしてきました。

    加えて、1088年に設立された世界最古の総合大学、ボローニャ大学の存在も食文化の発展に大きく貢献しています。ヨーロッパ各地から多くの学生や研究者が集まる「学問の都」として、同時に多様な文化が交わる場所でもありました。多彩な地域の食文化がここに持ち込まれ、融合され、洗練されることで、ボローニャ独自の料理が確立されていったのです。裕福な貴族や学者たちの味覚を満たすために、料理人たちは技術を磨き合い、その技は家庭や厨房で代々受け継がれてきました。

    中世以来、ボローニャのギルド(同業者組合)は食材の品質を厳格に管理し、その伝統は現代にも引き継がれています。例えば、本物の「タリアテッレ・アル・ラグー」に使うタリアテッレの幅は8mm(茹で上がりの状態)とされており、これは商工会議所に正式に登録されているほどです。このような厳格な規定と、それを守り続ける人々の誇りが、ボローニャの食文化の水準を高く保ち続けているのです。

    このように、豊かな土地柄、知の交流、そして伝統を大切にする人々の情熱が幾重にも重なり合い、ボローニャは世界的に名高い「美食の都」としての地位を築いてきました。街を歩けば、その長い歴史の重みと食への深い愛情を至るところで感じ取ることができるでしょう。

    ボローニャの胃袋「クアドリラテロ地区」を歩く

    ボローニャの真髄となる食文化に触れたいなら、まず訪れるべき場所があります。マッジョーレ広場の東側に広がる「クアドリラテロ地区」。中世以来、市場として栄えてきたこの地域は、「ボローニャの胃袋」と称されるにふさわしい、活気あふれる食の宝庫です。

    細い路地を一歩進むと、そこは五感を刺激する美食の迷路。天井から吊るされる無数のプロシュットやサラミ、ショーケースに山積みされたパルミジャーノ・レッジャーノの塊、彩り豊かな新鮮な野菜や果物、そしてパン屋から漂う焼きたての香ばしい香り。賑やかな通行人の声と店主たちの活気あふれる呼び込みが入り混じり、地区全体がまるで生き物のように息づいています。この地区を歩くだけで、ボローニャの人々がいかに食を愛し、日々の食卓を大切にしているかがひしひしと伝わってきます。

    食の殿堂をめぐる

    クアドリラテロ地区には、代々市民の食生活を支えてきた名店が軒を連ねています。代表的な店舗をいくつか紹介しましょう。

    A.F. Tamburini(タンブリーニ)

    1932年創業の、この地区を象徴する老舗ガストロノミア(食料品店)。重厚感のある店構えはまるで食文化の博物館のよう。店内にはあらゆる種類の生ハム、サラミ、チーズ、惣菜がずらりと並び、その壮観な光景は圧巻です。奥にはセルフサービスのレストランもあり、ショーケースで選んだ料理をその場で味わえます。ランチ時には地元客で賑わい、その熱気もまたひとつの魅力。伝統的なボローニャ料理を手軽に楽しみたい方にぴったりです。

    Salumeria Simoni(サルメリア・シモーニ)

    モルタデッラやプロシュットなど、サラミ類とチーズの専門店。高品質へのこだわりが強く、知識豊富なスタッフが商品の特徴や美味しい食べ方を丁寧に教えてくれます。ここではぜひ、様々な種類のサラミやチーズを盛り合わせた「タリアーレ」を注文してみてください。ワインとともに専門店ならではの極上の味を少しずつ味わう時間は、まさに至福のひとときです。

    Mercato di Mezzo(メルカート・ディ・メッツォ)

    かつての屋内市場をリノベーションしたモダンなフードマーケット。1階にはピッツァ、パスタ、シーフード、地ビールなどを提供する多彩なブースが軒を連ね、気軽に立ち寄れるフードコートのような空間になっています。2階にはレストランもあり、クアドリラテロ地区で集められた新鮮な食材を活かした料理が楽しめます。伝統的な市場の散策で少し疲れた時は、こちらで一息つきながら現代のボローニャの食文化を味わうのもおすすめです。

    この地区の魅力は、単に買い物をするだけにとどまりません。夕方になると、多くの店の前にテーブルが設けられ、アペリティーヴォを楽しむ人々で賑わいます。ワインやスプリッツを傾けながら、オリーブやサラミをつまんで語らう。そんなボローニャの日常に溶け込む体験こそ、旅の醍醐味と言えるでしょう。

    スポット名特徴住所営業時間(目安)
    A.F. Tamburini老舗の食料品店。惣菜が豊富でイートインも可能。Via Caprarie, 1, 40124 Bologna月-土 8:30-19:30、日曜定休
    Salumeria Simoniサラミとチーズの専門店。質の高い品揃えが魅力。Via Drapperie, 5/2a, 40124 Bologna毎日 9:30-22:00
    Mercato di Mezzoモダンな屋内フードマーケット。気軽に利用しやすい。Via Clavature, 12, 40124 Bologna毎日 10:00-24:00

    まずはこれを味わいたい!ボローニャ伝統料理の神髄

    output-696

    ボローニャの食文化は、地元の豊かな食材とマンマ(お母さん)たちによって受け継がれてきた家庭の味によって形作られています。ここでは、ボローニャを訪れた際にぜひ味わってほしい、魂が込められた伝統料理を紹介します。

    タリアテッレ・アル・ラグー (Tagliatelle al Ragù)

    世界的には「スパゲッティ・ボロネーゼ」として親しまれている料理の元祖こそが、まさに本物のボローニャの味です。地元ではスパゲッティを使うことはなく、主役は卵をたっぷり使用した手打ちの平打ちパスタ「タリアテッレ」。黄金色の生地は、ソースと絡みやすいようにわずかにざらついた表面に仕上げられ、茹であがりで幅8mmが厳格に守られています。これほどまでにパスタ自体にこだわりが感じられます。

    そしてもう一方の主役が「ラグー」です。日本でいうミートソースとはまったく違い、深みと複雑さを兼ね備えた味わいが特徴です。牛肉や豚肉のミンチを玉ねぎ、人参、セロリといった香味野菜とともに、トマトやワイン、少量の牛乳やクリームを加えて何時間もじっくり煮込むため、肉は非常に柔らかくなり素材の旨味が見事に溶け合い、豊かな一体感のあるソースに仕上がります。もちもちとしたタリアテッレに、この滋味あふれるラグーがからまり、口に運ぶたびに幸せのため息がこぼれることでしょう。

    トルテッリーニ・イン・ブロード (Tortellini in Brodo)

    「ヴィーナスのへそ」という愛らしい呼び名を持つ小さな詰め物パスタ、トルテッリーニ。昔、宿の主人が鍵穴から覗いた女神ヴィーナスの裸体のへその形に魅せられて作られたという伝説があります。豚ロース肉やプロシュット、モルタデッラを細かく挽き、パルミジャーノ・レッジャーノやナツメグと混ぜた詰め物を、薄く伸ばしたパスタ生地で一つひとつ丁寧に包みます。

    この小さな宝石のようなパスタの伝統的な食べ方は「イン・ブロード」、滋養豊かなスープに浮かべていただくものです。鶏や牛の骨、香味野菜を長時間煮出した透き通った黄金色のブロードは、それ自体がご馳走。繊細なスープの中でトルテッリーニの肉の旨味とパスタの食感が際立ちます。特にクリスマスなどの祝祭シーズンには欠かせない一品で、ボローニャの家庭のぬくもりを感じさせる心温まる味わいです。

    ラザーニャ・ヴェルデ・アッラ・ボロニェーゼ (Lasagne Verdi alla Bolognese)

    ボローニャ風ラザーニャの大きな特徴は、生地にほうれん草を練り込んでいる点です。鮮やかな緑色のパスタ生地「ラザーニャ・ヴェルデ」は、見た目にも非常に美しい仕上がり。この緑のパスタと共に、じっくり煮込んだラグー・ボロニェーゼ、滑らかなベシャメルソース、そしてたっぷりのパルミジャーノ・レッジャーノを層に重ね、オーブンで焼き上げます。

    出来立ての熱々ラザーニャは、表面は香ばしくこんがり、中はとろりとしたソースとパスタが見事に絡み合っています。一口食べると、肉の旨味、トマトの酸味、ベシャメルのクリーミーさ、さらにチーズの塩気とコクが口内で調和し、まるで味のオーケストラのよう。見た目のボリューム以上にほうれん草の爽やかな風味が軽やかに広がり、驚くほどさっぱりと食べ進められます。

    モルタデッラ (Mortadella)

    ボローニャ自慢の最高級ソーセージ、モルタデッラ。豚の挽肉に喉の部分の上質な脂身をダイス状に加えることで、特有のやわらかく滑らかな食感を生み出しています。ピスタチオや黒胡椒が練り込まれているのも特徴で、断面はピンク色の大理石のような美しさ。加熱処理されているため、生ハムとは異なるしっとりとした食感と優しい味わいが楽しめます。

    地元では、薄くスライスして温かいパンにはさみ、シンプルに味わうのが一般的です。また少し厚めに切り、アペリティーヴォのお供としても親しまれています。単体でも勿論美味しいですが、トルテッリーニの詰め物に使われるなど、ボローニャ料理の重要な名脇役として欠かせません。

    レストラン名おすすめ料理住所特徴
    Trattoria Anna Mariaタリアテッレ・アル・ラグーVia delle Belle Arti, 17/A, 40126 Bologna伝説のマンマ、アンナマリアさんの味を受け継ぐ老舗店。手打ちパスタが格別。
    Trattoria da Meトルテッリーニ・イン・ブロードVia San Felice, 50, 40122 Bologna伝統料理をモダンに昇華させた人気店。予約必須。
    Osteria dell’Orsaタリアテッレ・アル・ラグーVia Mentana, 1, 40126 Bologna地元学生にも愛される賑やかなオステリア。リーズナブルで美味。
    Ristorante Drogheria della Rosaラザーニャ・ヴェルデVia Cartoleria, 10, 40124 Bologna元薬局を改装した趣あるレストラン。洗練されたボローニャ料理が楽しめる。

    伝統だけじゃない!心と身体に優しい「進化系ヴィーガンパスタ」の世界

    美食の街ボローニャは、ただその豊かな伝統に甘んじるだけの場所ではありません。歴史と革新が調和するこの都市では、多様化するライフスタイルや健康志向の高まりに応じて、新たな食のトレンドが誕生しています。その代表がヴィーガン料理の世界です。

    ボローニャ料理の伝統は肉や卵、乳製品のふんだんな使用にありますが、ヴィーガンはそれとは対照的な存在に映るかもしれません。しかし、地元のシェフたちは伝統を尊重しつつ、植物由来の素材だけでいかに美味しくて満足できる料理を作るかという挑戦に見事に応えています。「肥満の街」というイメージを一新し、心身を軽やかに満たす進化した美食体験がここで味わえます。

    ヴィーガンパスタの創意工夫

    ボローニャのヴィーガン料理で特に注目されるのは、やはりパスタです。伝統的な手打ちパスタには卵が欠かせませんが、ヴィーガンパスタは卵を一切使いません。セモリナ粉と水を基本に、ほうれん草やかぼちゃ、ビーツなどの野菜ピューレを練り込んで、鮮やかな色彩と風味、栄養価を加えています。

    ソースもまた創造性を発揮する部分です。ラグー・ボロネーゼ風のソースは、レンズ豆や刻んだキノコ、豆腐やナッツを使い、驚くほど深い味わいと肉のような食感を見事に再現しています。カシューナッツやアーモンドから作るクリーミーなソースは、ベシャメルやチーズの代用として料理に濃厚さとまろやかさをもたらします。旬の野菜をふんだんに生かした軽やかなソースも人気で、素材そのものの美味しさを引き出した、身体に優しい一皿に出会えます。

    ボローニャのおすすめヴィーガンレストラン

    トラットリアが軒を連ねる中、存在感を放つヴィーガンレストランも増加中です。

    Botanica Lab Cucina

    ボローニャのヴィーガン料理界を牽引するパイオニア的な存在。単に動物性食品を使わないだけでなく、ローフード(非加熱・低温調理)の理念も取り入れた、革新的でアーティスティックな料理を提供しています。店内は洗練されたナチュラルテイストで落ち着きのある空間。ここでは伝統的なボローニャ料理をヴィーガン風に再構築したメニューや、世界各国のエッセンスを融合させた独創的な料理が味わえます。美しい盛り付けと驚きに満ちた味わいは、ヴィーガンの有無を問わず、すべてのグルメを満足させるでしょう。

    Un’Altra Idea

    より家庭的で温かなヴィーガン料理を提供する店。日替わりメニューが黒板に記され、まるで親しい友人宅に招かれたような居心地の良い空間が魅力です。旬のオーガニック野菜をふんだんに使った料理は、滋味深く心と体を元気にする優しい味わい。手作りヴィーガンパスタをはじめ、豆や穀物の煮込み料理、野菜のフリットなど、ほっとするメニューが豊富に揃っています。

    ボローニャでヴィーガン料理を味わうことは、単に食の選択肢が広がるだけでなく、この街の食文化が持つ奥深さと未来への可能性を実感する貴重な体験となるでしょう。伝統の味に少し疲れた時や、身体をリフレッシュさせたいときに、ぜひ訪れてみてください。

    レストラン名特徴住所営業時間(目安)
    Botanica Lab Cucina革新的で美しいヴィーガン・ローフード料理。Via Battibecco, 4/C, 40123 Bologna火-日 12:30-14:30, 19:30-22:30, 月曜定休
    Un’Altra Idea家庭的でオーガニックなヴィーガン料理。Via Milazzo, 2/B, 40121 Bologna月-土 12:30-14:30, 19:30-22:00, 日曜定休

    食の探求は続く。ボローニャで体験したい美食アクティビティ

    output-697

    ボローニャでの食の楽しみは、単にレストランで味わうだけにとどまりません。自ら手を動かして料理を作り、その背景について学ぶことで、旅の体験はより深まり、心に深く刻まれるものとなります。ここでは、あなたの知的好奇心と食への情熱を満たす体験型アクティビティをご紹介します。

    クッキングクラスでマンマの味を体験する

    ボローニャ料理の基礎といえば、何と言っても手打ちの卵パスタです。クッキングクラスに参加すれば、地元のマンマやシェフから秘伝の技を直接学べます。小麦粉と卵を混ぜ合わせ、力強くこね、麺棒で丁寧に薄く伸ばしていく。シンプルながら奥が深いこの工程を経て、シルクのようになめらかな生地が出来上がった瞬間の感動はひとしおです。タリアテッレを均一な幅に切る作業や、小さなトルテッリーニを指先で巧みに形作る時間は、没頭できる楽しいひととき。自分で作ったパスタを、伝統的なラグーやブロードと一緒に味わうランチは、高級レストランにも勝る、忘れがたい思い出になるでしょう。「Le Cesarine」のような一般家庭のキッチンで開催されるプログラムは、イタリアの家庭文化に触れる貴重な体験の場でもあります。

    アチェタイアで「黒い黄金」の秘密を知る

    ボローニャから少し足を伸ばすと、世界屈指のバルサミコ酢の産地であるモデナやレッジョ・エミリアがあります。ここでは、何世代にもわたり伝統的な製法を守り続けている「アチェタイア(醸造所)」を訪問することが可能です。ブドウ果汁をじっくり煮詰め、木製の樽を何度も移し替えながら、最低12年、長ければ25年以上もかけて熟成させる「アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ」。その作り方は、膨大な時間と手間をかけたまさしく芸術品と言えます。屋根裏部屋にずらりと並ぶ大小の木樽から漂う、甘酸っぱく芳醇な香り。異なる熟成年のバルサミコ酢を味見すれば、その複雑な味わいと深みに驚かされることでしょう。濃厚でシロップのような質感、絶妙な甘みと酸味のバランスがとれた本物の味は、パルミジャーノ・レッジャーノやジェラートにかけるだけで、一皿を至福の味わいに変えてくれます。

    チーズ工場でパルミジャーノ・レッジャーノの誕生を見学する

    「イタリアチーズの王様」と称されるパルミジャーノ・レッジャーノの製造現場は、早朝に訪れるのがおすすめです。巨大な銅鍋の中で職人たちが牛乳を温め、凝固させ、カード(凝乳)を巧みに操りながら一つの塊を作り上げる様子は、ダイナミックでありながら神聖な雰囲気を醸し出します。特に圧巻なのが、天井まで埋め尽くす巨大なチーズホイールが並ぶ熟成庫。静けさに包まれた空間は、まさにチーズの大聖堂とも言えるでしょう。ここで最低でも12ヶ月以上熟成されることで、あの豊かで深い風味と旨みが生まれるのです。見学の締めくくりには、熟成年の異なるチーズのテイスティングも用意されています。若いチーズのミルキーな味から、長期熟成で生まれるアミノ酸の結晶がジャリッとした食感と凝縮された旨みまで、その変化を全身で感じられるのは、現地ならではの贅沢な体験です。

    これらの体験を通じて、ボローニャの食文化が単なるレシピの積み重ねではなく、その土地の歴史や人々の暮らし、惜しみない時間と情熱に支えられていることを実感できることでしょう。

    食休みに歩きたい、ボローニャの美しい街並み

    美食の旅の合間には、ぜひ街歩きを楽しんでみてください。ボローニャはその豊かな食文化と同様に、多くの見どころが詰まった美しい古都でもあります。美味しい料理を堪能した後の散策にぴったりな、魅力あふれるスポットをご案内します。

    マッジョーレ広場とサン・ペトロニオ聖堂

    街の中心部に広がるマッジョーレ広場は、市民の憩いの場であると同時に、ボローニャの歴史が息づく場所です。周囲には市庁舎やポデスタ宮といった壮麗な中世の建造物が立ち並び、広場に立つだけでまるで時代を遡ったかのような感覚に浸れます。広場に面してそびえるのは、世界で五番目に大きな教会、サン・ペトロニオ聖堂。その壮大なスケールに圧倒されることでしょう。正面のファサードは、下半分が大理石、上半分が未完成のレンガのままとなっており、その独特の姿がかえって魅力的です。内部は広々として荘厳な空間が広がり、床に描かれた日時計(メディリアーナ)は非常に正確に時を刻みます。

    ポルティコ(柱廊)の迷宮

    ボローニャの街並みを象徴する特徴が、「ポルティコ」と呼ばれる柱廊です。街のいたるところに張り巡らされており、中心部だけで約40kmもの長さを誇ります。2021年にはユネスコの世界遺産にも登録されました。木造の素朴なものから大理石装飾の豪華なものまで、時代や地域によってデザインは多彩です。ポルティコの下を歩けば、夏の強烈な日差しや急な雨を気にせずに快適に散策が楽しめます。カフェのテーブルが並び、きらびやかなショーウィンドウが連なる光景は、ただ歩いているだけでボローニャの日常が感じられます。お気に入りのポルティコを探しながら、気ままに歩き回るのも楽しいものです。

    アジネッリの塔とガリゼンダの塔

    マッジョーレ広場から少し歩くと、空へと伸びる二つの傾いた塔が目に入ります。高い方がアジネッリの塔で、低く傾斜が強いのがガリゼンダの塔です。かつてボローニャには100を超える塔が建っており、これらは当時の富と権力の象徴でした。高さ97.2メートルのアジネッリの塔には498段の木製階段があり、登り切れば頂上から赤レンガの屋根が広がるボローニャの街並みを一望できます。息を切らしながらの登頂の先には、どこまでも続く赤い屋根と緑豊かな丘陵の絶景が広がり、美食で満たされた体に爽快な達成感をもたらしてくれるでしょう。

    ボローニャ大学とアルキジンナジオ宮

    「学問の都」として知られるボローニャ大学は、特定のキャンパスを持たず、歴史的建造物が街中に点在しています。中でも見逃せないのは、かつて大学の主要拠点だったアルキジンナジオ宮。その内部にある「解剖学教室」は、全て木造で作られている非常に希少な施設です。中央には解剖用の大理石の台が設置され、それを囲むように階段状の座席が配置されています。壁や天井には繊細な木彫りの装飾が施され、独特の重厚で厳かな雰囲気が漂っています。かつて知の探求に集った人々の姿を思い描きながら、訪れてみてはいかがでしょうか。

    ボローニャ美食旅のヒント

    output-698

    最後に、あなたのボローニャでの美食旅がより充実し、スムーズに楽しめるよう、いくつかのポイントをご紹介します。

    アペリティーヴォを上手に活用しよう

    夕食の少し前、18時から20時頃になると、街のバールやオステリアには「アペリティーヴォ」を楽しむ人々が集まり始めます。これは食前酒を楽しむイタリアならではの素敵な文化です。ドリンクを一杯注文すると、カウンターに並ぶおつまみを無料または少額の追加料金で味わうことができます。クアドリラテロ地区の隠れたバールでスプリッツやプロセッコを片手に、オリーブやブルスケッタ、サラミなどをつまむ時間は格別です。夕食の前のウォームアップや軽い夕食代わりに利用するのもおすすめ。地元の人々とともに、賑やかで心地よい夜のひとときを過ごしてみてください。

    レストランは計画的に予約を

    ボローニャの食文化への情熱は旅行者だけでなく地元民も同様で、特に有名なトラットリアや人気のレストランは、週末はもちろん平日でも満席になることが少なくありません。せっかくのチャンスを逃さないためにも、特に夕食時は早めに予約しておくことをおすすめします。多くの店では電話予約が一般的ですが、近年はウェブサイトや予約アプリからオンラインで予約できるお店も増えてきました。訪れたいレストランが決まったら、早めに席を確保しておきましょう。

    市場で季節の味を感じる

    クアドリラテロ地区以外にも、市内にはいくつかの市場が点在します。例えば、Via Ugo Bassiにある「メルカート・デッレ・エルベ(Mercato delle Erbe)」は、地元の人が日常的に利用する活気ある大型屋内市場です。新鮮な野菜や果物、肉や魚、チーズなどが手ごろな価格で並びます。市場を歩けば、その時期の旬の食材がひと目で分かります。日本ではあまり見られないイタリア特有の野菜や色とりどりの果物を眺めるだけでも楽しいものです。市場の活気に触れ、店主との簡単なイタリア語での会話を楽しむのも旅の素敵な思い出になるでしょう。

    鉄道でスマートに移動しよう

    鉄道ファンの私にとって、ボローニャはイタリアの鉄道網の要所であり、アクセス抜群の街です。ミラノやフィレンツェ、ヴェネツィアといった主要都市からは、高速鉄道「フレッチャロッサ」で気軽に訪れることが可能です。ボローニャ中央駅は市の中心部に近く、到着後すぐに観光を始められるのも大きな利点です。市内の主な観光スポットは徒歩でほとんど回れるコンパクトなエリアにまとまっていますが、少し郊外へ足を伸ばす際には、バスやタクシーを上手に利用するとよいでしょう。美食で満たされた体を労わりながら、歴史あるポルティコの下をゆったりと歩くのも、最高の移動方法かもしれません。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    • URLをコピーしました!

    この記事を書いた人

    子供の頃から鉄道が大好きで、時刻表を眺めるのが趣味です。誰も知らないような秘境駅やローカル線を発掘し、その魅力をマニアックな視点でお伝えします。一緒に鉄道の旅に出かけましょう!

    目次