バーンスタインの分析レポートによると、自律型AIエージェントの台頭が旅行業界の流通構造を再編し、大手OTAの収益性を圧迫すると警告しています。AIは旅行者のニーズを理解し、OTAを介さず宿泊施設の直販サイトなどで最安値を自動予約するため、これまでOTAが高手数料の施設を優先表示して得ていた利益構造が揺らぎます。これにより、OTAはBtoB事業へのシフトを加速し、宿泊施設は直販強化で手数料を回避する動きが進むでしょう。
米国の著名な調査会社であるバーンスタインは、宿泊検索から価格比較、予約決済までを一貫して自動代行する「自律型AIエージェント」の台頭に関する最新の分析レポートを公表しました。同レポートは、このAI技術の普及がBooking HoldingsやExpediaなどの大手OTA(オンライン旅行代理店)の中長期的な収益性を圧迫し、旅行業界の流通構造そのものを再編する可能性があると警告しています。
背景:大手OTAが築いた「供給の堀」と収益構造
これまで約20年にわたり、大手OTAは世界中の宿泊施設の膨大な在庫を集約し、旅行者にとって利便性の高いプラットフォームを提供することで強固なビジネス基盤を築いてきました。従来の検索エンジンを用いた旅行予約では、消費者が自ら大量の検索結果を比較検討する必要がありました。
このプロセスにおいてOTAは、自社に支払われる手数料率(テイクレート)が高い宿泊施設や、スポンサー契約を結んだ提携ホテルを検索結果の上位に優先して表示するレコメンドアルゴリズムを活用してきました。この有料掲載や高手数料ホテルへの意図的な誘導は、大手OTAの総収益の大きな割合を占め、高い利益率を支える重要な原動力となってきました。
自律型AIエージェントがもたらす構造的脅威
しかし2026年現在、旅行者の複雑な自然言語を理解し、主体的にタスクを実行する自律型AIエージェントの登場は、OTAの伝統的なビジネスモデルを根本から揺るがしています。バーンスタインの分析では、AIエージェントがもたらす具体的な脅威として以下の点が指摘されています。
直販への誘導と仲介機能の排除
AIエージェントは、旅行者の詳細なニーズを把握した上で、ウェブ上のあらゆる情報を横断的に検索します。OTAのプラットフォームに依存することなく、宿泊施設の公式直販サイトやニッチな専門サイトに直接アクセスして予約を完了させることが可能になるため、OTAが介在して手数料を得る機会が根本から失われるリスクが高まっています。
最安値提示率わずか15%、激化する価格競争
価格の透明化もOTAにとって深刻な脅威です。調査データによると、Booking HoldingsやExpediaなどの大手OTAブランドが、市場における「完全な最安値」のホテル料金を提示できた割合は全体の約15%にとどまっています。残りの大部分のケースでは、小規模なOTAやホテルの直販サイトがより安価なレートを提供しています。
複数の情報源からリアルタイムで価格と空室状況を取得するAIエージェントは、この真の最安値プロバイダーを瞬時に特定します。これにより、手数料の高いホテルを優先表示させて利益を得る従来のレコメンド機能は消費者に選ばれなくなり、OTAは厳しい価格競争へ引きずり込まれることになります。
予測される未来と旅行流通構造の再編
自律型AIエージェントの普及により、今後のホテル流通構造には不可逆的な変化が予測されます。
大手OTAは市場シェアを維持するために、消費者への直接的な販売(BtoC)モデルから、航空会社や金融機関、他のプラットフォームに自社の旅行在庫を提供するBtoB事業へのシフトをさらに加速させるとみられます。実際、Expediaなどの一部大手では、すでにBtoB部門が売上の3分の1以上を占めるまでに成長しており、AIによる消費者向け事業の伸び悩みリスクをヘッジする動きが顕著になっています。
一方で宿泊施設側にとっては、AIエージェントに向けて直接在庫や最適な料金を提供することで、高額なOTA手数料を回避できる絶好の機会となります。これにより大手OTAへの依存度が下がり、ホテル業界全体の利益構造が改善される可能性があります。
旅行者にとって、AIに予算や好みを伝えるだけで最適なプランが提示され、最安値で自動予約される時代はすでに到来しつつあります。利便性が飛躍的に向上する裏側で、国際旅行市場を長年支配してきた大手OTAは、かつてない規模のビジネスモデル再構築を迫られる局面を迎えています。

