APACのホテル流通市場は競争が激化し、2026年第1四半期にはAgodaがBooking.comやExpediaを抜きトップシェアを獲得しました。アジア域内旅行需要と地域特化戦略が奏功し、Agodaは主要OTAで唯一プラス成長を維持しています。また、物価高を背景にホールセラー経由の予約が103%増と急伸。ホテルは多様なチャネル管理が、旅行者は予約チャネルごとの価格比較が今後より重要になります。
ホスピタリティテクノロジー企業D-Edgeの最新レポートにより、アジア太平洋(APAC)地域のホテル流通市場における新たな動向が明らかになりました。パンデミック後の急成長期が終わりを告げ、市場全体が正常化へと向かう中、ホテル予約プラットフォーム間の競争は新たな激化の段階へと移行しています。
2026年第1四半期データが示すAgodaのトップシェア獲得
今年(2026年)第1四半期の流通データにおいて最も注目すべき変化は、主要オンライン旅行会社(OTA)の勢力図の変動です。これまで地域内で強さを誇っていたBooking.comやExpediaを抜き、AgodaがAPAC地域におけるトップシェアを獲得しました。
主要OTAが総じて苦戦を強いられる中、Agodaは主要OTAの中で唯一プラス成長を維持しており、前年同期比で13.6%増という目覚ましい伸びを記録しています。この躍進の背景には、パンデミック後に再び活発化したタイ、シンガポール、日本などにおける「アジア域内旅行」の需要を的確に捉えたことが挙げられます。モバイルファーストな操作性と、アジア市場の消費者心理に刺さる地域特化型の価格戦略が功を奏した形です。
ホールセラー経由の予約シェアが前年比103%増と急伸
OTA市場の地殻変動と並行して、流通チャネル全体でもう一つの大きな変化が起きています。旅行会社や他のOTA向けに客室を卸売りする「ホールセラー」経由の予約シェアが、前年比103%増と急激な伸びを見せています。
世界的な物価高や経済の不確実性が続く中、旅行者は少しでもお得なパッケージ商品や割引プランを求める傾向にあります。これに対応するため、様々な販売網へ在庫を広範囲に供給できるホールセラーの役割が再評価され、B2B経由での間接的な予約が大きくシェアを伸ばす要因となっています。
ホテルと旅行者への今後の影響と予測
こうした流通市場の構造変化は、ホテル側と旅行者側の双方に今後の戦略的な対応を迫るものとなります。
ホテルに求められる多様なチャネル管理
ホテルにとって、一部の巨大OTAや自社サイトへの直接予約だけに依存する販売戦略は見直しが必要となっています。今後はAgodaのような成長著しいOTAを的確に活用しつつ、前年比で倍増しているホールセラーをどのように販売ルートに組み込むかなど、多様なチャネルを最適に組み合わせる管理能力が問われます。データに基づいた緻密なチャネルミックスを行えるホテルこそが、今後の競争環境で収益性を高めていくことが予測されます。
旅行者にとっての価格比較の重要性増大
一方、旅行者にとっては、ホテルを予約するチャネルによって提供される価格やプランの違いが、今後よりいっそう顕著になる可能性が高いと言えます。OTA各社のシェア争いが激化し、ホールセラーを通じた複雑な商品展開が進むことで、同じホテルの同じ部屋であっても予約経路によって条件が大きく変わるケースが増加します。そのため、旅行者はメタサーチ(横断検索エンジン)などを賢く活用し、自身のニーズに最適な予約先を慎重に比較検討する重要性がますます高まっていくでしょう。

