Visaの調査によると、アジア太平洋地域の旅行者はAIを活用して計画的に準備を進めつつ、現地での柔軟性を重視する新たな旅行スタイルを確立しています。宿泊施設は事前予約する一方、食事やアクティビティは現地で決定する「ハイブリッドな旅」が主流で、体験の最大化が背景にあります。日本はこうした旅行者にとって人気の目的地。旅行業界は、現地でのリアルタイムな情報提供やシームレスな予約、デジタル決済環境の整備が今後一層求められます。
柔軟性を求める旅行者の新たな行動様式
Visaが2026年6月22日に発表した最新の「2026年グローバル旅行意向調査(GTI)」により、アジア太平洋地域の旅行者がデジタルトランスフォーメーションを経て、新たな旅行スタイルを確立していることが明らかになった。世界約4万7000人(うちアジア太平洋地域は約1万7000人)を対象とした本調査では、同地域の旅行者がAIなどのデジタルツールを駆使して計画的に旅行の準備を進める一方で、現地での柔軟性を重視する傾向が浮き彫りになっている。
注目すべきはAIツールの浸透である。旅行先の選定やアイデア探しにAIを活用する人は49%に達し、レビューやおすすめ情報の収集に41%、現地のツアーや体験の検索に35%がAIを利用している。不確実性の高い現代において、旅行者は旅行回数を減らすのではなく、テクノロジーを用いてより賢明かつ実用的に計画を練るようになっている。
事前手配と現地決定を使い分けるハイブリッドな旅
充実した事前リサーチが行われている一方で、実際の予約行動においては「事前手配」と「タビナカ(旅行中)手配」の明確な使い分けが進んでいる。
調査によると、宿泊施設の予約については旅行者の79%が出発前に行っている。しかし、体験アクティビティの事前予約は51%にとどまっている。さらに、現地の食事については72%、交通手段については65%が「目的地到着後」に決定されていることが判明した。
このデータは、フライトやホテルといった旅行の基盤となる部分は確実におさえつつも、旅の醍醐味であるアクティビティや食事については、その日の天候や気分、現地での出会い、AI等によるリアルタイムな情報をもとに柔軟に決めたいという旅行者の心理を強く反映している。
背景にある「体験の最大化」と日本市場への影響
こうした行動変容の背景にあるのは、旅行中の「体験を最大化したい」という強いニーズである。アジア太平洋地域の旅行者の37%は、食や文化に関連した独自の地域体験を中心に旅行を計画しており、これは世界平均の29%を大きく上回る数字となっている。
さらに、行き先として日本への関心は極めて高く、実際の旅行先として約5人に1人(19%)が日本を訪れており、今後12ヶ月間の渡航意向でも28%とトップを維持している。食や文化の多様性に富む日本は、まさに「現地での柔軟な体験」を求める旅行者にとって理想的な目的地となっている。
OTAや旅行関連サービスに求められる変革と今後の展望
この「タビナカ重視」の傾向は、今後の旅行業界に大きなパラダイムシフトを迫るものである。これまでの旅行サービスは出発前の予約獲得に注力してきたが、今後は旅行者が現地に到着してからのサポートや提案力が競争の源泉となる。
OTA(オンライン旅行会社)や旅行関連アプリには、ユーザーの現在地や嗜好、時間帯に合わせたリアルタイムなレコメンデーション機能と、そこから数タップで完了するシームレスな予約機能の統合が一層求められる。また、同調査では旅行者の73%がクレジットカードやモバイルウォレットを持参していることも示されており、タビナカでの突発的な消費意欲を逃さないためには、安全でスムーズなデジタル決済環境の整備が不可欠である。
2026年現在、旅行は「事前に完璧なスケジュールを組むもの」から「大枠だけを決めて現地でカスタマイズするもの」へと進化を遂げた。旅行者の自律性とテクノロジーが融合するなか、タビナカ市場におけるサービス提供者間の競争は今後さらに激化していくことが予測される。

