中東の観光地図を塗り替える可能性を秘めた壮大なプロジェクトが、そのベールを脱ぎ始めました。サウジアラビアが国家の威信をかけて進める巨大観光開発「紅海プロジェクト」の一環である、超高級ウェルネスリゾート「AMAALA(アマーラ)」が、2026年中に最初のゲストを迎えることが明らかになりました。これは単なるリゾートの開業ニュースではありません。石油大国が描く、持続可能性とラグジュアリーを融合させた未来の観光の姿を垣間見る、注目の動きです。
「ビジョン2030」の中核を担うAMAALAプロジェクト
AMAALAは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する国家改革計画「ビジョン2030」の象徴的なプロジェクトの一つです。この計画の目的は、石油に依存した経済構造から脱却し、観光をはじめとする多様な産業を育成することにあります。
紅海沿岸の自然保護区内に位置するAMAALAは、特に「ウェルネス」「アート」「文化」をテーマにした最高級のデスティネーションを目指しています。手つかずの自然景観と調和するように設計された豪華なホテルやプライベートヴィラ、世界トップクラスのスパ、マリーナ、現代アートのギャラリーなどが建設される予定です。
AMAALAのコンセプト
- ウェルネスとリトリート: 心身の健康と再生をテーマにした最先端のウェルネス施設やプログラムを提供。
- アートとカルチャー: 世界的なアーティストとのコラボレーションや文化イベントを開催。
- 海と自然の体験: 紅海の美しいサンゴ礁でのダイビングや、自然保護区でのアクティビティを満喫。
環境再生を掲げる「サステナブル・ラグジュアリー」
AMAALAが世界から注目される最大の理由は、その徹底した環境配慮への姿勢です。単なる「環境に優しい」ではなく、「環境を再生させる(リジェネラティブ)」というコンセプトを掲げています。
具体的な取り組みとデータ
- LEEDプラチナ認証: プロジェクトの玄関口となる「レッドシー国際空港」や、従業員の子どもたちが通う「インターナショナルスクール」は、国際的な建築物の環境性能評価システム「LEED」において、最高ランクの「プラチナ認証」を取得済みです。これは、設計から建設、運用に至るまで、極めて高い環境基準をクリアした証です。
- 100%再生可能エネルギー: リゾート全体の電力は、太陽光発電などの再生可能エネルギーのみで賄われる計画です。これにより、世界最大級の「オフグリッド」観光地が誕生します。
- 自然保護の徹底: 開発エリアは、プロジェクトが管轄する広大な土地のわずか1%未満に抑えられます。残りの99%は手つかずの自然保護区として保全され、サンゴ礁やマングローブ林などの貴重な生態系の保護・育成に力が注がれます。
最終的には、25のホテルと約3,000室の客室、900以上の住宅ヴィラやアパートメントが建設される計画ですが、そのすべてが厳格な環境基準のもとに進められています。
予測される未来と観光業界への影響
AMAALAの誕生は、世界の観光業界に大きなインパクトを与えることが予想されます。
新しい観光市場の創出
これまで観光地としてのイメージが薄かったサウジアラビアが、AMAALAを起爆剤として、世界の富裕層を惹きつける新たなラグジュアリーデスティネーションとしての地位を確立する可能性があります。これは、ドバイやカタールといった中東の既存の観光大国にとっても、新たな競争相手の出現を意味します。
「サステナブルツーリズム」の基準が変わる
環境配慮を謳うリゾートは世界中に存在しますが、国家レベルで「環境再生」を掲げ、100%再生可能エネルギーでの運営を目指すAMAALAの試みは、今後のサステナブルツーリズムの新たな基準となるかもしれません。環境への貢献を重視する旅行者にとって、罪悪感なく楽しめる究極の旅先となるでしょう。
中東全体のイメージ向上
AMAALAや紅海プロジェクトの成功は、サウジアラビアの国際的なイメージを大きく変えるだけでなく、中東地域全体の観光業の多様化と成長を促進する原動力となることが期待されます。
2026年の開業に向けて、着々と準備が進むAMAALA。それは、紅海のほとりに生まれる新しい楽園であり、サウジアラビアが世界に示す未来へのビジョンそのものです。この壮大な挑戦が、私たちの旅の価値観をどのように変えていくのか、その動向から目が離せません。

