インドのフラッグキャリアであるエア・インディアが、冬季の旅行者が直面する大きな課題「濃霧」によるフライトの混乱に対応するため、画期的な新サービス「フォグ・ケア（Fog Care）」を開始しました。これにより、特にデリーを発着する旅行者の利便性が大幅に向上することが期待されます。
濃霧による混乱を解消する「フォグ・ケア」とは
「フォグ・ケア」は、デリーのインディラ・ガンディー国際空港を発着する国内便を対象としたプログラムです。このサービスにより、濃霧が原因でフライトに大幅な遅延や欠航が発生した場合、乗客は以下の選択肢を無料で得ることができます。
- 無料での再予約: 影響を受けたフライトから72時間以内の代替便へ、追加料金なしで予約を変更できます。
- 全額返金: 旅行の継続が困難な場合、航空券の全額返金を請求できます。
このプログラムの最大の利点は、乗客が空港で長時間にわたり不確実な状況で待機する必要がなくなることです。事前にフライトの変更やキャンセルを選択できるため、より柔軟に旅行計画を立て直すことが可能になります。
導入の背景にある、深刻な「デリーの霧」問題
インド北部、特に首都デリーでは、12月から2月にかけての冬季に深刻な濃霧が頻繁に発生します。これは単なる自然現象ではなく、大気汚染物質（PM2.5など）と低い気温、湿気が組み合わさって発生する複合的な問題です。
この濃霧は視界を極端に悪化させ、航空機の離着陸に深刻な影響を及ぼします。事実、デリー空港は視界不良時でも着陸可能な最新の計器着陸装置（CAT IIIB ILS）を備えていますが、それでも対応できないほどの濃霧が発生することも少なくありません。
実際に、直近の冬季シーズンでもその影響は甚大でした。
- 2024年1月14日には、デリー空港で濃霧により約100便が欠航、300便以上が遅延するという大規模な混乱が発生し、多くの旅行者が空港で足止めされました。
- インド民間航空総局（DGCA）のデータによれば、このような混乱は毎冬のように繰り返されており、旅行者にとって大きなリスクとなっていました。
「フォグ・ケア」は、こうした構造的な問題に対し、航空会社側から乗客の不利益を最小限に抑えようとする proactive（積極的）な取り組みと言えます。
旅行者と航空業界にもたらす影響と未来
旅行者にとってのメリット
この新サービスは、旅行者にとって計り知れない安心感をもたらします。
- 計画の立てやすさ: 冬季のインド旅行、特にデリー経由の旅程を組む際の不確実性が大幅に軽減されます。
- 金銭的リスクの回避: 突然の欠航による宿泊費や交通費の追加負担といった、予期せぬ出費のリスクを避けられます。
- ストレスの軽減: 空港での長時間の待機や、情報が錯綜する中での不安から解放されます。
航空業界の新たなスタンダードとなるか
エア・インディアのこの動きは、インド国内の航空業界全体に大きな影響を与える可能性があります。
- 顧客満足度の向上: 乗客中心の姿勢を示すことで、エア・インディアのブランドイメージと顧客ロイヤルティは向上するでしょう。
- 競争への影響: IndiGoやVistaraといった競合他社も、顧客を維持するために同様のサービスを導入する可能性が考えられます。
- 世界的なモデルケースへ: 気候変動により異常気象が頻発する現代において、天候不順に対する航空会社の新しい顧客対応モデルとして、世界中の航空会社から注目されるかもしれません。
「フォグ・ケア」は、単なる旅客サービスにとどまらず、避けられない自然現象（あるいは人為的な環境問題）と共存しながら、いかに旅行者の体験を向上させるかという課題に対する一つの革新的な答えです。今後、冬のインド旅行を計画する際には、航空会社が提供するこのようなケアサービスが、航空券選びの重要な要素となることは間違いないでしょう。
