ネオンの光が砂漠の夜を昼間に変え、世界中から集まった人々の熱気と歓声が渦巻く街、ラスベガス。この街の心臓部である「ラスベガス・ストリップ」は、単なるカジノが立ち並ぶ大通りではありません。ここは、世界最高峰のエンターテイメントが集結し、毎夜、どこかで人生最高の瞬間が生まれる奇跡の舞台です。シルク・ドゥ・ソレイユの幻想的なアクロバット、伝説的なマジシャンのイリュージョン、トップスターたちの豪華絢爛なコンサート。そのどれもが、訪れる者の常識を覆し、忘れられない記憶を刻み込みます。しかし、その輝かしいステージの裏には、私たちの想像をはるかに超える技術、情熱、そして数々の興味深い物語が隠されています。この記事では、単なるショーの紹介に留まらず、あなたが「こんな秘密があったのか!」と誰かに語りたくなるようなトリビアを交えながら、ラスベガス・ストリップ究極のショー巡りの旅へとご案内します。さあ、まばゆい光の向こう側にある、エンターテイメントの真髄を覗いてみましょう。
また、ラスベガスの夜をさらに満喫したい方には、世界最高峰のショーと天空のバーで酔いしれる、大人の夜遊び完全ガイドも必見です。
ラスベガス・ショーの歴史と進化 – 砂漠のオアシスがエンタメの聖地になるまで

現在では世界中のエンターテイナーが憧れるラスベガスの舞台ですが、その歴史は案外浅く、かつ非常に劇的な展開を見せています。1940年代のラスベガスはまだ砂漠の中の小さな町に過ぎませんでした。しかし、ネバダ州がギャンブルを合法化したことにより、その運命は大きく変わりました。マフィアが資金を投じ、豪華なホテルカジノが次々と建設され始めたのです。彼らは単にギャンブル客を呼び込むだけでは不十分と考え、そこで誕生したのがカジノの収益を補填し、客をホテルに留めるための「エンターテイメント」という戦略でした。
初期のショーはコメディアンや歌手、ダンサーが出演するラウンジ・アクトが中心でした。しかし1950年代に入ると、リベラーチェのようなスターが高額な報酬で長期間公演を行い、大きな注目を集めます。彼の華やかな衣装と派手なパフォーマンスはラスベガスのイメージそのものを形作りました。さらに、フランク・シナトラ、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィスJr.ら「ラット・パック」の登場により、ラスベガスのショーは洗練された大人のエンターテイメントとしての地位を不動のものにしました。彼らがサンズ・ホテルで繰り広げた即興的かつスタイリッシュなショーは伝説となり、今もなお語り継がれています。
エルヴィス・プレスリーが築いた「レジデンシー公演」の礎
ラスベガスのショーの歩みを語るうえで、エルヴィス・プレスリーの存在は不可欠です。1969年から1976年にかけて、彼はインターナショナル・ホテル(後のラスベガス・ヒルトン、現ウェストゲート)で実に636回もの公演を満員御礼で成功させました。これにより「レジデンシー(長期常設)公演」という形式が確立されました。ツアーのように毎週航空機で移動するのではなく、一つの会場で最高の設備と演出の下、パフォーマンスに集中できるこの形式はアーティストにとっても観客にとっても理想的なものでした。エルヴィスの成功がなければ、後にセリーヌ・ディオンやブリトニー・スピアーズ、そして現在のアデルやU2といったトップスターたちによるレジデンシー公演は生まれなかったかもしれません。
巨大化とスペクタクル化の時代へ
1980年代に入り、マフィアの影響力が弱まると、大手企業がカジノ経営に参入しました。ホテルはテーマパーク化し、より家族向けのエンターテイメントが求められるようになりました。その流れの中で登場したのが、イリュージョニストのジークフリート&ロイです。彼らはホワイトタイガーを取り入れるなど、動物とマジックを融合させた壮大なスペクタクルショーで世界を驚かせ、ラスベガスのショーの規模を飛躍的に拡大させました。そして1990年代、カナダからやってきたある集団がラスベガスのエンターテイメントに革命をもたらします。それがシルク・ドゥ・ソレイユです。動物を使わず、人間の身体能力の限界を追求した芸術的なパフォーマンスは、それまでのラスベガス・ショーの常識を覆し、「ショーの都」としての地位を確固たるものにしました。単なるカジノの集客手段から、それ自体が目的地となる世界最高峰の芸術へ。ラスベガスのショーは街の歴史とともに、不断の進化を遂げ続けているのです。
水と炎のスペクタクル – シルク・ドゥ・ソレイユの最高傑作たち
ラスベガスを訪れる多くの旅行者が、訪問の主な目的の一つとして挙げるのがシルク・ドゥ・ソレイユのショーです。ストリップには複数のシルク専用劇場が存在し、それぞれ独自のコンセプトで観客を非日常の世界へと誘います。なかでも特に「必見」とされる傑作を、制作秘話や興味深いトリビアとともにご紹介いたします。
『O(オー)』- 水が織り成す幻想の世界
ベラージオホテルの中心に位置する『O』の劇場に一歩足を踏み入れれば、その荘厳な空気感に息を飲むことでしょう。まるでヨーロッパのオペラハウスを思わせる空間の真ん中には、カーテンで覆われた舞台が広がります。しかしショーがスタートすると、このステージは瞬く間に巨大なプールへと変貌します。フランス語の「水(eau)」と同じ発音を持つ『O』は、まさに水をテーマにした壮大かつ詩的なスペクタクル。元オリンピック選手のシンクロナイズドスイマーから世界クラスのダイバー、アクロバット芸術家まで85名のパフォーマーが、水上と水中を縦横無尽に駆け巡り、もはやサーカスの枠を超えた芸術の境地へと誘います。
誰かに話したくなる『O』のトリビア
この夢のような舞台は、驚くべき技術力と緻密な管理体制に支えられています。まず、ステージとなるプールの水量は約570万リットルもあり、その水温は常時摂氏31度に保たれています。これはパフォーマーの体温低下を防ぎ、筋肉を柔軟に保つために最適な温度設定です。さらに驚くべきは、水中に設置された7基の油圧リフト。これにより、深さが7.6メートルに及ぶプールは、ほんの数秒で完全に乾いたステージに変わります。観客は今立っているのが水中なのか地上なのか、境界さえ見失うほどの幻想が目の前で展開されるのです。
パフォーマーの安全やコミュニケーションも徹底されています。水中にはスピーカーが設置され、パフォーマーたちは水中にいても音楽や合図を鮮明に受け取れます。また、ステージ下には「パフィンルーム」と呼ばれる酸素供給システムがあり、ダイバーはここで呼吸を整えることが可能です。出演者全員がスキューバダイビングのライセンスを持っている点も注目に値します。衣装は速乾性のある特注素材で、塩素による色あせを防止する特殊加工が施されています。メイクもウォータープルーフ仕様で、水中でも落ちることなく丁寧に仕上げられているのです。約2時間の夢幻の世界の裏側には、これほど膨大な努力と技術が隠されているのです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 公演場所 | ベラージオ ホテル & カジノ (Bellagio Hotel & Casino) |
| 上演時間 | 約90分(休憩なし) |
| 公演日 | 週5日(水曜日〜日曜日)※変更の可能性あり |
| 公演時間 | 19:00、21:30 の1日2回公演 |
| 料金目安 | $99〜$350以上(座席や時期により大幅に変動) |
| 特徴 | 水をテーマにした壮大なスペクタクル。高い芸術性を誇り、大人向けのショー。 |
『KÀ(カー)』- 帝国を巡る壮大な冒険叙事詩
MGMグランドが誇る『KÀ』は、シルク・ドゥ・ソレイユの中でも特に物語性を重視した作品です。架空の古代アジア風帝国を舞台に、双子の兄妹が邪悪な軍勢から逃れ、運命に立ち向かう冒険譚が繰り広げられます。最大の特徴は、劇場中央に鎮座する巨大で多機能なステージ。このステージは単なる床ではなく、戦場であったり垂直の崖であったり、大海を表現したりと、360度回転し、傾斜しながら物語の世界観を自在に創り出します。
誰かに話したくなる『KÀ』のトリビア
『KÀ』のステージは現代技術の粋を集めたものです。その重量は約113トンにも及び、これは大型旅客機ボーイング747の胴体部分に匹敵します。巨大な構造物が、5基の油圧リフトと10本のケーブルによって動き、まるで無重力空間にいるかのように滑らかかつダイナミックに稼働します。特にステージが90度の垂直壁となり、その上でパフォーマーが激しいバトルを繰り広げるシーンは圧巻。観客はまるで映画のクライマックスを真上から見下ろすような、未体験の視覚体験を得られます。
安全管理も徹底されており、パフォーマーは衣装の下に精巧なハーネスを着用。ワイヤーで制御され、ステージからの落下防止に役立っていますが、その存在は巧みに衣装に溶け込み、観客にはほとんど気づかれません。さらに、ステージには80以上の小穴があり、そこから滑り出るペグがパフォーマーの掴まりを支え、垂直壁でのリアルな戦闘シーンを可能にしています。人間プロジェクションマッピングや客席上空を舞う空中ブランコの技も、この驚異的なステージ機構と相まって壮大な物語を紡ぎ出します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 公演場所 | MGMグランド (MGM Grand) |
| 上演時間 | 約90分(休憩なし) |
| 公演日 | 週5日(土曜日〜水曜日)※変更の可能性あり |
| 公演時間 | 19:00、21:30 の1日2回公演 |
| 料金目安 | $69〜$250以上(座席や時期により大幅に変動) |
| 特徴 | 物語性豊かで巨大な可動式ステージが魅力。アクションや冒険好きにおすすめ。 |
『Michael Jackson ONE(マイケル・ジャクソン・ワン)』- キング・オブ・ポップへの究極の賛辞
キング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンの音楽と魂は、マンダレイ・ベイで上演される『Michael Jackson ONE』の中でいまだ鮮やかに息づいています。このショーは単なるトリビュートコンサートにとどまらず、マイケルの名曲群に乗せて、シルク・ドゥ・ソレイユが誇るアクロバティックなパフォーマンスと最先端映像技術が融合。彼の理念である「愛、平和、結束(ONE)」を体現した感動的な物語を紡ぎます。4人の若者がマイケルの魔法のアイテムをめぐる冒険を進める中で、「Thriller」や「Billie Jean」、「Smooth Criminal」などの名曲が新たな輝きを放って蘇ります。
誰かに話したくなる『Michael Jackson ONE』のトリビア
このショーの没入感を支える重要な要素の一つがサウンドシステムです。劇場内の各座席のヘッドレストには合計3つものスピーカーが組み込まれています。これにより、観客はまるで自分専用のヘッドフォンで聴いているような立体的かつパーソナルな音響体験が可能です。マイケルの息づかいや曲中の細かい効果音が直接届き、音楽との一体感を最大限に高めています。合計5,800個以上のスピーカーで構成されるこの空間は、まさに音の聖域と呼ぶにふさわしいでしょう。
ハイライトのひとつは「Man in the Mirror」のシーンで、ホログラム技術によりマイケルがステージに鮮やかに登場する演出です。まるで彼が実際にその場にいるかのようなリアリティに、多くのファンが感動の涙を流します。この映像は彼の生前のパフォーマンス映像をベースに最新技術で再創造されました。また、ショーのタイトル『ONE』は、マイケルが生涯を通じて訴え続けた「We are all one(私たちは皆ひとつ)」という哲学から取られています。衣装や小道具にもマイケルへの敬意が込められ、アイコニックな手袋や帽子をモチーフにしたデザインが随所に散りばめられています。これにより彼の音楽と精神がショーの隅々に息づいていることが実感できます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 公演場所 | マンダレイ・ベイ リゾート & カジノ (Mandalay Bay Resort & Casino) |
| 上演時間 | 約90分(休憩なし) |
| 公演日 | 週5日(木曜日〜月曜日)※変更の可能性あり |
| 公演時間 | 19:00、21:30 の1日2回公演 |
| 料金目安 | $69〜$200以上(座席や時期によって大きく変動) |
| 特徴 | マイケル・ジャクソンの音楽とシルクのパフォーマンスが融合した感動的なショー。ファンでなくとも楽しめる内容。 |
魔法とイリュージョンの夜 – 世界が驚愕するマジシャンたち

ラスベガスは、シルク・ドゥ・ソレイユのような巨大なプロダクションだけが輝きを放つ場所ではありません。古くからここは、世界屈指のマジシャンたちが技を競い合う、魔法の聖地として知られてきました。観客の直前で常識を覆し、不可能を可能に変えるイリュージョニストたちの演技は、今なお多くの人々の心を惹きつけています。
デビッド・カッパーフィールド – 生ける伝説のイリュージョニスト
デビッド・カッパーフィールド。その名前は、もはや「マジック」という言葉の代名詞とも言えます。長年にわたりMGMグランドでレジデンシー公演を行う彼は、まさしく「生ける伝説」と称されます。自由の女神を消し去り、万里の長城を貫通し、グランドキャニオンの上空を飛んだ彼の伝説は語り草です。彼のショーは単なるトリックの披露にとどまらず、巧みな物語構成と観客との深い交流を通じて、誰もが子どもの頃に夢見た「魔法が現実にあるかのような」感覚を味わわせてくれます。ステージでは、巨大な宇宙人の登場や、観客が突然消え、劇場の全く異なる場所から現れるなど、大規模なイリュージョンが次々と繰り広げられます。
誰かに話したくなるカッパーフィールドのトリビア
彼の魔法の秘密は、ラスベガスの中心から離れた場所にある巨大な倉庫に隠されています。広さは約5,600平方メートルにも及び、「国際奇術博物館・図書館」と名付けられています。ここには、彼がこれまでのキャリアで創り出した数々のイリュージョン装置や小道具のほか、伝説的な奇術師フーディーニの遺品を含む世界中から集められた貴重なマジック関連コレクションが保管されています。その価値は計り知れず、まさにマジック界のルーブル美術館と呼べる場所です。一般公開はされていませんが、ここが彼の想像力の源泉となっています。
ショー中、彼は観客を舞台に招くことがよくありますが、その選び方は無作為に見えて実は違います。多年の経験による鋭い人間観察眼と心理学的テクニックを駆使して、ショーの流れに最も適した人物を瞬時に見抜いていると言われます。また、彼は観客とのやりとりを非常に重視しています。単に「見るだけ」ではなく「魔法の一部になった」と実感させることが、イリュージョンの感動を何倍にも高めると理解しているためです。彼の公演は、トリックの巧妙さに加え、人間らしい温かみのあるパフォーマンスが、忘れ難い体験を生み出しています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 公演場所 | MGMグランド (MGM Grand) |
| 上演時間 | 約90分(休憩なし) |
| 公演日 | 毎日 |
| 公演時間 | 19:00、21:30(土曜日は16:00の追加公演あり) |
| 料金目安 | $75〜$200以上(座席や時期により変動) |
| 特徴 | 伝説的イリュージョニストによる正統派マジックショー。物語性が豊かで感動体験が得られる。 |
ペン&テラー – 常識を覆すアンチ・マジシャンのコンビ
一般的には、マジックショーは秘密に満ちた不可解な現象を楽しむものですが、その常識を根底からひっくり返す異色のコンビが存在します。リオ・ホテルにて長期公演を行うペン&テラーです。身長の高いおしゃべりなペン・ジレットと、低姿勢で全く話さないテラーの二人。彼らのショーは、時にマジックの種明かしを交えながら進行するという前例のないスタイルで知られています。しかし、種明かしを知っても彼らの卓越した技術、ユーモア、そして観客心理を巧みに操るパフォーマンスにより、驚きはまったく損なわれません。むしろ「やり方がわかっているのに、それでも騙される」という新たな次元のエンターテインメントが楽しめます。
誰かに話したくなるペン&テラーのトリビア
多くの人が疑問に思うのが、「なぜテラーは一言も話さないのか?」という点です。これは単なる演出ではありません。彼らがキャリアを始めた当初、静かな環境でマジックを披露していた際、テラーが無言でいることで観客が彼の動きや表情により集中することに気づきました。言葉を発しないことで彼の存在感が増し、パフォーマンスの緊張感が引き上げられる。この発見こそが、彼の「サイレント・パフォーマー」としてのスタイルの礎となりました。なお、プライベートでは普通に話します。
彼らは自身のショーを「正直なマジック」と呼びます。観客を欺くのではなく、知的なゲームとして楽しんでもらいたいという考えからです。そのため、超能力や霊的な力の存在を完全に否定し、すべては技術と心理的ミスディレクション(観客の注意を逸らす手法)によるものだと明言しています。ショーの終了後には必ずロビーに出てファンとミート&グリートを行うのも彼らの特徴です。これは、スターとして崇められるのではなく、観客と同じ目線でエンターテインメントを共有したいという誠実な姿勢の表れなのです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 公演場所 | リオ オールスイート ホテル & カジノ (Rio All-Suite Hotel & Casino) |
| 上演時間 | 約90分(休憩なし) |
| 公演日 | 週5日(主に土曜日〜水曜日、変動の可能性あり) |
| 公演時間 | 21:00 |
| 料金目安 | $85〜$150以上(座席や時期により変動) |
| 特徴 | マジックのタネ明かしも交える異色コンビ。コメディ要素が強く、知的で刺激的な驚きを味わえる。 |
音楽と感動の渦へ – 一夜限りの伝説からレジデンシー公演まで
ラスベガスはシルクやマジックだけでなく、音楽の聖地としても知られています。エルヴィス・プレスリーが築いたレジデンシー公演は、今や世界のトップアーティストが自身のキャリアの集大成として挑む、最高峰のステージとなりました。ツアーとは異なり、ラスベガスならではの豪華かつ革新的な音楽体験が待ち受けています。
アデル、U2、ケイティ・ペリー──なぜトップスターはラスベガスを選ぶのか?
かつては「キャリアの終着点」と揶揄されたラスベガスのレジデンシー公演ですが、セリーヌ・ディオンがシーザーズ・パレスのコロシアムで大成功を収めて以来、そのイメージは一変しました。現在では、アデル、U2、ブルーノ・マーズ、レディー・ガガ、ケイティ・ペリーなど、最前線で活動するトップアーティストがこぞってラスベガスで長期公演を展開しています。
その背景には、アーティストと観客の双方にとって大きなメリットがあることが挙げられます。アーティストは、絶え間ない都市間移動の過酷なツアー生活から解放され、心身ともにベストな状態でパフォーマンスに専念できます。さらに一つの劇場専用に設計されているため、音響や照明、舞台装置がアーティストの世界観を完璧に表現できるように作り込まれています。観客にとっても、スタジアムやアリーナツアーよりも格段に親密な空間で、お気に入りのアーティストの演奏を間近に楽しめるという利点があります。ラスベガスのレジデンシー公演はもはや単なるコンサートを超え、そのアーティストの世界に深く浸れる究極の没入型エンターテインメントといえるでしょう。
知っておきたいレジデンシー公演の豆知識
このレジデンシー公演ブームの先駆けとなったのが、セリーヌ・ディオンのショー『A New Day…』。2003年にシーザーズ・パレスは約9500万ドルを投じて、4000席以上を擁する専用劇場「ザ・コロシアム」を建設しました。この劇場は世界最高レベルの音響設計が施されており、どの座席からでも完璧な音響体験ができるよう綿密に計算されています。
そして2023年には、球体型アリーナ「スフィア(Sphere)」の登場がラスベガスのエンターテインメント史に新たな章を刻みました。アイルランドの伝説的ロックバンドU2のこけら落とし公演で世界を驚かせたこの施設は、まさに最先端の未来型エンターテインメント空間です。外壁と内部の壁面は世界最大かつ最高解像度のLEDスクリーンで覆われ、その面積はサッカーコート2面分以上。解像度は16K×16Kと圧倒的な高精細さを誇り、現在の家庭用テレビとは比較にならないレベルです。観客は音楽とともに360度の映像に包まれ、まるで異次元にいるかのような没入感を味わえます。建設費は約23億ドル(約3400億円以上)にのぼり、ラスベガス史上最も高額な建築物のひとつとなりました。このスフィアの誕生によって、ラスベガスの音楽エンターテインメントは新たな次元へと進化を遂げています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 主な公演会場 | ザ・コロシアム(シーザーズ・パレス)、ドルビー・ライブ(パークMGM)、レジデンツ・ワールド・シアター、スフィア など |
| 出演アーティスト | 時期により異なる(アデル、U2、レディー・ガガ、ブルーノ・マーズなど) |
| 料金の目安 | アーティストや座席により大きく異なる($100〜$1,000以上) |
| 特徴 | 世界トップアーティストによる長期レジデンシー公演。ツアーでは味わえない豪華演出が魅力。 |
ブルーマン・グループ──言葉を超えたエンターテインメント
全身を真っ青に塗った3人組のパフォーマー、ブルーマン・グループは、言葉を使わず音楽、コメディ、アート、テクノロジーを融合させたジャンルレスなショーで世界中を魅了しています。彼らの公演はルクソール・ホテルで開催されており、奇妙で手作り感あふれる楽器によるリズミカルな音楽、観客を巻き込んだユーモラスなやり取り、時折織り込まれる鋭い社会風刺などが特徴です。言語に依存しないため、国籍や年齢を問わず誰もが直感的に楽しめるのも大きな魅力です。
ブルーマンにまつわる面白トリビア
トレードマークの青い肌は、特定の国籍や人種、文化を連想させず、普遍的な「人間(ヒューマン)」を象徴しています。彼らは誰もが持つ好奇心や遊び心の化身といえる存在です。ステージで使われる塗料や、口からマシュマロを飛ばすパフォーマンスに用いられる食材はすべて食用で、安全性が考慮されています。また、彼らが打楽器として使用する多くの奇妙な楽器は、塩化ビニル管(PVCパイプ)など身近な素材から独自に製作されたもの。身近な物を楽器に変換する発想力が、ブルーマンの創造性の源泉です。
ショーは観客参加型で、自分がステージに呼ばれるかもしれないというドキドキ感も楽しめます。しかし、即興に見えるやり取りも実際には観客の反応を予測し、複数のシナリオを用意した綿密な計算のもとで演出されています。言葉を使わないことで、人間の普遍的な感情やコミュニケーションの本質を鋭く描き出すことができるのです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 公演場所 | ルクソール ホテル & カジノ (Luxor Hotel & Casino) |
| 上演時間 | 約90〜105分(休憩なし) |
| 公演日程 | 毎日開催 |
| 公演開始時間 | 19:00、21:30(時期により変動あり) |
| 料金の目安 | $59〜$150以上(座席や時期により変動) |
| 特徴 | 音楽、コメディ、アートが融合した独特のパフォーマンス。言葉がわからなくても楽しめる。 |
ショーだけじゃない!ストリップを彩る無料エンターテイメント

ラスベガス・ストリップの魅力は、高額なチケットが必要なショーだけにとどまりません。街を歩くだけで、無料で世界クラスのエンターテインメントに触れられるのも、この街ならではの魅力です。ショーの合間やディナーのあとに、ぜひ立ち寄ってみてください。
ベラージオの噴水ショー – 砂漠に咲き誇る水の花
ラスベガスの象徴の一つといえるのが、ベラージオホテル前の巨大な人工湖で行われる噴水ショーです。フランク・シナトラの甘美な歌声やルチアーノ・パヴァロッティの荘厳なオペラ、ティエストのエネルギッシュなダンスミュージックなど、多彩な音楽に合わせて、水がまるで生きているかのように優雅かつ力強く踊ります。その幻想的な光景は道行く人々を足止めし、皆が魅了されるほどです。
誰かに話したくなるベラージオ噴水の裏話
このショーの規模は私たちの想像をはるかに超えています。湖に設置されたノズルは1,200以上にも及び、その中には約140メートルもの高さに水を吹き上げる「ハイパーシューター」と呼ばれる強力な噴射口も含まれています。これは47階建てのビルに相当する高さです。ショーのプログラムは30種類以上あり、毎回ランダムに選ばれるため、訪れるたびに異なる表情を楽しめます。また、複雑なシステムを維持するため、専門のダイバーが定期的に湖に潜ってノズルの点検や清掃などのメンテナンスを行っています。この世界的に有名な無料ショーの建設費は約4,000万ドル(約60億円以上)とされており、ラスベガスがエンターテイメントにかける情熱がひしひしと伝わってきます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 開催場所 | ベラージオ ホテル&カジノ前の人工湖 |
| 開催時間 | 月〜金:15:00〜24:00、土日祝:12:00〜24:00(平日は30分ごと、19時以降は15分ごとに開催) |
| 料金 | 無料 |
| 特徴 | ラスベガスを象徴する音楽と光、水の壮麗なスペクタクル |
ミラージュのボルケーノ – 夜空を燃やす炎の幻想
※注:ボルケーノショーは2022年に終了し、現在は鑑賞できませんが、ラスベガスの歴史を語るうえで欠かせない存在として紹介します。
かつてミラージュホテル前では、毎晩火山が噴火する迫力満点のショーが繰り広げられていました。穏やかな滝が流れるラグーンが突然轟音と共に火を吹き、高さ30メートルを超える炎が夜空を染め上げる光景は圧巻でした。炎の熱が観客が立つ歩道にまで届くかのような臨場感は、多くの観光客に強烈な印象を与えました。
誰かに話したくなるボルケーノの逸話
このショーのために、インドを代表する作曲家ザキール・フセインと伝説的ロックバンド「グレイトフル・デッド」のドラマー、ミッキー・ハートがオリジナル音楽を制作しました。トライバルなリズムと火山の轟音が融合した音響は、ショーの迫力をより一層引き立てました。また、ショー中に漂う独特の香りについては、「ピニャ・コラーダの香りがつけられている」という都市伝説もあります。これは天然ガス特有の匂いを隠し、南国の雰囲気を演出するための工夫だったとされています。大量の水と天然ガスを使ったこの壮大な無料ショーは、ラスベガスの過剰ともいえるサービス精神の象徴でした。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
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| 開催場所 | ザ・ミラージュ前 ※現在は終了 |
| 特徴 | 30年以上にわたりストリップの夜を彩った炎と音楽のショー。ラスベガスの歴史の一端。 |
究極のショー巡りのための実践的アドバイス
数多くの魅力あふれるショーの中から、自分にぴったりのものを選び、最高の体験を味わうためには、いくつかのポイントがあります。旅の締めくくりとして、あなたのショー観賞を成功に導く実用的なアドバイスをご紹介します。
チケットの賢い入手方法
ラスベガスのショーチケットはさまざまな方法で購入可能です。最も確実なのは、各ショーの公式サイトや宿泊ホテルの公式ページから直接予約すること。特に人気のあるショーや良い席を確保したい場合は、日本にいる間に早めに予約するのがおすすめです。
現地で予定を調整したい場合や、少しでもお得にチケットを購入したければ、「Tix4Tonight」などのディスカウントチケットブースを活用する手もあります。ストリップ通りの各所に設置されており、当日の売れ残りチケットを割引価格で販売しています。ただし、人気ショーは取り扱いがなかったり、すぐに売り切れてしまうこともあるため、ご注意ください。また、宿泊先のホテルのコンシェルジュに相談するのも賢い方法です。彼らはショー情報に精通しており、時には一般には公開されていない良席を手配してくれることもあります。
ドレスコードは気にしなくて大丈夫?
「ラスベガスのショーにはフォーマルな服装が必要?」と不安に感じる方もいるかもしれませんが、ほとんどのショーには厳しいドレスコードはありません。Tシャツにジーンズ、スニーカーといったカジュアルな服装でも問題なく入場できます。ただ、せっかくの機会なので、少しおしゃれをして出かけるとより気分も高まります。スマートカジュアル(襟付きシャツやブラウス、きれいめなパンツやスカートなど)が無難でおすすめです。なお、劇場内は冷房が効いていることが多いので、特に夏場でも羽織るものを一枚持参すると快適に過ごせます。
ショーの前後も楽しもう
ショーの体験をより充実させるために、その前後の時間も計画に組み込んでみましょう。多くのホテル内レストランでは、ショーの開演前にお得な「プレシアターメニュー」を用意していることがあります。早めに食事をとってゆっくりとリラックスし、余裕を持って劇場に向かうのはとても優雅な過ごし方です。
ショー終了後は、その感動に浸りながらホテルの洗練されたバーやラウンジで一杯いかがでしょう。パフォーマンスについて語り合ったり、翌日の計画を立てたりするのにも最適です。眠らない街ラスベガスでは、ショーが終わっても夜はまだ始まったばかり。煌びやかなショーの記憶を胸に、ラスベガスの夜を心ゆくまで満喫してください。

