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    七つの丘の古都アンマン 歴史と生命力を味わう、ヴィーガン&ハラール美食紀行

    中東の心臓部に位置し、悠久の歴史を刻む国、ヨルダン。その首都アンマンは、七つの丘の上に築かれた、白亜の迷宮のような都市です。古代ローマの遺跡が現代の喧騒と隣り合わせに佇み、丘の斜面を埋め尽くす石灰岩の家並みは、夕暮れ時には蜂蜜色に染まります。新市街の洗練された雰囲気と、ダウンタウンの活気あふれる雑踏。そのコントラストこそが、アンマンの尽きない魅力なのかもしれません。この街には、ただ歴史が眠っているだけではなく、今を生きる人々の力強い生命力と、旅人を温かく迎え入れる豊かな食文化が息づいています。今回は、そんなアンマンの魂に触れる旅へ。古代遺跡の石畳を歩き、心と体を満たすメゼ文化、ヴィーガンやハラールといった食の叡智に深く触れる体験をお届けします。さあ、時を超えた美食の旅へと、ご一緒に出発しましょう。

    中東の歴史と文化に触れる旅をさらに深めたい方は、エルサレム旧市街を巡る魂の旅路もご覧ください。

    目次

    アンマンの第一印象、白亜の丘と人々の息遣い

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    クイーン・アリア国際空港に降り立ち、市内へ向かう車窓から見える風景は、果てしなく広がる乾いた大地と、点在するオリーブの木々が印象的です。しかし、アンマンの中心部に近づくにつれて、その景色は劇的に変化します。あらゆる丘が白い箱型の建物でぎっしりと覆われており、石灰岩製の家々が太陽の光を反射してまばゆく輝いています。「七つの丘の都市」という呼び名が決して誇張ではないと感じる瞬間です。各丘には固有の名前があり、街はまるで立体迷路のように広がっています。

    私の拠点は新市街と旧市街(ダウンタウン)のほぼ中間地点でした。この街の魅力は、二つの側面が共存している点にあります。新市街には近代的な高層ビルやラグジュアリーホテル、おしゃれなカフェが軒を連ね、まるで欧米の都市と見紛う洗練された雰囲気が漂っています。一方、谷間に広がるダウンタウンは、中東独特の活気が凝縮された場所です。ひしめき合う商店、鳴り響くクラクション、スパイスの芳醇な香り、そして人々の活気あふれる声が混ざり合います。この喧騒の中に身を置くと、遠く異国の地にいることを実感せずにはいられません。

    工学部出身の私にとって、この街の構造そのものが非常に興味深い対象でした。急な坂の斜面に、どうやってこれほど多くの建物が築かれたのか。古い建物と新しい建築物がまるでパッチワークのように組み合わさり、複雑な道路網がそれらをつなぎ合わせています。そこには長い年月をかけて人々が積み重ねてきた生活の知恵と、都市が有機的に成長してきた軌跡が垣間見えました。現代の高度な技術が発展した時代においても、この地形に根ざした街の姿にはどこか人間らしい温もりが感じられます。夕暮れ時、街中のモスクからアザーン(礼拝の呼びかけ)が響き渡ると、白亜の都市は幻想的な光景に包まれます。その音色は、この街が秘める精神的な側面を静かに語りかけてくれるかのようでした。

    時の回廊を歩く、ジャバル・アル・カラアの丘へ

    アンマンの歴史を身近に感じたいなら、まず訪れるべき場所がジャバル・アル・カラア、通称「アンマン・シタデル」です。市の中心に位置するこの丘は、まさにアンマンの起源の地と言えます。紀元前1800年頃の青銅器時代から人々がこの地に住み始め、その後もローマ帝国、ビザンツ帝国、イスラム王朝のウマイヤ朝など、さまざまな文明がこの丘に足跡を刻んできました。

    丘の頂上に続く道を上ると、まず目に入るのが巨大なヘラクレス神殿の遺跡です。西暦162年から166年の間にローマ皇帝マルクス・アウレリウス時代に建設されたこの神殿は、かつてアンマンが「フィラデルフィア」と呼ばれていたローマ都市であったことを物語っています。現在残るのは数本の巨大な柱とその土台だけですが、その壮大なスケールは圧巻です。柱の直径は両腕を広げても届かないほどで、古代の建築技術の高さに驚かされます。どのような技術や計算を駆使して、これほど巨大な石材を運び組み上げたのか、その精緻な設計思想は現代の工学にも通じる普遍的な美と力強さを感じさせます。

    神殿の近くには巨大な手の彫刻の一部が残っており、これはかつて神殿内にあったであろう高さ12メートルを超すヘラクレス像のものと考えられています。指一本の大きさが人の背丈ほどもあることから、完成した像の壮大さを想像させ、訪れる者の想像力を掻き立てます。

    ウマイヤド・パレスの静かな美しさ

    ヘラクレス神殿から少し歩くと、8世紀初頭に建てられたウマイヤ朝の宮殿跡であるウマイヤド・パレスが姿を現します。修復された美しいドーム型の謁見の間は、シタデルを代表する建築物です。内部に足を踏み入れると、その静寂な空気が心を浄化するかのように感じられます。木組みで構成されたドームは精巧で、柔らかな光が差し込む空間は訪問者を優しく包み込みます。イスラム建築ならではの幾何学的美と静けさが融合したこの場所で、かつてどのような政治や文化が花開いたのかに思いを馳せると、時間の流れがゆったりと感じられるでしょう。

    宮殿跡の周囲には住居跡や貯水槽も残されており、古代の人々の生活の一端を垣間見ることができます。シタデルの丘は単なる遺跡の集合体ではなく、多様な時代を生きた人々の営みが重層的に積み重なった大きなタイムカプセルのような場所です。

    丘の上からの絶景、アンマンを一望

    シタデルの最大の魅力の一つは、丘の頂上から望むアンマンの360度パノラマビューです。眼下に広がるのは谷間のダウンタウン、丘の斜面に続く白い住宅群、そして古代ローマ劇場がまるで巨大な器のように鎮座する様子です。遠くには近代的なビル群も霞み、街の新旧のコントラストが一望できます。特に夕暮れ時は格別で、西に傾く太陽の光が街を黄金色に染め始めると、あちこちのモスクからアザーンが一斉に響き渡ります。その荘厳な響きは丘を越えて風に乗り、街全体を包み込むかのようです。この瞬間こそ、この土地が持つ霊的なエネルギーを肌で感じる、忘れがたい体験となるでしょう。

    スポット名ジャバル・アル・カラア(アンマン・シタデル)
    所在地Jebel Al Qala’a, Amman, Jordan
    営業時間8:00~19:00(夏季)、8:00~16:00(冬季)※ラマダン期間は変更あり
    入場料ヨルダンパスに含まれる(単独購入の場合は要確認)
    見どころヘラクレス神殿、ウマイヤド・パレス、ヨルダン考古学博物館、アンマン市街のパノラマビュー
    注意事項丘の上は日差しを遮るものが少ないため、帽子やサングラス、日焼け止めの準備が必須。足元が不安定な場所もあるので歩きやすい靴をおすすめします。

    古代の歓声が響く、ローマ劇場の壮大さ

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    シタデルの丘から見下ろす巨大なローマ劇場。この遺跡は、ダウンタウンの喧噪の中にあってまるで時が止まったかのように佇んでおり、アンマンを訪れる多くの人々をその壮大さで魅了します。西暦2世紀に建てられ、ヘラクレス神殿と同じくローマ都市フィラデルフィアの時代に属するとされ、約6000人もの観客を収容できたと伝えられています。

    劇場の前に立つと、その規模の大きさと急勾配に驚かされます。すり鉢状に広がる観客席は丘の斜面を巧みに活用して造られており、古代ローマ人の高度な土木技術を垣間見ることができます。一段一段石の階段を昇るごとに視界が開け、やがてダウンタウンの街並みを眼下に望めるようになります。最上段まで登りきるとかなりの高さで、足がすくむほどの迫力がありますが、そこから見下ろす舞台とアンマンの街並みはまさに圧巻です。

    この劇場の最大の特徴の一つは、完璧な音響設計にあります。舞台中央の特定のポイントで声を発すると、マイクなしでも最上段の観客席まで鮮明に声が届くといわれています。実際に試してみると、自分の声が劇場全体に響き渡り、古代の俳優や演説者たちがこうして大勢の聴衆に声を届けていたのだと、時を超えた繋がりを実感できます。現代の音響機器がなかった時代に、これほど精緻な設計がなされていたことに改めて敬意を抱かずにはいられません。

    現在も、このローマ劇場はコンサートやイベント会場として活用されることがあります。古代の遺構が現代の文化活動の舞台として息づいているのも、アンマンという都市が過去と現在を見事に共存させている証と言えるでしょう。

    劇場の両側には「ヨルダン民俗博物館」と「ヨルダン伝統文化博物館」が隣接しており、ベドウィンの伝統衣装や生活用具、パレスチナ刺繍など、この地に息づく豊かな文化を知ることができる貴重なスポットです。ローマ劇場の壮大さを堪能した後は、ぜひこれらの博物館にも訪れて、ヨルダンの人々の暮らしや歴史により深く触れてみることをおすすめします。

    スポット名ローマ劇場 (Roman Theatre)
    所在地Al-Hashemi St., Amman, Jordan
    営業時間8:00~20:00(夏季)、8:00~17:00(冬季)※ラマダン期間は変更の場合あり
    入場料ヨルダンパスに含まれる(単独購入時は要確認)
    見どころ約6000人収容の広大な観客席、優れた音響効果、隣接する博物館
    注意事項観客席の階段は急で段差も大きいため昇降時には注意が必要です。特に高い位置からの眺めは素晴らしいですが、高所が苦手な方は無理せず安全を優先してください。

    メゼの饗宴、心と体を満たすヴィーガン&ハラールの食文化

    アンマンの歴史的な遺跡を訪れて、その壮大さに心を動かされた後は、この街のもう一つの魅力である「食」の世界へと足を踏み入れてみましょう。ヨルダンを含む中東地域には、「メゼ」と呼ばれる豊かな食文化が根付いています。これは、小皿に盛られた多彩な料理をテーブルに並べ、皆で分かち合いながら楽しむスタイルを指します。メゼは単なる食事の場ではなく、人々が集い、語り合い、絆を深める大切なコミュニケーションの場でもあるのです。

    このメゼの文化は、健康志向や食の多様性を大切にする現代の私たちにとって、多くの示唆を与えてくれます。特にヴィーガンやベジタリアン、そしてハラールに興味を持つ方にとって、アンマンはまさに食のパラダイスと言えるでしょう。

    ハラールとヴィーガンの調和する世界

    ヨルダンはイスラム教が主な宗教であるため、食文化はハラール(イスラム法で許されたもの)を基本としています。これは豚肉やアルコールの摂取が禁じられていることを意味し、街のレストランで提供される料理は基本的にハラールに準じています。一方で、ヨルダン料理はひよこ豆やレンズ豆などの豆類、新鮮なナスやトマト、パセリ、オリーブオイルに加え、香り豊かなスパイスをたっぷりと使います。そのため、肉や魚を使わない植物性の料理が非常に豊富で、多くは自然とヴィーガン仕様になっているのです。これは戒律や信条だけでなく、この土地の気候や風土が育んだ、持続可能で身体にも優しい食の知恵ともいえます。

    彩り豊かで五感で楽しむメゼの世界

    レストランのテーブルに次々と運ばれてくるメゼの小皿は、まるで色鮮やかな絵具のパレットのようです。ここで、代表的なヴィーガン・メゼをいくつかご紹介します。

    • フンムス (Hummus): 日本でもおなじみのひよこ豆のペーストですが、本場の味は格別です。なめらかでクリーミーな口当たりに、濃厚なひよこ豆の風味と香ばしいタヒーニ(ごまペースト)が絶妙に溶け合います。中央のくぼみにたっぷり注がれた上質なオリーブオイルが、一層豊かなコクを演出。焼き立てのホブス(平たいパン)ですくって味わえば、その素朴ながらも深みのある味わいに思わず笑みがこぼれます。
    • ムタッバル (Mutabbal): 焼きナスのペーストで、ババガヌーシュとも呼ばれます。直火で皮がまっ黒になるまで焼かれたナスは、スモーキーで芳ばしい香りをまといます。そのナスをペースト状にし、タヒーニやレモン汁、ニンニクで味付けした一品です。口に含むと、とろけるナスの食感と燻製のような香りが鼻に抜け、フンムスとはまた違った奥深い味わいが楽しめます。
    • ファラフェル (Falafel): ひよこ豆やそら豆をすり潰してスパイスを加え、丸めて揚げた中東風のコロッケです。揚げたてのファラフェルは、外はカリッと香ばしく、中は驚くほどふわふわでしっとり。コリアンダーやクミンなどのスパイスが効いており、一口また一口と手が止まらなくなる美味しさ。そのままでも美味しく、ホブスに挟んでサンドイッチにしても絶品です。
    • タッブーレ (Tabbouleh): 大量の刻んだパセリを主役に、ブルグル(挽き割り小麦)、トマト、ミントなどをレモン汁とオリーブオイルで和えた爽やかなサラダです。口に入れた瞬間、パセリとミントの清涼感が広がり、長旅で疲れた身体を癒してくれます。その鮮やかな緑色は視覚的にも美しく、食欲を刺激します。濃厚な味わいの料理が多い中で、さっぱりとした良い箸休め(スプーン休め)となります。
    • ワラク・イナブ (Warak Enab): ブドウの葉でスパイスを効かせた米や野菜を包み、蒸し煮にした料理です。ブドウの葉独特の酸味と、中に詰められたハーブが香るライスの旨みが絶妙に調和。手間暇かけて作られた、ヨルダンの家庭のぬくもりを感じさせる一品です。

    これらのメゼを、焼きたてでふっくらとしたホブスと一緒に味わう時間は、まさに至福のひとときです。様々な味わいや食感を少しずつ楽しみながら、仲間と語り合う。この体験こそ、メゼ文化の真髄と言えるでしょう。

    アンマンの食を堪能する、おすすめのレストラン

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    アンマンには、伝統的なメゼを味わえる老舗から、モダンな創作料理を提供するお洒落なカフェまで、多彩な飲食店が数多くあります。ここでは、私が実際に訪れて感銘を受けた、とくにおすすめの3軒を紹介します。

    Hashem Restaurant – ダウンタウンの真髄を味わう

    ダウンタウンの喧騒の中にひっそりと佇む「Hashem」は、アンマンで最も知名度が高く、地元の人々から愛され続けるレストランのひとつです。店内は飾り気がなく、路地に並ぶプラスチック製のテーブルと椅子だけのシンプルな造りですが、一歩足を踏み入れると、常に活気あふれるアンマンの食文化の真髄を感じられます。メニューは存在せず、座ると自動的にフンムス、ムタッバル、ファラフェル、フール(そら豆の煮込み)といった定番のメゼが次々と運ばれてきます。ヨルダンの国王一家も訪れたという逸話があるにもかかわらず、価格は非常にリーズナブル。揚げたての熱々ファラフェルとクリーミーなフンムスの組み合わせは、まさに格別の味わいです。周囲のテーブルでは、地元の家族連れや若者たちが楽しげに食事をしており、その活気が何よりのスパイスとなっています。アンマンのローカルな雰囲気を直接感じたいなら、ぜひ訪れたい名店です。

    店舗名Hashem Restaurant
    所在地King Faisal Street, Amman, Jordan
    営業時間24時間営業
    料理の種類伝統的なヨルダン料理、メゼ(ベジタリアン・ヴィーガン中心)
    特徴手頃な価格、地域密着の雰囲気、アンマンを代表する老舗
    注意事項メニューはなく基本料理が自動提供されます。混雑することが多いですが滞在時間は短めです。

    Sufra Restaurant – 伝統美と洗練が調和する空間

    レインボー・ストリートに位置する「Sufra」は、歴史あるヨルダンの邸宅を改装した、エレガントな雰囲気のレストランです。美しいタイル張りの床やアンティーク家具、緑豊かな中庭のテラス席があり、伝統的なヨルダンの家庭料理を上質な空間でゆったり味わえます。メゼの種類も豊富で、定番のフンムスやムタッバルに加え、季節の野菜を活かした創作料理も楽しめます。すべての料理は美しく盛り付けられており、特別な日のディナーとしてもぴったり。国民食マンサフ(羊肉のヨーグルトソース煮)も名物ですが、ヴィーガンメニューも充実しているのが嬉しいポイントです。ダウンタウンの喧騒から離れ、落ち着いた空間で上質な食事を愉しみたい際におすすめです。

    店舗名Sufra Restaurant
    所在地Rainbow St. 26, Amman, Jordan
    営業時間13:00~23:30(変更の可能性あり)
    料理の種類伝統的なヨルダン家庭料理、高級メゼ
    特徴歴史的邸宅の優雅な雰囲気、豊富なメニュー、レインボー・ストリートの好立地
    注意事項人気店のため、特にディナー時は予約推奨。価格帯はHashemよりやや高めです。

    Shams El Balad – 大地の恵みを味わうオーガニックカフェ

    「Shams El Balad」は、地産地消とオーガニックに強くこだわる、健康志向の旅行者にとって理想的なカフェレストランです。アンマンの古い建物をリノベートしたナチュラルで居心地の良い空間は、ゆったりとくつろげるため自然と長居してしまいます。近郊の農家から取り寄せた新鮮な野菜や果物をふんだんに使ったメニューが並び、特に朝食やブランチが人気です。焼き立てのパン、自家製ジャム、新鮮なハーブのサラダ、そして絶品フンムスなど、大地の恵みを存分に味わえます。食材のひとつひとつに感じられる豊かな風味と生命力が特徴です。併設のショップではオーガニックのスパイスやオリーブオイル、地元の工芸品も販売しており、お土産探しにもぴったり。体の内側から元気になる、心地よい食体験ができる場所です。

    店舗名Shams El Balad
    所在地69 Mu’ath Bin Jabal St., Amman, Jordan
    営業時間8:00~23:00(変更の可能性あり)
    料理の種類オーガニック、地産地消のヨルダン料理、カフェメニュー
    特徴新鮮な食材へのこだわり、お洒落で落ち着いた空間、ブランチが好評
    注意事項人気の時間帯は混雑することがあります。併設ショップも充実しているため、時間に余裕を持っての訪問がおすすめです。

    新旧が交差する、アンマンの街角散策

    アンマンの魅力は、壮大な遺跡や美味しい料理にとどまらず、街の何気ない散策の中にも真の面白さが隠されています。新旧の文化が混ざり合い、人々が活気に満ちて生活する様子は、ただ歩くだけで五感を心地よく刺激してくれます。

    迷宮のようなダウンタウンとスークの熱気

    アンマンの中心地であるダウンタウン(バスタード)は、訪れる人を飽きさせない混沌と活気あふれるエリアです。メインストリートから一歩路地に入れば、迷宮のように入り組んだスーク(市場)が広がっています。スパイスの山が鮮やかなグラデーションを描き、魅力的な香りが漂います。ショーウィンドウの金製品はきらめき、伝統衣装から手工芸品まで所狭しと並ぶ様は圧巻です。人々の呼びかけや値引き交渉の声、友人同士の談笑が絶えず響き合い、街全体がまるでひとつの生き物のように息づいています。目的もなく歩くだけで新たな発見が次々と現れ、地元の人たちが訪れる小さなジューススタンドで絞りたてのザクロジュースを味わったり、ナッツやドライフルーツの店で試食を楽しんだり、そんなさりげない交流が旅の思い出をより深いものにしてくれます。

    洗練を感じるレインボー・ストリートの文化発信

    ダウンタウンの喧騒とは対照的に、丘の上に伸びるレインボー・ストリートは洗練された雰囲気を漂わせるエリアです。おしゃれなカフェやレストラン、現代アートのギャラリー、個性的なブティックが軒を連ね、アンマンの若者文化をリードしています。テラス席で水タバコ(シーシャ)を楽しみながら語り合う若者や、熱心にアート作品を鑑賞する人々の姿が見られます。ここを歩くことで、アンマンの現代的かつクリエイティブな一面を感じ取ることができるでしょう。夕方になると街路がライトアップされ、昼間とは異なるロマンティックな雰囲気に包まれます。ダウンタウンで活力を得て、レインボー・ストリートでゆったりとした時間を過ごす――この二つの地域を巡ることで、アンマンの多層的な魅力を存分に味わえます。

    青いドームが象徴する祈りの場、キング・アブドッラー1世モスク

    アンマンの街並みの中でも特に目を引くのは、キング・アブドッラー1世モスクの壮麗な青いドームです。1989年に建てられた比較的新しいモスクですが、その規模と美しさは圧倒的です。非ムスリムの観光客にも開放されており、イスラム文化や建築様式を直接体験できる貴重な場所となっています。

    参拝時は肌の露出を控える服装が求められ、特に女性は髪を覆うスカーフ(アバヤとともに無料貸し出しあり)の着用が必要です。一歩中に入ると、巨大なドームが広がる静謐な祈りの空間が迎えてくれます。ドームの内側はコーランの一節をあしらった美しいカリグラフィーで飾られ、巨大なシャンデリアが柔らかな光を放っています。外の喧騒とは別世界のような静けさの中で祈る人々の姿を目にすると、宗教や文化の違いを超えて、超越的な存在に祈りを捧げる行為の尊さを感じさせられます。信仰の有無に関わらず、この神聖な空気感は訪れる人の心を静かに癒やす不思議な力を持っています。

    スポット名キング・アブドッラー1世モスク
    所在地Sulayman An Nabulsi St., Amman, Jordan
    営業時間礼拝時間を除き見学可能(土曜~木曜の午前中や午後早めの時間帯が一般的)
    入場料少額の入場料が必要
    見どころ壮大で美しい青色モザイクのドーム、荘厳な礼拝ホールの内装
    注意事項イスラム教徒の礼拝時間は見学不可。服装規定があり、男女とも肌の露出を避ける必要がある。女性は髪をスカーフで覆う必要がある。

    旅の終わりに、アンマンが教えてくれたこと

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    アンマンでの時間は、まるで時の層を巡る旅のような感覚を味わいました。シタデルの丘に立つと、何千年もの歴史の流れを直に感じられ、ローマ劇場に腰掛ければ、古代の歓声が今にも聞こえてきそうでした。そして、ダウンタウンの喧騒に身を置くと、現代を生きる人々の活気あるエネルギーに圧倒されました。

    この旅のなかで、最も心に深く刻まれたのは、歴史の重みと現代の活力が、食文化を通じて見事に融合している姿でした。フンムスやファラフェルといった料理は、代々受け継がれてきたこの地の知恵の結実です。それは、厳しい自然環境のなかで手に入る食材を最大限に活用し、心身の健康を支えるための工夫の賜物。植物性の素材が中心でありながら、驚くほど豊かで満足感のある食体験は、持続可能な未来の食生活へのヒントを示しているように感じられました。

    現代では最新テクノロジーが世界を包み込み、あらゆるものが効率化・均一化されていきますが、アンマンという街は私たちに重要なことを思い起こさせてくれます。それは、土地に根ざした文化の尊さ、人と人が食卓を囲む温かさ、そして悠久の時の流れの中に身を置くことで得られる謙虚な心です。

    丘の上から見下ろす白亜の街並みと谷間に響くアザーンの音。スパイスの香りに包まれ、焼きたてのホブスの温もりを味わう。この街で出会ったすべての風景、音、そして味が、私の内で一つの美しいハーモニーを奏でています。もしあなたが日常から少し離れて、心と体を深く満たす旅を求めているのなら、ぜひ次の旅先に、七つの丘の古都アンマンを選んでみてください。きっと、あなたの五感と魂を揺さぶる忘れ難い体験が待っているはずです。

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    この記事を書いた人

    ドローンを相棒に世界を旅する、工学部出身の明です。テクノロジーの視点から都市や自然の新しい魅力を切り取ります。僕の空撮写真と一緒に、未来を感じる旅に出かけましょう!

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