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    カッパドキアの地下都市で天空の気球ツアーだけじゃない。カイマクルとデリンクユ、二大地下都市に隠された歴史を巡る旅

    トルコ中央部、アナトリア高原に広がる奇岩地帯カッパドキア。その名を耳にすれば、誰もが暁の空を彩る無数の熱気球が織りなす、幻想的な風景を思い浮かべることでしょう。確かに、天空から見下ろす妖精の煙突(ペリバジャ)が林立する大地は、この世のものとは思えないほどの美しさで、訪れる者の心を捉えて離しません。しかし、カッパドキアの真の魅力、その魂の奥深さは、実は私たちが立つその足元、大地の遥か深くに静かに息づいているのです。天空の絶景とは対照的に、地底にはかつて数万の人々が暮らし、祈り、その命を繋いだ巨大な地下都市が、迷宮のように広がっています。それは、ただの洞窟や避難場所ではありません。歴史の荒波から信仰とコミュニティを守り抜いた人々の、驚くべき知恵と不屈の精神が刻み込まれた、壮大な歴史の証人なのです。さあ、色とりどりの気球が見せる夢のような世界から少しだけ視線を移し、カッパドキアの大地が秘めるもう一つの物語、カイマクルとデリンクユという二大地下都市を巡る、神秘と感動に満ちた地底への旅へとご案内いたしましょう。

    カッパドキアの神秘的な景観は、フィリピンのチョコレートヒルズと並び、世界で最も不思議な大地の造形の一つと言えるでしょう。

    目次

    カッパドキアの大地が育んだ奇跡

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    カッパドキアの物語を深く理解するには、まずこの独特な地形がどのようにして誕生したのかを知ることが欠かせません。天と地の両方に広がる奇跡は、すべてこの土地の成り立ちから始まっているのです。

    カッパドキアの成り立ちを探る

    数百万年前、この地域は激しい火山活動に包まれていました。近隣に屹立するエルジェス山、ハサン山、メレンディズ山。これらの火山が繰り返し大規模な噴火を起こすたびに、多量の火山灰や溶岩が層を成して積み重なりました。こうして形作られたのが、比較的軟らかい岩石である凝灰岩(トルコ語で「トゥファ」と呼ばれる)からなる広大な台地です。カッパドキアに点在する地下都市や岩窟教会は、すべてこの軟らかい凝灰岩を掘り進めて造られています。

    やがて火山活動が収まると、自然の力がこの大地を彫刻し始めました。降り注ぐ雨が地表を浸食し、風が岩肌を磨き、季節の激しい寒暖差が岩にひび割れを生み、長い年月をかけて侵食作用を進めました。その結果、硬い玄武岩の層がまるで帽子のように残り、その下にある軟らかい凝灰岩だけが削られてキノコや煙突を思わせる奇妙な形の岩が並びます。これがカッパドキアの象徴「妖精の煙突(ペリバジャ)」です。まるで巨人の手によって創られたかのようなこの景観は、自然という偉大なアーティストが生み出した壮大な芸術作品といえるでしょう。

    加えて、この加工しやすい凝灰岩の地盤は、ここに暮らす人々にとって計り知れない恩恵をもたらしました。人々は自然が生んだ奇岩を住まいとして活用しただけでなく、自ら岩を掘り進め教会を建て、やがては地下深くに巨大な都市を築き上げるに至ったのです。カッパドキアの風景は、地球の地殻活動と自然の営み、そして人間の知恵が融合して生み出された、唯一無二の奇跡なのです。

    なぜ人々は地下に潜ったのか?

    では、なぜカッパドキアの人々は、陽の光の届かない暗い地下へと潜り込み、これほど巨大かつ複雑な都市をつくりあげたのでしょう。その背景には、この土地がたどった長く過酷な歴史があります。

    地下都市の起源は非常に古く、紀元前1200年頃、強大な国家を築いたヒッタイト文明にまで遡るとの説もあります。しかし、その規模が飛躍的に拡大し、完全な「都市」として機能するようになったのは、ローマ帝国時代、特にキリスト教がまだ迫害の対象であった時代でした。

    初期キリスト教徒たちは、ローマ帝国からの苛烈な迫害を逃れるためにカッパドキアの地に隠れ住みました。隠れやすく、掘削が容易な凝灰岩の土地は彼らにとって理想の避難場所となりました。彼らは岩を掘って教会や修道院を築き、信仰の灯を消すまいと必死に祈りを捧げました。ギョレメ野外博物館に残る美しいフレスコ画で飾られた岩窟教会は、その時代の信仰の深さを現代に伝えています。

    その後、7世紀ごろになると東方からイスラム勢力であるアラブ人が侵入してきました。この脅威は数世紀に及び、カッパドキアのキリスト教徒たちは、再び命と信仰を守るために、より深く大規模な地下の防御拠点を必要としました。これがカイマクルやデリンクユに代表される壮大な地下都市の建設・拡張の大きな要因となったのです。

    これら地下都市は単なる緊急避難用の壕ではなく、住居、食料倉庫、家畜小屋、ワイナリー、教会、学校、さらには墓地まで備え、数千人、場合によっては数万人が外部との接触を絶ったまま数ヶ月もの期間を生活できるよう設計されていました。巧妙な罠や防御機構が数多く施され、まさに地下に築かれた要塞都市だったのです。こうした地下都市は、絶え間ない脅威に晒されるなかで、カッパドキアの人々が信仰とコミュニティという自らのアイデンティティを守り抜くために費やした、血と汗と祈りの結晶と言えるでしょう。

    迷宮の如き巨大都市:カイマクル地下都市

    カッパドキアに点在する数多くの地下都市のなかでも、デリンクユと並んで最大規模を誇るのがカイマクル地下都市です。一歩足を踏み入れると、まるでアリの巣のように入り組んだ複雑な地下迷宮が広がっています。歴史の息吹が色濃く感じられるこの場所で、かつてここに暮らした人々の生活を想像しながら探検が始まります。

    カイマクルへの誘い

    地上にあるカイマクル村は、ぱっと見アナトリアのどこにでもあるようなのどかな村ですが、その目立たない入口から内部に足を踏み入れると、世界が一変します。ひんやりとした湿気を帯びた空気が肌を包み、凝灰岩特有の土の香りが鼻をくすぐります。外の騒音はまるで嘘のように消え失せ、自分の足音と呼吸だけが響きます。この静寂こそが、私たちを何百年、あるいは何千年もの時を超えた世界へと導いてくれるのです。

    カイマクル地下都市は現在、地下8階までの階層が確認されていますが、一般公開されているのは地下4階までとなっています。それでも、その広大さと複雑な構造には誰もが驚かされるでしょう。狭く天井の低い通路を屈みながら進み、急な階段を上り下りします。赤い矢印は順路を、青い矢印は出口へ誘導しますが、この標識がなければすぐに方向感覚を失ってしまうでしょう。この迷路のような構造こそが、この都市の最大の防御機能の一つだったのです。

    地下に息づく生活の痕跡を辿る

    カイマクルの各階層は、それぞれ異なる役割を担っていました。通路を進むごとに現れる多様な部屋は、かつてここで生きていた人々の生活を鮮明に想像させてくれます。

    • 地上に近い階層(地下1階・2階): 出入口に近いこれらの階層は、生活の基盤となる施設が中心です。まず目に入るのは、壁に掘られた複数の窪みが特徴的な家畜小屋です。家畜は貴重な食料であり、労働力であると同時に、寒い冬にはその体温が地下空間を暖める役割も果たしていました。さらに奥に進むと、食料の貯蔵庫や葡萄を踏んでワインを造ったワイナリー(圧搾所)の跡も見られます。ワインは貴重な飲料水の代わりとなり、また宗教的な儀式に必須の存在でした。こうした施設が入口付近にあるのは、収穫物の搬入や家畜の出入りに便利だからでしょう。
    • 中層階(地下3階): ここは人々の日常生活の中心地でした。家族が暮らしたと思われる住居スペースや、共同で料理をしたキッチン(共同炊事場)が点在しています。キッチンの天井がすすで黒く染まっている様子からは、ここで火を囲み食事をつくり語り合った人々の姿が浮かび上がります。地下で火を使うと煙がこもりますが、巧妙に設けられた換気口(通気孔)を通じて煙は地上の目立たない場所へと排出されていました。この通気孔は、新鮮な空気を地下深部まで取り込む生命線でもありました。
    • 深層階(地下4階): 最も安全とされた深い階層には、共同体にとって最重要な施設が置かれていました。それが教会や集会所です。十字架が刻まれた簡素な礼拝堂は、暗く不安な地下生活で人々の心のよりどころとなっていたことでしょう。ここで捧げられた祈りは、どれほど切実であったか想像に難くありません。また、亡くなった人々のための墓地もこの階層に存在します。生から死まで、すべての人生がこの地下都市の中で続いていたのです。

    命を守るための驚異の仕掛け

    カイマクルを歩いていると、人々がどれほど工夫して敵の侵入を防いでいたかがよくわかります。その防護システムは非常に巧みです。

    特に象徴的なのが、通路の要所に設置された「円盤状の石臼扉(ミルストーン・ドア)」です。直径1.5メートル、重量数百キロにも及ぶ巨大な石の円盤が、普段は壁の窪みに収納されています。しかし、敵が迫ると数人がかりでこれを転がし、通路を完全に封鎖しました。一度閉じられると外から開けるのはほぼ不可能です。石の中央には小さな穴が開けられており、ここから外の様子をうかがったり槍を差し込んで攻撃したりもできました。この石扉こそ彼らにとっての最後の防衛線だったのです。

    さらに、わざと狭く低く設計された通路も重要な防御機能でした。屈まなければ通れないため、屈強な兵士でも身動きが取りづらく、一度に多数が攻め込むことはできません。地理を熟知した住民たちは、こうした場所で少数ずつ侵入者を迎え撃ったと推測されます。床には落とし穴のような罠が設けられていた場所もあると言われており、カイマクルはまさに一つの巨大な要塞として機能していたのです。

    カイマクル地下都市 訪問ガイド

    項目詳細
    所在地Kaymaklı, 50760 Nevşehir Merkez/Nevşehir, トルコ
    アクセスネヴシェヒルからミニバス(ドルムシュ)で約30分。ギョレメからはネヴシェヒルで乗り換えが必要。ツアー参加が最も効率的です。
    開館時間4月~10月:8:00~19:00 / 11月~3月:8:00~17:00(変更の可能性あり)
    入場料時期によって変動するため、公式サイトや現地での確認を推奨。ミュージアムパスも利用可能です。
    見学所要時間約1時間から1時間半程度
    注意点・内部は狭く天井が低い場所や急な階段が多いため、歩きやすい靴と動きやすい服装を着用してください。
    ・年間を通じて気温が13~15度前後と涼しいため、夏場でも羽織るものを持参するとよいでしょう。
    ・閉所恐怖症の方や体力に自信がない方は無理をしないようご注意ください。
    ・構造が複雑なため、歴史や各部屋の役割を深く理解したい場合は、公認ガイドを雇うことを強くおすすめします。

    深淵なる信仰の砦:デリンクユ地下都市

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    カイマクルの迷宮を体験した後、次に訪れるのはカッパドキア最大で最も深い地下都市、デリンクユです。トルコ語で「深い井戸」を意味するその名の通り、この壮大な地下空間は大地を垂直に深く掘り進めており、カイマクルとは異なる荘厳で圧倒的なスケール感が私たちを迎えます。

    カッパドキア最大の地下都市へ

    デリンクユの規模はまさに驚異的です。最盛期には約2万人の住民を収容し、地下18階層、深さ85メートルにも達すると言われています。現在、観光可能なのは地下8階層までですが、その深さと広大さには圧倒されるばかりです。入り口から階段を下りると、まるで地球の胎内に吸い込まれていくかのような不思議な感覚に包まれます。

    カイマクルが水平方向に広がる迷路のような構造であるのに対し、デリンクユは垂直方向に深く伸びる逆さの塔のような形をしています。各階層は急な階段や坂でつながり、深部へさらに進んでいきます。その規模の大きさは、カイマクルを生活感あふれる「町」とするならば、デリンクユは計画的に築かれた大規模な「都市」である印象を与えます。

    カイマクルとの違いから見えるデリンクユの特色

    デリンクユは、カイマクルと多くの共通点を持ちながらも、独自の際立った特徴を備えています。これらの違いを知ることで、地下都市の多様性と深さをより一層実感できるでしょう。

    • 垂直構造を支える巨大な通気孔: デリンクユの最大の特徴は、中央を貫く直径50メートル以上の巨大な通気孔です。この縦穴は地上から最深部まで空気を送り込み、この都市の生命線となっていました。単なる換気の役割にとどまらず、地下水を汲み上げる井戸の役割も果たしており、敵による井戸汚染を防ぐため地上の井戸とは繋がっていない徹底ぶりです。さらに、この穴はゴミ捨て場としても使われていたと考えられており、この巨大な縦穴がデリンクユの垂直的な都市構造を実現させています。
    • 宗教・教育施設としてのミッション・スクールの存在: デリンクユがほかの地下都市と明確に異なる点は、規模の大きい宗教施設や教育施設があることです。特に地下の深い階層にある十字型の広大な教会は、天井が高く荘厳な雰囲気に満ち、多くの信徒が集い礼拝を行った様子が想像できます。その近くにはアーチ型の天井が特徴的な長い部屋があり、これは神学や聖書を学ぶための「ミッション・スクール(神学校)」であったと推測されています。これによりデリンクユは単なる避難施設にとどまらず、迫害を受けるキリスト教信徒の拠点として、また次世代に信仰と思想を伝える教育の中心地であったことがうかがえます。まさに「信仰の砦」と呼ぶにふさわしい場所です。
    • カイマクルへとつながる秘密のトンネル: 多くの人の想像力を掻き立てるのが、デリンクユとカイマクルをつないだと伝えられる地下トンネルの存在です。距離は約9キロメートルに及びますが、現在は崩落していて通行はできません。しかしもしこの情報が真実であれば、カッパドキアの地下都市群は孤立したものではなく、互いに連携した大規模な地下ネットワークを形成していたことになります。攻撃を受けた際には秘密の通路を通じて別の都市へ避難できるという壮大な防衛システムが、この大地の深くに張り巡らされていた可能性に思いを馳せると、歴史のロマンを強く感じさせられます。

    デリンクユで感じる歴史の重み

    デリンクユの広く整然とした通路を歩くと、そこに住んだ人々の強い意志と高い組織力を肌で感じ取れます。混沌とした迷路とは異なり、計画性と明確な目的を持って築かれた証拠です。暗闇のなか、僅かなランプの明かりに照らされながら、彼らは祈りを捧げ、学び、いつか訪れる日を待ち望んでいたことでしょう。静寂に包まれた教会の空間では、壁の向こうから聖歌が聴こえてくるような錯覚さえ覚えます。ひんやりとした岩肌にそっと触れれば、過酷な時代を信仰の力で生き抜いた人々の強靭な魂の鼓動が今なお息づいているのを感じられるはずです。

    デリンクユ地下都市 訪問ガイド

    項目詳細
    所在地Bayramlı, 50700 Derinkuyu/Nevşehir, トルコ
    アクセスネヴシェヒルからミニバス(ドルムシュ)で約45分。カイマクルも同じ路線上にあり、両都市の訪問が可能です。
    開館時間4月~10月:8:00~19:00 / 11月~3月:8:00~17:00 (変更の可能性あり)
    入場料季節により異なるため、公式サイトや現地での確認を推奨。ミュージアムパスも利用可能です。
    見学所要時間約1時間から1時間半程度
    注意点・カイマクル以上に階段の昇降が多く、深さもあるため、体力に自信のない方は注意が必要です。
    ・服装や持ち物の基本的な注意事項はカイマクルと同様です。
    ・規模や歴史的価値を考えると、ガイド付きの見学が特におすすめです。特にミッション・スクールなどの施設の背景を知ることで、理解が深まり見学の意味合いが大きく変わります。

    地下都市を巡る旅の心得と楽しみ方

    カッパドキアにある二大地下都市、カイマクルとデリンクユ。どちらも計り知れない魅力を秘めていますが、それぞれの個性を理解することで旅の深みと記憶に残る体験が増します。ここでは、地下都市を存分に楽しむためのポイントをいくつかご紹介します。

    どちらを選ぶべき?カイマクルとデリンクユの特徴比較

    限られた時間の中で、どちらか一方しか訪れられない方もいるでしょう。どちらを訪れるかは、旅に求める体験や関心によって変わります。

    • カイマクルをおすすめするのはこんな方:
    • 地下都市を初めて訪れる方に最適。コンパクトな範囲にまとまっており、地下生活の基本構造と雰囲気が分かりやすいです。
    • 冒険心や探検気分を味わいたい方。迷路のように入り組んだ通路は、まるでインディ・ジョーンズの冒険を彷彿とさせる刺激があります。
    • 人々の日常生活の痕跡に触れたい方。家畜小屋やワイナリー、煤けたキッチンといった生活の名残が生々しく残っています。
    • デリンクユをおすすめするのはこんな方:
    • 圧倒的な規模感を体感したい方。その深さと広がりは、人間の営みの力強さを強く印象づけます。
    • 地下都市の宗教的・組織的側面に興味がある方。荘厳な教会やミッション・スクールの存在は、デリンクユ独特の見どころです。
    • より計画的に設計された都市構造を見てみたい方。カイマクルの有機的な広がりとは対照的な、整然とした構造が驚きを与えます。

    もちろん時間に余裕があれば、ぜひ両方の地下都市を訪れてみてください。カイマクルの生活感あふれる雰囲気と、デリンクユの荘厳な雰囲気を両方体験することで、地下に築かれた文明の全体像がより鮮明に浮かびあがります。二つの地下都市の違いを直に感じることこそ、この旅の醍醐味と言えるでしょう。

    地下探検を快適に楽しむための準備

    地下都市の探索は特有の環境で行うため、しっかり準備を整えて安心して楽しみましょう。

    • 服装: 地下の気温は地上の天候に関係なく年間を通して13~15度前後に保たれています。夏に訪れると、外の暑さとのギャップで少し肌寒く感じるため、薄手のジャケットやカーディガンなど、さっと羽織れるものを持っていくことをおすすめします。また、足元は滑りやすく、急な階段や凹凸が多いため歩きやすいスニーカーなどの履き慣れた靴が必須です。
    • 持ち物: 地下は照明があるものの、薄暗い場所も多いため、小型の懐中電灯やスマートフォンのライトがあると細かい彫刻や部屋の隅々までじっくり確認できて便利です。
    • 健康面の注意: 狭く閉鎖的な通路が続くため、閉所恐怖症のある方は無理をせず体調を優先してください。階段の昇降も多いので、呼吸器に不安のある方や足腰に不安を抱える方も注意が必要です。自分のペースでこまめに休憩しながら見学しましょう。
    • ガイドの活用: 地下都市は順路に沿って自分で見学できますが、ガイドがいたほうが興味深くなります。岩室の役割から石扉の使い方、人々の暮らしの背景まで、歴史的・文化的な解説を受けることで、一層深く理解できます。道に迷う心配もなく、効率良く見どころを巡るためにも、公式ガイドツアーの参加を強くおすすめします。

    地上の生活と文化に触れる体験も

    地下の非日常的な世界を堪能した後は、ぜひ地上の村を散策してみましょう。カイマクルやデリンクユの村では、現代を生きる人々の穏やかな暮らしが息づいています。地元の人が集うチャイハネ(喫茶店)で熱いチャイを一杯味わうのもおすすめです。言葉が通じなくても、身振り手振りのやり取りや人々の温かな笑顔に心が和みます。お土産屋を覗けば、手作りの愛らしい民芸品や地元の特産品との出会いがあるかもしれません。地下で必死に暮らした数百年前の人々の末裔が、いま太陽のもとで静かに生活しているという対比を感じることが、地下都市での感動をより深く胸に刻む助けとなるでしょう。

    天空から地底へ、カッパドキアが語りかけるもの

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    旅の終わりに再びカッパドキアの空を見上げてみましょう。夕日に染まる奇岩群の上を、静かに浮かぶ気球のシルエットが目に映ることでしょう。多くの人が憧れる、息をのむほど美しい天空からの眺め。そして、私たちがさきほど巡った、大地の奥底に広がる静寂と歴史の詰まった地下世界。

    カッパドキアの魅力は、この相反する二つの世界を知ることで初めて、その全貌が明らかになります。空から見下ろす壮大な自然の造形美は、地球という惑星の計り知れない力強さを感じさせてくれます。一方で、地下深くに刻まれた人間の営みの跡は、どんな困難にも屈せず生き抜く人間の驚くべき精神力と生命力の強さを教えてくれます。

    カイマクルやデリンクユの地下都市は、単なる歴史的遺産や珍しい観光地にとどまりません。それは、絶え間ない脅威にさらされながらも、信仰や文化、共同体を命がけで守り抜いた人々の魂の記録です。薄暗くひんやりとした通路を歩く私たちが感じるのは、彼らの不安や恐怖だけではありません。共に支え合い、祈りを捧げ、未来への希望を紡いだ人々の温かな絆と揺るぎない信念の力が満ちています。

    この場所は現代を生きる私たちに静かに問いかけます。あなたにとって守るべきものは何か。信じるべきものは何か。そして困難に直面した時、どのように希望を見出すのか、と。地下都市の静けさの中で自分自身と対話する時間は、日常の喧騒では得られない深い内省と気づきをもたらすかもしれません。それは、ある種のスピリチュアルな体験とも言えるでしょう。

    もしカッパドキアを訪れる機会があれば、空の旅だけでなく地下への旅にもぜひ時間を割いてください。広がる大地を天空から感じ、そして地下から歴史の深淵を覗き込む。その双方を味わった時、カッパドキアが持つ多層的で奥深い魅力に心を奪われることでしょう。そこにはきっとあなたの人生観を少しだけ変えるような、忘れがたい感動が待っています。

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