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    魂の源流をたどる旅:ウクライナの古都ヴァスィーリキウで心を見つめる静かな時間

    日々の喧騒の中で、ふと心が置いてきぼりになっていると感じることはありませんか。時間に追われ、情報の波に飲まれ、自分自身の声に耳を傾けることを忘れてしまう。そんな時、私は決まって旅に出たくなります。特に、長い歴史が息づく静かな街へ。今回ご紹介するのは、ウクライナの首都キーウからほど近く、千年の歴史を秘めた古都、ヴァスィーリキウでの心安らぐ滞在の記憶です。ここは、煌びやかな観光地とは一線を画す、穏やかで深い思索の時間を与えてくれる場所。子育てが一段落し、これからの人生をどう豊かに過ごそうかと考える私たち世代にとって、きっと多くの気づきをもたらしてくれるはずです。忙しい日常から少しだけ離れて、魂の源流をたどる旅へ、ご一緒しませんか。この記事は、かつて平和だった頃のウクライナを訪れた際の思い出を綴ったものです。一日も早く、この美しい土地に安らかな日々が戻ることを心から願っています。

    ヴァスィーリキウのように首都近郊で心を見つめ直せる場所としては、ブダペストから日帰りで訪れる静寂の村チャモールもおすすめです。

    目次

    キエフ・ルーシの時代へ誘う古都ヴァスィーリキウ

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    ヴァスィーリキウという名前は、日本ではあまり知られていないかもしれません。首都キーウの南西約30キロメートルに位置し、日帰りで訪れることも可能なこの小さな町は、ウクライナの歴史の黎明期であるキエフ・ルーシの時代にその起源を持っています。かつてこの地は、遊牧民の襲撃からキーウを守るための重要な要塞として機能していました。町の名前は、キエフ・ルーシにキリスト教をもたらしたウラジーミル大公の洗礼名「ヴァシーリー」にちなんでいると伝えられています。その深い歴史を知ると、何気ない町の風景の一つひとつが特別な意味を持って見えてくるのが不思議です。

    千年にわたる歴史を刻んだ土地

    この町の歴史は、988年にウラジーミル大公が築いた要塞に端を発します。戦略的に極めて重要なドニプロ川に注ぐストゥフナ川のほとりに築かれた城壁は、キーウを南方から守る拠点の役割を果たしました。その後、モンゴル帝国の侵攻によって甚大な被害を受けながらも、ヴァスィーリキウは不死鳥のごとく復興を遂げ、リトアニア大公国、ポーランド・リトアニア共和国、ロシア帝国と、さまざまな支配層を経て歴史を紡いできました。町を歩くと、時代を重ねた歴史の層の上に立っているような荘厳さを感じます。それはまるで、大地の囁きに耳を傾けているかのようで、派手さはないものの真の歴史が醸し出す重厚な雰囲気がヴァスィーリキウには漂っています。

    なぜ今、ヴァスィーリキウなのか

    世界には多くの美しい街や著名な観光地が存在します。それでは、なぜ私がこの静かな古都に惹かれたのでしょうか。それは、現代人が失いがちな「心の静けさ」を取り戻せる場所だと感じたからです。情報が溢れ、常に誰かと繋がっていなければならない現代社会において、私たちは知らず知らずのうちに心を疲弊させています。ヴァスィーリキウには、そんな騒音から解き放ってくれる力が宿っています。古い教会に差し込む優しい光、そよぐ木々の音、地元の人々の穏やかな表情――すべてが「急ぐことはない」「ありのままでいいのだ」と語りかけてくるように感じられます。スピリチュアルな癒しや、自分自身と向き合う時間を求める旅に、この場所ほど相応しい場所はありません。豪華なホテルや高級レストランはないものの、お金では決して手に入らない魂の満足感がここには存在していました。

    ウクライナ正教の心臓部へ:聖アントニウス・テオドシウス教会を訪ねて

    ヴァスィーリキウの街にそびえる小高い丘の頂に、まるで空の青を映し出したかのように美しいドームをいただく教会が静かに佇んでいます。聖アントニウス・テオドシウス教会。この教会はヴァスィーリキウの精神的な核であり、ウクライナ正教の悠久の歴史と文化を今に伝える神聖な場所です。この教会を訪れることなくして、ヴァスィーリキウを語ることはできません。一歩中に入った瞬間に感じる、張り詰めつつも限りなく優しい空気。それは、何世紀にもわたり人々の祈りが積み重なってきたこの空間だからこそ宿る特別なオーラなのです。

    天へと届くかのような輝く青いドーム

    教会の正面に立つと、まず目を奪われるのが鮮やかな青色のドームと、その頂に煌く金色の十字架です。18世紀に著名な建築家イヴァン・フリホローヴィチ・バルスキーによって設計されたウクライナ・バロック様式の建築で、柔らかな曲線を描く壁面と精緻に装飾された窓枠が特徴的です。その優美な姿はまるで、天と地を結ぶ祈りの象徴のよう。晴れた日には青いドームが広大なウクライナの空に溶け込み、見上げるだけで心が浄化されるような感覚を覚えます。私はしばらくその場に佇み、無数の朝日と夕日をこの教会が静かに見届けてきたのだろうと、悠久の時に思いを馳せました。

    スポット情報詳細
    名称聖アントニウス・テオドシウス教会 (Собор Антонія і Феодосія)
    所在地Soborna St, 68, Vasylkiv, Kyiv Oblast, Ukraine
    建築様式ウクライナ・バロック様式
    建立1756-1758年
    特徴青いドームと金色の十字架、荘厳なイコノスタシス。聖アントニウスと聖テオドシウス、キエフ洞窟修道院の創設者に捧げられている。
    訪問時の注意女性はスカーフで髪を覆うことが望ましい。露出の多い服装は避け、写真撮影は許可を得てから行うこと。

    内部に広がる荘厳な世界観

    重い扉を押し開けると、外界から切り離された清浄な空間が広がっていました。ひんやりとした空気の中に、溶けた蝋燭と古びた木の香りが混ざり合い漂っています。薄暗い堂内に差し込むわずかな光が、壁一面に描かれたフレスコ画や金色の装飾を幻想的に照らし出していました。正面にそびえるのは、圧倒的な存在感を放つイコノスタシス(聖障)です。聖人の姿が描かれたイコン(聖像画)が何段にも重なり並ぶ姿は、まさに圧巻の光景。その一枚一枚に、人々の深い信仰と祈りが込められていることが伝わってきます。訪れる者は思い思いのイコンの前に立ち、静かに十字を切り、ロウソクに火を灯していました。言葉こそ交わされなくとも、その敬虔な振る舞いを見ているだけで、心が自然と厳粛な気持ちに満たされていくのを感じました。

    祈りの作法と心構え

    ウクライナ正教の教会を訪れる際は、私たち旅行者も敬意を持った振る舞いを心掛けたいものです。特に女性は、スカーフで髪を覆うのが伝統的なマナーとされています。私自身も旅には必ず大判のストールを持参しており、教会訪問はもちろん、肌寒い時に羽織るなど重宝しています。服装も肩や膝が露出するようなものは控え、控えめな服装を選ぶのが望ましいでしょう。教会は神聖な祈りの場であり、大声で話したり走り回ったりすることは厳禁です。内部での写真撮影も、許可の有無を事前に確認することがマナーです。何より大切なのは、異なる文化や信仰を尊重し、静かにその場の空気を感じ取ろうとする謙虚な心です。そうすれば、きっとその場所が持つ本来の力を心の中に感じ取ることができるでしょう。

    聖アントニウスと聖テオドシウスという精神的柱

    この教会の名前の由来である聖アントニウスと聖テオドシウスとはどのような人物なのでしょうか。彼らは11世紀に活躍した修道士で、キーウのドニプロ川畔の洞窟で修行の生活を送った後、ウクライナ正教のみならず東スラブ世界の精神的な基盤となったキエフ・ペチェールシク大修道院(キエフ洞窟修道院)を創建した偉大な聖人です。聖アントニウスは厳格な禁欲生活を守り、聖テオドシウスは共同生活の規律を整えました。彼らの教えと精神は、長きにわたりウクライナの人々の心の支えとなり続けています。このヴァスィーリキウの教会が彼らに捧げられていることは、この場所がキエフ・ルーシの精神的伝統と深く結びついている証しでもあります。教会の中で静かに目を閉じると、彼らのような求道者たちの清く厳かな精神に触れることができるような気がしました。

    街を歩き、歴史の息吹を感じる

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    ヴァスィーリキウの魅力は、華麗な教会だけにとどまりません。街の細部に至るまで、千年の歴史が静かに息づいています。観光客で混み合うことなく、変わらぬ日常が流れるこの街をゆったりと歩く時間は、何にも代えがたい贅沢なひとときでした。地図を片手に歴史的な場所を巡るのも素敵ですが、時には目的もなく狭い路地に迷い込んでみるのも一興です。そうすると、予期せぬ発見や心温まる風景に出会えるのです。

    ズミイェヴィ・ヴァーリ(蛇の城壁)の遺構を辿る

    ヴァスィーリキウの周辺には「ズミイェヴィ・ヴァーリ」と呼ばれる古代の土塁遺跡が存在します。直訳すると「蛇の城壁」となり、その名の通り、大地を蛇が這うように長くうねって築かれた壮大な防御線です。その歴史は古く、キエフ・ルーシより前の時代、スキタイ時代にまでさかのぼるとも言われています。私は街はずれに残るその土塁の一部まで足を伸ばしました。現在は草木に覆われ、緩やかな丘のように見えますが、そこに立つとかつて騎馬民族の侵入に備え、人々が力を合わせて築いた当時の光景が鮮やかに浮かんできました。城壁の上を歩くと、吹き抜ける風に包まれながら、自分が悠久の歴史の大きな流れの一部であり、小さくとも確かな存在だと実感させられました。歴史は単なる書物の中の記録ではなく、この大地に刻まれ、私たちの足元で今も息づいているのだと深く感じた瞬間でした。

    旧市街の穏やかな佇まいと時の流れ

    街の中心には、ソ連時代以前の古い建築物が点在し、どこか懐かしさを醸し出しています。石畳の道をのんびり歩くと、馬車の轍の音が聞こえてきそうなほどの趣があります。色あせた壁や木枠の窓、軒先に咲くひっそりとした花々。その一つ一つが、この街で暮らす人々の生活の物語を語っています。私はそんな旧市街の一角にある小さなカフェで休むのがいつも楽しみでした。ほんのり甘いウクライナのコーヒーと手作りの素朴なケーキをいただきつつ、窓の外を眺める。学校から帰る子供たちのはしゃぐ声、買い物袋を持って家路に着く人々の姿。そこには、観光地にはない、本物の暮らしが息づいていました。時間に追われることなく、ただ静かに流れていく時を慈しむ。そんな豊かな時間の過ごし方を、この街が教えてくれたように思います。

    地元の人々とのささやかな心の交流

    長期滞在の旅の醍醐味は、地元の人々の日常に少しだけ触れられることです。ヴァスィーリキウのような小さな町では、その機会がより豊富に訪れます。市場で野菜を選んでいると、隣にいたおばあさんが身振り手振りで「こっちのトマトのほうが美味しいよ」と教えてくれたり、道に迷っていると、言葉が通じなくても一緒に歩きながら目的地まで案内してくれたり。彼らの表情は一見冷たく見えるかもしれませんが、その奥には恥ずかしがり屋で温かい心が隠されています。片言のウクライナ語で「Дякую(ジャークユ/ありがとう)」と言うと、ふっと表情が和らぎ、満面の笑みを返してくれます。そんな瞬間に触れるたび、旅をしていて本当に良かったと胸から感じます。人との繋がりこそが、旅を何倍にも豊かにする最高のスパイスだと改めて実感させられました。

    ヴァスィーリキウの食文化に触れる:素朴で心温まるウクライナの味

    旅の楽しみの一つとして、その土地ならではの食事は欠かせません。ウクライナ料理は、肥沃な黒土地帯(チェルノーゼム)からの豊かな恵みを活かし、素朴で深い味わいが持ち味です。ヴァスィーリキウで味わった料理は、肩肘張らず、じんわりと心と体に染み渡るような温かい家庭の味でした。それはまるで、優しいお母さんが作ってくれたかのような、愛情あふれる美味しさだったのです。

    魂が宿るスープ、ボルシチの奥行き

    ウクライナを代表する料理として真っ先に思い浮かぶのは、やはりボルシチです。鮮やかな赤色のビーツのスープは、日本人にも馴染み深いかもしれません。しかし、本場で味わうボルシチは、まさに「魂のスープ」と呼びたくなるほど、深く複雑な味わいを持っています。ヴァスィーリキウの小さな食堂でいただいたボルシチは、ビーツの甘みと酸味がほどよく絡み合い、何時間も煮込んだ牛肉の旨味と様々な野菜の風味が溶け合っていて、一口ごとに幸せなため息がもれました。欠かせないのがスメタナと呼ばれるサワークリーム。これをたっぷり溶かすと酸味が和らぎ、コクがいっそう深まります。さらに、パンプーシュカというニンニク風味のオイルがかかった小さなパンを浸して食べるのも格別です。店や家庭ごとにレシピが微妙に違い、「おふくろの味」が存在することも、ボルシチの魅力のひとつ。この一杯には、ウクライナの家庭のぬくもりが凝縮されているように感じられました。

    国民食ヴァレーニキと意外な美味しさのサーロ

    ボルシチに並んで有名なのが、ヴァレーニキです。見た目は日本の水餃子やイタリアのラビオリに近いですが、中身の具材は実に多彩です。ジャガイモやキャベツ、きのこといった惣菜系から、カッテージチーズやチェリーなどデザート系まで、幅広いバリエーションがあります。私が特に気に入ったのは、マッシュポテトと炒め玉ねぎが入った定番のヴァレーニキ。茹でたての熱々に、香ばしく炒めた玉ねぎと溶かしバター、そしてスメタナをかけていただくと、もっちりとした皮の食感と素朴で優しい具材の風味が絶妙で、いくらでも食べ続けられそうでした。

    そして、ウクライナ料理を語る上で欠かせないのがサーロ。豚の脂身を塩漬けにした伝統食品です。初めて聞いたときは少し抵抗がありましたが、思い切って挑戦してみて驚きました。薄くスライスしたサーロを黒パンにのせ、ニンニクやネギとともに食べるのですが、口の中でとろりと溶け、独特の臭みは一切なく、上質な脂の甘みと旨みが広がります。特にウォッカ(ウクライナではホリルカと呼ばれます)との組み合わせが抜群だそうです。厳しい冬を乗り切るための知恵から生まれた伝統食。その意外な美味しさは、私の食の概念を覆しました。

    地元の市場(リノック)は食材の宝庫

    その土地の食文化を肌で感じるには、市場を訪れるのが一番です。ヴァスィーリキウの市場(リノック)は大きくはないものの、生き生きとした活気にあふれていました。土の香りが伝わる新鮮な野菜、かごに山盛りにされた色鮮やかなベリー、自家製の蜂蜜やチーズを売るおばあさん。スーパーマーケットでは味わえない、生命力あふれる食材がところ狭しと並んでいます。私はここで、山で採れたという乾燥きのこや濃厚な手作りスメタナを手に入れるのを楽しみにしていました。言葉がほとんど通じなくても、指差しと笑顔でなんとかなるものです。市場での買い物は単なる食材調達以上に、作り手の顔が見える心温まる交流の場でもあります。ここで手に入れた素材で作るシンプルな料理は、どんなレストランの食事よりも印象に残る、特別なご馳走になりました。

    旅を通じて見つける、心穏やかな暮らしのヒント

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    ヴァスィーリキウでの滞在は、単なる観光とは異なる体験でした。それは、自分の生き方や日常生活を見つめ直す貴重な内省の機会となったのです。歴史と信仰が人々の営みに深く根付くこの街で過ごすうちに、忙しい現代社会で私たちが忘れがちな心の在り方をいくつも発見できました。それは、日本に戻ってからの日々をより豊かで穏やかに彩る、かけがえのない贈り物となりました。

    祈りの文化から学ぶ「静寂の時間」の重要性

    ヴァスィーリキウの人々は、日常的に教会を訪れて祈る姿が印象的でした。彼らの祈りは特別な儀式というより、日々の習慣に自然と溶け込んでいるように感じられました。祈りの時間は、神との対話であり、自分自身と向き合う大切なひとときです。その敬虔な祈りの姿を見て、現代人には意図的に「静寂の時間」を持つ必要があると気づかされました。朝起きてすぐスマートフォンに触れ、夜寝る直前まで絶え間なく情報に晒される生活では、心は休まることがありません。一日に数分だけでも目を閉じて深呼吸し、自分の内なる声に耳を傾ける。教会で祈る人々のように、自らの心と静かに向き合う時間を持つこと――それこそが、情報過多の現代を穏やかに過ごすための知恵の一つかもしれません。

    歴史と共に歩み、今を生きる意義

    この街は千年以上にわたり、モンゴルの侵攻や度重なる戦争、ソビエト連邦からの独立といった幾多の試練を乗り越えてきました。その歴史は街の空気や人々の佇まいに、独特の強さと深みをもたらしているように感じられます。古い教会や城壁の遺構が現在の生活の中に自然に溶け込んでおり、それは過去を忘れるのではなく、歴史の積み重ねの上に今が成り立っていることを人々が無意識に受け入れている証でしょう。私たちは新しいものばかりを追い求め、古いものを簡単に手放しがちですが、ヴァスィーリキウの風景は物や時間、そして記憶を大切に受け継ぐ豊かさを教えてくれました。自分のこれまでの歩みや先祖から受け継いだものを肯定し、そのうえで未来を築く―そんな生き方をすれば、人生は一層味わい深いものになるに違いありません。

    素朴で滋味深い食文化から得た学び

    ヴァスィーリキウで味わった料理は決して華やかではありませんでしたが、旬の地元野菜や丹念に作られた保存食など、素材の力を最大限に生かした料理は心身に染み渡る美味しさでした。それは、食べることの本質を思い出させてくれる体験でもありました。私たちは加工食品や見た目ばかりに気を取られた食事に囲まれていないでしょうか。地元市場で手に入れた新鮮なビーツでゆっくり煮込むボルシチ。その豊かな香りに包まれながら過ごす時間はかけがえのない至福のひとときでした。食事は単なる空腹の解消ではなく、命をいただき、自らの身体と心を養う神聖な営み―そんな当たり前のことを、ウクライナの素朴で温かな食文化が教えてくれました。日本に戻った今も、できるだけ旬の食材を選び、丁寧に調理する時間を大切にしたいと心から思うようになりました。

    ヴァスィーリキウへの旅の準備

    いつの日か再び、この美しい地を自由に巡ることができる日が訪れることを願いつつ、平穏な時代にヴァスィーリキウを訪れる際の基本情報をお伝えします。首都キーウからのアクセスが良好で、少し足を伸ばしてウクライナの奥深い魅力を感じたい方に、ぜひおすすめしたい場所です。

    首都キーウからのアクセス

    ヴァスィーリキウはキーウの中心部から南西へおよそ30キロの位置にあり、非常に行きやすい場所です。主な交通手段は電車とマルシュルートカ(乗り合いミニバス)があります。

    電車(エレクトリーチカ): キーウ旅客駅から近郊列車に乗る方法のひとつです。時間はかかりますが、車窓からのどかなウクライナの田園風景を楽しみながらゆったりと旅することができます。最寄駅は「Vasylkiv-1」です。

    マルシュルートカ: おそらく最も一般的かつ便利なのがこのマルシュルートカです。キーウ市内の各所からヴァスィーリキウ行きのバスが出ています。例としては、地下鉄「Vystavkovyi Tsentr」駅や「Teremky」駅の近くにあるバス乗り場から乗車可能です。運行頻度が高く、所要時間は40分から1時間ほど。現地の方々と乗り合わせる体験も旅の醍醐味の一つです。目的地表示はキリル文字なので、「Васильків」という表記を控えておくと安心です。

    滞在に関するアドバイス

    ヴァスィーリキウは小規模な街なので、キーウから日帰り旅行でも十分に楽しめます。しかし、街の持つ穏やかな雰囲気をじっくり味わいたい場合は、一泊滞在をおすすめします。街には小さめのホテルやゲストハウスがいくつか点在していますので、事前にオンラインで予約しておくと安心です。また、長期滞在を検討する場合はアパートメントを借りるのも良いでしょう。市場で食材を調達し、自炊する「暮らすような旅」は、この街の魅力をより深く感じられる方法です。

    現地での心得と注意事項

    言語: 公用語はウクライナ語です。観光地ではないため、英語が通じる場所は限られています。しかし、地元の人たちは非常に親切です。簡単な挨拶「Доброго дня(ドーブロホ・ドニャ/こんにちは)」や感謝の言葉「Дякую(ジャークユ/ありがとう)」を覚えておくことで、交流がスムーズになります。翻訳アプリの活用もおすすめです。

    通貨: 現地通貨はフリヴニャ(UAH)です。小さな店舗や市場では現金払いが多いので、キーウで両替を済ませておくか、現地のATMで現金を引き出せるよう準備しておくと便利です。クレジットカードの利用は限定的と考えた方が安全です。

    治安: 私が訪れた時点では治安は比較的良好で、日中の街歩きで特に危険を感じることはありませんでした。しかし、どの国でも同様ですが、夜間の一人歩きは控え、貴重品の管理を徹底するなど基本的な注意を怠らないようにしましょう。

    最大限の安全確保を

    重要なご案内として、この記事は平和な時代に訪れたウクライナでの体験に基づくものです。現在、ウクライナ全土の状況は極めて深刻であり、外務省からも最高度の退避勧告が発令されています。いかなる理由があっても、現在のウクライナへの渡航は絶対に控えてください。本記事はウクライナの素晴らしい文化や歴史を紹介し、一日も早い平和の実現を願うものであり、渡航を推奨する意図はありません。

    歴史の囁きに耳を澄ませ、心の羅針盤を取り戻す

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    ヴァスィーリキウでの旅を終えた私の心には、華やかな思い出というよりも、静かで深い余韻が残りました。それはまるで、良質なお茶をゆっくり味わった後のように、じんわりと身体を温め、心を落ち着かせる感覚です。千年の時を超えて伝えられてきた信仰、大地に刻まれた歴史の記憶、そしてそこに暮らす人々の素朴で温かな営み。これらすべてが、生きる上で本当に大切なものとは何かを、静かに語りかけてくれました。

    私たちは日々の暮らしの中で、どうしても目に見えるものや、数字で測れる成果ばかりを追い求めがちです。しかし、ヴァスィーリキウの教会に差し込む光や、風のささやき、ボルシチの湯気の向こうにある微笑みのなかにこそ、人生を豊かにする本質がひそんでいるのかもしれません。この旅は、私の心の羅針盤をそっと正しい方向へと導いてくれた、そんな時間でした。

    いつかウクライナに平和が訪れ、誰もが自由にこの美しい土地を訪れる日が来たなら、ぜひこの古都ヴァスィーリキウを訪れてみてください。きっとそこには、あなたの心に静かに寄り添い、明日への力を与えてくれるかけがえのない何かがあるはずです。この旅の記憶が、あなたの日常に少しでも穏やかな光を灯すきっかけとなりますように願っています。

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    この記事を書いた人

    子育てが一段落し、夫婦でヨーロッパの都市に長期滞在するのが趣味。シニア世代に向けた、ゆとりある旅のスタイルを提案。現地の治安や、医療事情に関する情報も発信する。

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