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    ジョージアのシグナギは「愛の街」。イタリアの丘陵都市とワインで比べる、絶景スローライフのすすめ

    グラスに注がれた琥珀色の液体が、窓から差し込む西陽を受けてキラキラと輝いている。眼下には、まるで緑の絨毯のような広大な渓谷がどこまでも続き、その先には神々が住まうというコーカサス山脈がうっすらと雪を頂いてそびえ立っている。ここはジョージア、カヘティ地方。城壁に囲まれた小さな街、シグナギ。僕は今、丘の上に立つワイナリーのテラスで、世界最古と言われる製法で造られたワインを片手に、言葉を失うほどの絶景に酔いしれている。

    旅を仕事にしていると、時々「今までで一番良かった場所は?」なんて野暮な質問をされることがある。そのたびに僕は困ってしまうのだけれど、心に浮かぶ風景はいつも決まって、美しい丘の上の街だ。イタリアのトスカーナ地方に点在する、サン・ジミニャーノの塔や、オルヴィエートの荘厳な聖堂。糸杉の並木道、オリーブ畑、そして太陽をいっぱいに浴びたブドウから造られる極上のワイン。あの、時間がゆっくりと流れる感覚。人生の豊かさとはこういうことかと、ため息をつきたくなるような、あの空気感。

    だから、旅の同業者から「東欧のイタリアって知ってるか?ワイン好きなら絶対に行くべきだ」と囁かれた時、僕の旅心はすぐさま火を噴いた。その場所こそが、ジョージア。そして、その中でも特に「イタリアの丘陵都市のようだ」と称されるのが、ここシグナギなのだ。

    「愛の街」という、少しばかり気恥ずかしいニックネームを持つこの街は、果たしてイタリアのそれと比べてどうなのだろうか。ワイン発祥の地がもたらすスローライフの魅力とは、一体どんなものなのだろう。今回は、そんな好奇心を胸に、トビリシから足を延ばした僕、旅ライターの太郎(30代後半、酒と人情を愛する)が、シグナギの魅力をイタリアの丘陵都市と比べながら、余すところなくお伝えしたい。この記事を読み終える頃には、きっとあなたも次の旅の目的地リストに、この小さな愛の街を書き加えているはずだ。

    昼間の絶景スローライフも良いですが、もし異国情緒あふれる夜の街で刺激的な体験を求めるなら、ニューオーリンズ・フレンチクオーターでジャズが渦巻く夜のバー巡りもおすすめです。

    目次

    なぜシグナギは「愛の街」と呼ばれるのか?

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    首都トビリシから東へ約110キロ。乗り合いバスのマルシュルートカで揺られることおよそ2時間、緑あふれるカヘティ地方の丘の上に、その街は突然その姿を現す。統一感のある赤い屋根瓦、迷路のように入り組んだ石畳の小径、そして街をぐるりと囲む頑強な城壁。その風景は、まさにイタリア中部のウンブリア州やトスカーナ州にある丘陵の町々を思い起こさせる。

    城壁と石畳が織りなすロマンチックな物語

    シグナギが「愛の街」と呼ばれる所以は、とてもロマンチックな話に根ざしている。この街には24時間365日、いつでも婚姻届を受け付ける役所があるのだという。まるでラスベガスのような話に思えるが、その背景には「愛し合う二人がいつでも永遠の誓いを立てられるように」という心憎い配慮がある。このエピソードが広まり、シグナギはジョージア国内屈指のデートスポットであり、ウェディングの名所として知られるようになったのだ。

    実際に街を歩いてみると、その呼び名が決して単なる飾りではないことを実感させられる。城壁の上を歩けば果てしなく広がるアラザニ渓谷の大パノラマが眼前に広がり、手をつなぐカップルの姿がちらほらと見える。小さな広場にはおしゃれなカフェやワインバーが軒を連ね、夜になると温かな街灯が石畳を照らし出し、幻想的なムードに包まれる。

    私が訪れたのは初夏の午後だったが、路地裏の家の窓辺に置かれたゼラニウムの鉢植え、壁に絡みつくブドウの蔓、そしてどこからともなく響いてくる教会の鐘の音。これらすべてが、訪れる者の心を穏やかにし、少しばかりセンチメンタルな気分にさせるのだ。この感覚は、イタリアのオルヴィエートやシエナで味わったような、歴史の深みと生活の温もりが共存するあの独特の雰囲気に非常に近い。

    イタリアの丘陵都市と比べて分かるシグナギの魅力

    では、イタリアの街々と比較したとき、シグナギの持つ魅力とは何だろうか。

    まず挙げられるのは、その「スケール感」と「素朴さ」である。サン・ジミニャーノやシエナは、良くも悪くも世界的な観光地として洗練されているのに対し、シグナギにはまだまだ手つかずの素朴な風情が色濃く残っている。観光客向けのレストランや土産物店は存在するが、一歩細い路地に入れば、洗濯物を干すおばあちゃんや井戸端会議に興じるおじさんたちの普段の生活が目の前に広がる。この生活感こそが旅人にとって格別の魅力なのだ。

    次に、圧倒的な物価の安さも大きなポイントだろう。これは旅人にとって見逃せない魅力である。トスカーナの有名なアグリツーリズモでワインと食事を楽しめば、それなりの出費を覚悟しなければならない。しかしここシグナギでは、信じられないほどリーズナブルに、極上のワインと郷土料理を味わうことができる。たとえば絶景が望めるレストランでボトルワインを頼み、前菜からメインディッシュまでしっかり楽しんでも、一人あたり3,000円程度でお釣りがくることも珍しくない。このコストパフォーマンスの高さは、イタリアの有名観光地ではなかなかお目にかかれない。

    さらに、人の温かさも特筆すべきだ。ジョージアには「客人は神の贈り物」という古くからの言い伝えがあるが、その言葉どおり、彼らのホスピタリティは驚くほど手厚い。目が合うと「ガマルジョバ!(こんにちは!)」と満面の笑みで挨拶を交わし、道を尋ねれば目的地まで案内してくれることすらある。この親しみやすさとありのままの優しさが、シグナギの持つロマンチックな雰囲気をより一層深めているように感じられた。

    シグナギは、イタリアの丘陵都市が誇る美しい景観や歴史的な魅力を備えながらも、それ以上に素朴で温かく、何より旅人の心に優しい。まさに知る人ぞ知る、丘の上に浮かぶ楽園なのだ。

    ワイン発祥の地で味わう、琥珀色の奇跡

    シグナギおよびカヘティ地方を語る際に欠かせないのがワインである。ジョージアは約8000年前からワイン造りが始まったとされるワイン発祥の地であり、その伝統はイタリアやフランスのようなワイン大国よりもはるかに古い歴史を持っている。

    ジョージアワインの核心「クヴェヴリ製法」

    ジョージアのワインを特徴づける最大のポイントは、「クヴェヴリ」と呼ばれる卵型の巨大な土製壺を用いる伝統的な醸造方法にある。ブドウを皮や種、時には茎ごとこのクヴェヴリに入れて地下に埋め、発酵・熟成させる。この古来からの製法は、2013年にユネスコの無形文化遺産にも認定された。

    この方法で白ブドウを醸造すると、果皮や種から成分がじっくり抽出され、一般的な白ワインとは異なる、美しい琥珀色(アンバー色)のワインが生まれる。これが近年、世界のソムリエやワイン愛好家から注目されている「オレンジワイン(アンバーワイン)」である。

    味わいは非常に複雑で個性的。アプリコットやドライフルーツ、紅茶、ナッツのような豊かな香りに加え、しっかりとしたタンニン(渋み)と長い余韻を持つ。白ワインのような爽やかさと赤ワインのような骨格を兼ね備え、そのインパクトは一度味わうと忘れがたい。まさに大地のエネルギーがそのまま液体となった、力強くも優しい味わいである。

    シグナギ周辺のワイナリー巡り — 具体的な体験プラン

    シグナギ滞在の最大の魅力は、やはりワイナリー巡りだ。カヘティ地方には大小さまざまなワイナリーが点在し、多くが見学や試飲に対応している。ここでは、私が実際に訪れたり旅人から好評を聞いたおすすめワイナリーと、具体的な回り方を紹介しよう。

    • Pheasant’s Tears(フェザンツ・ティアーズ)

    シグナギ中心部に位置し、アクセスも良好な最も著名なワイナリーの一つ。アメリカ人画家とジョージア人ワインメーカーが設立し、伝統的なクヴェヴリ製法にこだわり、土着品種を用いたオーガニックワインを生産している。併設のレストランは非常に質が高く、アラザニ渓谷の壮大な眺めを楽しみながらジョージアの伝統料理とワインのペアリングを堪能できる。ワイン愛好家なら必ず足を運びたいスポットだ。

    • Okro’s Wines(オクロズ・ワインズ)

    こちらもシグナギの町中にあり、絶景のテラス席が有名なワイナリー兼レストラン。自然派ワインの造り手として高い評価を得ており、特に希少な土着品種を使ったワインはここでしか味わえないものも多い。夕暮れ時のテラス席を予約して、コーカサス山脈に沈む夕日を眺めながらワインを楽しむ時間は、至福のひとときと言える。

    • 小規模な家族経営ワイナリー(マラニ)

    有名どころも素晴らしいが、ジョージアワインの本質を味わいたいなら、小さな家族経営のワイナリー(マラニ)訪問がおすすめだ。ガイドブックには載っていないようなマラニでは、所有者自ら自慢のクヴェヴリを見せてくれ、樽から直接ワインを注いでくれたり、自家製チーズやパンを振る舞ってくれたりもする。これこそがジョージアらしい温かなもてなしである。こうしたワイナリーには、現地のタクシードライバーに「良いマラニへ案内してほしい」と頼むのが一番手軽な方法だ。

    ワイナリーツアーのモデルプラン

    効率的にワイナリーを回るには、タクシーのチャーターか現地ツアーへの参加が一般的だ。

    • 半日コース(約4〜5時間)
    • 午後1時: シグナギのホテルを出発。
    • 午後1時半: 1軒目(例:大規模で近代的なワイナリー)に到着。畑や醸造所を見学し、テイスティングを楽しむ。
    • 午後3時: 2軒目(例:家族経営の小規模マラニ)に向かい、オーナーと交流しながら家庭的なワインと軽食(チーズやパンなど)を味わう。
    • 午後5時: シグナギに戻り、夕食前の街散策を楽しむ。
    • 1日コース(約7〜8時間)
    • 午前10時: シグナギのホテルを出発。
    • 午前10時半: まずはボドベ修道院を見学(詳細は後述)。
    • 正午: 1軒目のワイナリーでランチとワインテイスティング。
    • 午後2時半: 2軒目でクヴェヴリ製法について深く学ぶ。
    • 午後4時: 3軒目では、伝統的なジョージアのパン「ショティ」焼き体験や、蒸留酒「チャチャ」の試飲などワイン以外の文化にも触れる。
    • 午後6時: シグナギに戻る。

    これらはあくまで一例。ドライバーと相談すれば、好みやペースに合わせて自在にプランをカスタマイズできるのも、ジョージア旅行の醍醐味である。

    絶景に心を奪われる – アラザニ渓谷とコーカサス山脈

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    シグナギの魅力はワインだけにとどまらない。この街が特別である理由は、その圧倒的なロケーションに他ならない。街のどこにいても、目を奪われるような壮大な景色が身近に広がっているのだ。

    城壁の上からの絶景パノラマ

    シグナギを訪れたら、まず最初にすべきことは街を囲む城壁に登ることだ。18世紀に築かれたこの城壁は全長約4.5kmにも及び、その一部は遊歩道として開放されている。石の階段を上り、城壁の上に立てば、360度の大パノラマが目の前に広がる。

    一方には赤い屋根瓦が連なり、まるで波のように広がる愛らしい街並みが見える。そして反対側には、言葉を失うほど壮大なアラザニ渓谷が果てしなく続いている。渓谷はまるで神が大地を大きなヘラでならしたかのように広々としており、碁盤の目のような畑やぶどう畑がパッチワークのように美しく広がっている。その遥か彼方、空と地面の境目には、白銀の輝きを放つコーカサス山脈の稜線が横たわっているのだ。

    この景色は時間帯によって全く異なる表情を見せる。朝は渓谷に朝靄が立ちこめ、霞の向こうに山々がぼんやりと浮かぶ幻想的な光景が広がる。昼間は太陽の光が緑を輝かせ、生命力あふれる活気に満ちている。特におすすめしたいのが夕暮れ時で、空がオレンジから紫へとグラデーションを描き、コーカサス山脈のシルエットが濃く浮かび上がる様は、まるで一枚の絵画のようだ。この城壁の上で、ワインを片手に夕日を眺める時間に勝る贅沢はないだろう。

    イタリアの丘陵都市も美しい田園風景を持つところは多いが、シグナギのように雄大な渓谷とその向こうに連なる5,000メートル級の山々という壮大な自然のスケールを誇る景観は、ほかに類を見ない。大自然の迫力がまるで違うのだ。

    聖ニノの十字架とボドベ修道院の静謐な空気

    シグナギから車で約5分の場所にあるボドベ修道院も、ぜひ訪れたい絶景スポットである。ここは4世紀にジョージアにキリスト教を伝えたとされる聖女ニノが眠る場所であり、ジョージア正教の重要な聖地のひとつだ。

    修道院の敷地内には、まるで天国のように美しく手入れされた庭園が広がる。色鮮やかな花々が咲き誇り、糸杉が空に向かって真っ直ぐに伸びる様子は静謐で敬虔な空気が漂う。さらにこの庭園から見下ろすアラザニ渓谷の眺望が特に素晴らしい。シグナギの城壁から見る景色とは多少異なる角度で、より広がりと奥行きを感じさせてくれる。

    敷地内には、聖ニノの奇跡によって湧き出したと伝えられる聖なる泉があり、多くの巡礼者が訪れる。体力に自信があれば、急な階段を下って泉まで足を運ぶことも可能だ。

    ここを訪れると、ジョージアの人々の深い信仰心に触れることができる。ワインや美食に興じて陽気に過ごす姿とは異なる、彼らの精神性の側面に触れることで、この国の奥深さを改めて感じることができるだろう。

    旅の準備を始めよう – シグナギ完全ガイド

    ここまで読んでシグナギへの旅心が高まったあなたのために、ここからは旅の計画に役立つ具体的な情報をお伝えしよう。この記事を読めば準備は万全、あとは航空券を手配するだけだ。

    モデルプランとツアースケジュール

    シグナギへは、ジョージアの首都トビリシを拠点にアクセスするのがおすすめ。トビリシからの行き方次第で、日帰りか宿泊か、楽しみ方も大きく変わってくる。

    • スピーディに楽しみたい方へ!トビリシ発の日帰りツアー

    時間が限られているなら日帰りツアーが便利。プライベートツアーを利用すれば、自分たちのペースで効率的に主要スポットを巡れる。

    • 例:スケジュール
    • 午前9:00 トビリシの宿泊先を出発
    • 午前11:00 ボドベ修道院に到着し、静かな空気を満喫
    • 正午 シグナギ着。城壁からの絶景を楽しみつつ、石畳の街並みを散策
    • 午後1:30 絶景レストランにてジョージア料理のランチ。ワインもぜひ
    • 午後3:30 1~2軒のワイナリー訪問、伝統的なクヴェヴリワインをテイスティング
    • 午後5:30 シグナギ出発
    • 午後7:30 トビリシ帰着
    • 所要時間: およそ10~11時間
    • ゆったり満喫派におすすめ!シグナギでの宿泊プラン

    余裕があるなら、ぜひシグナギに泊まってほしい。この街の真価は観光客が少なくなる夜の静けさや、さわやかな朝の時間にある。

    • 例:スケジュール
    • 1日目:
    • 午前中 トビリシからマルシュルートカ(乗合バス)やタクシーでシグナギへ移動
    • 午後 ホテルにチェックイン後、街を気ままに散策。城壁を歩き、壮大な眺望に感動
    • 夕方 丘の上にあるワイナリーレストラン(例:Okro’s Wines)で夕日を眺めながらアペリティフ
    • 夜 街の中心部のレストランで伝統音楽の生演奏を楽しみつつディナー
    • 2日目:
    • 午前 タクシーを半日チャーターし、カヘティ地方のワイナリーを3軒ほどじっくり訪問
    • 午後 シグナギに戻り、カフェでひと休みやお土産探し
    • 夕方 トビリシへ向けて出発

    この街では予定を詰め込みすぎず、カフェのテラスで読書をしたり、細い路地裏の猫を眺めたり過ごす時間自体が、何よりの贅沢になるだろう。

    料金と予約に関するリアル情報

    旅の計画を立てるうえで気になるのが予算だ。ジョージアはヨーロッパの中でも特に物価が手頃な国の一つである。

    • ツアー費用の目安
    • トビリシ発の日帰りプライベートツアー: 1台の車をドライバー付きでチャーターし、1台あたり約80~120米ドルが相場。4人で割ると1人あたり20~30ドル程度と非常にお得。
    • 料金に含まれるもの: 車両代、ドライバー兼ガイド代、燃料費。
    • 料金に含まれないもの: 各施設の入場料、ワイナリーでの試飲代(1軒あたり5~15ドルほど)、食事代、ドライバーへのチップ(必須ではないが良いサービスなら10%程度渡すと喜ばれる)。
    • 個人手配での交通費
    • マルシュルートカ(乗合バス): トビリシのサムゴリ駅からシグナギ行きが出ている。片道10ラリ(約500円)ほどの格安だが、出発時間は不定期で混雑することがある。
    • タクシーチャーター: トビリシからシグナギまでの片道料金は100~120ラリ(約5,000~6,000円)が相場。
    • 予約の選択肢
    • オンライン予約: ViatorやGetYourGuideなどのプラットフォームを活用すれば、現地ツアーを事前に予約・決済でき安心。レビューを参考に信頼できる会社を選ぼう。
    • 現地手配: トビリシのホテルや街中のツアーデスクでも手配可能。直接交渉できるのがメリット。
    • おすすめツアー会社: 質の高いガイドとサービスで評判のGamarjoba Georgia Toursなどは、オンラインでの問い合わせ・予約が可能で、初めてのジョージア旅行でも安心できる。

    持ち物と服装のポイントチェックリスト

    シグナギで快適に過ごすために準備しておきたいアイテムと服装のポイントを紹介。

    • 必携アイテム
    • パスポート: 有効期限の確認を忘れずに。
    • 現金とクレジットカード: 小規模な店舗や市場、タクシーは現金のみの場合が多い。クレジットカードはホテルや大型レストランで利用可能。ユーロや米ドルを持参し、トビリシの空港や市内でジョージア・ラリ(GEL)に両替するのがおすすめ。
    • 海外旅行保険証: 万一に備え、必ず加入を。
    • あると便利なもの
    • 歩きやすい靴: シグナギは石畳や坂道が多いため、スニーカーやウォーキングシューズがマスト。
    • 日焼け止め、サングラス、帽子: 特に夏は日差しが強烈。
    • 羽織るもの: 丘の上は朝晩冷え込むことがあるため、夏でも薄手のジャケットやカーディガンが重宝する。
    • 酔い止め薬: 道路のコンディションが荒いこともあり、車酔いしやすい人は持参すると安心。
    • モバイルバッテリー: 絶景撮影に夢中になるとスマホの充電がすぐ減るため、必須アイテム。
    • 服装のマナーと現地のルール
    • 修道院訪問時の服装: ボドベ修道院など宗教施設を訪れる際は服装に注意。女性はスカーフで髪を覆い、肩や膝が隠れるロングスカートや長ズボンを着用。男性も半ズボンは避けるのが望ましい。多くの修道院では入口で巻きスカートやスカーフを貸し出すが、自前のストールを持っていくとスマートだ。
    • 写真撮影: 教会内部は撮影禁止の場所が多いので、必ず案内表示を確認しよう。

    旅の疑問にお答えQ&A

    • Q. 現地の治安はどう?
    • A. シグナギは非常に治安が良く、夜間も安心して歩ける場所だ。ただし、どこの国でもそうであるように、スリや置き引きには最低限の注意を払おう。
    • Q. 言語は通じる?
    • A. ホテルや観光客向けレストランでは英語が通じることが多いが、一般的にはジョージア語が公用語。若い世代は英語を話す人が増えているが、年配の方にはロシア語の方が通じやすい場合もある。現地の人との距離を縮めるため、「ガマルジョバ(こんにちは)」「マドロバ(ありがとう)」といった簡単な挨拶を覚えていくとよい。
    • Q. ワインは日本に持ち帰れる?
    • A. 日本の酒類免税枠は、760ml程度の瓶が3本まで。多くのワイナリーでボトルをしっかり梱包してくれるため、スーツケースに入れて持ち帰ることが可能。クヴェヴリワインは日本で購入すると高価なので、ぜひお気に入りの1本を現地で手に入れて持ち帰りたい。

    シグナギの胃袋を掴む – 食と人情に酔いしれる夜

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    旅の醍醐味は、美しい景色と酒、それに何より「食」にこそある。ジョージアは美食の国としても名高く、シグナギにはその魅力を存分に味わえる素晴らしいレストランが数多く揃っている。

    絶景を望むレストランでの優雅な夕食

    シグナギでの食事は、ぜひアラザニ渓谷を見渡せるテラス席のあるレストランを選びたい。代表的な店として挙げられるのが、先に紹介した「Pheasant’s Tears」や「Okro’s Wines」だ。

    この地でぜひ味わいたいのは、ジョージア料理の数々。

    • ハチャプリ: 「ジョージアのピザ」とも称されるチーズ入りパン。地方によって形状が異なるが、シグナギでは円形のイメルリ・ハチャプリがよく見られる。熱々でとろけるチーズとパンの組み合わせは絶妙で、ワインが進むこと間違いない。
    • ヒンカリ: たっぷりのスープを内包した大きな小籠包のような料理。てっぺんの持ち手を持ち、中の肉汁をこぼさぬよう注意して食べるのが作法だ。
    • シュクメルリ: 鶏肉をニンニクとクリームまたは牛乳で煮込んだ、濃厚なニンニクの香りが食欲を掻き立てる一皿。パンを浸して食べると、まさに至福の味わいを楽しめる。
    • バドリジャーニ・ニグヴジット: 焼きナスの薄切りに、クルミとスパイスを調合したペーストを挟んだ冷製前菜。ジョージア料理の奥深さを感じさせる一品だ。

    これらの料理を地元産のクヴェヴリワインと共に味わう。夕日が渓谷を朱に染め、涼やかな風が頬を撫でる中、隣のテーブルからはジョージア伝統の「ポリフォニー」の美しいハーモニーが聞こえてくる…。これほど完璧な夕食体験はなかなかないだろう。

    路地裏の家庭料理と心温まる人々

    煌びやかな絶景レストランも魅力的だが、個人的には飲兵衛のライターとして、路地裏の小さな食堂やゲストハウスで味わう家庭料理にこそ、その土地の真髄が宿ると感じる。

    シグナギでは多くの家庭がゲストハウスを営み、宿泊客には手作りの夕食(スプラ)を振る舞うことが多い。ここでこそ、ジョージア流のおもてなしを肌で感じられる瞬間となる。

    食卓には手料理がこれでもかと並び、主人は自家製ワインを「さあ飲め、さあ飲め」と何度も注いでくれる。言葉が通じなくても、乾杯(ガウマルジョス!)を繰り返すうちに、いつしか家族のような一体感が生まれていく。宴の進行役「タマダ」が、愛や平和、家族への詩的な乾杯の音頭を取ると、皆でグラスを掲げる光景はまさに文化そのものだ。ユネスコの公式サイトでも紹介されているように

    イタリアのマンマの家庭料理も素晴らしいが、ジョージアのスプラが持つ底抜けの明るさと旅人をまるで家族の一員のように迎え入れる懐の深さは、また格別である。シグナギの夜には、ワインだけでなく、人の温かさにもたっぷりと酔いしれたいものだ。

    丘の上の街で、人生のペースを問い直す

    トスカーナの丘の上で味わうサンジョベーゼも、シグナギのテラスで楽しむクヴェヴリも、どちらも比べようがないほど素晴らしい。美しい街並み、豊かな食文化、そして心を解きほぐす絶景。両者には多くの共通点がある。

    しかし、シグナギの旅を終えた今、僕の心に深く刻まれているのはあの街に漂う独特の「時間」だ。それは、まだ世界に見つかりすぎる前の、穏やかで、やや不器用で、限りなく優しい時間。城壁の上を通り抜ける風の音、遠くで鳴く家畜の声、そして人々の飾り気のない笑顔。そのすべてが、日常の喧騒に疲れた心をゆっくりとほどいていくようだった。

    ここは、ただ景色を眺め、写真を撮り、美味しいものを食べて終わる場所ではない。琥珀色のワイングラスを傾けながら広大な渓谷を見つめていると、自然と自分自身の人生を振り返る気持ちになる。何をそんなに急いでいたのだろう? 本当に大切なものは何だったのだろう?と。

    シグナギは、訪れる者に「スローライフ」という、現代人が忘れかけた豊かさを思い出させてくれる場所だ。効率や生産性とは無縁の世界の中で、ただ今この瞬間を味わうことの尊さを教えてくれる。

    もし、あなたが次の旅先に心からの安らぎと、ささやかな発見を求めているのなら。イタリアの丘陵都市の美しさに憧れつつも、もう少し素朴で冒険心を満たしてくれる場所を探しているのなら。

    ぜひ、ジョージアの「愛の街」シグナギを訪れてほしい。あなたの旅のリストに、この小さな街の名前が加わることを、琥珀色のワインを手に、心から願っている。ガウマルジョス!

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    この記事を書いた人

    美味い酒と肴を求めて全国を飲み歩く旅ライターです。地元の人しか知らないようなB級グルメや、人情味あふれる酒場の物語を紡いでいます。旅先での一期一会を大切に、乾杯しましょう!

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