「ねえ、次の旅はどこに行く？」
友達とのカフェタイム、スマホをスクロールしながら交わされる会話は、いつだって私たちの心を軽くしてくれる魔法の言葉。もし今、あなたの指が漫然と地図をなぞっているなら、一度ベトナムの中央、ダナンの文字の上で止めてみてほしいのです。
そこには、エメラルドグリーンの海と、どこまでも続く白い砂浜、そして夜になるとまったく違う顔を見せる、刺激的でロマンティックなビーチシティが広がっています。
特に、週末の夜だけ現れる特別な魔法があるんです。街の真ん中を貫くハン川に横たわる巨大な龍、ドラゴンブリッジ。この龍が、ごうごうと音を立てて炎を噴き上げる瞬間、ダナンの夜はクライマックスを迎えます。そのスペクタクルを、冷たいカクテル片手に天空から見下ろす…。そんな映画みたいな夜が、ここダナンでは現実になるんです。
今回の旅のテーマは、そのすべてを一番美しい場所から体験する「ドラゴンブリッジの炎に照らされる、最新ルーフトップバー巡り」。キラキラした夜景も、美味しいお酒も、旅先での高揚感も、全部欲張りに楽しんじゃいましょう。大丈夫、私がナビゲートします。この地図を頼りに、一緒にダナンの空へ飛び立ちませんか？
ダナンの夜を満喫した後は、メコンデルタの水上マーケットで朝の活気に飛び込む旅もおすすめです。
週末の夜9時、龍が目覚める瞬間
旅の計画を立てる際に、まず必ずカレンダーに記してほしいのが「週末の夜9時」という時間帯です。ダナンのシンボルであるドラゴンブリッジが、単なる橋としての姿を超え、伝説の生き物として命を吹き込まれるのが、毎週土曜と日曜の夜9時ちょうどなのです。
全長666メートルの巨大な龍。その口からは、街のネオンさえも焦がしそうな本物の炎が何度も吹き上げられます。初めて見たとき、私は思わず「わあ」と声をあげてしまいました。遠くからでも伝わる熱気や、空気を震わせる轟音。それは単なるイベントを超え、街全体が一体となった壮大なセレモニーのような光景でした。
炎のパフォーマンスが終わると、次に大量の水が夜空へと舞い上がります。風向きによっては、橋の上にいるとびしょ濡れになるほどの迫力。この炎と水のショーが、わずか約15分という短い時間に凝縮されています。この瞬間のために、ダナンの人々も世界中から集まった旅行者たちも、ハン川のほとりで息を呑みながら見上げているのです。
もちろん、橋のふもとや遊歩道から間近で鑑賞するのも迫力満点です。しかし、せっかくのダナンの夜ですから、この熱狂を少し大人の雰囲気漂う場所から優雅に見下ろしてみませんか？夜景という宝石箱の中に、燃え盛る龍の姿を閉じ込める。そんな贅沢な体験を実現してくれるのが、これからご紹介するルーフトップバーなのです。
空に一番近い特等席「Sky36」
ダナンのルーフトップバーを語る際、必ず押さえておきたい場所があります。それが、ハン川沿いにそびえるノボテル・ダナン・プレミア・ハンリバーの最上階、36階にある「Sky36」です。ここは、ダナンで最も高く、そして最も華やかな夜を約束してくれる天空のステージです。
エレベーターが開いた瞬間に目に飛び込むのは、360度に広がる光の絨毯。息を呑む、という言葉がこれほどぴったりくる場所はなかなかありません。ハン川に架かるいくつもの橋、遠くに広がるミーケビーチの海岸線、そして街中に灯る無数の明かり。そのすべてが自分の足元に広がっているのです。
初めて訪れた際、私はテラスのガラスフェンスに身を預けて、しばらくの間動けませんでした。湿気を帯びた暖かな夜風が頬を撫で、どこからか聞こえるDJのビートが心臓の鼓動と同期していく。ああ、今私は本当に遠くの場所にいるんだと実感した瞬間でした。
ドレスコードは旅のアクセント
「Sky36」はダナンでも特に格式高いスポットなので、少しだけお洒落をして訪れるのがおすすめです。ただし、フォーマルなドレスやジャケットが必要というわけではありません。男性なら襟付きシャツに長ズボン、女性はお気に入りのワンピースや少しドレッシーなトップスとスカートで十分です。ビーチサンダルやショートパンツは控えたほうがスマートでしょう。
旅先でほんの少しお洒落をするのって、気分が上がりますよね。「今夜は特別だ」と自分に言い聞かせるような儀式にも似たもので、私はそういう時間が好きです。クローゼットの奥で眠っていた服に袖を通し、いつもより少し丁寧にメイクをした。そのひとときも含めて、Sky36での体験は始まっているのかもしれません。
炎を眼下に見晴らす贅沢な時間
そして週末の夜9時。もしその時間にSky36のテラスにいるなら、あなたは最高の特等席を手に入れていることになります。眼下には巨大なドラゴンブリッジが輝くオレンジ色の閃光を放ち、遠くから上がる歓声が音楽にかき消されつつもかすかに聞こえてくる。まるで神の視点で街のショーを見下ろしているかのような、圧倒的な優越感と非日常感に包まれるのです。
カクテルの価格はおよそ300,000ドン（約1,800円）からで、ベトナムの物価を考えるとやや高めと言えるでしょう。しかし、この景色と体験を踏まえれば決して高くは感じません。むしろ、東京やソウルの高級バーと比べると、ずっと手頃にこの贅沢な時間を味わえます。特におすすめなのは、パッションフルーツを使ったトロピカルなシグネチャーカクテルで、南国の夜の幕開けにぴったりです。
予約は特に週末のドラゴンブリッジが見える席を希望するなら、ホテルの公式サイトや電話で事前にしておくのが安心です。少し早めの時間に訪れて、夕暮れから夜景へと移り変わるマジックアワーを楽しむのも、忘れ難い思い出になることでしょう。
プールサイドのチルな夜「Sevva Sky Lounge」
Sky36の圧倒的なスケール感も素晴らしいですが、「もっとリラックスしたムードで、おしゃれな夜を過ごしたい」と感じることもありますよね。そんな時にぜひ訪れたいのが、ニューオリエントホテルの屋上にある「Sevva Sky Lounge」です。
こちらはSky36ほどの高層ではないものの、その分街の雑踏や活気を身近に感じられるのが魅力です。フロアの中央にはライトアップされたインフィニティプールがあり、その水面にゆらゆらと映るダナンの夜景はとてもロマンティック。プールサイドのソファ席にゆったりと腰を下ろせば、瞬く間にリゾート気分に浸かれます。
利用者は地元の若者やカップル、私たちのような旅行者が混ざり合っていて、Sky36よりもカジュアルで活気のある雰囲気。ファッションもリゾートワンピースやセットアップなど、より自由で洗練されたスタイルで楽しんでいる人が多い印象です。まさに今のZ世代の感性にぴったり合う空間ではないでしょうか。
SNS映え間違いなしの一杯を手に
Sevvaの魅力は空間デザインだけでなく、カクテルのプレゼンテーションがとてもユニークでかわいらしいこと。ドライアイスの煙が立ち上るグラスや、色鮮やかなフルーツで飾られた一杯は、テーブルに運ばれてきた瞬間に歓声が上がること請け合いです。もちろん、すぐにスマホを構えて写真を撮りたくなりますよね。
ここで過ごすひとときは、まるでファッション雑誌のページそのもの。友人と写真を撮り合ったり、プールサイドで夜景を背景にストーリーをアップしたり。旅の「今」を切り取って楽しむのに最適なロケーションです。ドラゴンブリッジも見えますが、炎のショーを真正面で見るよりは、美しい夜景の一部としてそっと楽しむ感覚。迫力あるショーも素敵ですが、このチルな雰囲気の中で眺めるのもまた格別です。
料金はカクテルが約200,000ドン（約1,200円）前後と、Sky36よりも若干リーズナブル。気負わず立ち寄れるのも嬉しいポイント。予約なしで入れることが多いものの、週末や良い席を確保したい場合は事前に連絡しておくと安心です。2軒目のバーとして、少し違った雰囲気を楽しみたい時に訪れるのもおすすめです。
潮風と夜景のハーモニー「The Top Bar」
これまでご紹介してきた2つのバーは、主にハン川を望むシティビューが魅力でした。しかし、ダナンはベトナムを代表するビーチリゾートでもあります。せっかく訪れるなら、海の景色も堪能したいですよね。そんな希望を叶えてくれるのが、ミーケビーチの目の前に位置するア・ラ・カルト・ダナン・ビーチ・ホテルの最上階にある「The Top Bar」です。
エレベーターで23階まで上がると、これまでとは異なる壮大なパノラマビューが広がります。目の前には果てしなく続く深い海と、その海岸線に沿った街の灯りが瞬きます。そして振り返ると、華やかなハン川周辺の夜景があなたを迎えます。シティビューとオーシャンビューの両方を同時に楽しめるという、贅沢なロケーションです。
特に心地よいのは、遮るもののない屋上を抜ける潮風です。ベトナムの熱気をやわらげ、爽やかな涼しさをもたらしてくれるこの風が、とても快適に感じられます。ソファに腰掛けて目を閉じれば、遠くから聞こえる波の音と軽快なラウンジミュージックが調和し、心からリラックスできるでしょう。
昼も夜も、それぞれに異なる魅力
「The Top Bar」のもうひとつの魅力は、屋上にインフィニティプールがあることです。昼は宿泊者が利用するこのプールが、夜になると幻想的にライトアップされ、バーの雰囲気をさらに引き立てます。時間に余裕があれば、夕暮れ直前に訪れて、オレンジ色に染まる空と海のコントラストを眺めるのもおすすめです。刻々と変わる景色は、きっと忘れがたい旅の思い出になるでしょう。
服装については、ビーチサイドということもあってカジュアルで問題ありません。リゾート感のあるマキシワンピースや、Tシャツにリネンパンツといったリラックスしたスタイルで十分です。ビーチで一日遊び、シャワーを浴びてそのままディナー前に一杯楽しむといった使い方も気軽にできます。
ドラゴンブリッジのショーはここからはやや距離がありますが、遠くに見える炎の演出を確認できます。迫力満点というよりは、美しいパノラマ夜景のアクセントとして楽しむのに最適です。落ち着いた大人の雰囲気の中で、静かにダナンの夜を満喫したいときにぴったりのスポットです。
ダナンの夜を巡るための準備とヒント
さて、魅力的なルーフトップバーの数々に、行きたくなってきませんか？とはいえ、海外の夜、特にバー巡りとなると少し不安を感じる方もいるかもしれません。でも安心してください。いくつかのポイントを押さえておけば、誰でもスマートかつ安全にダナンの夜を満喫できます。
移動は「Grab」一択で間違いなし！
まず、バーからバーへ移動する手段ですが、配車アプリの「Grab（グラブ）」が断然便利で安心です。日本でいうUberにあたるサービスで、スマホのアプリから目的地を指定すると、バイクか車が現在地まで迎えに来てくれます。
特におすすめなのが「GrabBike」。バイクの後ろに乗る形で、車よりも料金が安いだけでなく、ダナンの夜風を全身で感じながら街を駆け抜けるのがとても爽快です！まるでちょっとしたアトラクションのように、移動時間も楽しいひとときになります。もちろん、複数人での移動やドレスアップした際は「GrabCar」を選べば、より快適に移動できます。
Grabの最大の利点は、乗車前に料金が確定していること。メーターの心配や値段交渉が不要なので、言葉が不自由な旅行者にとっては大変心強いサービスです。さらに、クレジットカードをアプリに登録しておけば支払いも自動で完了。現金を準備する手間もありません。ダナンに着いたら、まずGrabアプリをダウンロードして設定しておくことをおすすめします。これだけで旅の自由度が格段にアップしますよ。
予算はどのくらい見ておけばいい？
気になる予算ですが、ルーフトップバーでのカクテル1杯の相場はおおよそ150,000ドン〜300,000ドン（約900円〜1,800円）くらいです。もちろん、店のランクや注文するお酒の種類によって変動はあります。日本の都市部のバーと比べると、かなりお得にゴージャスな体験ができることを実感できるでしょう。
例えば、夜のプランとして2軒のバーをはしごし、それぞれでカクテルを2杯ずつ楽しむと仮定します。お酒代はだいたい4,000円〜6,000円ほどで、そこにGrabでの移動費を加えても、1人あたり1万円もあれば十分に贅沢なバーホッピングが楽しめる計算です。ほとんどのバーでクレジットカードが使えますが、念のために少しはベトナムドン（VND）の現金を持っておくと安心です。
押さえておきたい小さな注意点
ダナンの治安は比較的良好ですが、それでも海外であることを忘れずに。特に夜間、人通りの少ない場所を一人で歩くのは避けましょう。Grabを利用すれば、お店の入り口まで安全に送り届けてくれます。
また、ルーフトップバーは天候の影響を受けやすいです。乾季（3月〜8月頃）は比較的安定していますが、雨季（9月〜2月頃）に訪れる場合は急なスコールに注意が必要です。屋根付きの席があるバーも多いですが、訪れる前に天気予報をチェックしておくと、より賢くプランを立てられます。
そして何より大事なのは、楽しむ心！少し勇気を出してバーテンダーにおすすめのカクテルを尋ねたり、隣の席の旅人と笑顔を交わしたり。そんなちょっとしたコミュニケーションが、旅の夜を一層彩り豊かにしてくれることでしょう。
旅の夜は、まだ終わらない
ドラゴンブリッジの炎が消え、ルーフトップバーでグラスを傾けても、ダナンの夜の魅力は尽きることがありません。
ハン川沿いの遊歩道は、夜遅くまで地元の人々や観光客で賑わいを見せています。ライトアップされた橋を眺めながらのんびり散歩するのも心地よいものです。道中には多くの露店やストリートパフォーマーがいて、歩いているだけで自然と気分が高まります。
お腹が空いたら、「ソンチャ・ナイトマーケット」に立ち寄るのがおすすめです。香ばしいシーフードのBBQの匂い、色とりどりのフルーツシェイク、そしてベトナム風お好み焼きバインセオ。五感を刺激する地元の味覚が、手頃な価格で存分に味わえます。バーで過ごす上質な時間とはまた違った、活気あふれるダナンの一面に触れることができるでしょう。
夜景を眺めながら美酒に酔い、地元の賑わいを感じる。そんな多彩な夜を体験できるのがダナンの魅力です。気分に合わせて、自分だけの夜を自由にデザインしてみてください。
飛行機を降り立った瞬間に感じるむっとした熱気。街中に響くバイクのクラクション。そして、夜空を焦がすドラゴンの炎と、宝石のように輝く夜景が眼下に広がります。ダナンでの体験は、きっとあなたの心に鮮やかな記憶として刻まれることでしょう。
次の旅先を探してベトナムの地図の上で指が止まったなら、もしかするとその場所に呼ばれているのかもしれません。最高の夜があなたを待っています。さあ、次はあなたの番。ダナンの空の下で、乾杯しましょう。
