ホーチミンの喧騒を飛び立ち、飛行機の窓から見える景色が深い緑に変わっていく。熱帯のまとわりつくような熱気が、次第にさらりとした高原の空気に入れ替わるのを感じながら、私はずっと憧れていた街、ダラットへと降り立ちました。そこは「永遠の春の街」という、あまりにもロマンチックな異名を持つ場所。年間を通して春のように涼やかで、色とりどりの花が咲き誇る、ベトナムの秘められた宝石のような高原リゾートです。
アパレル企業での目まぐるしい日々の中、ふと心をよぎるのは、どこか遠く、時間の流れが違う場所への渇望でした。新しいコレクションの色彩計画に頭を悩ませていたとき、資料の中にあった一枚の写真。霧の中に浮かぶ、フランスの片田舎を思わせる教会の尖塔。それがダラットでした。ベトナムに、こんなにもヨーロッパの香りがする場所があるなんて。その瞬間、次の旅先はここにしようと心に決めたのです。
この街には、ただ美しいだけではない、歴史が刻んだ深い物語があります。フランス植民地時代に生まれたというその成り立ち、高原の地形に寄り添うように建てられたコロニアル建築のヴィラ、そして、どこか懐かしく、少しだけ切ない空気感。それはまるで、過ぎ去った恋の記憶のように、甘くほろ苦い魅力に満ちているのかもしれません。さあ、一緒にその扉を開けて、花の香りと歴史が交差するダラットの街角を歩いてみましょうか。
ダラットのフレンチコロニアル建築に魅了された後は、ダナンのルーフトップバーで夜景を楽しむのも一興です。
なぜダラットは「ベトナムのパリ」と呼ばれるのか? – 避暑地の誕生秘話

ダラットの街を歩いていると、ふと自分が今ベトナムにいることを忘れてしまいそうになります。松林の丘に点在するパステルカラーのヴィラ、石畳の坂道、そして街の中心にそびえるカトリック教会のゴシック様式の尖塔。これらの景色は、この街が偶然にできたわけではないことを静かに物語っています。
ダラットの歴史は、19世紀末のフランス植民地時代にさかのぼります。当時、ベトナムの猛烈な暑さと湿度に悩まされていたフランス人たちは、本国に似た涼しく快適な土地を強く望んでいました。その夢を現実にしたのが、細菌学者であり探検家でもあったアレクサンドル・イェルサンです。彼はフランス総督の指示のもと、未開の地であったランビアン高原を探検し、1893年に理想の地を発見しました。
標高およそ1500メートルに位置するこの地は、年間の平均気温が約18度と過ごしやすく、松の木々が生い茂る風景は、まるでヨーロッパの山岳リゾートを思わせました。フランス人たちは歓喜し、ここに故郷を懐かしむリゾート地を造ろうと決意します。著名な建築家や都市計画家がフランスから呼び寄せられ、壮大な計画のもと、一から街が設計されました。湖が掘られ、道路が整備され、総督の別荘や役人の邸宅、ホテル、学校、教会が次々に建築されていったのです。
彼らが目指したのは、単なる避暑地ではありませんでした。それは、故郷フランスへの郷愁を癒す「インドシナの小さなパリ」を作り上げる、という壮大な構想でした。そのため、ダラットの街並みには、アールデコやネオゴシック、バスク地方の建築様式など、当時のフランスで流行していたスタイルが色濃く反映されています。これは、ベトナムの自然の中に織り込まれた、フランス人たちの甘美な夢の結晶といえるでしょう。
この歴史を知ると、街角の古びたヴィラの窓枠一つ一つや、教会のステンドグラスの鮮やかな色彩にも特別な物語が宿っているように感じられます。ダラットの旅は、美しい景色を楽しむだけでなく、フランス統治という複雑な歴史が織りなす、儚くも麗しい記憶の層をたどる時間旅行でもあります。澄み渡る空気の中に、今も百数十年前のフランス人たちの息遣いが聞こえてくるような気がしませんか。
時が止まった駅舎へ – ダラット駅、アールデコの夢
ダラットの街の中心部から少し東へ歩みを進めると、鮮やかなレモンイエローと白い漆喰の鮮明なコントラストが織りなす、まるでおとぎ話の挿絵を思わせる駅舎が現れます。ここは「ベトナムで最も美しい駅」と称されるダラット駅です。初めてその姿を目にした瞬間、私は息を呑みました。ただの駅という枠組みを超え、まるで芸術作品のような気品と懐かしさが漂っていたのです。
1938年にフランス人建築家によって設計されたこの駅は、当時ヨーロッパで最も先進的だったアールデコ様式と、ベトナム中部の少数民族が伝統的に建てる高床式住居の鋭角的な屋根デザインが見事に融合しています。三つある切妻屋根は、ダラットを囲むランビアン山の三峰を象徴していると言われています。異なる文化のデザインがこれほど自然かつエレガントに調和しているセンスには、ただただ感嘆するばかりでした。
駅舎の内部に足を踏み入れると、外の光を柔らかく取り込む大きなアーチ窓と、彩り豊かなステンドグラスが出迎えてくれます。磨き上げられたタイル張りの床、まるで時間が止まったかのような古い改札口。静寂に包まれたホールに差し込む光はまるで映画の一場面のようでした。かつてはここから海岸沿いの街ダナンまで、200キロ以上にわたる線路が伸びていましたが、ベトナム戦争により多くが破壊され、現在はその役割を終えています。
とはいえ、この駅は完全に眠りについたわけではありません。今は観光客向けに、近隣のチャイマット駅まで約7キロの区間で、古い列車がゆったりと走っています。私は迷わずその切符を手に入れました。料金は片道数万ドン。その金額で特別な時間旅行を体験できるのなら、心から安く感じられます。指定された時刻になると、ディーゼル機関車に牽かれた木製の客車が、ガタンゴトンと心地よい響きを立てながらゆっくりと動き出しました。
窓の外に広がるのは、ダラットならではの風景です。ビニールハウスが並ぶ野菜畑、色鮮やかな花が咲き乱れる農園、そして緑に覆われた丘陵地帯。開け放たれた窓からは土と花の香りを乗せた風が吹き込んできます。約30分の短い列車旅の間に見える景色は、まさにダラットの人々の穏やかな暮らしそのものでした。終点のチャイマット駅の周辺には、カラフルなガラスや陶器の破片で装飾されたユニークなリンフオック寺があり、散策にうってつけの場所です。帰りの列車まで時間があるため、ゆったりと見学を楽しむことができます。往復でおよそ1時間半から2時間ほど見ておくと、余裕をもって満喫できるでしょう。
ダラット駅は訪れるだけでも価値のあるスポットです。ホームに佇む黒い蒸気機関車は絶好の撮影ポイント。その重厚な鉄の塊に触れると、この駅が経てきた激動の歴史が伝わってくるように感じられます。私はファッションの仕事をしているため、ついデザインの細部に目が向いてしまいますが、この駅舎のシンメトリーの美しさ、色合いの調和、素材の選び方、すべてが完璧であり、時代を超えて人々を魅了し続ける力を持っていることを改めて実感しました。動きやすい服装で十分ですが、もし少しクラシカルなワンピースをお持ちなら、この駅舎を背景にした写真はきっと旅の特別な一枚になるはずです。
湖畔の散策とフレンチヴィラ – スアンフーン湖の優雅な午後

ダラットの街歩きは、いつもこの湖から始まります。街の中心部に三日月形に広がるスアンフーン湖。まるで街の心臓のように、穏やかなリズムで人々の生活に寄り添っています。朝には霧がたちこめて幻想的な表情を見せ、昼間は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、夕暮れ時には空の色を映してロマンチックに染まるのです。一日を通して、また一年を通じて、この湖はダラットの美しい風景の中心にあります。
私のお気に入りは、午後の陽が少し傾き始める頃に、湖畔の遊歩道をゆったり散歩することです。湖を渡る風はひんやりとして心地よく、ホーチミンやハノイの蒸し暑さを思うと、まるで別世界に足を踏み入れたような気分になります。湖の周囲にはカラフルな花壇が整備され、季節の花々が甘やかな香りを漂わせています。カタン、コトンと蹄の音を奏でながら観光客を乗せた馬車が通り過ぎる光景は牧歌的で、見ているだけで心が和らぎます。
さらに、この湖畔散策のもう一つの楽しみは、松林の向こうに点在するフレンチコロニアル様式のヴィラを眺めることです。アイボリーの壁にグリーンの窓枠、急勾配の屋根と煙突。これらはかつて、フランスの高官や富裕層が夏の休暇を過ごすために建てた別荘です。一軒ごとに異なるデザインが施されていて、持ち主のこだわりやセンスが感じ取れます。まるでヨーロッパの高級避暑地に迷い込んだような錯覚に陥るほどです。
その中でも特に存在感を放つのが、丘の上に宮殿のように佇む「ダラット・パレス・ヘリテージ・ホテル」です。1922年に建てられたこのホテルは、ダラットの歴史を象徴する存在といえるでしょう。コロニアル建築の粋を集めた壮麗な佇まいは、今も多くの人々を魅了し続けています。宿泊となると少し勇気がいるかもしれませんが、アフタヌーンティーを楽しむためにラウンジを訪れるだけでも、その優雅な雰囲気を十分に味わえます。
湖畔には、こうした歴史的建築をリノベーションしたお洒落なカフェがいくつもあります。私は湖に面したテラス席のあるカフェを見つけ、ベトナムコーヒーを注文しました。濃厚なコーヒーにコンデンスミルクの甘さが溶け合う、この国ならではの味わい。それをゆっくり味わいながら、目の前の穏やかな湖面を眺めていると、日々の仕事のプレッシャーや心の隅にあった小さな棘のようなものが、すっと消えていくのを感じました。
もし時間に余裕があれば、スワンボートに乗って湖の中心から街を眺めてみるのもおすすめです。水面から見上げる教会の尖塔やフレンチヴィラは、また違った趣を見せてくれます。特別なことをしなくても、ただ湖畔のベンチに腰掛けて、移り変わる景色を眺めているだけで心が満たされる。スアンフーン湖は、そんな贅沢な時間をもたらしてくれる、ダラットの魂のような場所なのです。
花とアートが織りなす狂気の館 – クレイジーハウスの迷宮へ
ダラットの街が醸し出すフレンチコロニアル建築の「静けさ」とは対照的に、圧倒的な「動」のエネルギーを放つ場所があります。それが「クレイジーハウス」、通称ハン・ガー・ゲストハウスです。その名前が示すように、一度目にすれば忘れられない、常識を超えた奇抜な建築物。ダラットの穏やかな街並みに突如として現れる、まるで異世界への入り口のような存在です。
このユニークな建物を設計したのは、ベトナムの元大統領の娘で、モスクワで建築を学んだ女性建築家のダン・ヴィエット・ガー氏。彼女は「人々を自然へと回帰させたい」という強い願いを抱き、木や洞窟、動物など自然のモチーフをふんだんに取り入れた独創的な空間を生み出しました。その有機的で曲線的なデザインはしばしばスペインのガウディと比較されますが、実際に足を踏み入れると、ガウディ作品とは異なり、より混沌として物語性を感じさせる独自の世界観が広がっています。
入場料として数万ドンを支払い、一歩中へ入ると、そこはもはや現実の世界ではありません。巨大なガジュマルの木を模した内部は、アリの巣のように複雑な通路や階段が入り組んでいます。先が読めない細くうねる道、木の枝を思わせる手すり、鍾乳洞を彷彿とさせるごつごつとした壁。歩くだけで探検家になったかのようなワクワク感が湧き上がってきます。
また、このクレイジーハウスは現役のゲストハウスとしても機能しており、いくつかのテーマに合わせた客室を見学可能です。「鷲の間」「蟻の間」「カンガルーの間」など、部屋ごとに異なる動物の彫刻やモチーフが施されており、同じ部屋は一つとしてありません。こんな個性的な空間で一夜を過ごしたらどんな夢を見るのか、想像するだけで楽しくなります。もちろん宿泊も可能で、公式サイトなどから予約ができます。特別な体験を望むなら一度挑戦してみる価値があるでしょう。
迷路のように入り組んだ通路を進んでいくと、やがて視界がひらけて屋上のような場所へと出ます。そこから見下ろすダラットの街並みはまさに絶景。赤い屋根の家々、緑に包まれた松林、そして遠くに望むランビアン山脈。奇妙な建物の頂から眺める光景は、物語の主人公になったかのような非日常的な感動をもたらしてくれます。
ただし、この冒険には少しの注意が必要です。通路は狭く、手すりが低かったり、ない箇所もありますので、高所恐怖症の方には多少恐怖を感じるかもしれません。足元が不安定な場所も多いため、訪れる際はヒールではなく歩きやすいスニーカーやフラットシューズが必須です。服装も動きやすいパンツスタイルをおすすめします。写真撮影に夢中になると足元がおろそかになりがちなので、十分に安全を心がけてください。所要時間はじっくり見ると1時間から1時間半ほど。ダラットの優雅な雰囲気にスリリングでアートな刺激を加えてくれる、ぜひ訪れたいスポットです。
ダラットの食彩 – 高原野菜とフレンチが薫る美食体験

旅の醍醐味のひとつと言えば、やはりその土地特有の美味しい料理を味わうことです。ベトナムの「永遠の春の街」ダラットは、冷涼な気候を活かした国内屈指の農業地域であり、特に新鮮で味の濃い高原野菜が有名で、「美食の街」としても知られています。
ダラットに来たらぜひ最初に試していただきたいのがアーティチョークです。日本ではまだやや珍しい野菜ですが、こちらではお茶として親しまれています。レストランやカフェで「チャー・アティソ」と注文すると、ほのかな甘みと深い旨みが感じられる温かいお茶が提供されます。朝晩の肌寒いダラットの気候にぴったりで、体を優しく温めてくれる味わいです。
さらに、ダラットの夜の定番料理としては鍋料理の「ラウ」が挙げられます。冷涼な気候が温かい鍋料理を人々に愛される理由でしょう。牛肉や鶏肉、シーフードなど多彩な鍋が楽しめますが、どの鍋を選んでも驚かされるのは、共に提供される大量かつ多様な野菜の豊富さです。日本ではあまり見かけない種類の葉物野菜が、山盛りのカゴで運ばれてきます。新鮮でシャキシャキとした野菜を熱々のスープにくぐらせて味わうひとときはまさに至福。友人や家族と鍋を囲めば、自然と会話も弾みます。
デザートにはぜひ「ケム・ボー」と呼ばれるアボカドアイスクリームを味わってみてください。濃厚でクリーミーなアボカドのスムージーの上に、ココナッツミルクのアイスクリームがトッピングされた、ダラット発祥のスイーツです。一見すると珍しい組み合わせに思えますが、その味わいは驚くほど美味しく、アボカドのまろやかなコクとアイスの優しい甘さが絶妙に調和していて、一度食べると忘れられません。
また、街を歩いているとフランス統治時代の影響が色濃く食文化に残っていることに気づきます。特にパンは、他のベトナムの都市と比べても格段に美味しいと評判です。外はパリッと、中はふわっとしたバゲットを使ったバインミーは、朝食や軽食にぴったり。新鮮な野菜がたっぷりと挟まれており、ヘルシーながらも満足感があります。もちろん、本格的なフランス料理を提供するレストランも点在しており、新鮮な高原野菜をふんだんに使ったコース料理を手頃な価格で楽しめるのもダラットの魅力です。
そして夜には、スアンフーン湖の近くにナイトマーケットが開かれます。その熱気と活気は、昼間の穏やかな街の雰囲気とはまた異なる魅力に満ちています。ここでの目玉は、何と言ってもストリートフードです。熱々に焼かれたトウモロコシや焼き芋、そしてダラット名物の「バイン・チャン・ヌン」が人気です。これはライスペーパーの上にネギや卵、ひき肉などをのせて炭火で焼き上げたもので、「ベトナム風ピザ」とも称されます。パリパリとした食感と香ばしい香りが食欲を刺激し、食べ歩きに最適です。地元の人々に混じって、煙の立ち上る屋台の前で焼きたてを頬張るひとときも、旅の忘れがたい思い出になるでしょう。
旅の準備とダラットの歩き方 – 快適な滞在のためのヒント
「永遠の春」と聞くと、一年中温暖で過ごしやすいイメージが浮かぶかもしれませんが、ダラットの旅を存分に楽しむには、いくつかの準備ポイントを押さえておくことが大切です。知的でセンスの良い旅を好むあなたに向けて、快適な滞在を実現するためのヒントをいくつかご紹介します。
まず、ダラットへのアクセスについてです。日本からの直行便はありませんので、ホーチミンやハノイ、ダナンなどベトナムの主要都市で国内線に乗り換えるのが一般的です。ホーチミンからだと飛行機で約1時間のフライトで、LCCも就航しているためお手頃な料金で移動できます。バスを利用する方法もありますが、所要時間が6時間以上と長いため、時間を有効に使いたいなら飛行機の利用を強くおすすめします。
現地に着いてまず驚くのは、その独特な気候かもしれません。標高1500メートルの高原に位置しているため、年間を通じて気温は15度から25度ほどが一般的です。日中は半袖で快適に過ごせる日もありますが、朝晩は冷え込みが厳しく、時には10度近くまで気温が下がることもあります。特に雨季(5月〜10月頃)は雨によって体感温度がさらに下がるため、服装は重ね着が基本となります。Tシャツやブラウスの上に気軽に羽織れるカーディガンや薄手のジャケットは必ず持参しましょう。私はいつも、デザインが美しい大判のストールを一枚携帯しています。首に巻けば暖かく、肩にかければ洗練された印象を与えられ、写真にも映えるので非常に重宝します。また、霧雨が頻繁に降るため、折り畳み傘やフード付きのアウターを用意しておくと安心です。
市内の移動に関しては、中心部であれば徒歩で十分楽しめます。スアンフーン湖の周辺や教会、市場など主要スポットは比較的コンパクトにまとまっています。少し離れた場所へ行く場合は、タクシーや配車アプリのGrabを活用すると便利ですし、安全面でも安心です。料金も手頃なので、気軽に利用可能です。風を感じながら走りたいアクティブ派の方にはレンタルバイクの選択肢もありますが、ベトナムの交通環境に慣れていない場合はあまりおすすめできません。
通貨はベトナムドン(VND)ですが、桁数が多いため初めは戸惑うかもしれません。簡単な目安としては「ゼロを2つ取ってから2で割る」とおおよその日本円の金額が掴めます。例えば100,000VNDなら約500円というイメージです。空港や市内の両替所、ホテルなどで両替できますが、レートは場所によって若干異なるため、いくつか比較してみると良いでしょう。大手ホテルやレストランではクレジットカードが利用可能なこともありますが、市場や地元の小さなお店では現金が基本なので現金は一定額持ち歩くのがおすすめです。
治安に関しては、ベトナムの中でも比較的良好で、女性の一人旅でも安心して過ごせる場所だと感じます。ただどの国でも同様に、夜遅くの一人歩きは控え、貴重品はきちんと管理するなど、基本的な注意は怠らないでください。地元の人々の親しみやすい笑顔や温かい交流も、ダラットの旅をより素敵な思い出にしてくれることでしょう。
エピローグ – 心に残るダラットの色彩

ダラットで過ごした数日間は、まるで美しい絵本の世界を歩いているかのようなひとときでした。朝霧に包まれ浮かび上がる教会のシルエット、湖畔に咲き誇る紫陽花の淡いブルー、フレンチヴィラの壁を染めるノスタルジックなイエロー、そして高原野菜の力強いグリーン。私の記憶には、この街で出会った無数の色がまるで鮮やかなパレットのように広がっています。
「永遠の春」という言葉は、単なる気候のことを指すだけではないのかもしれません。それは、フランス人たちが故郷を想い描いて作り上げた甘く美しい夢が、今も街中のあちこちに息づいている証。そして、この街を訪れた人々の心に、いつまでも色あせることのない穏やかで優しい記憶を咲かせてくれる。そんな意味も含まれているように感じられます。
過ぎ去った時間は取り戻せなくても、美しい記憶を新たに心に重ねることはできるのです。この街の澄んだ空気は、そんな当たり前だけれど忘れがちなことをそっと教えてくれました。日常の喧騒で少し疲れたときには、思い出してください。ベトナムの高原には、いつでも春の陽だまりのような優しい時間が流れている場所があるということを。
次の長い休暇には、ぜひあなたもこの街の、まるで時が止まったかのような穏やかな時間に身をゆだねてみませんか。きっと心の中に新しい花が咲くような、素敵な旅が待っていることでしょう。

