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    『じゃない方』の魅力発見!チェンマイとチェンライ、2つの古都の旅スタイルを比較

    タイへの旅を計画するとき、多くの人の頭に浮かぶのは、きらびやかなバンコク、楽園のようなビーチが広がるプーケット、そして、古都の風情とモダンなカフェカルチャーが融合するチェンマイではないでしょうか。特に「北方のバラ」と称されるチェンマイは、その過ごしやすさと魅力的な観光スポットの多さから、タイ北部を旅する際のデスティネーションとして、圧倒的な人気を誇ります。

    しかし、もしあなたが、ありきたりな旅に物足りなさを感じているなら。もしあなたが、観光客の喧騒から少し離れて、もっと深く、静かにその土地の魂に触れたいと願うなら。チェンマイからバスでわずか3時間ほどの場所に、もうひとつの古都が静かにあなたを待っていることを、ぜひ知ってほしいのです。

    その名は、チェンライ。かつてこの地を支配したランナー王朝の、最初の都です。

    チェンマイが「陽」なら、チェンライは「陰」。チェンマイが「動」なら、チェンライは「静」。多くの人がチェンマイを選ぶからこそ、あえて「じゃない方」のチェンライに目を向けることで見えてくる、タイ北部の奥深い魅力。それは、まるで隠された宝物を見つけるような、知的な興奮と静かな感動に満ちた旅の始まりでした。

    工学部出身の僕にとって、都市の成り立ちや建築物の構造には常に心惹かれるものがあります。今回、チェンマイという完成された観光都市の隣で、チェンライがどのように独自の文化とアイデンティティを育んできたのか。そのコントラストを肌で感じながら、二つの古都が織りなす物語を紐解いていきたいと思います。さあ、まずは地図を広げて、僕たちの旅が始まる場所を確認してみましょう。

    目次

    ふたつの古都、それぞれの素顔

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    旅の導入として、まずはチェンマイとチェンライ、それぞれの都市が持つ独自の個性について触れてみましょう。どちらもランナー王朝の都として歴史を刻んできたものの、その発展の歩みは対照的です。

    チェンマイは1296年、ランナー王朝の首都として築かれて以来、政治や経済、文化の中心地として成長を続けてきました。旧市街を囲むお堀と古城の壁が、今もなおその歴史の深さを物語っています。現代ではタイ第2の大都市として、国際空港を擁し、世界中から多くの観光客が訪れます。おしゃれなカフェが次々にオープンし、クリエイティブな人々が集うコワーキングスペースも充実しています。賑やかなナイトバザールの活気、エレファントサンクチュアリでの感動的な体験、ドイ・ステープから望む圧巻の景色など、訪れる者を飽きさせない多彩な楽しみが満載です。まさに、華やかで活気あふれる「表舞台のスター」と呼ぶにふさわしい存在です。

    一方、チェンライはチェンマイよりも古い1262年に、マンラーイ王によってランナー王朝最初の都として定められました。ただ、首都としての役割は短く、後にその座はチェンマイに譲られました。その後はビルマの支配下に入るなど複雑な歴史を歩んできました。このような背景もあり、チェンライにはチェンマイほどの都市的な賑わいは見られません。街全体にはどこか落ち着きがあり、ゆったりとした時間が流れています。しかし、その静けさこそがチェンライの真の魅力を際立たせています。

    この街のアイデンティティを形作っているのは、壮大かつ独創的なアートと深い信仰心です。タイを代表する二人の芸術家によって生み出された、常識を覆すほどインパクトのある寺院やアート空間が、この静かな古都の名を世界に知らしめています。バンコクからは飛行機で約1時間半、チェンマイからはバス会社「グリーンバス」の快適なバスに揺られて約3時間半でアクセス可能です。二つの都市間の移動は意外と容易で、周遊旅行のプランに組み込みやすいのも魅力です。

    「賑わいのチェンマイ」と「静寂のチェンライ」。この二都市を巡ることで、タイ北部の魅力がより立体的に、そして忘れがたいものとなるでしょう。

    白と黒の二元論。チェンライの魂に触れるアート空間

    チェンライを訪れる人がほぼ間違いなく目指す場所があります。それは、この街の精神性を象徴する、対照的なふたつの建築物です。ひとつは純白に輝く「天国」、もうひとつは漆黒に染まる「地獄」。この圧倒的なコントラストは、チェンライの旅の幕開けとして、これ以上ないほどの衝撃を与えてくれます。

    ワット・ロンクン(白い寺):光と祈りが結晶した空間

    チェンライ市内から南へ約13km。ソンテウをチャーターして向かう途中、遠方に陽光を反射して煌めく異質な建物が見えた瞬間、思わず息を呑みました。ワット・ロンクン、通称「ホワイト・テンプル」。これが本当に寺院なのだろうか。伝統的なタイ寺院の建築様式とはまったく異なり、どこかSF映画のセットのように幻想的な佇まいです。

    タイの著名なアーティスト、チャルムチャイ・コーシッピパット氏が私財を投じて今も建設を続けているこの寺は、彼の仏教に対する深い信仰心と独自の芸術性が融合した壮大なアートプロジェクトです。建物全体が純白で統一され、無数のガラス片がモザイク状に埋め込まれています。太陽の光を受けると、まるで建築物が自ら発光しているかのようにキラキラと輝くのです。工学的な視点で見れば、これは光の乱反射を緻密に計算した壮大なインスタレーション。ガラス片ひとつひとつがピクセルの役割を果たし、見る角度や天候によって無限の表情を創り出していました。

    本堂へと続く「輪廻転生の橋」の手前には、地獄から伸びる無数の腕が苦悶の表情で助けを求めています。この不気味な光景をくぐり抜けて橋を渡ることで、俗世の欲望や苦しみから解放され、仏の世界へと到達できるというコンセプトです。足元に広がる地獄の絵図に一瞬たじろぎながらも、純白の天国を目指して一歩一歩進む体験は、単なる観光以上の精神的巡礼のように感じられました。

    内部は撮影不可ですが、そこには驚くべき光景が広がっています。伝統的な仏教壁画の中に、スパイダーマンやハローキティ、映画『マトリックス』のネオなど現代のポップカルチャーのアイコンが描かれているのです。これは、善悪や現代社会の欲望が私たちの精神世界に与える影響を表現しているとか。この遊び心と哲学的問いかけが共存するのが、チャルムチャイ氏の真骨頂でしょう。

    訪れるなら、空が澄み渡る午前中がおすすめです。順光になり寺院の白さが際立ち、最高の写真が撮れるはず。拝観料は外国人向けに約100バーツ(2023年時点)。肌の露出が多い服装は禁物で、ショートパンツやタンクトップで訪れる場合は、入口でパレオ(巻きスカート)を借りる必要があります。薄手のカーディガンやストールを持参するとスマートです。

    バーン・ダム(黒い家):死と生命力をテーマにした美術館

    純白の衝撃を受けた後、次に向かうのは市街地の北約10kmに位置する「バーン・ダム」。直訳すると「黒い家」です。しばしばワット・ロンクンと対を成す存在として語られますが、ここは寺院ではなく、故タワン・ドゥチャニー氏というもうひとりの偉大な芸術家が作り上げた、個人美術館兼アトリエの集合体です。

    敷地内に足を踏み入れると空気が一変します。点在するのはランナー様式をベースにした大小40棟以上の黒い建造物。チーク材で造られた重厚な建築群は静かな威圧感を漂わせています。それぞれの建物には、タワン氏が生涯をかけて収集し、また創作したアート作品が展示されていますが、そのモチーフは非常に刺激的です。

    巨大な水牛の角で作られた椅子、ワニの皮を広げた巨大なテーブルクロス、動物の骨や牙を組み合わせたシャンデリア。そこから「死」の匂いが濃厚に漂います。しかし決して不気味なだけではありません。これらの動物がかつて持っていた生命のエネルギーが、アートとして再構築され、新たな力強いメッセージを放っているのです。タワン氏はこれらの作品を通して、仏教の根底にある「生と死は裏表の関係にある」という真理を表現しようと試みたのかもしれません。ワット・ロンクンが「天国」や「悟り」など光の世界を描くなら、バーン・ダムは「輪廻」や「煩悩」、生命の根源的な力と闇の部分を突きつけてくるように思えます。

    敷地は緑豊かで黒い建物とのコントラストが美しく、一棟ずつ巡りながらタワン氏の哲学に思いを巡らせるのに最適な場所です。ゆっくり見て回るとおよそ2時間かかることもあり、歩きやすい靴を用意すると良いでしょう。入場料は約80バーツ。ワット・ロンクンとバーン・ダム、この白と黒の二元論を体験することで、チェンライという街の精神的な奥深さを実感できる気がしました。

    青の衝撃と女神の微笑み:色彩が語るアートと信仰

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    チェンライの魅力は、単に白と黒のモノトーンの世界にとどまりません。近年、この街のアートシーンに新たな彩りを添えているのが、鮮やかな「青」の寺院です。そして、街の中心部には、タイで最も崇敬される仏像にゆかりのある、静かな歴史を秘めた寺院がひっそりと佇んでいます。

    ワット・ロンスアテン(青い寺):異次元へ誘う扉

    「こんな青は見たことがない」――ワット・ロンスアテンの前に立った瞬間、僕が最初に感じたのは純粋な驚嘆でした。まるで深海の底や宇宙の星雲のように、吸い込まれそうなほど深く鮮烈な青。その青一色の本堂に、黄金の飾りが美しい対比を成しています。伝統的な寺院の様式を踏まえながらも、その色彩感覚は極めて現代的で、まるでファンタジーの世界に現れそうな神殿のようです。

    この寺院は、実は「ワット・ロンクン」(白い寺)をデザインしたチャルムチャイ氏の弟子、プッタ・カーブケオ氏が手がけたもの。師の影響を色濃く受けつつも、独自の芸術的世界観を築いていることがひと目で伝わります。寺院の入り口では、巨大なナーガ(蛇神)が青い鱗を躍らせながら参拝者を出迎え、その精緻で迫力ある造形はこれから始まる非日常の体験への期待を一層かき立てます。

    本堂の中に足を踏み入れると、外観の青とは異なり、さらに幻想的な空間が広がっていました。壁や天井には釈迦の生涯が、青を基調に緻密かつサイケデリックなタッチで描かれています。そして中央には純白の巨大な仏像が鎮座。青の空間に浮かび上がるその白い仏様は神聖で、しばらく言葉を失って見入ってしまいました。

    ここは入場料が無料で、市街地からも比較的アクセスしやすいため気軽に訪れることができるのも魅力です。写真好きには、どの角度から切り取っても絵になるこの空間に夢中になること間違いありません。SNSでチェンライが注目されるきっかけとなったのも、この寺院の「映える」美しさに負うところが大きいでしょう。参拝の後は、境内の売店で販売されている青いココナッツアイスクリームをぜひ味わってみてください。旅の疲れをやわらげる、優しい甘みが魅力です。

    ワット・プラケオ:エメラルド仏が宿る聖域

    チェンライの旅でアートに心を揺さぶられた後、ワット・プラケオは心を落ち着かせてくれるオアシスのような存在です。バンコクの同名寺院(エメラルド寺院)と深い関係を持つこの場所は、チェンライの歴史を語るうえで欠かせない重要な聖地です。

    その歴史は1434年に遡ります。寺院の仏塔が落雷で倒壊した際、中から漆喰に覆われた仏像が発掘されました。その鼻の部分の漆喰が少し剥がれたところ、そこから緑色の光が差し込んできたのです。調査の結果、それは一体成型の美しい翡翠(ジェイド)で造られた仏像でした。この仏像こそが、現在バンコクのワット・プラケオに国宝として安置されている「エメラルド仏」そのものでした。

    エメラルド仏はその後、ランパーン、チェンマイ、ラオスなどで祀られ、最終的に現在のバンコクに落ち着きました。チェンライのワット・プラケオは、まさにタイで最も神聖な仏像が「発見」された奇跡の地といえます。

    現在、本堂には1991年に中国から寄贈された翡翠製の新しい仏像が祀られています。オリジナルのエメラルド仏よりやや大きく、その穏やかで慈愛に満ちた表情は見る者の心に安らぎをもたらします。境内は静寂に包まれ、手入れも行き届いています。また、チーク材で造られた博物館にはランナー様式の貴重な仏像が展示されており、派手さはないものの歴史の重みと信仰の深さを感じられる心落ち着く空間です。チェンライ市街の中心に位置し、ナイトバザールから徒歩圏内なので、街歩きの途中にふらりと足を運び、歴史の物語に耳を傾けるのもおすすめです。

    国境の街を体感する、メコン川の彼方へ

    チェンライはタイ最北端の県であり、その地理的特性が旅に刺激的なアクセントを加えてくれます。北側にはミャンマー、東側にはラオスと国境を接しており、少し足を伸ばすだけで、一度の旅で三つの国の空気を同時に味わうことが可能です。

    ゴールデン・トライアングル:三か国の風景が一望できる場所

    チェンライの市街地から車をチャーターして北へ約1時間半。メコン川がタイ、ミャンマー、ラオスの三国を隔てる場所、これが「ゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯)」です。かつては世界最大規模のアヘン(ケシ)密造地帯として知られていましたが、現在ではタイ政府の撲滅活動のおかげでその影は消え、穏やかな時間が流れる観光名所へと変貌を遂げています。

    小高い丘の上にある展望台に立つと、この地名の由来を肌で感じられます。左手にはミャンマー、右手にはラオス、そして自分が立つその足下がタイです。雄大なメコン川が、三つの国家の境界線を描いています。カメラのファインダーを覗くと、一枚の写真に三つの国旗が収まる光景は、どこか不思議な感覚を呼び覚まします。この壮大な自然を前にすると、国境とは人間が作り出した概念であることを実感させられます。

    ここでの最大の見どころは、メコン川を巡るボートクルーズです。船着き場から小型ボートに乗り込み、風を感じながら川面を進みます。タイ側の岸には巨大な黄金の仏像が鎮座し、ミャンマー側にはカジノ付きのリゾートホテルが見えます。そしてボートはラオス領のドンサオ島へと向かいます。この島はラオスの経済特区に指定されており、簡単な手続きを経れば上陸が可能です。パスポートは基本的に不要ですが、念のため身分証明のコピーを携帯しておくと安心でしょう。

    島内のマーケットでは、ラオスのビール「ビアラオ」や民芸品、また少し風変わりな薬草酒などが販売されています。滞在時間はわずか30分程度でしたが、国境を越えたという事実が旅の思い出に特別な彩りを加えてくれました。チェンライ市内発の多くの日帰りツアーも催行されており、内容にもよりますが料金は1000~2000バーツほど。個人で回るより効率的に観光できるため、ツアーの利用がおすすめです。

    アヘン博物館:歴史を学び、未来への教訓とする場所

    ゴールデン・トライアングルの歴史をより深く知りたいなら、「ホール・オブ・オピウム(アヘン博物館)」にぜひ足を運んでほしいです。タイ王室のプロジェクトの一環として設立されたこの博物館は、「博物館」のイメージを覆すほど質の高い展示が魅力です。

    薄暗いトンネルのような通路をくぐり抜けて展示室へと進みます。ケシの花の美しさから始まり、アヘン戦争の歴史、この地域でのケシ栽培の拡大、さらには健康被害や社会問題に至るまでが、精密なジオラマや映像、インタラクティブな展示を駆使して分かりやすく、かつ劇的に紹介されています。単なる事実の羅列ではなく、物語として過去を追体験できる構成が非常に見事です。

    「負の歴史」から目を背けず、そこから学び未来に活かそうとするタイ王室の強い意志が感じられる場所であり、ゴールデン・トライアングルがなぜその名を持つのか、そしてなぜ今では平和な観光地になったのかの背景を理解するのに最適です。この博物館は見学に最低でも1時間半ほどの余裕を見ておくことをおすすめします。

    チェンライの日常に溶け込む時間

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    壮大なアートや国境を越えた非日常体験を堪能した後は、この街の普段の風景に少しだけ足を踏み入れてみましょう。チェンライはチェンマイほど都会的な洗練さはないものの、素朴で温かみのある地元の暮らしが息づいています。

    チェンライ・ナイトバザール:地元の夜を味わう場所

    夜のお楽しみと言えば、ナイトバザールです。チェンライのナイトバザールはチェンマイのそれに比べるとこぢんまりしていますが、そのぶん地元の人たちの生活感が強く感じられます。中心部にあるバスターミナルのすぐ隣で毎晩開催されているので、アクセスも抜群です。

    お土産屋が立ち並ぶ通りを抜けると、二つの大きなフードコートが目の前に広がります。ぜひ味わっていただきたいのが、タイ東北地方(イサーン地方)発祥の鍋料理「チムチュム」。ハーブたっぷりのスープが入ったかわいらしい土鍋をテーブルのコンロにかけ、豚肉やシーフード、野菜、春雨などをしゃぶしゃぶのようにしていただきます。優しい味わいのスープが、旅で疲れた胃にじんわりと染み渡ります。ほかにもカオソーイやガイヤーン(焼き鳥)といった北タイ名物の屋台がずらり並び、価格も一皿50~100バーツほどと非常にリーズナブルです。

    食事を楽しんでいると、広場に設営されたステージでタイの伝統舞踊やライブ音楽が始まります。その素朴なパフォーマンスを眺めつつ、シンハービールを片手にチェンライの穏やかな夜がゆっくりと更けていきます。この特別すぎないアットホームな雰囲気こそが、チェンライ・ナイトバザールの最大の魅力と言えるでしょう。

    シンハーパーク:豊かな自然と多彩なアクティビティが融合する場所

    市街地から少し離れると、東京ドーム約270個分という広大な敷地を誇る「シンハーパーク」が広がっています。あの有名なシンハービールの会社が運営するこの施設は、単なる公園ではありません。茶畑や果樹園、コスモス畑が広がる美しい農園であり、ジップラインやレンタサイクル、動物と触れ合う体験なども楽しめる大型レジャースポットとなっています。

    そのあまりの広さに最初は戸惑うかもしれませんが、有料のファームツアーバスを利用すれば園内の主要な見どころを効率的に巡ることが可能です。バスを降りてからは、どこまでも続く緑の茶畑の中を散策するのが最高の気分転換になります。丘の上に設けられた展望台からは、広大なパークの全景を一望でき、運がよければ遠くに白い寺院(ワット・ロンクン)を望むこともできます。

    私が特に惹かれたのは、農業、観光、地域貢献を巧みに組み合わせたこのビジネスモデルそのものです。持続可能な社会のあり方のひとつがここにあるように感じられました。園内にはおしゃれなレストランも併設されており、パークで収穫された新鮮な野菜を使った料理や、もちろん新鮮な生ビールも楽しめます。家族連れやカップルはもちろん、一人旅の私にとっても、半日ほどゆったりと過ごすのに最適なスポットでした。

    旅のプランニング:あなたに合うのはチェンマイ? それともチェンライ?

    ここまでで二つの古都の魅力をご紹介してきましたが、どちらを選べばよいか迷う方もいるかもしれません。そこで、旅のスタイルに応じて、それぞれの都市がどんな人に向いているのかを整理してみましょう。

    チェンマイが向いている人

    • とにかくアクティブに多くの体験をしたい方
    • おしゃれなカフェ巡りやかわいい雑貨のショッピングを楽しみたい方
    • ナイトバザールやバーで賑やかな夜を過ごしたい方
    • タイ北部旅行が初めてで、まずは定番の観光スポットを押さえたい方
    • 友人グループや家族など、みんなで楽しめる旅がしたい方

    チェンマイは多彩な選択肢が揃っており、どんな旅行者のニーズも満たしてくれる包容力があります。「訪れてがっかりすることがない」という安心感と高い満足度を誇る旅先です。

    チェンライが向いている人

    • 人混みから離れて静かな時間を過ごし、自分と向き合いたい方
    • 既成概念を覆すような独創的なアートや建築に触れたい方
    • その土地の歴史や文化をじっくり深く学びたい方
    • 「みんなが行く場所」とは少し違う、自分だけの発見を求める方
    • 一人旅や、落ち着いた時間を大切にしたいカップル

    チェンライは、自分から能動的に魅力を探しに行くことでその真価を感じられる街です。静寂の中でインスピレーションを受けたい、クリエイティブに思考を深めたい方にとって理想的な環境を提供してくれます。

    究極の選択肢:二都市を巡る贅沢な旅

    そして、私が最もおすすめしたいのは、チェンマイとチェンライの両方を訪れるプランです。チェンマイで北部タイの華やかさと活気を満喫した後、バスでチェンライに移動し、静けさの中でアートや歴史を堪能する。この「動」から「静」への流れが、旅を一層印象深いものにしてくれます。

    例えば、バンコクからチェンマイへ飛び、3泊して街の賑わいを楽しむ。4日目の朝にグリーンバスでチェンライへ(所要約3時間半)移動し、チェンライで2泊。白と黒の寺院や国境地帯を巡り、チェンライ空港からバンコクへ戻るという、5泊6日のプランです。これならタイ北部の二つの異なる魅力を無理なく満喫できます。グリーンバスのチケットはオンラインで事前予約ができるため、計画も立てやすいでしょう。

    チェンライへの旅、最後のひと押し

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    ここまで読んで、「チェンライに行ってみたい」と感じたあなたに向けて、旅をスムーズに進めるための実用的な情報を最後にお伝えします。

    チェンライの旅に最適な時期は、乾季にあたる11月から2月までです。この時期は空が澄み渡り、気温も快適で過ごしやすいため、最もおすすめの季節と言えます。3月から5月は暑さが厳しくなりますが、4月にはタイの伝統的な旧正月「ソンクラーン(水かけ祭り)」を体験できます。6月から10月の雨季は、一層緑が生き生きとし美しい季節ですが、終日雨が降り続くことは少なく、スコールを避ければ観光も十分に楽しめます。

    市内の移動には配車アプリ「Grab」が非常に便利です。目的地を伝える手間がなく、料金も明確なので、旅行者には頼もしい存在です。トゥクトゥクやソンテウ(赤い乗り合いタクシー)に乗る場合は、乗る前に料金を交渉するのが一般的で、これも旅の楽しみの一つです。郊外の観光名所であるワット・ロンクン、バーン・ダム、ゴールデン・トライアングルなどを一日で効率よく巡りたいなら、ホテルや旅行代理店で車をチャーター(半日〜1日で3000円〜6000円程度)するのがおすすめです。

    言葉に関する心配はあまりいりません。観光地のスタッフは簡単な英語を話せることが多く、タイの人々は非常に親切です。「サワディーカー(こんにちは/女性)」「サワディーカップ(こんにちは/男性)」、「コップンカー(ありがとう/女性)」「コップンカップ(ありがとう/男性)」の4つのフレーズを覚えておくと、現地の方々との距離がぐっと近づきます。

    持ち物としては、強い日差しから肌を守るための帽子やサングラス、日焼け止めは必須アイテムです。また、蚊やブヨから身を守る虫除けスプレーも忘れずに用意しましょう。寺院は神聖な場所なので、肌の露出を控えるためにカーディガンやストールを一枚バッグに入れておくと、いつでも敬意を示せます。そして、たくさん歩くことが予想されるため、履き慣れた歩きやすい靴を選ぶことも大切です。

    静寂が教えてくれた、旅の豊かさ

    チェンマイの影に隠れがちな、静かで古めかしい街、チェンライ。この地を訪れる旅は、「主流ではない選択」の豊かさを僕に教えてくれました。

    もし僕が多くの人と同様にチェンマイだけを訪れていたら、それも楽しく満足のいく旅になったことでしょう。しかし、チェンライの静寂の中で触れた、常識を揺るがすほどの創造力の体験は、僕の価値観に静かだが確かな変化をもたらしました。

    白と黒のコントラストが語る、生と死の哲学。国境の街が映し出す、複雑な歴史と雄大な自然。そして何よりも、街全体を包み込む穏やかで思索的な空気感。それは、単なる情報消費型の観光では決して得られない、深い内省の時間をもたらしてくれました。

    賑わう場所には賑わいの魅力がありますが、静かな場所には、自分自身の心と向き合い、世界を新しい視点で見直す機会が隠されています。もしあなたが次の旅で、単なるリフレッシュを超えた何かを求めているなら、どうか思い出してください。タイ最北端のもう一つの古都が、その深い物語とともに、静かにあなたを待っていることを。

    あなたの旅の地図に、ぜひチェンライという新たな目的地が加わることを願っています。

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    この記事を書いた人

    ドローンを相棒に世界を旅する、工学部出身の明です。テクノロジーの視点から都市や自然の新しい魅力を切り取ります。僕の空撮写真と一緒に、未来を感じる旅に出かけましょう!

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