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    天空の仏陀に会いに行く。香港ランタオ島、天壇大仏と心の静寂を訪ねる旅

    コンクリートジャングルとネオンの光が渦巻く、エネルギッシュな都市、香港。そのイメージを抱いて訪れる人々は、この街が持つもう一つの顔に驚かされるかもしれません。摩天楼のすぐそばに、驚くほど豊かで深い緑の自然が息づいているのです。今回ご紹介するのは、そんな香港の喧騒からしばし離れ、心と体を深く癒やすための特別な旅。アジア最大の金融都市の沖に浮かぶ最大の島、ランタオ島(大嶼山)へ、天空に座す巨大な仏陀、天壇大仏を訪ねます。

    日々の忙しさの中で、ふと立ち止まり、自分自身と向き合う時間を持ちたいと感じることはありませんか。ランタオ島への旅は、単なる観光ではありません。ケーブルカーで空を渡り、聖なる山の空気に触れ、静かにたたずむ大仏と対面する。その一つひとつのプロセスが、凝り固まった心をゆっくりと解きほぐしていく、まるで巡礼のような体験です。荘厳な仏教美術の圧倒的な美しさと、亜熱帯の木々が放つ生命力。その二つが織りなすハーモニーの中で、私たちはきっと、忘れかけていた心の平穏を取り戻すことができるでしょう。さあ、日常を少しだけ脇に置いて、魂を浄化する天空の聖地へと、一緒に旅立ちましょう。

    ランタオ島では、心と身体を浄化する大人のリトリートハイキングも体験できます。

    目次

    聖地への序章:天空を渡るゴンピン360の旅

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    天壇大仏が鎮座する昂坪(ゴンピン)高原への道のりは、その過程自体が旅の見どころの一つと言えるでしょう。MTR東涌(Tung Chung)駅からは、二つの交通手段を選べます。一つは、山道を登る路線バス。もう一つは、多くの旅人が選ぶであろう、絶景を楽しめるケーブルカー「ゴンピン360」です。

    空中から望む香港の自然美

    ゴンピン360の乗り場は、MTR東涌駅のB出口からすぐの場所にあります。週末や祝日は混雑が予想されるため、事前にオンライン予約をしておくことを強く推奨します。チケットは、通常の「スタンダードキャビン」と床が強化ガラスの「クリスタルキャビン」の2種類が用意されています。高所が苦手でなければ、ぜひクリスタルキャビンを体験してみてください。足元に広がる緑豊かな森や、青く輝く海を見下ろすスリルと感動が、旅の記憶を一層鮮明なものにしてくれます。

    キャビンが駅をゆっくりと離れ、高度を上げていくと、眼下に香港国際空港の壮大な光景が広がります。絶え間なく離発着する飛行機を真上から見る非日常的な光景は、まるでこれからの聖地巡礼に向けた世界中の旅人たちの見送りのようです。さらに進むと、東涌湾の穏やかな海が視界に入り、太陽の光を反射してきらめく水面と、点在する小さな漁船が見えます。数分前までの都会の喧騒が嘘のように遠ざかり、心地よい静寂と浮遊感が包み込んでくれます。

    約25分間の空中散歩中に見られる景色は、息を呑むほどドラマチックです。雄大な南シナ海、緑に覆われたランタオ島の山々の連なり、そして遠方に徐々に姿を現す天壇大仏。その荘厳なシルエットは、これから始まる精神的な旅に対する期待感を静かに、しかし確実に高めてくれます。風の強い日には少々揺れることもありますが、それもまた自然の息吹を感じる一興。移りゆくパノラマをのんびりと見つめながら、心静かに空の旅をお楽しみください。

    スポット情報詳細
    名称ゴンピン360 (Ngong Ping 360)
    アクセスMTR東涌(Tung Chung)駅 B出口から徒歩約5分
    営業時間平日10:00~18:00、土日祝9:00~18:30 ※季節により変動あり
    所要時間片道約25分
    チケットスタンダード・キャビン、クリスタル・キャビン、プライベート・キャビンなど
    注意事項天候による運休があるため、公式サイトでの運行状況確認を推奨。週末は混雑するためオンライン事前予約がおすすめ。

    もう一つの選択肢:地元のバスで山の空気を感じる

    時間に余裕がある場合や、より地元の雰囲気を味わいたい方には、路線バスの利用もおすすめです。MTR東涌駅のバスターミナル発の23番バスは、曲がりくねった山道をゆっくり約50分かけてゴンピン高原へと向かいます。

    バスの車窓から眺める景色は、ケーブルカーの空からの視点とはまた異なる味わいがあります。亜熱帯の植物が生い茂る森を抜け、ときどき眼下にダムや貯水池の美しい姿が見え隠れします。カーブを曲がるたび新しい景色が展開し、山の息吹をより身近に感じられるでしょう。地元の乗客の穏やかな会話や、エンジンの力強い音が旅情をさらに掻き立てます。料金がケーブルカーよりもずっと安価なのも魅力の一つ。帰路にバスを利用し、行きと帰りで異なる景色や体験を楽しむのも良いでしょう。

    聖域へ続く道:268段の石段とその先にあるもの

    ゴンピン360の終点で降りると、「ゴンピン・ビレッジ」と呼ばれるテーマパークのようなエリアが広がっています。ここにはレストランやカフェ、土産物店がずらりと並び、多くの観光客で賑わいを見せています。この賑わいを抜けて、まっすぐ伸びる参道を歩くと、いよいよ天壇大仏へと続く広大な空間が広がります。

    目の前に姿を現すのは、高くそびえる台座の上に鎮座する大仏です。そしてその足元へと伸びる長くまっすぐな石段、全部で268段あります。この数字自体に仏教の教えに基づく特別な意味があるわけではありませんが、一段ずつ階段を踏みしめて登る行為が、まるで俗世から神聖な場所へ気持ちを切り替えていくための大切な儀式のように感じられます。

    心を整えながら、ひと歩きひと歩きの巡礼

    階段を登り始める前に、まず深呼吸をしてみましょう。都会の喧騒とはまったく異なる、澄み切った高原の空気が肺いっぱいに広がります。急ぐ必要は全くありません。自分のペースで、ゆったりと一歩一歩登ることが何より大切です。体力に自信のない方も心配いりません。途中にはいくつかの踊り場が設けられており、休みながら景色を楽しめます。

    一段一段登るたびに、少しずつ視界が広がっていきます。振り返れば、歩いてきたゴンピン・ビレッジの街並みや、その向こうに広がるランタオ島の緑豊かな山々を見渡すことができます。そして顔を上げると、大仏様がじわじわと、その姿を大きく現してきます。それはまるで、私たちの歩みを静かに見守り、迎え入れているかのような存在感です。

    この268段の階段は、単なる移動手段ではありません。それは祈りであり瞑想であり、自らの心と対話するための大切な時間です。日々の生活で無意識のうちに背負い込んだ重荷や雑念を、一歩一歩足元に置いていく感覚。頂上にたどり着いたときには、心地よい疲労とともに不思議なほどの心の軽さを感じることでしょう。額ににじむ汗を、爽やかな高原の風が優しく拭い去ってくれる頃、あなたはついに天空にそびえる仏陀の御前に立っているのです。

    天壇大仏との静かなる対話

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    268段の石段を登り切った先には、まるで天と地、そして自分だけが存在しているかのような、静謐で神聖な空間が広がっています。目の前に鎮座するのは、世界最大級の屋外青銅製仏像である天壇大仏。その圧倒的な大きさと荘厳な佇まいに、多くの人が言葉を失い、しばらく見入ってしまうことでしょう。

    見事なスケールと慈愛あふれる表情

    高さ34メートル、重さは250トンを超えるこの巨大な仏像は、穏やかな表情でランタオ島の山々や香港の全景を見守っているかのようです。晴れ渡った日は、青空を背景にそのシルエットが鮮明に浮かび上がり、神々しい存在感を示します。霧に包まれた日には、まるで雲の中から突然現れたかのような幻想的な雰囲気を醸し出し、見る者の心を深く惹きつけます。

    この大仏は12年の歳月をかけて1993年に完成しました。名前の由来は、仏像が座する三層の台座が北京にある皇帝の祭壇「天壇」を模していることにあります。細かく見ると、大仏の右手は手のひらを前に向けて指を立てており、これは「施無畏印(せむいいん)」と呼ばれ、人々の恐怖を取り除き安心を与える意味が込められています。左手は膝の上に置かれ、手のひらを上に向けて人々に恵みを授ける「与願印(よがんいん)」を結んでいます。その慈愛あふれる印相と穏やかな表情を見つめていると、心の中の不安や迷いが優しく溶けていくような感覚に包まれます。

    スポット情報内容
    名称天壇大仏 (The Big Buddha / Tian Tan Buddha)
    所在地香港 ランタオ島 昂坪 (Ngong Ping)
    高さ34メートル(台座含む)
    材質青銅
    完成年1993年
    特徴世界最大級の屋外青銅仏像。台座内には仏舎利が納められている。
    拝観時間10:00~17:30
    注意事項階段は268段。ゆっくりとしたペースで登ることを推奨。露出の多い服装は控え、敬意を持って行動しましょう。

    台座の内部に安置された聖なる遺物

    仏像が座する蓮華座の下にある三層の台座は、「功徳堂」「法界堂」「紀念堂」と称される展示ホールとして利用されています。入場は有料ですが、この場所を訪れたならぜひ立ち寄りたい、神聖な空気に包まれた空間です。最も神聖とされる最上階には、仏舎利、すなわち釈迦の遺骨とされる聖遺物が安置されています。ガラスケースの中に収められた小さな聖なる遺物を前に、静かに手を合わせる人々の敬虔な姿が見られます。その厳かな雰囲気に自然と背筋が伸びる思いを抱くことでしょう。

    他の階では、仏像建立の歴史を伝える資料や見事な仏教美術品、書画などが展示されています。外の喧騒から隔てられたこの空間は、まるで時間が止まったかのような静寂に包まれています。壁に掲げられた仏陀の生涯を描いた絵画をじっくり鑑賞したり、静かな場所で瞑想にふけるのもおすすめです。大仏の足元に広がるこの内なる世界に触れることで、この聖地への理解が一層深まることでしょう。

    大仏を取り囲む六天母像の祈り

    大仏の周囲の壇上には6体の小さな青銅製菩薩像が、まるで大仏に供物を捧げるかのように並んでいます。これらは「六天母像」と呼ばれ、それぞれ花・香・灯・塗・果・楽(音楽)を大仏に供養している様子が表現されています。実はこれらの供物は、仏教の重要な実践徳目である「六波羅蜜(ろっぱらみつ)」、すなわち布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧を象徴していると言われています。六体の菩薩像は、訪れる人々に対し、他者への施しや戒律の遵守、耐える心、努力の継続、心の集中、そして真理を見極める智慧の尊さを静かに伝えています。それぞれの菩薩の優美な姿と手に持つ供物の意味を想いながらゆっくり一周すれば、大仏との対話がより深く意味のあるものになるでしょう。

    南天の仏教王国、寶蓮寺(ポーリン寺)で心を洗う

    天壇大仏のすぐ向かい側に位置するのが、この地域の信仰の拠り所であり、「南天の仏教王国」とも称される壮麗な寺院、寶蓮寺(ポーリン寺)です。大仏の荘厳な姿に感銘を受けた後は、ぜひこの歴史ある禅寺の敷地をゆっくりと散策し、さらなる心の平穏を感じてみてください。

    百年以上の歴史が息づく伽藍

    寶蓮寺の起源は、1906年に三人の禅師が小さな庵を建立したことにさかのぼります。それ以来、百年以上にわたり規模を拡大し続け、現在では香港を代表する仏教寺院として、国内外から多くの信徒や観光客を迎え入れる場所となっています。境内には色彩豊かな装飾が施された壮大な建築物が点在し、その配置や建築様式からは中国伝統の寺院美学が随所に感じられます。

    寺院の中核を成すのは、本尊として祀られている三体の仏像が安置された「大雄寶殿」です。華麗な内部には絶え間なく線香の香りが漂い、熱心に祈りを捧げる参拝者の姿が見られます。その厳かな空気感は自然と心を引き締める効果があります。また、2014年に完成した「万仏殿」もぜひ訪れていただきたいスポットです。名前の通り、内部には一万体を超える小さな仏像が壁一面に並び、その壮観さは圧倒的。黄金に輝く仏像たちに囲まれると、まるで極楽浄土に足を踏み入れたかのような不思議な感覚にとらわれます。

    境内をのんびり歩いていると、耳に入ってくるのは風に揺れる木の葉の音、鳥のさえずり、そして時たま聞こえる読経の声。鮮やかな色彩で彩られた建物の精緻な彫刻や、屋根の上で天を指す龍の装飾を眺めながら、この寺院が歩んできた長い歴史に思いを巡らせることができます。そんな静かなひとときは旅の疲れを癒し、心を穏やかに満たしてくれるでしょう。

    スポット情報詳細
    名称寶蓮寺 (Po Lin Monastery)
    所在地香港 ランタオ島 昂坪 (Ngong Ping)
    創建1906年
    特徴香港を代表する仏教寺院。「南天の仏教王国」と称される。
    見どころ大雄寶殿、万仏殿、天王殿など
    拝観時間8:00~18:00
    その他境内で精進料理(斎菜)が味わえる

    体の内側から清める精進料理の恵み

    寶蓮寺を訪れたら、ぜひ味わっていただきたいのが、寺院運営の食堂で提供される精進料理(斎菜)です。肉や魚、さらに匂いの強い野菜(五葷)であるネギやニンニクなどを一切使わずに調理されたベジタリアン料理は、仏教の教えに則り心身を内側から清めるための食事とされています。

    食堂の入口で食券を購入すると、広々とした空間に大きな円卓が並んでいます。メニューは数種類の料理とスープ、ごはんがセットになった定食スタイルが基本です。一見すると酢豚や唐揚げのように見える料理もありますが、これらはすべて大豆ミートやグルテン、野菜を使って、食感や味わいが巧みに再現されています。

    運ばれてきた料理を口にすると、その優しい味わいに驚かされるでしょう。化学調味料を用いず、野菜やきのこ、豆腐などの素材本来の旨味を丁寧に引き出した料理は、奥深い滋味を湛え、疲れた胃腸にすっと染み込んでいきます。派手さは控えめながら、一口ごとに体が喜んでいるのが実感できる、素朴で豊かな味わいです。静かな寺院の境内で、祈りの合間にいただく精進料理は、単なる食事を超え、自然の恵みへの感謝と命をいただくことの尊さを改めて感じさせてくれる貴重な体験となるでしょう。

    さらに奥へ、森に眠る般若心経の聖域

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    天壇大仏と寶蓮寺だけでも十分に心が満たされる体験ですが、もし時間に余裕があるなら、もう少しだけ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。寶蓮寺から緑豊かな小径を約15分歩いた先に、もうひとつの静謐なスピリチュアルスポット「心経簡林(ハート・スートラ)」がひっそりと佇んでいます。

    自然と調和する壮大な木簡アート

    森の中に突如として現れるのは、高さ8メートルから10メートルにも及ぶ38本もの巨大な木の柱。これらの柱には、仏教の重要な経典の一つである「般若心経」の全文が、著名な国文学者・饒宗頤(ジャオ・ツォンイー)氏の書によって刻まれています。柱は丘の地形に沿って無限大(∞)の形状に配置されており、これは般若心経が説く「空(くう)」つまり無限の概念を象徴しているとされています。

    この場所に足を踏み入れた瞬間、空気の変化を感じるかもしれません。静まり返った森と、壮麗に立ち並ぶ木簡が織りなす独特の雰囲気。風が吹き抜けるたびに木々がざわめき、まるで経文がそっと語りかけてくるかのようです。刻まれた文字をひとつひとつ辿ってみたり、ただ静かに柱の間にたたずんだりしながら、ゆったりと流れる時間に身を委ねてみてください。

    ここは宗教的な知識がなくても、誰もが自然とアート、そして古代の叡智が融合した空間の美しさに心を動かされる場所です。鳥のさえずりに耳を傾け、木の香りを感じ、巨大な経文に向き合う。その瞑想のひとときは、天壇大仏の前で抱いた感動とは異なる、より内省的で深い心の落ち着きをもたらしてくれるでしょう。都会の喧騒からは想像できないほど静寂に包まれたこの森で、自分自身の心の声にじっくり耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

    スポット情報詳細
    名称心経簡林 (Wisdom Path / Heart Sutra)
    所在地寶蓮寺から徒歩約15分
    特徴般若心経が刻まれた38本の巨大な木簡が無限大(∞)の形に配置されている。
    入場料無料
    見どころ静かな森の中で、自然とアート、そして仏教の教えが融合した荘厳な空間。
    注意事項寶蓮寺からの道は整備されていますが、歩きやすい靴がおすすめです。夏場は虫よけ対策もお忘れなく。

    香港のもう一つの顔、ランタオ・トレイルの誘い

    ランタオ島は、スピリチュアルな聖地として知られるだけでなく、香港で屈指のハイキングスポットとしても名高い場所です。島を一周するように設けられた全長約70キロのハイキングコース「ランタオ・トレイル」は、12の区間に分かれており、体力や時間に応じて多様なルートを楽しむことができます。

    天壇大仏や心経簡林を見学した後、もう少し自然の中で過ごしたいと思ったら、このトレイルの一部を歩くのがおすすめです。たとえば、心経簡林からセクション3の一部を少しだけ散策するだけでも、香港の豊かな亜熱帯の自然を存分に堪能できます。シダが生い茂る湿った小径や、頭上で枝葉がアーチのように広がる木々、そして時折響く名前も知らない鳥たちのさえずりが、五感を刺激し心が解き放たれていくのを感じられるでしょう。

    本格的な装備は不要ですが、歩きやすい靴と十分な水分の用意は欠かせません。無理のない範囲で30分から1時間程度の散策でも、この島が秘めるもう一つの魅力である、手つかずの自然の力強さに触れることができるはずです。大仏に祈りを捧げ、寺院で心を落ち着けた後は、森の小径を歩いて大地のエネルギーを感じる。これこそが、ランタオ島がもたらしてくれる究極のウェルネス・ジャーニーといえるでしょう。

    天空の聖地を訪れる旅のヒント

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    この特別な旅を、より快適で心に残るものにするためのいくつかのポイントと注意事項をご紹介します。

    旅の計画:最適な季節と服装

    香港は亜熱帯気候に属しており、一年を通じて温暖ですが、ランタオ島の訪問に最も適しているのは、空気が乾燥して涼しくなる秋から冬、具体的には10月から翌年2月ごろです。湿度の高い夏季(6月〜8月)は熱中症のリスクがあり、台風シーズンでもあるため天気が不安定になることが少なくありません。

    服装については、まず歩きやすい靴が重要です。天壇大仏への268段の階段はもちろん、寶蓮寺の広大な境内や心経簡林へ続く小道など、歩くことが多い場所です。また、ゴンピン高原は市街地より標高が高いため、気温はやや低く、天候の変化も激しい傾向があります。夏場でも薄手の羽織りものを1枚用意しておくと、急な天気の変化やエアコンが効いたケーブルカーやバス内で役立ちます。

    心構え:敬意を持つこと

    天壇大仏や寶蓮寺は、多くの人々にとって信仰の中心である神聖な場所です。訪れる際は敬意を忘れず行動しましょう。特に寺院内では、大声で話すのを避けて静かにお参りすることが求められます。服装も露出の多いものは控えるのがマナーです。写真撮影については、場所によって禁止されていることがあります。熱心に祈る方にカメラを向ける行為は特に慎むべきです。美しい記録を残すことは素敵なことですが、その場の神聖な雰囲気に配慮する気持ちを大切にしましょう。

    時間にゆとりを持つこと

    ランタオ島は、慌ただしく巡るにはもったいない場所です。ゴンピン360の待ち時間や広い境内の散策、そして何よりも静かに自分自身と向き合う時間をじっくり過ごせることが魅力です。これらを十分に味わうために、丸一日をこの島のために確保する計画をおすすめします。予定を詰め込みすぎず、気の向くままに歩き、疲れたらカフェで休み、気に入った場所に長居する。そんな余裕のある旅が、深い癒やしと新たな発見をもたらしてくれるでしょう。

    日常へと戻るあなたへ

    ランタオ島で過ごした一日は、あなたの心にどのような輝きをもたらしたでしょうか。天空に鎮座し、すべてを包み込むような優しい眼差しで見守っている天壇大仏。百年の歴史を刻み、静謐な祈りに満ちた寶蓮寺の境内。そして、深い森の奥で古代の叡智をそっと語りかける心経簡林。この島で出会った荘厳な美しさと豊かな自然の息吹は、きっとあなたの心に深く刻まれていることでしょう。

    香港の旅は、単なるショッピングやグルメだけではありません。ほんの少し足を伸ばせば、日常の喧騒や悩みを忘れ、自分自身の心と静かに向き合える聖域が広がっています。268段の石段を登り切った時の達成感。大仏の前に立ち、その圧倒的な存在感に身を委ねたときの安らぎ。精進料理が体に染み渡る感覚。その一つひとつの体験が、私たちに内なる平穏を取り戻す力を授けてくれます。

    この旅で得た静けさと清々しいエネルギーを、どうか大切に日常へと持ち帰ってください。そしてまた心が疲れたと感じた時には、ランタオ島の空と、そこで穏やかに座す仏陀の姿を思い浮かべてみてください。天空の聖地は、いつでも静かに、そして温かくあなたを迎え入れてくれるはずです。この旅が、あなたにとって明日へ向けた新たな活力となることを心より願っています。

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    この記事を書いた人

    ヨーロッパのストリートを拠点に、スケートボードとグラフィティ、そして旅を愛するバックパッカーです。現地の若者やアーティストと交流しながら、アンダーグラウンドなカルチャーを発信します。

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