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    聖なるシナイ山と紺碧の紅海へ。エジプトで出会う、砂漠と海の二重奏

    エジプトと聞いて、何を思い浮かべますか?ピラミッド、スフィンクス、悠久のナイル川。もちろん、それらはエジプトの顔であり、誰もが一度は夢見る光景でしょう。しかし、この国の魅力は古代遺跡だけにとどまりません。カイロの喧騒から少し東へ。アフリカ大陸とアジア大陸を繋ぐ架け橋、シナイ半島には、旅人の魂を根源から揺さぶるような、荒々しくも美しい自然が広がっています。

    乾いた砂と岩が支配する不毛の大地。そして、そのすぐ隣には、世界中のダイバーが憧れる生命に満ちた海。静と動、死と生、闇と光。あまりにも対照的な二つの世界が、ここでは隣り合って存在しているのです。僕、Markはそんなシナイ半島の二面性に強く惹かれました。アマゾンのジャングルや極限の環境に身を置くことが好きな僕にとって、この地のコントラストは、まるで地球の鼓動そのものに触れるような体験を約束してくれるように思えたのです。

    旧約聖書でモーセが神から十戒を授かったとされる聖なる山に登り、夜明けの光に包まれる。そして、その足で紺碧の海に潜り、色とりどりの生命と戯れる。そんな夢のような旅が、ここシナイ半島では現実になります。この記事は、単なる観光ガイドではありません。僕が実際に体験した、砂漠と海を巡る旅の記録。あなたが次の一歩を踏み出すための、小さな勇気と具体的なヒントになれば幸いです。さあ、まずは地図を広げて、この壮大な舞台の位置を確かめてみましょう。

    エジプトの魅力はシナイ半島の自然だけではなく、ダクラオアシスで味わう甘美なデーツのような砂漠の恵みにも広がっています。

    目次

    深淵の夜を越えて。聖なる山、シナイ山登頂の全記録

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    旅の最初のハイライトは、標高2,285メートルにそびえるシナイ山、別名「モーセの山」への挑戦です。この山が特別なのは、その高さや景観の美しさだけでなく、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三つの宗教にとって聖なる場所であること。何千年もの間、数え切れない巡礼者たちが祈りを捧げながら歩んできたこの道を、私もまた辿るのです。

    旅はダハブの喧噪から始まる

    シナイ山の登山拠点として選んだのは、紅海沿いの小さな町ダハブ。かつてはベドウィンの静かな漁村だったこの場所は、今や世界中からバックパッカーやダイバーが訪れる自由で開放的な楽園となっています。カイロから長距離バスで約9時間。車窓に流れる緑豊かなナイルのデルタから徐々に荒涼とした砂漠へと変わる景色は、まるで異世界への扉を開く儀式のようでした。

    ダハブに着けば、シナイ山への登山ツアーを見つけるのは容易です。海沿いのプロムナードには多くのツアー会社や旅行代理店のオフィスが軒を連ねています。私は宿に荷物を置いた後、散歩がてらいくつかのオフィスを訪ねました。内容はどこもほぼ同じで、深夜にダハブを出発し登山口まで送迎、ベドウィンのガイドが山頂まで同行してご来光を拝み、下山後は麓にある聖カトリーナ修道院を見学してダハブへ戻るというもの。料金は30ドルから50ドルほどで、送迎とガイド料が含まれています。交渉すると安くなることもありますが、何より重要なのは価格より信頼できる会社を選ぶことです。

    私は、にこやかにミントティーを勧めてくれた小さな代理店で申し込みました。出発は今夜の23時。それまでの間は海辺のカフェで読書をしたり仮眠をとったりして過ごします。これから始まる真夜中の冒険に、期待と少しの緊張が入り混じった感情が胸を満たしていきました。体力には自信があったものの、聖なる山がどんな顔を見せてくれるのか、まったく想像がつきませんでした。

    星の海の下を歩く、深夜の巡礼路

    指定された時間に宿の前で待つと、一台のミニバスが到着しました。中にはすでに、各国から集まった旅行者の面々がいます。ドイツ、オーストラリア、韓国、ブラジル…国籍は様々ですが、皆眠そうな目の奥に私と同じ冒険への期待が煌めいていました。女性に話しかけるのは少し苦手な私ですが、こうした沈黙の連帯感は嫌いではありません。バスは真っ暗な道を走り、約2時間でシナイ山麓の駐車場に到着しました。

    降り立つとすぐに、ひんやりとした空気が肌を刺します。日中の陽気とは打って変わり、砂漠の夜は冷え込みが厳しい。気温は恐らく10度以下でしょう。フリースの上に薄手のダウンジャケットを羽織ったのは正解でした。サバイバルゲームで夜間戦闘に慣れてはいても、この寒さは相当こたえます。衣服は脱ぎ着しやすい重ね着が基本で、足元は岩場を長時間歩くためスニーカーよりトレッキングシューズやしっかりとしたブーツがおすすめです。私の足元は、長年愛用している軍用コンバットブーツ。これならどこまでも歩ける自信があります。

    騒がしい駐車場の中で、今回のグループを案内してくれるベドウィンのガイド、ムハンマドと合流しました。日焼けで引き締まった顔立ちの彼は、笑うととても優しい瞳をしています。彼から手渡されたのは小さな懐中電灯。それを頼りに、私たちは漆黒の闇へと足を踏み入れました。

    歩き始めてすぐ、私は思わず空を見上げ息を呑みました。街灯のない砂漠の夜空には、まさに「降り注ぐ」かのような星々が輝き、天の川は白い絵の具をさっと刷いたように空を横切っています。流れ星もいくつも尾を引いて消え、これまで体験したどんな星空より濃密で立体的。まるで宇宙の中に浮かんでいるかのような錯覚を覚えました。この星空のもとを歩くだけでも、このツアーに参加した価値がある—心からそう感じました。

    ラクダに揺られ、あるいは自分の足で

    登山道は「ラクダの道」と呼ばれる緩やかで歩きやすい区間から始まります。名前の通り、道沿いには多くのラクダが待機しており、ベドウィンたちが「キャメル?キャメル?」と声をかけてきます。山頂近くの休憩所まで、約2時間半のルートをラクダに乗って登ることも可能です。料金は交渉制で概ね15ドルから20ドル程度。体力に自信がない方や珍しい体験を望む方には良い選択肢でしょう。

    グループの何人かはラクダを選択しましたが、私は迷わず自力での登山を選びました。極限の環境を求め旅する者として、この聖なる道を一歩一歩踏みしめて登ることに意味があると感じたからです。暗闇の中、聞こえるのは自分の呼吸音と砂利を踏む足音、時折他の登山者の囁き声だけ。ガイドのムハンマドは、猫のようなしなやかな足取りで先導してくれます。

    道中には30分から1時間ごとに、ベドウィンが運営する小さな休憩所があります。岩を積み上げただけの質素な小屋ですが、中のストーブの温もりが凍えた身体に染み渡ります。ここで飲む熱く甘いミントティーや濃厚なトルココーヒーは格別で、一杯約2ドル。値段以上の価値があると感じました。チョコレートバーなどの軽食も販売しており、エネルギー補給も可能です。私はポケットのナッツバーをかじりつつ火のそばで温まり、再び暗闇へと歩き出しました。

    約2時間半後、道は二つに分かれます。一つはラクダが行き着く終点へ続く道。もう一つは山頂へ至る最後の試練、「懺悔の階段」です。不規則に積み上げられた約750段の石段は心臓破り。疲労と暗闇に負けず、足に鞭を打って一歩また一歩と登ります。振り返ると、同じ目的地を目指す登山者たちのヘッドライトがまるで蛍の列のように続いており、その光景は時代を超えた巡礼者の祈りの灯火のようにも見えました。

    山頂で迎える、モーセも見たであろう夜明けの奇跡

    最後の力を振り絞り階段を昇りきると、ついに標高2,285メートルの山頂に到達します。時刻は午前5時ごろ。ご来光まではまだ1時間ほどあります。山頂には小さな教会とモスクが静かに佇み、多くの人々が思い思いの場所でその瞬間を待っていました。毛布を有料(1ドル)でレンタルできる小屋もあり、暖をとる人が多いです。私も毛布を借り、風を避けられる岩陰に腰を下ろしました。東の空はまだ深い藍色に沈んでいます。

    そして、その奇跡の時が訪れました。

    水平線の彼方で、深い藍色の空が徐々に明るみを帯び、細いオレンジの線が現れます。その線は徐々に太く鮮やかになり、空の周囲をラベンダーやピンク、燃えるような赤で染め上げてゆきました。言葉を失い、ただ目の前の荘厳な光の饗宴に圧倒されるばかりです。

    太陽が顔を出すと、眼下に広がる荒々しいシナイの山々が全貌を現しました。重なり合う岩山はまるで巨大な生き物の背中のよう。影と光が織り成す立体的な光景は、地球の原始の姿を見ているかのようでした。ごつごつした岩肌が朝日に照らされて黄金色に輝いています。

    世界各地から訪れた人々が静かに、あるいは感嘆の声を漏らしながら同じ光景を見つめています。写真を撮る人、祈りを捧げる人、ただじっと朝日を見つめる人。宗教も国籍も言葉も異なる彼らが、この場所でひとつの感動を共有している。私はその一体感に静かな興奮を覚えました。深夜の寒さも、登山の疲れも、この瞬間の前ではすべて浄化されていくような感覚。これが、モーセも目にしたであろう光景なのかもしれません。神の存在を信じるか否かに関わらず、この圧倒的な自然の前では誰もが何か超越したものを感じずにはいられないでしょう。

    聖なる山の麓から、生命の海へ。紅海ダイビングへの誘い

    山頂で拝んだご来光の余韻に浸りながら下山し、ダハブに戻ったのは午後を過ぎたころでした。体は疲れ切っていましたが、心はなぜか満ち足りた達成感と穏やかな静けさで満たされていました。もし聖なる山が「静」と「闇」の世界なら、次の冒険の舞台は「動」と「光」の世界、すなわち紅海です。砂漠の山から、命あふれる海へ。この劇的な変化こそ、シナイ半島を旅する醍醐味なのです。

    ダハブ──世界中のダイバーに愛される理由

    ダハブの海岸沿いを歩くだけで、なぜここがダイバーの聖地と称されるのかすぐに理解できます。カジュアルなダイビングショップが軒を連ね、器材を干す光景が日常風景に溶け込んでいます。ビーチから直接エントリーできる手軽なダイビングポイントが点在し、初心者から上級者まで、それぞれのレベルに応じて楽しむことができます。

    何より驚くのは、そのコストパフォーマンスの良さです。ヨーロッパでは考えられないほど低価格で、質の高いダイビング体験が可能です。PADIやCMASなど国際的な指導団体の認定ライセンス取得コースも充実しており、世界各地から未来のダイバーが集まっています。

    私自身はライセンスを持っていなかったため、今回は「体験ダイビング(ディスカバー・スクーバ・ダイビング)」に挑戦することにしました。これはインストラクターの付き添いのもと、比較的浅い深度でダイビングの基本を体験できるプログラムです。ライセンスは不要で、水着とタオルさえあれば誰でも参加できます。数あるショップの中からフレンドリーなエジプト人インストラクターがいる店を選び、翌日に予約を入れました。料金は機材レンタルとインストラクター料込みで、2回のダイビングがセットで約60ドル。信じられないほどの安さです。

    初めての呼吸。ブルーホールへの挑戦を前に

    翌朝、ダイビングショップへ向かう足取りは、登山とは異なる期待感で軽やかでした。まずは教室で、ダイビングの基本ルールや水中でのコミュニケーション方法(ハンドシグナル)、器材の使い方についてブリーフィングを受けます。特に大事なのが「耳抜き」。水圧による耳の痛みを防ぐテクニックで、インストラクターが丁寧にコツを教えてくれるため、不安はありません。

    説明が終わると、いよいよ器材を身に着けて海へ。重いタンクを背負い、マスクとフィンを装着して水に入ると、体がふわりと浮き上がりました。まずは足のつく浅瀬で、水中での呼吸練習。レギュレーターをくわえ、水に顔をつけたまま「スー、ハー」と呼吸をしてみます。最初は戸惑いますが、すぐに慣れました。水中で自分の意志で呼吸ができるという感覚は不思議で感動的です。地上とはまったく異なる世界の扉が、今まさに開きかけています。

    いくつかの基本スキル(マスクに水が入ったときの対処法など)を練習し、私が水に慣れたのを確認すると、インストラクターはにっこり笑って「OK」のサインを示しました。いよいよ本格的な水中散歩の始まり。彼についてゆっくり潜降すると、そこには息を呑むような別世界が広がっていました。

    紺碧の深淵、ブルーホールの神秘

    ダハブのダイビングといえば、多くの人が名を挙げるのが「ブルーホール」です。海岸すぐそばに直径約100メートル、水深100メートル以上の巨大な縦穴が口を開ける、世界屈指のダイビングスポット。その吸い込まれそうなほどの深い青色は、多くのダイバーたちを魅了してやみません。「ダイバーの墓場」とも呼ばれますが、それは無謀な挑戦をする一部のテクニカルダイバーに限った話。体験ダイビングやファンダイビングで定められた深度内で楽しむ分には、まったく危険はありません。

    私たちはブルーホールのすぐ隣にある「ベルズ」というポイントからエントリーし、ブルーホールの外壁沿いを泳ぐコースを選びました。水面から見下ろすブルーホールはただの濃紺の円に見えますが、水中に潜るとその真の姿が明らかになります。

    目の前には、果てしなく続くかのような垂直な壁がそびえ、ドロップオフが広がっています。その壁は色鮮やかなハードコーラルやソフトコーラルで覆われ、多くの魚たちが集まる楽園となっています。オレンジと白の縞模様が特徴のカクレクマノミがイソギンチャクから顔をのぞかせ、鮮やかな青のハナダイが群れをなして泳ぎます。黄色いチョウチョウウオのペアが優雅に泳ぎ去り、時には大きなナポレオンフィッシュが悠然と横切ることも。まるで巨大な水族館の水槽に迷い込んだかのような光景です。

    インストラクターが指さす先には、岩陰に擬態したタコや、砂地に美しい青い斑点を持つヨスジフエダイが見え、次々と新たな発見がありました。自分の吐く息「コポコポ…」という音だけが響く静寂な世界。重力から解き放たれ、まるで宇宙空間を漂うかのような浮遊感は、サバイバルゲームのスリルとは異なる、心地よい高揚感をもたらしてくれました。

    約40分の水中散歩を終え水面に浮上したとき、太陽の光がこれほど温かく、力強く感じられたのは初めてでした。ほどよい疲労感に包まれ、ビーチ沿いのベドウィンカフェで飲むミントティーは、シナイ山頂でのそれとはまったく違う、格別な味わいでした。

    旅の実用情報と、心構え

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    聖なる山と命の海。この二つの壮大な自然を体験するには、いくつかの準備と心構えが欠かせません。私の経験をもとに、旅をより安全かつ快適に過ごすためのポイントをご紹介します。

    ダハブでの滞在:宿泊、食事、そして人々の魅力

    ダハブは旅人にとても親切な街です。宿泊施設は、一泊数ドルで利用できるドミトリータイプのリーズナブルな宿から、プール完備の快適なリゾートホテルまで、予算に応じて多様な選択肢があります。私は海沿いのシンプルなゲストハウスに滞在しましたが、清潔で居心地が良かったです。

    食事面でも困ることはありません。海辺のプロムナードには、新鮮なシーフードを好みの調理法で提供するレストランがずらりと並びます。また、安価で美味しいエジプトのローカルフード(コシャリやターメイヤなど)を提供する店や、ピザやパスタを楽しめる国際的なカフェも充実。物価が安いため、食費を気にせずに味わえるのも魅力の一つです。

    そして何より、ダハブの最大の魅力はそこで出会う人々かもしれません。陽気でホスピタリティに溢れたエジプト人、自分らしいライフスタイルを実践する欧米からの移住者、世界各国から集う旅人たち。異文化が自然に交じり合うオープンでリラックスした空気が流れており、内気な私もカフェで隣り合わせた旅行者と自然に会話を交わし、旅の情報交換ができました。

    準備リスト:砂漠と海の冒険に役立つもの

    特別な装備は必要ありませんが、あると便利なアイテムをいくつかご紹介します。

    シナイ山の登山では、防寒着が必須です。フリースや薄手のダウンジャケット、ニット帽、手袋など、重ね着で体温調整ができる服装を用意しましょう。また、暗闇で歩くためのヘッドライトがあると便利です。懐中電灯でも代用は可能ですが、両手が自由になるヘッドライトがおすすめです。ツアーで貸し出しがある場合もありますが、自分のものがあると安心できます。靴は履き慣れたトレッキングシューズを選び、水やチョコレート、ナッツなどの行動食も忘れずに。日差しが強いため、下山時用にサングラスと日焼け止めも必携です。

    紅海でのダイビングやシュノーケリングには、水着とタオルがあれば基本的に問題ありません。日焼け対策としてラッシュガードがあると便利です。さらに、美しい海中を写真に残したい場合は、防水カメラやスマートフォン用の防水ケースがあると、旅の思い出が一層豊かになります。多くのダイビングショップでレンタルも可能です。

    また、どちらのアクティビティでも共通して重要なのは、現金(特に細かなエジプトポンド)、常備薬、そしていざという時のための海外旅行保険です。特に山頂や地元の小さな店ではクレジットカードが使えないことが多いため、ある程度の現金を持ち歩くことをおすすめします。

    不安を安心に変えるために:旅人が知っておくべき情報

    シナイ半島と聞くと、治安面を心配する方も多いでしょう。確かに北部の一部地域には外務省の退避勧告が出ていることもありますが、ダハブやシャルム・エル・シェイクといった南部のリゾートエリアは、多くの観光客が訪れる比較的安全な場所です。もちろん、夜間の単独行動を避ける、貴重品管理を徹底するなどの最低限の注意は必要ですが、過度に怖がる必要はないでしょう。出発前には必ず最新の海外安全情報を確認することをおすすめします。

    また、エジプトを旅する際に気をつけたいのが水と衛生面です。水道水は飲まず、必ずミネラルウォーターを購入してください。食事は火が通ったものを選ぶことで、お腹を壊すリスクを減らせます。

    イスラム教が主な宗教であるため、文化や習慣への敬意を払うことも大切です。特に女性は、町中を歩く際に過度な肌の露出を避け、肩や膝が隠れる服装を心がけるとトラブルを避けやすくなります。リゾートエリアでは比較的寛容ですが、地元住民が多い地域では特に配慮が必要です。

    エジプトでは値段交渉が日常文化の一部です。タクシーや土産物店では提示価格で即決せず、まずは交渉を楽しんでみてください。そして、会話のなかでよく耳にする「インシャラー(神が望むなら)」という言葉は単なる口癖ではなく、万物は神の御心のままにあるという彼らの価値観が表れています。この言葉に慣れてくる頃には、あなたも少しずつエジプトの時間の流れに溶け込んでいることでしょう。

    砂と海の記憶を胸に

    シナイ半島での旅を終えた今、僕の心には二つの鮮烈な光景が深く刻み込まれています。一つは、聖なる山の頂で目にした、荒涼とした岩山を黄金色に染める夜明けの光景。そしてもう一つは、紺碧の海の底で輝くサンゴ礁を、太陽の光がまるでカーテンのように照らし出していた様子です。

    砂漠の静けさの中で自分自身と静かに向き合い、生命に満ちあふれた海の中で地球の豊かさを肌で感じる。この旅は単なる二つのアクティビティをこなすものではなく、壮大な自然という偉大な存在を通じて、自分という小さな存在を再認識し、生きていることの奇跡を心から味わう時間でした。

    過酷な環境はいつだって僕に大切なことを教えてくれますが、シナイ半島が伝えてくれたのは単なる厳しさだけではありませんでした。満天の星空の美しさ、ベドウィンの人々の温かさ、水中の静謐さ、そして旅人たちの穏やかな笑顔。そこには、ただ生き抜くためのサバイバルとは一線を画す、豊かで優しさに満ちた世界が広がっていました。

    もしあなたが日常の疲れを感じていたり、新たなインスピレーションを求めているなら、次の旅先にエジプトのシナイ半島を選んでみるのはいかがでしょう。地図を広げ、航空券を調べ、最初の一歩を踏み出す。そのほんの小さな勇気が、あなたの人生に消えない輝きを刻んでくれるはずです。

    聖なる山と命あふれる海は、いつだってあなたを迎え入れる準備ができています。

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    この記事を書いた人

    未踏の地を求める旅人、Markです。アマゾンの奥地など、極限環境でのサバイバル経験をもとに、スリリングな旅の記録をお届けします。普通の旅行では味わえない、冒険の世界へご案内します!

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