かつて旅行とは、日常から離れてリフレッシュするための特別なイベントでした。しかし、リモートワークの普及がその定義を根底から覆そうとしています。トラベルテクノロジーブランドScapadeが発表した最新の予測によると、2026年までに「どこでも仕事(work-from-anywhere)」という働き方が主流となり、私たちの旅の持ち物に大きな変化が訪れるようです。
背景:パンデミックが加速させた「働く場所」の自由化
新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中の企業に働き方の変革を迫りました。その結果、リモートワークは一過性のブームではなく、新しいスタンダードとして定着しつつあります。
例えば、米国の調査会社Gallupによると、2023年時点でリモートワークが可能な米国の従業員のうち、約8割が完全リモートまたはハイブリッド勤務を実践しています。日本でも、総務省の調査では企業のテレワーク導入率が2022年時点で51.7%に達し、コロナ禍以前の2019年(20.2%)から倍以上に増加しました。
この変化は、休暇と仕事を融合させた「ワーケーション」や、特定の拠点を持たずに世界を旅しながら働く「デジタルノマド」といった新しいライフスタイルを後押ししています。彼らにとって、旅はもはや「非日常」ではなく、生産性を保ちながら新しい環境を楽しむ「日常の延長」なのです。
「モバイルオフィス必需品」という新市場の誕生
このような新しい旅行スタイルに伴い、旅の持ち物にも新たなニーズが生まれています。Scapade社は、このニーズに応える製品群を「モバイルオフィス必需品」という新カテゴリーとして提唱しています。
これは、従来の旅行グッズ(ネックピローや圧縮袋など)と、日常的に使う電子機器(ノートPCやスマートフォン)の中間に位置する、全く新しい市場です。旅先での快適な仕事環境を構築し、生産性を最大化するためのツールが、これからの旅行の必需品になると予測されています。
2026年の旅の必需品になる4つの革新
Scapade社は、具体的に以下の4つのアイテムが「モバイルオフィス必需品」として進化し、リモートワーカーのスタンダードになると予測しています。
多機能・大容量モバイルバッテリー
これまでのモバイルバッテリーは、スマートフォンの充電が主な役割でした。しかし、今後はノートPCや複数のデバイスを同時に、かつ高速で充電できる大容量・高出力モデルが主流になります。コンセント(AC)出力やワイヤレス充電機能を備え、どんな環境でも電源に困らない「ポータブル電源ステーション」へと進化していくでしょう。
モジュール式収納システム
ノートPC、タブレット、各種ケーブル、マウス、アダプターなど、リモートワーカーが持ち運ぶガジェットは増える一方です。これらをスマートに整理し、必要なものを素早く取り出せるモジュール式のガジェットポーチやオーガナイザーの需要が高まります。自分のデバイスに合わせて内部の仕切りを自由にカスタマイズできる製品が人気を集めそうです。
ポータブル・プライバシーツール
カフェや空港のラウンジ、コワーキングスペースなど、公共の場で機密情報を扱う機会が増えるため、セキュリティ対策は必須です。ノートPC用の覗き見防止フィルターや、公共Wi-Fiを安全に利用するためのポータブルVPNデバイスなど、どこでも安心して仕事に集中できるプライバシーツールの携帯が常識となるでしょう。
追跡可能なスマートバックパック
高価な電子機器を詰め込んだバックパックの紛失や盗難は、リモートワーカーにとって致命的なリスクです。GPSトラッカーが内蔵され、スマートフォンアプリで常に位置情報を確認できるスマートバックパックが普及します。置き忘れ防止アラートや、遠隔でロックできる機能など、より高度なセキュリティ機能を備えた製品が登場すると見られています。
未来への影響:旅行業界全体に求められるパラダイムシフト
このトレンドは、単に旅行グッズの市場を変えるだけではありません。旅行業界全体に大きな影響を与える可能性があります。
- メーカーの動向
- アウトドアブランドやガジェットメーカーは、耐久性・機能性・デザイン性を兼ね備えた「モバイルオフィス必需品」の開発競争に乗り出すでしょう。スタートアップ企業にとっても、革新的なアイデアで市場に参入する大きなチャンスとなります。
- サービス業界の変化
- 航空会社は、より高速で安定した機内Wi-Fiサービスの提供が求められます。
- ホテル業界では、客室内に快適なワークデスクや高速インターネット環境を整備するだけでなく、宿泊者が利用できるコワーキングスペースの併設が新たなスタンダードになるかもしれません。
私たちの旅のスタイルは、テクノロジーの進化と共に、より自由で、より生産的なものへと変わりつつあります。2026年、あなたのスーツケースの中身は、今とは全く違うものになっているかもしれません。

