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    世界一小さな町フムで探す、イストリア半島の恵みを生かしたヴィーガン料理の可能性

    クロアチアの北西部、アドリア海に突き出たハートの形をしたイストリア半島。その緑豊かな丘陵地帯に、まるで時が止まったかのような場所があります。ギネスブックにも認定された「世界で一番小さな町」、フムです。城壁に囲まれた小さな集落は、石畳の道と古びた石造りの家々が織りなす、中世からの物語を今に伝えています。人口はわずか30人ほど。一歩足を踏み入れれば、その静寂と歴史の重みに、誰もが心を奪われることでしょう。

    今回の旅のテーマは、この神秘的なフムで「ヴィーガン料理」の可能性を探ること。美食の地として知られるイストリア半島ですが、その伝統料理はトリュフや生ハム、シーフードなど、動物性の食材が主役を占めることがほとんどです。そんな中で、植物性の食材のみで作られるヴィーガン料理を見つけることは、一見すると無謀な挑戦に思えるかもしれません。

    しかし、旅とは時に、予定調和を離れ、自らの足で新たな道を探し出すプロセスそのものに価値があるのではないでしょうか。特に心と体の健康、そして自然との調和を大切にする私たちにとって、食事は旅の喜びを深めるための重要な要素です。イストリア半島が誇る太陽をたっぷり浴びた野菜、香り高いオリーブオイル、そして滋味あふれるきのこたち。この土地本来の恵みに目を向ければ、きっと新しい食の扉が開かれるはず。世界で一番小さな町で、心と体を満たす、豊かで創造的な食の冒険へと、ご一緒に出かけましょう。

    この静寂と自然の恵みを探求する旅は、例えばモンテネグロのドゥルミトル国立公園で魂を洗う静寂の旅にも通じるものがあるかもしれません。

    目次

    フムとは?世界一小さな町の素顔

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    フムの魅力を語るためには、まずその独特な存在感に触れなければなりません。イストリア半島の内陸、ブゼットという町から南東へ約14キロの丘の上に、静かに佇むのがフムです。町の長さはわずか100メートル、幅は約30メートル。端から端まで歩いても数分足らずという、本当に小さくてかわいらしい町なのです。

    その歴史は古く、11世紀に城塞として築かれたのが始まりとされています。周囲を囲む城壁は、この地がかつて戦略的に重要な場所だったことを物語っています。町の中には、2本の短い通りと聖母被昇天教会、ロマネスク様式の聖ジェローム教会があるだけです。石畳の道をゆっくり歩けば、壁の石のひとつひとつや、窓辺に飾られた花々が長い歴史をそっと語りかけてくるように感じられます。

    フムを語るうえで欠かせないのが、「グラゴル文字」との深い結びつきです。この文字は9世紀頃に作られたとされるスラブ最古の文字で、かつてこの地域で広く使用されていました。フムの町の門には、今なおグラゴル文字で刻まれた歓迎の言葉が見られます。また、近隣のロチュという町からフムへ続く約7キロの道は「グラゴル小路」と呼ばれ、文字の歴史を伝える11の記念碑が点在しています。この道を歩くことは、フムを訪れる旅人にとって、歴史の深淵に触れる大切な儀式のようなものなのです。

    訪れる人々は、この町の圧倒的な静けさと、隔絶されたような雰囲気に魅了されます。観光地でありながら、そこには人々の穏やかな日常が息づいています。軒先で談笑する老人たち、路地を駆け回る猫、遠くから響く教会の鐘の音。時間の流れが都会とはまったく異なることを肌で感じ、日々の喧騒を忘れて心が癒されるのです。フムは単に小さい町というだけでなく、訪れる人の魂を優しく包み込む、不思議な力をもつ場所なのです。

    イストリア半島の食文化とヴィーガンの親和性

    この歴史あるフムでヴィーガン料理を探す旅に出るにあたり、まずはこの地域の食文化そのものを深く理解することが重要です。イストリア半島はクロアチアの中で「美食の地」として特に知られており、その食文化は隣国イタリア、特にヴェネツィアの影響を強く受けています。しかし、それだけにとどまらず、スラブ文化と地中海文化が交わる土地ならではの、独自で豊かな食の世界が広がっているのです。

    イストリア料理の三大要素といえば、オリーブオイル、ワイン、そしてトリュフでしょう。特にオリーブオイルは世界最高峰と称されるものが多く、その新鮮で芳醇な香りは、どんな料理も格別なものに昇華させます。ワインもまた、土着品種であるマルヴァジア・イスタルスカ(白)やテラン(赤)など、個性的なものが揃っています。

    伝統的なレストランのメニューを開くと、イストリア産の生ハム「プルシュット」の盛り合わせや、トリュフを贅沢に使ったパスタやリゾット、赤ワインでじっくり煮込んだ牛肉料理「ボシュカリン」、新鮮な魚介のグリルなどがずらりと並びます。これらは確かに逸品であり、イストリアの食文化の核心を成しています。一見するとヴィーガンとは相容れない世界のように思えるかもしれません。

    しかし、私たちはその背後にある本質を見据える必要があります。イストリア料理の根底に流れる理念は、「シンプルさ」と「素材への敬意」です。旬の採れたて食材が持つ本来の味わいを、最高品質のオリーブオイルと塩、そしてハーブのみで引き立てる—この考えは植物の恵みをまるごと味わうヴィーガン思想と、実は深く響き合っているのではないでしょうか。

    春には野生のアスパラガス、夏には完熟したトマトやズッキーニ、ナス。秋にはポルチーニをはじめとした多種多様なきのこやカボチャ、そして冬にはキャベツや根菜類。イストリアの大地は一年を通じて豊かな植物を育んでいます。また、ローズマリーやセージ、タイムといったハーブが自生しており、料理に深みある香りを加えます。豆類やポレンタ(トウモロコシの粉を練ったもの)も、昔から人々の食卓に欠かせない大切な食材です。こうした素晴らしい植物性の素材こそが、イストリア料理の見逃されがちな主役なのです。

    伝統的な肉料理や魚料理に隠れがちですが、この豊かな植物の恵みを見つめ直し、ささやかな工夫と対話を重ねることで、イストリア半島ならではの新たなヴィーガン料理の世界が姿を現すでしょう。これは伝統を否定することなく、むしろその本質を深く理解し、現代的な視点で再発見する試みなのです。フムでの冒険は、まさにその可能性を探る旅と言えるでしょう。

    フムのレストランでヴィーガンメニューを探す冒険

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    世界で最も小さな町フムには、レストランの選択肢が非常に限られています。これは町の規模を考えれば当然のことですが、今回の旅の魅力でもあります。少ない選択肢の中で、いかにヴィーガンというテーマを探求していくかが鍵となります。その中心にあるのが、フムでただ一つの存在感を放つレストラン「Humska Konoba」です。

    「Konoba(コノバ)」はクロアチア語で「居酒屋」や「食堂」を意味します。Humska Konobaは、まさにフムの心臓部といえる場所で、訪れる観光客の多くがここで食事やお茶の時間を楽しんでいます。石造りの堂々とした建物は町の風景に溶け込み、一歩足を踏み入れれば、木製の梁が温もりを感じさせる空間が広がっています。窓際の席や、天気の良い日にはテラス席からは、イストリアの美しい丘陵地帯のパノラマビューが楽しめます。

    Humska Konoba – 伝統の砦でヴィーガン料理を探して

    期待とほんの少しの緊張を胸に、私たちはHumska Konobaの扉を開けました。メニューを手に取ると、そこにはイストリア伝統料理がずらりと並んでいます。自家製ソーセージや豚ロースのグリル、トリュフソースのニョッキ、そしてフム名物の薬草ブランデー「ビスカ」など、どれも食欲を刺激します。しかし残念ながら、ヴィーガン向けの料理はメニューには見当たらず、サイドのサラダや焼き野菜くらいが手がかりです。

    多くの人はここで諦めてしまうかもしれませんが、私たちの旅はここからが本番です。メニューに載っていないからといって可能性がないわけではありません。重要なのはコミュニケーションです。私たちは笑顔で注文に来たスタッフに丁寧に尋ねました。「私たちはヴィーガンですが、植物性の食材だけで作れる料理はありますか?」と。

    最初はやや戸惑った様子を見せたスタッフ。しかし私たちが「イストリアの素晴らしい野菜やキノコ、オリーブオイルが大好きなんです」と付け加えると彼の表情が和らぎ、厨房のシェフに相談しに行ってくれました。この待つ時間こそ、旅の醍醐味のひとつ。既成のメニューから選ぶのではなく、その場の人との対話から新たな発見が生まれるかもしれない期待感。それはまるで宝探しのようなワクワク感でした。

    シェフとのやりとり:メニューにない一皿をオーダー

    しばらくしてスタッフが戻ってきて言いました。「シェフが、今日は新鮮なポルチーニ茸と旬の野菜があるので、それを使って何かご用意しましょうか」との嬉しい提案を受けました。私たちはその申し出に感謝し、ぜひお願いしたいと伝えました。

    具体的には以下のようなリクエストをしました。

    • メインディッシュ: 新鮮なポルチーニ茸とズッキーニ、パプリカ、玉ねぎなどの季節野菜をたっぷりのオリーブオイル、ニンニク、ローズマリーでソテーしたもの。付け合わせには動物性のブイヨンやバターを使わない、シンプルなポレンタを希望しました。
    • パスタ: イストリア伝統の手打ちパスタ「フゥジ」を卵なしで作ってもらえるか尋ね、難しい場合は乾燥パスタで代替し、トマトとバジル、新鮮な野菜を使ったソースをお願いしました。

    こうした具体的な提案はシェフにとってもイメージしやすく、コミュニケーションを円滑にします。「ヴィーガン料理を」と漠然と伝えるより、「この土地の良質な素材を使い、シンプルに調理してください」と伝えることが、お店側の対応を助けるのです。

    やがて運ばれてきたのは、メニューには存在しない特別な一皿でした。大皿に盛られたキノコと野菜のソテーからは、イストリアの太陽と大地の恵みが凝縮された力強い風味が漂います。最高級のオリーブオイルが素材の味を見事に引き立て、添えられたポレンタの素朴な甘みが味わいをさらに深めていました。

    この一皿は単なる「食事」ではなく、私たちのささやかな希望に真摯に応えてくれたシェフの心意気、イストリアの自然の恵み、そしてコミュニケーションというスパイスが加わった、忘れがたい「体験」でした。伝統の砦ともいえる場所で、新しい可能性の扉をそっと開けた喜びに、私たちの心は満たされました。

    スポット名Humska Konoba(フムスカ・コノバ)
    住所Hum 1, 52425, Hum, Croatia
    営業時間10:00~22:00頃(季節により変動あり)
    定休日なし(冬季は不定休の場合あり)
    特徴フム唯一の本格レストラン。伝統的なイストリア料理と丘陵地帯の絶景が魅力。ヴィーガンメニューは常設されていないものの、事前相談や当日のリクエストで柔軟に対応してもらえる可能性あり。
    注意事項観光シーズンは混雑するため、時間に余裕をもって訪れるか予約推奨。ヴィーガン対応希望時は遠慮せずスタッフに相談することが重要。

    フムの恵みで創る、自分だけのヴィーガン体験

    レストランでの会話を楽しみながら、特別な一皿に出会う体験は素晴らしいものですが、旅のスタイルによっては、もっと自由に自分たちで食を創り上げる喜びも味わえます。特にヴィーガンの旅では、キッチン付きの宿泊施設を選ぶことで、その土地の食材にじっくり向き合い、豊かな時間を過ごすことが可能です。

    フムの町にはスーパーマーケットのような大きな店舗はありませんが、それもまたこの旅の醍醐味の一つ。少し足を伸ばして、自分たちの手でイストリアの恵みを探しに出向くプロセス自体が、忘れがたい思い出となるのです。

    地元の食材店や市場を訪れて

    フムから最も近い町、ブゼットには、地域の食材を扱う小さな商店が点在し、曜日によっては青空市場(マーケット)が開かれます。私たちは車で移動し、このブゼットの市場を訪れてみることにしました。

    市場に足を踏み入れると、色と香りにあふれた生命力あふれる空間が広がっていました。山のように積まれた真っ赤なトマト、光沢のある紫色のナス、鮮やかな緑色のズッキーニ。籠に盛られた多種多様なきのこからは、森の土の香りが漂います。地元のおばあさんが手作りしたと思われるオリーブオイルの瓶が並び、束ねられたハーブが爽やかな香気を放っていました。作り手の顔が見える食材を直接手に取り選ぶ時間は、とてもスピリチュアルであり、大地とのつながりを深く実感させてくれます。

    私たちはその日の中で最も美味しそうに見えた完熟トマト、にんにく、新鮮なバジルの束、それにずっしりと重い地元のパンをいくつか買い求めました。この食材さえあれば、シンプルながらも極上のヴィーガンディナーが必ず作れるはずです。

    アパートメントで味わうシンプルなヴィーガン料理

    フム近郊で借りた、石造りの壁が美しいアパートメントのキッチン。窓の外にはオリーブの木々が広がり、柔らかな風がそよぎます。そんな理想的な環境で、市場で手に入れた新鮮な食材を使い、料理を始める時間はまさに至福のひとときです。

    私たちが作ったのは、きわめてシンプルながらも贅沢なイストリア風のヴィーガン料理でした。

    • イストリア風ブルスケッタ

    地元のパンを厚切りにして軽くトーストし、半分に切ったにんにくの断面でパンに香りを移します。次に角切りの完熟トマトと手でちぎったバジルをたっぷりのせ、市場で手に入れたフレッシュなオリーブオイルを惜しみなく回しかけ、塩を一つまみふりかけるだけ。トマトの甘みと酸味、バジルの爽やかな香り、そしてパンの香ばしさが力強いオリーブオイルによって一体となり、まさにイストリアの太陽の味を感じさせます。

    • 季節の野菜ロースト、ローズマリー風味

    ズッキーニ、パプリカ、玉ねぎを大きめにカットし、オリーブオイル、塩、胡椒、そして庭で摘んだローズマリーの枝と合わせてよく混ぜます。これをオーブンでじっくり焼き、野菜が柔らかくなり、表面に軽く焦げ目がつくまで火を通します。加熱によって引き出される野菜本来の甘みと、ローズマリーの芳香が食欲を刺激し、特別なソースを必要としない、素材の持ち味が際立つ一皿です。

    • きのこのシンプルなガーリックソテー

    市場で見つけた新鮮なきのこをスライスし、にんにくと一緒にオリーブオイルでさっと炒めます。味付けは塩と胡椒のみ。きのこの独特な食感と豊かな風味をそのまま楽しめる一品で、パンにのせても、ワインの肴としても絶品です。

    レストランで味わう洗練された料理も素敵ですが、自らの手でその土地の食材に触れ、シンプルな調理法で素材の恵みをいただく体験は、旅をより深く、個人的なものにします。それは単なる食事を超え、その土地の自然と交わり、感謝を捧げる、瞑想にも似た貴重な時間となるのです。

    フムで心と体を満たすスピリチュアルな時間

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    フムでヴィーガン料理を求める旅は、単なるグルメ体験に留まらず、この町が持つ静謐で神秘的なエネルギーと共鳴しながら、自分の心身と魂を見つめ直すスピリチュアルな旅路でもあります。植物性の食事を選ぶライフスタイルは、内なる声に耳を傾け、自然と調和して生きたいという願いの表れです。フムは、そうした内省の時間を過ごすのに、世界でも最適な場所のひとつと言えるでしょう。

    グラゴル小路を歩いて、内なる声に触れる

    フムを訪れた際にぜひ体験してほしいのが、ロチュからフムへと続く約7キロの「グラゴル小路」を歩くことです。急な坂のない穏やかなルートは、緑豊かな丘陵地を抜ける散策道で、沿道には古代スラブ文字「グラゴル文字」を伝える石のモニュメントが点在しています。それぞれに立ち止まり、その意味を思い巡らせながら歩を進めることで、歴史と文化の深みを感じられます。

    木々の葉擦れの音や鳥のさえずり、自分の足音だけが響く静寂の中を歩き続けると、日常の雑念がまるで消え去り、心の中が澄み渡っていくのを実感します。古代文字が刻まれたモニュメントは、言葉を越えたメッセージを私たちに伝えかけてくるようです。それは歴史の連続性や文化の継承、人間の営みの尊さを表しています。この道を歩くことは、過去・現在・未来をつなぐ壮大な物語の一部となり、自分自身のルーツや存在意義について深く思いを巡らせる機会となるでしょう。

    ビスカを味わい、薬草の力を感じる

    フムの名物として欠かせないのが「ビスカ(Biska)」と呼ばれる薬草ブランデーです。ヤドリギや数種のハーブを、ブドウの搾りかすから作られる蒸留酒「ラキヤ」に漬け込んだ、この土地ならではのリキュール。2000年以上前、古代ケルトのドルイド僧によって伝えられた秘伝のレシピとも言われています。

    ヴィーガン生活は必ずしも禁酒を意味しません。むしろ、その土地の植物の恵みを享受する観点から、ビスカを味わうことは非常に興味深い体験です。フムにはビスカを専門に扱う蒸留所兼ショップがあり、そちらで試飲も可能です。琥珀色の液体を口に含むと、複雑かつほのかに苦味のあるハーブの香りが広がります。アルコール度数は高いものの、その奥には植物由来の癒しのエネルギーを感じ取れるでしょう。

    ヤドリギは古くから多くの文化で神聖視されてきた植物です。その不思議な力を古代のレシピに則って味わうという行為は、ただ酒を飲む以上の意味を持ちます。この地域に根付く自然信仰や植物療法の片鱗に触れられる、まさにスピリチュアルな経験と言えるでしょう。フムの静かな夜にこの神秘的な一杯をじっくり味わいながら旅の思索を深めるのも、また格別な楽しみです。

    スポット名Destilerija Aura(アウラ蒸留所)
    住所Hum 12, 52425, Hum, Croatia
    営業時間10:00~18:00頃(季節により変動あり)
    定休日なし
    特徴フム名物のビスカをはじめ、多彩なラキヤ(蒸留酒)やジャムなどを製造・販売。店内で試飲が可能で、お土産探しにも最適。スタッフがビスカの歴史や製造方法について親切に説明してくれる。
    注意事項ビスカはアルコール度数が約40度と非常に高いため、試飲の際は量を控えめに。特に運転をされる方は飲まないよう十分ご注意ください。

    旅のヒント:フムでヴィーガン旅を成功させるために

    フムやその周辺でヴィーガンをテーマにした旅を心ゆくまで楽しむには、少しの準備と心構えが必要です。ここでは、私たちの体験をもとにした実用的なアドバイスをいくつかお伝えします。

    事前準備とコミュニケーション

    • レストランへの事前問い合わせ: 特定の飲食店で食事を予定している場合は、可能であれば事前にメールや電話でヴィーガン対応が可能かどうか確認しておくと当日がスムーズです。その際、アレルギーの有無も伝えておくと、より安心です。
    • 便利なフレーズを覚える: 現地でのやり取りをスムーズにするために、いくつか基本的なクロアチア語のフレーズを覚えておくと非常に役立ちます。
    • 「Ja sam vegan.(ヤ・サム・ヴェガン)」- 私はヴィーガンです。
    • 「Bez mesa, ribe, jaja, mliječnih proizvoda i meda, molim.(ベズ・メサ、リベ、ヤヤ、ムリイェチュニフ・プロイズヴォダ・イ・メダ、モリム)」- 肉、魚、卵、乳製品、蜂蜜は抜きでお願いします。
    • 「Samo povrće, molim.(サモ・ポヴルチェ、モリム)」- 野菜のみでお願いします。

    たとえ不慣れでも、現地の言葉で伝えようとする姿勢は相手に好印象を与え、より親切な対応を引き出すきっかけになります。

    持っていくと便利なもの

    • 携帯用植物性ミルク: カフェでコーヒーを注文する際、豆乳やオーツミルクなどの植物性ミルクが提供されないケースがよくあります。小さめのパックを携帯すると、旅先のカフェタイムが一層快適になります。
    • ナッツ、ドライフルーツ、エナジーバー: 小腹が空いたときや、食事場所を見つけにくいときの栄養補給に最適です。特にハイキングなどのアクティビティ時に役立ちます。
    • お気に入りの調味料: キッチン付きの宿泊施設を利用する場合は、普段使い慣れている塩やスパイス、醤油などを少量携帯すると、自炊の味が一層引き立ちます。現地のオリーブオイルと組み合わせれば、新しい味の発見につながるかもしれません。

    心構え

    • 完璧を追い求めすぎない: ヴィーガンの選択肢が限られる地域では、100%理想的な食事に出会うのが難しいこともあります。そうした時は、あまり厳格になりすぎず、「できる範囲で楽しむ」柔軟な姿勢を持つことが大切です。例えば、パンに微量の乳製品が含まれているかもしれないと気にするより、その場で手に入る食事に感謝して楽しむ心を優先することも、旅を豊かにするコツです。
    • 制約を創造力の源に変える: 「これが食べられない」「あれもない」と制限にとらわれるのではなく、「今ある食材で何を作れるだろう?」と前向きに考えることがポイントです。食の制限は、発想を切り替えれば旅をよりクリエイティブで思い出深いものにする最高のスパイスにもなります。メニューにない料理をお願いしたり、地元の市場の食材で即興料理に挑戦したりするプロセスを、まるでゲームのように楽しんでみてください。

    フムが教えてくれる、豊かさの本質

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    世界で最も小さな町、フムを舞台にしたヴィーガンの旅は、初めに想像していた以上に深い洞察と学びに満ちた体験となりました。この旅を経て、私たちが見つけたのは、豊かさの本質に対する一つの答えでした。

    現代の社会では豊かさがしばしば「多様な選択肢の存在」と同義に捉えられています。数十種類のメニューが揃うレストランや、世界中の食材が手に入るスーパーマーケット。私たちは、いつでも好きなものを自由に選べる環境に慣れ親しんでいます。しかし、フムにはそうした意味での豊かさは存在しません。

    レストランの数は非常に少なく、メニューのバリエーションも限られています。お店も少なく、便利なインフラ設備も整っていません。しかし、この町には、都会で失われてしまったかもしれない別種の豊かさが満ちあふれていました。それは、限られた環境の中で、今あるものに感謝を深め、工夫を凝らし、人との対話を通じて生み出される豊かさです。

    メニューに無い料理でも、シェフに相談すれば心を込めた特別な一皿が用意されます。市場に並ぶ不揃いの野菜には、大地の力強いエネルギーが宿っています。古くから伝わる薬草酒には、自然への畏敬の気持ちが込められているのです。ひとつひとつに丁寧に向き合うことで、その背後にある物語や価値が見えてきます。フムの体験は、私たちにそのことを教えてくれました。

    イストリア半島のまばゆい太陽、豊かな土壌、そして訪れる人を温かく迎える地元の人々の心。この旅は、私たちの五感を満たし、食事が単なる栄養補給ではなく、自然や文化、さらには人との繋がりを祝う神聖な儀式であることを改めて思い起こさせてくれました。世界一小さな町フムは、本当の豊かさは身近なところにあり、創造性と感謝の心に宿るという重要な気づきを私たちに与えてくれたのです。この静寂で美しい町での体験が、あなたの次の旅や日々の暮らしをより豊かで深みのあるものに導くヒントとなれば幸いです。

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    この記事を書いた人

    大学時代から廃墟の魅力に取り憑かれ、世界中の朽ちた建築を記録しています。ただ美しいだけでなく、そこに漂う物語や歴史、時には心霊体験も交えて、ディープな世界にご案内します。

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