マリオットやヒルトンといった世界的な大手ホテルチェーンが、ミレニアル世代やZ世代の心をつかむための新たな一手として「ソフトブランド」戦略を加速させています。画一的なサービスから、地域の個性を活かしたユニークな体験へ。旅行者の価値観が大きく変わる中、ホテル選びの基準もまた、新たな時代を迎えようとしています。
「ソフトブランド」とは何か?
「ソフトブランド」とは、大手ホテルチェーンの傘下にありながら、チェーン名を前面に出さず、独立したホテルのような独自の個性やデザインを持つホテルのコレクションを指します。
従来の「ハードブランド」(例えば「マリオット・ホテル」や「ヒルトン・ガーデン・イン」など)が、世界中どこでも一貫した品質やデザイン、サービスを提供することで安心感を与えるのに対し、ソフトブランドは一つ一つのホテルが異なるコンセプトを持ち、その土地の文化や歴史を色濃く反映しているのが最大の特徴です。
旅行者は、大手チェーンが提供する高品質な予約システムや会員プログラムといった信頼性を享受しつつ、まるで隠れ家のようなブティックホテルに滞在するような特別な体験を得ることができます。
なぜ今、ソフトブランドが注目されるのか?
この戦略が加速する背景には、特に若い世代の旅行スタイルの変化が大きく影響しています。
体験価値と「インスタ映え」を求める若年層
ミレニアル世代やZ世代は、モノの所有よりも「コト消費」、つまりユニークな体験に価値を見出す傾向が強いと言われています。彼らにとってホテルは単に寝る場所ではなく、旅の体験を構成する重要な要素です。
特にInstagramなどのSNS上で「映える」、個性的でストーリー性のあるホテルは人気が高く、OTA(Online Travel Agent)サイト上では、施設の写真やデザインが予約を決定づける大きな要因となっています。画一的なチェーンホテルよりも、その場所でしか味わえない雰囲気を持つホテルが選ばれやすくなっているのです。
大手チェーンの新たな成長戦略
大手ホテルチェーンにとって、ソフトブランドは新たな顧客層を開拓し、高い収益性を確保するための重要な戦略です。
すでに世界中に展開するハードブランドの成長が飽和しつつある中で、既存の独立系ホテルをリブランドして傘下に収めることができるソフトブランドは、効率的にポートフォリオを拡大する手段となります。ある調査では、ソフトブランドに属するホテルの客室数が数年間で倍増したというデータもあり、その急成長ぶりがうかがえます。
また、独自のデザインや体験を提供することで、宿泊料金を比較的高く設定しやすく、収益性の向上にも繋がっています。
世界に広がるソフトブランドの具体例
すでに多くの大手チェーンが、個性的なソフトブランドを展開しています。
- マリオット・インターナショナル
- オートグラフ コレクション・ホテル: 「Exactly Like Nothing Else(他に類を見ない)」をテーマに、世界中の独創的で質の高い独立系ホテルを集めたコレクション。
- トリビュート・ポートフォリオ: 個性豊かなデザインや地域コミュニティとの繋がりを重視する独立系ホテルが加盟。
- ヒルトン
- キュリオ・コレクション by ヒルトン: 好奇心を意味する「Curio」の名の通り、その土地ならではの発見や本物の体験を求める旅行者のための個性的なホテルの集まり。
- タペストリー・コレクション by ヒルトン: ユニークで親しみやすいスタイルが特徴のアップスケールホテルブランド。
- ハイアット ホテルズ アンド リゾーツ
- アンバウンド コレクション by Hyatt: 物語性のある歴史的な建築物や現代的なデザインのホテルなど、唯一無二の体験を提供するホテルで構成。
これからの旅行とホテルの未来
ソフトブランド戦略の拡大は、私たちの旅行にどのような影響を与えるのでしょうか。
ホテル選びの多様化が進む
これからのホテル選びは、「大手チェーンの安心感」と「独立系ホテルの個性」の”いいとこ取り”ができるソフトブランドが、新たなスタンダードになる可能性があります。旅行者はこれまで以上に多様な選択肢の中から、自分の価値観や旅の目的に合った宿を見つけやすくなるでしょう。
「デスティネーション・ホテル」の増加
宿泊施設自体が旅の目的となる「デスティネーション・ホテル」がさらに増えていくと予測されます。ホテルは単に快適な滞在を提供するだけでなく、地域の文化やアートの発信拠点としての役割を担い、宿泊者に忘れられない物語を提供することが求められるようになります。
私たちの旅の体験をより豊かでパーソナルなものに変えつつある、ソフトブランドの動向。次の旅行計画では、こうした個性的なホテルの扉を叩いてみてはいかがでしょうか。そこには、まだ見ぬ新しい発見が待っているかもしれません。

