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    天空の龍が目覚める刻、香港・鳳凰山で雲海のご来光を拝む旅

    アジアを代表する国際都市、香港。高層ビルがひしめく摩天楼、ネオンきらめく夜景、そして世界中の美食が集まるグルメの都。多くの人が抱く香港のイメージは、おそらくこのようなエネルギッシュで喧騒に満ちたものでしょう。しかし、その華やかな顔のすぐそばに、心を洗い流してくれるような荘厳な大自然が広がっていることをご存知でしょうか。日常の雑踏からほんの少し足を延ばすだけで、私たちは天空の絶景と出会うことができるのです。

    今回、私、万里がご案内するのは、香港第二の高峰、ランタオ島にそびえる鳳凰山(フォンウォンシャン)、英語名でランタオ・ピークと呼ばれる聖域です。標高934メートル。その頂で迎えるご来光は、単なる美しい夜明けではありません。眼下に広がる雲の海から太陽が昇る光景は、まるで天と地が創造される瞬間に立ち会うかのような、神々しい体験をもたらしてくれます。

    深夜、まだ街が深い眠りについている時間にヘッドライトの灯りを頼りに一歩一歩、闇の中の道を進む。聞こえるのは自分の息遣いと風の音、そして時折響く夜の生き物たちの声だけ。自己と向き合い、無心で頂を目指す時間は、一種の瞑想にも似ています。そして、長い道のりの果てに待っているのは、言葉を失うほどの感動。漆黒の空が次第に藍色に、そして燃えるような茜色に染まり、黄金の光が世界を照らし出す瞬間。それは、私たちの魂に深く刻み込まれる、忘れられない記憶となるはずです。

    この記事では、40代からの大人の旅として、鳳凰山でのご来光ハイキングを心ゆくまで楽しむための方法を、私の経験を交えながら詳しくご紹介します。最適なルート選びから、安全を確保するための準備、そして山頂で最高の瞬間を迎えるための秘訣まで。この天空の旅が、あなたの人生に新たな光を灯すきっかけとなることを願って。さあ、一緒に香港の知られざる聖域へと、魂の旅に出かけましょう。

    目次

    なぜ鳳凰山なのか?天空の聖域が持つ特別な魅力

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    香港には多数のハイキングコースがありますが、なぜ多くの人々がご来光を目指して鳳凰山に惹かれるのでしょうか。それは、この山が持つ独特な霊性と、他では味わえない圧巻のスケールを誇る景観に理由があります。

    香港第二の高峰としての存在感

    まず注目すべきは、標高934メートルという高さです。香港で二番目に高い山であり、山頂からは360度の遮るもののない絶景が広がります。東には香港島の高層ビル群、南には壮大な南シナ海、西には遠くマカオの灯り、そして北には深圳の街並みまで見渡すことが可能です。ご来光の瞬間、眼下の風景が朝日に染まっていく様は、まるで自分が世界の中心に立っているかのような錯覚を覚えます。特に湿度の高い季節の変わり目には、足元に広がる雄大な雲海が現れやすくなります。雲の絨毯から突き出た山頂はまるで水墨画の世界のようで、神秘的かつ幻想的な美しさは鳳凰山ならではの特別なご褒美と言えるでしょう。

    「鳳凰」の名に込められた霊性

    鳳凰山の名前は、その独特な山の形から付けられました。主峰の「鳳」と向かい合うやや低い峰「凰」が、伝説の霊鳥・鳳凰が翼を広げている姿に似ていることが由来だと言われています。鳳凰は古くから平和や幸福の到来を告げる瑞鳥として尊ばれてきました。この名を冠する山は、訪れる人々に安らぎと再生のエネルギーを与えるパワースポットとして、地元の人々から長らく親しまれてきたのです。

    深夜に登る山道は、静寂の中で自分自身と向き合う時間でもあります。一歩一歩確実に踏みしめるたびに、日常の悩みやストレスが浄化されるのを実感できるでしょう。そして山頂で迎えるご来光は、新たな自分へと生まれ変わるかのような神聖な儀式のようです。暗闇を越えた先に待つこの圧倒的な光は、心の奥底に眠っていた希望や活力を蘇らせてくれます。この霊的な体験こそ、多くの人々を鳳凰山に導く最大の魅力なのです。

    仏教の聖地との結びつき

    鳳凰山のふもとには、香港最大の仏教寺院である寶蓮寺と、その象徴である天壇大仏(ビッグブッダ)が鎮座しています。この巨大な仏像は山頂からも眺められ、ご来光の光を浴びて神々しく輝く姿は訪れる者の心を打ちます。聖なる山と仏教の聖地が一体となったこの地域は、島全体が一つの巨大な聖域のような空気に包まれており、単なるハイキングを超えた巡礼の旅を感じさせてくれます。下山後に寶蓮寺を訪れて静かなひとときを過ごせば、山での感動がさらに深く心に刻まれるでしょう。鳳凰山への登山は、単なる自然体験にとどまらず、香港の文化や信仰の深さに触れる精神的な旅でもあるのです。

    ご来光を目指す旅の始まり – 準備と心構え

    鳳凰山のご来光ハイキングは決して難易度の高い挑戦ではありませんが、成功のカギは入念な準備にあります。特に夜明け前の暗闇を歩くことになるため、安全面には細心の注意が必要です。ここでは、最高の体験をするための具体的な準備と心構えについてご紹介します。

    綿密な計画が成功を導く – 最適なシーズンと天気の見方

    ご来光や雲海といった絶景に出会うためには、適切な時期と天候を見極めることが非常に重要です。

    最適なシーズンは秋から冬にかけて

    香港の気候特性を踏まえると、鳳凰山ハイキングのベストシーズンは10月から2月の秋から冬の間となります。この時期は夏のモンスーンが収まり、大陸から乾いた空気が入りやすく、空気が澄み渡って遠くまで見渡せる日が多いです。気温も涼しく、湿度が低いため長時間の歩行でも体力を温存しやすいのが特徴です。特に雲海を狙うなら、この季節が最もチャンスが高いとされています。昼夜の気温差が大きく、放射冷却が起こりやすい条件が整うためです。

    一方で、春から夏にかけて(3月~9月)は気温と湿度が高く、熱中症のリスクも高まります。さらに霧や雨、台風の影響により視界が悪くなる日が多いため注意が必要です。ただし、晴天に恵まれれば夏でもご来光を楽しむことは可能ですが、快適さとクリアな景色を重視するなら秋から冬の計画がおすすめです。

    天気予報の入念なチェック

    登山計画には天気予報の確認が欠かせません。香港天文台(Hong Kong Observatory)の公式サイトやアプリは信頼性が高く、山頂の気温や風速、視界状況まで詳細に確認できます。出発前夜と当日の朝に必ずチェックすることが大切です。

    雲海が現れやすい条件としては、「前日に雨が降っている」「湿度が高い」「風が弱い」「晴れている」ことなどが挙げられます。これらの条件が揃った日は期待が高まりますが、自然現象なので確実な予測はできません。雲海が見られなくても、澄んだ空に昇る朝日の美しさは格別です。あまり期待し過ぎず、「もし見られたらラッキー」という気持ちで臨むのが良いでしょう。

    夜間の行動に必須の装備リスト – 安全と快適さを両立

    深夜のハイキングでは装備の選択が安全に直結します。荷物は必要最低限に抑えつつ、必要なものはもれなく持っていきましょう。特に防寒対策は欠かせません。

    服装の基本

    服装の基本は「レイヤリング(重ね着)」です。歩いている最中は汗をかきますが、山頂での待機中は急激に体温が下がります。脱ぎ着がしやすい服装で体温調整を心がけましょう。

    • ベースレイヤー: 汗をすばやく吸収し速乾性に優れた素材(ポリエステルやメリノウールなど)の下着。綿素材は乾きにくく体を冷やすため避けるのが賢明です。
    • ミドルレイヤー: 保温層としてフリースや軽量ダウンジャケットが適しています。
    • アウターレイヤー: 風や雨をしのぐ防風防水ジャケット(ゴアテックスなど)が必要です。山頂は風が強く、体感温度が大きく下がります。
    • パンツ: 動きやすいトレッキングパンツがおすすめ。ジーンズは動きにくく、一度濡れると乾きづらいため不向きです。
    • 靴: 滑りづらく足首をしっかりサポートするハイカットのトレッキングシューズや登山靴が最適です。履き慣れた靴を選ぶことが重要です。
    • 靴下: クッション性があり汗の吸湿発散に優れたトレッキング用厚手靴下が望ましいです。

    必携アイテム

    • ヘッドライト: 両手を自由に使えるヘッドライトは必須。予備電池も忘れずに携行してください。予備ライトがもう一つあるとなお安心です。
    • ザック(バックパック): 20〜30リットル程度で体にフィットするものが使いやすいです。ザックカバーがあれば急な雨にも備えられます。
    • 水分補給: 最低1.5リットルは持参しましょう。スポーツドリンクなど塩分・ミネラル補給できるものが適しています。
    • 行動食・非常食: チョコレートやナッツ、エナジーバーなど、手軽にエネルギー補給できるものを用意すると疲労回復に役立ちます。
    • 地図とコンパス(またはGPSアプリ): 登山道は整備されていますが、暗い中での迷いを防ぐため、スマホのGPSだけでなく紙の地図とコンパスも持つと安心です。
    • モバイルバッテリー: スマホは連絡やGPS、撮影で使用しますが、低温でバッテリー減りが早いため、フル充電のモバイルバッテリーは必携です。
    • タオル: 汗拭きや汚れ落としなど多用途に使えます。
    • 帽子・手袋: 山頂での待機時は末端から冷えるため、冬場はニット帽や防寒手袋が不可欠です。
    • ゴミ袋: 自分の出したゴミは必ず持ち帰るマナーを守りましょう。

    持っていると便利なもの

    • トレッキングポール: 登りの推進力をサポートし、下りの膝への負担軽減にも役立ちます。
    • 保温ボトルに入れた温かい飲み物: 冷えた体を芯から温めてくれます。
    • カメラ: 感動の瞬間を撮影するために。三脚があるとご来光の美しい写真が撮りやすくなります。
    • 救急セット: 絆創膏や消毒液、痛み止め、常備薬など最低限の応急手当セットがあると安心です。
    • サングラス: ご来光後の強い日差しから目を守ります。

    体力と精神力の準備 – 深夜の挑戦に対応するために

    鳳凰山の登山道は急な階段が多く、標高差もあるため、中程度の登山経験が必要なコースとされています。普段運動習慣が無い方がいきなり挑むと負担が大きいため、事前に近所の山を歩いたり、階段昇降を繰り返して脚力と心肺機能を鍛えておくことをおすすめします。

    そして何より重要なのは十分な睡眠です。深夜出発となるため、前日はしっかり休息をとり、可能であれば昼寝を取り入れて体力を温存しましょう。寝不足のままでの登山は集中力が落ち、思わぬ事故を招く恐れがあります。心身ともに万全の状態で、大切な夜明けの瞬間を迎える準備をしておきましょう。

    いざ、天空へ – 鳳凰山ご来光ハイキングルート詳解

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    鳳凰山の日の出を拝むためのルートは、主に二つ存在します。どちらもランタオ・トレイルの一部を含む本格的な登山道であり、それぞれの特徴を理解したうえで、ご自身の体力や経験、さらには交通手段に応じて最適なルートを選びましょう。

    王道ルート「昂坪(ゴンピン)発」- 聖地から始まる祈りの道

    最も人気があり、初心者にも比較的おすすめしやすいのが、天壇大仏の麓、昂坪(ゴンピン)からスタートするルートです。寶蓮寺という聖地を起点とするため、巡礼のような気持ちを抱きながら歩き始められます。

    アクセス方法

    登山口のある昂坪へは、MTR東涌(トンチョン)駅前のバスターミナルから23番のバスに乗車し、終点「昂坪」で下車します。所要時間は約50分です。ただし、ご来光を目指す場合はバスの運行時間外である深夜に移動する必要があるため、主な交通手段はタクシーとなります。東涌駅から昂坪までは深夜料金込みで約200香港ドルが目安です。複数人で乗り合わせると費用を抑えられます。利用するのは青色のランタオ島専用タクシー(Lantau Taxi)です。

    ルートの特徴

    昂坪のバス停から登山口までは徒歩で約20分です。昂坪高原キャンプサイトを通り過ぎ、ランタオ・トレイルの標識に従って進むと、「鳳凰観日」と刻まれた大きな門が見えてきます。ここが、天へと続く道の正式なスタート地点となります。

    この先は、延々と石段を登るセクションが続きます。暗闇の中で黙々と階段を上るのは、体力に加え精神力も試される時間となりますが、道は比較的明確で迷う心配はほとんどありません。途中、視界が開ける場所が何度かあり、振り返ると東涌や香港国際空港の夜景が美しく輝いています。この光景が、疲れた身体を励ます何よりの支えとなるでしょう。

    山頂に近づくにつれて道は岩がちな急斜面に変わり、風を遮るものがなく強風に晒されることも多いため、足元に注意して慎重に進みましょう。昂坪から山頂までは、通常2時間から2時間半程度の行程です。

    スポット情報:昂坪発ルート
    ルート名昂坪 → 鳳凰山山頂 (ランタオ・トレイル セクション3の一部)
    出発点昂坪バスターミナル周辺、鳳凰観日ゲート
    距離約2.5km (片道)
    標高差約450m (昂坪: 約480m → 山頂: 934m)
    所要時間登り:2時間〜2時間30分 / 下り:1時間30分〜2時間
    難易度中級。急な石段が続くため、相応の脚力が必要。
    特徴最も一般的なルート。アクセス良好で道も分かりやすい。天壇大仏の麓からスタートする精神的な道のり。

    健脚向けルート「伯公坳(パッコンアウ)発」- より長く、自然との対話を楽しむ道

    よりチャレンジングな登山を希望する健脚者には、伯公坳(パッコンアウ)からのルートがおすすめです。昂坪ルートより距離も長く高低差も大きいため、高い体力と持久力が必要ですが、そのぶん達成感は非常に大きいです。

    アクセス方法

    伯公坳までは、同じくMTR東涌駅前のバスターミナルから、バス3M、11、23番のいずれかに乗車し、「伯公坳」で下車します。所要時間は約20分です。深夜の移動はタクシーとなりますが、昂坪より距離が短いため料金はやや安くなります。

    ルートの特徴

    伯公坳のバス停はランタオ・トレイルのセクション2と3の分岐点にあり、鳳凰山へはセクション3の標識に従って登り始めます。このルートは序盤から急登が続き、息を切らす場面が多いです。昂坪ルートに比べて道が若干野性味を帯びており、自然の息吹をより強く感じながら歩けます。

    途中には標高810mの小ピーク「ランタン・サウス・ピーク」があり、ここを越えた後一度下ってから鳳凰山の山頂に向けて再び登るため、体力的にはかなり厳しいコースです。しかしその分、景色の変化に富み、歩き応えがあります。背中側にはランタオ島南部の美しい海岸線が広がり、暗闇の中で島のシルエットが幻想的に浮かび上がります。アップダウンの繰り返しは、まさに自分自身と向き合う時間と言えるでしょう。一歩一歩大地を踏みしめることで、自然との一体感を深く味わえます。

    伯公坳から山頂までは通常、2時間30分から3時間程度かかります。昂坪ルートより時間を要するため、日の出時間を計算し余裕をもってスケジュールを立てることが大切です。

    スポット情報:伯公坳発ルート
    ルート名伯公坳 → 鳳凰山山頂 (ランタオ・トレイル セクション3)
    出発点伯公坳バス停
    距離約2.5km (片道)
    標高差約600m (伯公坳: 約330m → 山頂: 934m)
    所要時間登り:2時間30分〜3時間 / 下り:2時間〜2時間30分
    難易度中級から上級。距離は昂坪ルートとほぼ同じだが、高低差が大きく急峻なため高い体力が必要。
    特徴健脚向けの本格派ルート。より野趣あふれる自然を満喫でき、登山の醍醐味を味わえる。ランタオ・トレイルの魅力を存分に堪能できる。

    光が生まれる瞬間 – 山頂で迎える神秘の夜明け

    長い暗闇の道を乗り越え、ついに鳳凰山の頂上へたどり着きました。ここからが旅の最高潮です。空を舞台に繰り広げられる光と雲のドラマを心ゆくまで堪能しましょう。

    山頂に着いて静かに待つ時間

    標高934メートルの山頂は予想以上に広く、岩がゴツゴツとしています。ご来光を待つための避難小屋のような建物もありますが、風が強い日には寒さをしのぐのが難しいかもしれません。日の出時刻の30分から1時間前には到着しておくのが望ましいでしょう。東の空がよく見え、風を避けられる岩陰など、自分だけの特等席を探してみてください。

    山頂に着くと、おそらくすでに何人かの登山者が静かに待ち受けているはずです。国籍や年齢はさまざまですが、同じ目的で集まった人々の間には言葉を交わさなくても不思議な一体感が漂います。ザックから保温ボトルを取り出して温かい飲み物で冷えた体を温めながら、静かに空の変化を見守りましょう。この待ち時間は、期待と興奮が入り混じる特別な瞬間です。

    汗が冷えて急激に体温が下がるため、持参した防寒着はすべて身に着けましょう。ニット帽や手袋、ネックウォーマーもこの時に役立ちます。寒さの中で震えながら待つのはつらいもの。しっかりと準備を整えて、快適に夜明けを迎えたいものです。

    空の色が変わる瞬間 — 漆黒から黄金の輝きへ

    やがて東の水平線がわずかに白み始めます。これは天空のショーの幕開けの合図です。ここからの空の色の変化は息を呑むほどの美しさです。

    漆黒の夜空は深い藍色に染まり、地平線近くからは淡い紫色、燃えるような赤、鮮やかなオレンジへと刻々と移り変わっていきます。まるで巨大なキャンバスに神が絵の具を落としていくかのような幻想的なグラデーション。この時間帯は「マジックアワー」と呼ばれ、多くの写真家に愛される特別な瞬間です。

    運が良ければ眼下には壮大な雲海が広がっています。重なり合った白い雲の波はまるで絨毯のようで、その中からランタオ島の他の山頂が島のごとく顔をのぞかせます。その光景はまるで仙境のようで、俗世を離れた天空の楽園にいるような感覚を味わえます。

    そしてついにその時が訪れます。水平線の彼方や雲海の奥から、眩い光の点が姿を現します。太陽です。ゆっくりと、しかし確かな力強さで黄金色の姿が姿を表し始めます。その光が山頂の私たちをはじめ眼下の雲海、世界全体を照らし出す瞬間、周囲からは感嘆の声が漏れます。圧倒的な生命のエネルギーが漲り、昨日までの悩みや疲れがこの聖なる光に洗い流され、新しい力が心に満ち溢れてくるのを感じるでしょう。言葉では言い表せない、魂が震えるほどの感動がそこにあります。

    ご来光の後の楽しみ — 光に包まれた下山道

    感動のご来光を胸に刻んだ後も、楽しみは続きます。明るい光の中で明らかになる下山の道の絶景です。

    登ってきた時には暗闇で見えなかった周囲の景色が、朝日に照らされてその全貌を示します。険しい道のりを実感すると同時に、360度の大パノラマに再び心を奪われるでしょう。緑豊かなランタオ島の山々、煌めく南シナ海、遠くには香港の街並みが美しく広がります。すべてが澄んだ朝の空気の中で輝きを放っています。

    下山は登りとは使う筋肉が異なり、特に膝に負担がかかります。浮石や濡れた岩で滑らないよう、一歩ずつ慎重に進みましょう。登るときには気づかなかった高山植物や鳥のさえずりにも耳を傾けてみてください。暗闇の中を歩いたからこそ、光に満ちた世界の美しさがより一層心に染み渡ることでしょう。

    下山後の至福 – ランタオ島をさらに深く味わう

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    鳳凰山で感動的なご来光を体験した後は、ランタオ島の他の魅力にもぜひ触れてみてください。疲れた体を癒し、心をさらに満たしてくれる素敵なスポットがあなたを待っています。

    昂坪(ゴンピン)で心身をリフレッシュ

    昂坪ルートから下山すると、目の前には仏教の聖地が広がっています。ハイキングの高揚感を落ち着かせ、静かなひとときを過ごすのにぴったりの場所です。

    寶蓮寺(ポーリン寺)

    100年以上の歴史を誇る、香港を代表する重要な仏教寺院のひとつです。厳かな本堂や色彩豊かな装飾が施された建物をゆっくり散策してみましょう。山頂で感じた自然への畏敬の念が仏教の教えと響き合い、心が穏やかに満ちていくのが実感できるでしょう。また、こちらの寺院で提供される精進料理はその味わい深さで知られています。疲れた体に染み入る素朴で滋味あふれる味は、最高の朝食としてふさわしいもの。ご来光ハイキングの締めくくりにぴったりの、心と体に優しいおもてなしです。

    天壇大仏(ビッグブッダ)

    寶蓮寺の向かいに堂々と立つ、高さ34メートルの巨大な青銅製仏像です。268段の階段を登れば、仏像の足元まで近づくことができます。その圧倒的なスケールに圧倒されることでしょう。穏やかな表情でランタオ島全域を見守る大仏様を拝観すると、自然と心が落ち着いていきます。台座内部は展示室となっており、仏教の芸術にも触れられます。鳳凰山の頂上から眺めたあの仏像を、今度は下から見上げる体験は、また別の感動を与えてくれます。

    昂坪ビレッジ

    寶蓮寺とケーブルカー乗り場をつなぐテーマビレッジで、お土産店やレストラン、カフェが並びます。ハイキングで疲れた体を癒すために冷たいデザートを味わったり、お土産を選んだりする時間も楽しめます。ここからケーブルカー「昂坪360」に乗れば、東涌まで約25分の空中散歩を満喫できます。床がガラス張りの「クリスタルキャビン」では、先ほど登った鳳凰山や広がる大海原の絶景を、まるで鳥の目線で味わえます。

    大澳(タイオー)へ足をのばして – 香港の昔ながらの風景に触れる

    時間に余裕があれば、昂坪からバス21番に乗って漁村の大澳(タイオー)まで訪れることを強くおすすめします。ここは「香港のベニス」とも称される、水上家屋(棚屋)が立ち並ぶ懐かしい風情の村です。

    近代的な香港の光景とはまったく異なる、のんびりとした伝統的な暮らしが今も息づいています。細い路地を歩くと、干物や蝦醬(エビペースト)の独特の香りが漂います。名物の炭火焼きエッグワッフルや新鮮な海の幸を味わうのもおすすめです。また、小さなボートに乗って水路をめぐり、運が良ければ沖合に生息するピンクドルフィンに出会えるかもしれません。鳳凰山の壮大な自然とは異なる、人々の暮らしが織りなす温かみのある風景に心癒されることでしょう。

    梅窩(ムイオー)でゆったり過ごす – ローカルな港町の魅力

    伯公坳ルートを利用した場合や、異なる雰囲気を楽しみたい際は、バスで梅窩(ムイオー)に向かうのも一案です。ここは、セントラル(中環)からフェリーが発着するランタオ島のもう一つの玄関口で、観光地化され過ぎていないローカルな港町の魅力が感じられます。

    美しい銀礦灣(シルバーマイン・ベイ)のビーチでゆったりと過ごしたり、海辺のレストランで新鮮なシーフードを堪能したり。ハイキングの疲れを穏やかな波音とともに癒すひとときは、何物にも代えがたい贅沢です。ここからフェリーに乗って香港島のセントラルへ戻る際には、船上から香港の摩天楼を望め、山から始まった旅を海の風景で締めくくるという、ドラマチックな体験となるでしょう。

    安全に楽しむための最終確認 – トレッキングの心得

    最後に、このかけがえのない体験を安全に終えるために、いくつか重要なポイントをお伝えします。自然への尊敬の念を忘れず、責任ある行動を心がけてください。

    • 単独行動はできるだけ避ける: 深夜の登山では予期せぬトラブルも起こり得ます。できる限り友人や経験者と同行し、もし一人で登る場合は、必ず登山計画を家族や知人に伝えておきましょう。
    • ごみは必ず持ち帰る: 美しい自然環境を守るため、自分が出したゴミはすべて持ち帰るようにしましょう。「Leave No Trace(足跡を残さない)」という考え方は、すべてのハイカーに共有されるべき大切なマナーです。
    • 野生動物には適切な距離を: ランタオ島には野生の牛や犬、時にはイノシシが生息しています。彼らを刺激しないよう静かに見守り、餌をあげたり不用意に近づいたりしないよう注意しましょう。
    • 緊急時の連絡先を把握する: 万が一の事故や遭難に備え、香港の緊急通報番号「999」を覚えておきましょう。また、スマートフォンのバッテリーには余裕を持たせておくことが大切です。
    • 海外旅行保険への加入を: ハイキング中の怪我や急病には高額な医療費がかかる可能性があります。出発前に、トレッキング中の事故もカバーされる海外旅行保険に必ず加入しておきましょう。

    鳳凰山のご来光ハイキングは、単なる登山を超えた魂の旅です。暗闇を乗り越え、自分の足でたどり着いた山頂で迎える夜明けは、あなたの人生観に新たな光をもたらすことでしょう。入念な準備と自然への敬意を胸にぜひ挑戦してみてください。香港があなたに見せる、もう一つの魅力的な顔がそこに待っています。

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    この記事を書いた人

    子供の頃から鉄道が大好きで、時刻表を眺めるのが趣味です。誰も知らないような秘境駅やローカル線を発掘し、その魅力をマニアックな視点でお伝えします。一緒に鉄道の旅に出かけましょう!

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