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    天空のサバンナをゆく。マラウイ・ニイカ国立公園で出会う、世界で一番美しい乗馬サファリ

    アフリカと聞いて、皆さんはどんな景色を思い浮かべるでしょうか。赤土が舞う乾燥した大地、どこまでも続く平原、照りつける太陽。そんな「典型的なサバンナ」のイメージを、良い意味で完全に裏切ってくれる場所があります。それが、アフリカ南東部の小国、マラウイにあるニイカ国立公園です。

    「アフリカの温かい心(The Warm Heart of Africa)」と呼ばれるこの国は、人々が穏やかで治安も良く、知る人ぞ知る旅の穴場。中でも北部に位置するニイカ高原は、標高2000メートルを超える雲上の別世界です。見渡す限りのなだらかな緑の丘陵地帯は、まるでスコットランドのハイランド地方を思わせるほど幻想的。そんな天空の楽園を、ジープのエンジン音に邪魔されることなく、馬の背に揺られて旅をする。それが今回ご紹介する「乗馬サファリ」です。

    風の音、草の匂い、そして馬の息遣い。大地と一体になる感覚は、一度味わうと他のサファリには戻れないほどの中毒性があります。鉄道の旅もそうですが、乗り物が変われば見える景色も、感じる時間の流れも変わるもの。さあ、準備はいいですか。アフリカの概念を覆す、奇跡のような体験へご案内しましょう。

    このようなアフリカの多様な魅力は、南アフリカのコイコイ族の食文化にも息づいています。

    目次

    なぜ「ニイカ」で「馬」なのか。その必然性に触れる

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    通常のサファリといえば、四輪駆動車に乗って動物を探すゲームドライブが一般的です。もちろんそれも楽しい体験ですが、ニイカ国立公園の地形や生態系は、馬で巡るのにこれ以上ないほど理想的な環境を提供しています。まず、視界を妨げる高い樹木が少なく、広大な草原が波のように広がっているため、馬の背に乗ると視線が高くなり、遠くまで見渡せるのです。

    そして、何よりの魅力は野生動物との距離感にあります。ジープのエンジン音に警戒心を抱く動物たちも、「四本足の生き物」である馬に対しては驚くほど警戒を解きます。シマウマの群れに自分も馬に乗ってそっと加わる光景を思い浮かべてみてください。彼らは逃げるどころか、仲間が加わったかのように迎え入れてくれることさえあります。人の足音やエンジンの振動は消え去り、ただ馬の蹄が大地を叩く音だけが静かに響く。その瞬間、自分はただの観察者ではなく、まるで自然の一部となっているのです。

    ニイカ国立公園はアフリカでも屈指のヒョウの生息密度を誇りますが、日中の乗馬サファリで出会う主役は、優雅なローンアンテロープやイランド、そしてシマウマたちです。肉食獣に過度な恐怖を感じることなく、草食動物の穏やかな営みを間近で見ることができる安心感は、この場所ならではの特別な体験と言えるでしょう。

    初心者でも大丈夫。あなたに合わせた冒険が待っている

    「乗馬サファリ」という言葉を聞くと、高度な乗馬技術が求められるのではと不安に思う方もいるかもしれません。しかし、こちらの体験は、まったくの初心者から熟練者まで、幅広いレベルの方が安心して楽しめるように工夫されています。運営元は、マラウイ国内で質の高いロッジを展開するセントラル・アフリカン・ウィルダネス・サファリ(Central African Wilderness Safaris)。彼らが運営するチェリンダ・ロッジ(Chelinda Lodge)には、穏やかでしっかりと訓練された馬たちが多数揃っています。

    初めて馬に乗る方や、あまり経験がない方には、スタッフがリードしながらゆったりと草原を散策するコースが用意されています。馬の背中で揺れる心地よさを味わいながら、ガイドの指示で珍しい野鳥や美しい高山植物を観察する時間は格別のひとときです。一方、乗馬クラブに通うような経験者であれば、広大な丘陵をギャロップで駆け抜ける爽快感あふれるライドも楽しめます。風を切る疾走感と、目の前に広がる圧巻のパノラマは、人生の忘れがたい思い出となるでしょう。

    体験時間は、1~2時間の気軽な乗馬から、半日かけてゆったりと楽しむコース、さらには数日にわたり公園を移動しながらキャンプを伴う長距離サファリなど、さまざまなリクエストに対応可能です。まずはロッジに到着後、その日の天気や体調、気分に合わせて相談するとよいでしょう。堅苦しいスケジュールに縛られず、その場の雰囲気を感じながら過ごすのも、この旅の大きな魅力です。

    旅の拠点、チェリンダ・ロッジでの極上時間

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    乗馬サファリの拠点となるのは、公園の中央に位置するチェリンダ・ロッジです。ここは単なる宿泊場所にとどまらず、旅の物語に彩りを添える重要な舞台として機能しています。松林を背景にたたずむログハウス風の建物は、アフリカの雰囲気というよりも北欧やカナダの山岳リゾートを彷彿とさせる趣きを持ちます。石造りの暖炉、温もりを感じる木の床、そして窓の外には霧に包まれた草原が広がり、どこか懐かしく心の安らぐ空間が広がっています。

    標高が高いため、ニイカの夜はアフリカらしからぬほど冷え込みます。しかしそれこそが魅力の一つです。乗馬でほどよく疲れた身体を熱いシャワーで温め、暖炉の前でパチパチと薪がはぜる音を聞きながら、マラウイ産ジン「マラウイ・ジン」をトニックで割って楽しむ。夕食には地元で採れた新鮮な食材を使った温かな料理が提供されます。スタッフのホスピタリティも素晴らしく、彼らとの会話を通じてマラウイの文化や自然について深く知ることができるでしょう。

    ロッジの予約は、セントラル・アフリカン・ウィルダネス・サファリの公式サイトから直接手配するか、アフリカ旅行に強い旅行代理店を利用すると安心です。人気のロッジでありながら客室数が限られているため、特に乾季のベストシーズンには早めの予約をおすすめします。料金は宿泊費に食事やアクティビティが含まれるオールインクルーシブプランが一般的ですが、予約時に必ず詳細の確認を行ってください。

    公式サイト:https://cawsmalawi.com/

    準備という名の「旅の始まり」を楽しむ

    では、具体的な準備についてお話ししましょう。まず重要なのは、「アフリカ=暑い」という固定観念を捨てることです。ニイカ高原は年間を通じて涼しく、特に朝晩や6月から8月の冬季には霜が降りるほど気温が下がります。そのため、防寒対策は必ず行いましょう。フリースやダウンジャケット、風を通さないウインドブレーカーは必ず持参してください。乗馬中は風を受けるため、首元を暖かくするネックウォーマーや手袋もあると便利です。

    服装は、動きやすくて汚れても問題ない長ズボンが基本です。ジーンズでも構いませんが、ストレッチ素材のアウトドアパンツのほうが乗り降りが楽です。靴は足首まで覆うトレッキングシューズやショートブーツが適しています。専用の乗馬ブーツは必須ではありませんが、スニーカーだと足首が不安定になるかもしれません。ヘルメットはロッジで貸し出しがありますが、サイズやフィット感が気になる場合は、ご自身の乗馬用ヘルメットを持参するのもおすすめです。ただし、荷物が増えるため、こだわりに応じて選んでください。

    さらに、日中の紫外線は非常に強いです。標高の高さもあり、紫外線対策は必須で、日焼け止めやサングラス、帽子は忘れずに用意しましょう。カメラを持参する場合は、落下防止のためストラップを短く調整するか、体に密着するバッグに収納することを推奨します。馬の上で揺れながらの撮影は思いのほか難しいので、アクションカメラを胸や頭に装着すると、ユニークな映像が撮れるかもしれません。

    不安を期待に変える、いくつかのQ&A

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    初めてのマラウイや初めての乗馬サファリとなると、不安に感じることもいくつかあるでしょう。よくある疑問に対して、あらかじめお答えしておきます。

    まず、「英語が話せなくても問題ないか」という点です。マラウイの公用語は英語ですが、スタッフはとても親切でフレンドリーです。流暢な英語が話せなくても、身振りや笑顔で十分に意思疎通が可能です。乗馬の指示に関しても、「Stop(止まれ)」「Go(進め)」などの基本的な単語が理解できれば特に困りません。大切なのは、相手に伝えようとする意志です。

    次に、「安全面」についてです。ニイカ国立公園は管理がしっかりしており、ガイドは動物の習性をよく把握しています。彼らの指示に従う限り、危険に遭うことはほとんどありません。また、マラウイは「アフリカの温かい心」とも呼ばれ、政情も比較的安定しており、凶悪な犯罪の発生率も低い国です。もちろん最低限の注意は必要ですが、過度に心配する必要はないでしょう。

    さらに、「アクセス方法」についてです。日本からは直行便がなく、エチオピアや南アフリカを経由して首都リロングウェに到着します。そこからニイカ国立公園へは、車で約7〜8時間の長距離移動か、小型機のチャーター便を利用することになります。予算に余裕があれば飛行機の利用が格段に楽で、上空からの景色も素晴らしいですが、車窓から田舎の風景を眺めながら旅するのも旅情豊かで魅力的です。地元の村々を通り抜け、徐々に標高が上がる道のりは、まさに冒険の序章といえます。

    雨季の魔法、乾季の絶景。いつ行くべきか

    ベストシーズンについて触れておきます。一般的には、動物観察に最適な時期は乾季の5月から10月頃とされています。この時期は草が短くなり、動物を見つけやすくなる特徴があります。また、道路状況も安定しているため、陸路での移動が比較的スムーズに行えます。

    一方で、雨季の11月から4月も見逃せません。この時期のニイカ高原は、数えきれないほどの野生のラン(オーキッド)や高山植物が一斉に花を咲かせ、「花の楽園」としての姿を見せてくれます。霧に包まれた幻想的な景色の中で、色とりどりの花を踏まないよう注意しながら馬を進める体験は、この季節ならではの特別なものです。バードウォッチングを楽しむ方にとっても、渡り鳥が多く訪れる雨季は非常に魅力的なシーズンといえるでしょう。ただし、雨によって道が悪くなる可能性があるため、余裕をもった日程を組むことが望ましいです。

    さあ、荷物をまとめて

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    ニイカ国立公園での乗馬サファリは、単なるレジャーではなく、地球の息吹を肌で感じる特別な体験となります。自分の足ではなく馬の蹄に導かれて大地を進むとき、私たちは人間という枠を少しだけ超え、自然界の一員に立ち返る感覚を味わえます。

    360度に広がる緑豊かな丘陵、澄み切った冷たい空気、そして夜空を埋め尽くす無数の星々。さらに、ロッジの暖炉がもたらす温かさ。これらすべてが、あなたの訪問を心待ちにしています。必要なのはわずかな冒険心と防寒着だけ。準備が整ったら、世界で最も美しいと言われる乗馬サファリに出発しましょう。きっと、一生忘れられない光景が広がっています。

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    この記事を書いた人

    子供の頃から鉄道が大好きで、時刻表を眺めるのが趣味です。誰も知らないような秘境駅やローカル線を発掘し、その魅力をマニアックな視点でお伝えします。一緒に鉄道の旅に出かけましょう!

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