マリオットやヒルトンなど大手ホテルチェーンが、AI活用で宿泊と航空券・アクティビティを組み合わせる「ダイナミック・パッケージング」を強化。高額なOTA手数料を回避し、顧客を直接自社サイトへ取り込む「ダイレクトブッキング戦略」を加速している。これによりホテルは利益率を高め、顧客はパーソナライズされたお得なプランを享受。旅行業界の勢力図が変わり、OTAはビジネスモデルの転換を迫られる。
マリオット・インターナショナルやヒルトンといった世界的な大手ホテルチェーンが、自社の公式サイトやアプリにおける「ダイナミック・パッケージング」機能を大幅に強化している。宿泊予約と同時に航空券、レンタカー、現地でのアクティビティなどを利用者が自由に組み合わせ、一括で予約できるシステムである。近年はAIを活用することで個人の嗜好に合わせた最適なプランを提案し、これまでOTA(オンライン・トラベル・エージェント)の独壇場とされてきた領域へホテル自身が本格的に参入する形となった。この動きは、高額な手数料が発生するOTA経由の予約から脱却し、顧客を直接自社サイトに取り込む「ダイレクトブッキング戦略」を加速させる狙いがある。
高騰するOTA手数料とホテル側の課題
旅行者にとって複数の選択肢を比較し一括手配できるOTAは非常に利便性が高く、現在も旅行予約の入り口として圧倒的なシェアを誇っている。しかし、宿泊施設側にとってOTAへの依存は利益率の低下という大きな課題を抱え続けてきた。
2026年現在、主要なOTAの基本手数料は15%前後から、露出強化の優遇プログラムなどを加味すると30%近くに達するケースもある。ホテル側からすれば、利益の大部分を外部プラットフォームに吸い上げられる構造になっている。これに対し、ホテルが自社サイトで直接予約を獲得する場合のコストはおおむね4.5%程度にとどまるとされており、同じ宿泊料金でもホテル側の手元に残る利益には大きな差が生じる。この構造的な課題が、大手ホテルチェーンをダイレクトブッキング強化へと突き動かす最大の要因となっている。
AIとダイナミック・パッケージングがもたらす直接予約の進化
大手ホテルチェーンは、直接予約で浮いたコストを顧客への還元に回すことで自社サイトの優位性を高めている。
さらに今年に入り、これまでホテル直販の弱点であった「航空券や移動手段との一括手配」を克服するため、自社プラットフォームにおけるダイナミック・パッケージングのアップデートが急速に進んでいる。最新のAIアルゴリズムを導入し、顧客の過去の宿泊データや検索履歴に基づき、フライトや空港からの送迎、さらには現地での特別な体験ツアーまでをシームレスに提案する。マリオットやヒルトンなどは現在、強固なロイヤルティプログラムのエコシステムを通じて、すでに客室稼働の50%から60%を自社の直接予約で埋めることに成功しているデータもある。ダイナミック・パッケージングの強化は、この自社完結型の予約比率をさらに押し上げる強力な武器となる。
予測される未来と旅行業界への影響
この大手ホテルチェーンの戦略は、今後の国際旅行市場におけるパワーバランスに大きな影響を与えることが予測される。
背景には法的な環境の変化もある。欧州におけるデジタル市場法(DMA)の施行などをきっかけに、プラットフォーマーとしての巨大OTAに対する規制が進み、OTAがホテルに強要してきた「レートパリティ(同一価格提供)条項」を無効化する動きが定着した。これにより、ホテル側はOTAよりも安い価格や有利な条件を合法かつ堂々と公式サイトで展開しやすくなっている。
大手がダイレクトブッキングのエコシステムで成功を収めることで、今後は中規模チェーンや独立系ホテルにおいても、テクノロジーを駆使してOTAへの依存度を下げ、独自の直接予約チャネルを強化する動きが加速するだろう。一方のOTA側は、単なる送客ビジネスからの転換を迫られており、サブスクリプションモデルの導入や、ホテル向けのシステム支援など、ビジネスモデルの多角化をさらに進める必要に駆られている。旅行者にとっては、ホテルの公式サイトとOTAの双方からより魅力的でパーソナライズされたプランが競って提案されるようになり、予約経路の選択肢とメリットが拡大していく恩恵を受けることになりそうだ。

