航空券の最安値を探すには、一つのアプリに頼らず、複数のツールを使い分けるのが賢明です。旅の達人はSkyscannerとMomondoを主軸に、Googleフライトなどで相場を把握し、最終的には航空会社の公式サイトで購入します。最も重要なのは、日付や空港を柔軟に変え、価格アラートで相場を知る「検索の作法」。安さだけでなく、預け荷物や乗り継ぎ時間、名前のスペルなど、購入前の確認も必須です。
取材・文/Arigatrip編集部 斉藤
「航空券、どこで買えばいちばん安いんですか?」
Arigatrip編集部に届く質問のなかで、たぶん一番多いのがこれです。スカイスキャナー? グーグル? 旅行会社? 答えは人によってバラバラで、しかもだいたい「なんとなく使ってるやつ」が正解として語られている。
そこで今回は、年間の半分近くを海外で過ごしているという株式会社Muralの野村晋之介さんに、実際のスマホのホーム画面を見せてもらいながら話を聞いてきました。結論から言うと、野村さんは1つのアプリで完結させていません。MomondoとSkyscannerを軸に、用途ごとに5〜6個を平気で行き来しています。
「アプリを1つに絞るのは、包丁を1本で済ませるようなもんです」
斉藤:本日はよろしくお願いします。まず、野村さんは年間どれくらい飛んでいるんですか。
野村:数えたくないですね。マイルの明細を見ると人生の選択を問われている気持ちになるので。ざっくり年20〜25フライトくらいだと思います。去年は同じ路線を3回間違えて取りました。
斉藤:間違えて。
野村:安さに目がくらんで、乗り継ぎ14時間とかを「空港で寝れば宿代が浮く」って自分に言い聞かせて取るんですよ。で、ドーハの深夜3時に硬い椅子で目を覚まして、浮いた宿代ぶんのマッサージ代を払うという。収支はトントン、学びはゼロです。
斉藤:そこは学んでほしいところです。それで、航空券はどのアプリで探しているんでしょうか。
野村:よく「結局どれが最強ですか」って聞かれるんですけど、これは包丁と同じで、1本で全部やろうとすると疲れるんですよ。刺身包丁でカボチャは割れない。僕はMomondoとSkyscannerを主軸にして、そこにGoogleフライト、Kiwi.com、Trip.com、そして航空会社の公式サイトを足す感じです。
斉藤:6つ。多くないですか。
野村:検索は3分で終わりますよ。順番が決まっているので。むしろ1つのアプリだけ見て「うーん高いなあ」ってスクロールし続ける時間のほうが長い。
主軸その1:Skyscanner「行き先を決めずに検索できるのが強い」
斉藤:まずSkyscannerから伺います。何がいいんですか。

野村:3つあります。ひとつめは「どこでも(Everywhere)」検索。目的地の欄に具体的な都市を入れずに検索すると、その出発地から安い順に世界中の候補が並ぶんです。旅慣れてる人ほどこの機能で人生を狂わされてます。
斉藤:狂う。
野村:僕は台北に行くつもりでEverywhereを押して、なぜか3秒後にビリニュスの往復を眺めてましたからね。リトアニアです。用事ゼロです。でも安かった。あぶなかった。
ふたつめは月表示のカレンダー。1か月ぶんの最安値が一覧で出るので、「火曜が安い」みたいな都市伝説に頼らず、その路線の実際の底値の日が目で見えます。みっつめは価格アラート。これは後で詳しく話したいんですけど、僕にとってはSkyscannerの本体みたいな機能です。
斉藤:逆に弱点は。
野村:Skyscannerは比較サイト(メタサーチ)なので、実際に売っているのは提携先のOTAや航空会社です。だからクリックした先の「聞いたこともない代理店」がとんでもなく安いことがある。安いのには理由があって、変更もキャンセルも実質無理だったり、サポートがメールだけだったりします。表示価格に手荷物代が入ってないパターンもよくある。安さだけ見て脊髄反射で買うと、荷物を預ける段階で顔面蒼白になります。
主軸その2:Momondo「Skyscannerが拾わない球を拾う」
斉藤:Momondoはどう使い分けているんですか。

野村:同じ路線を両方で検索すると、しれっと違う結果が出るんですよ。MomondoはKAYAK系列のメタサーチなんですが、マイナーな代理店の在庫や、往路と復路で別々の航空会社を組み合わせた運賃を拾ってくるのが上手い。往路はスクート、復路はベトジェット、みたいな組み合わせですね。
斉藤:それ、自分で組むのは大変そうです。
野村:大変です。だからMomondoに組ませます。あと、価格の相場観を出してくれるのがありがたい。この路線の今の値段が高いのか安いのか、買い時なのかの目安が出るので、「もう少し待つか」の判断材料になります。
斉藤:SkyscannerとMomondo、どっちが安いんですか。
野村:それ、いちばん聞かれるんですけど、答えは「路線と時期による」です。つまらない答えですみません。体感だと、アジア圏のLCC混ぜ混ぜルートはSkyscanner、ヨーロッパ方面や乗り継ぎが複雑なやつはMomondoが強いことが多い。でも逆転もふつうにあります。だから両方見る。両方見ても合計1分です。1分で5,000円変わるなら、僕はその1分を全力で使います。
3番手以降:Googleフライト、Kiwi.com、Trip.com、そして公式サイト
斉藤:残りの3つ、それぞれの役割を教えてください。
野村:Googleフライトは「速さ」担当です。検索結果が出るのが異常に速いのと、価格の推移グラフが見やすい。日程がまだふわっとしている段階で、カレンダーと地図をいじりながら「この時期だと全体的に高いな」と当たりをつけるのに使ってます。ただ、一部のLCCは載っていないので、これだけで結論を出すと危ない。
Kiwi.comは変化球担当。航空会社同士が提携していない便を、Kiwiが勝手にくっつけて1本のルートにしてくれるんです。ふつうは出てこない組み合わせが出るので、たまに笑えるくらい安い。ただしこれは自己責任の乗り継ぎ(セルフトランスファー)で、前の便が遅れたら次の便は置いていきます。Kiwi独自の保証はありますが、条件を読まずに使うのは崖の上でバク転するようなものなので、乗り継ぎ時間をたっぷり取れる人向けですね。
斉藤:崖の上でバク転。
野村:僕は一度やりました。クアラルンプールで、次の便まで1時間40分。荷物をピックアップして、入国して、別ターミナルに移動して、またチェックイン。全力疾走しながら「これ安さのためにやってることだよな」と我に返る瞬間が本当に虚しい。あれ以来、セルフ乗り継ぎは最低4時間と決めてます。
Trip.comはアジア路線担当。中国・東南アジア系のキャリアやLCCに強くて、アプリ限定のクーポンやアプリ価格が出ることがある。日本発のアジア路線は、これを見ないと最安を逃すことがけっこうあります。
そして最後に航空会社の公式サイト。これが一番大事です。
斉藤:比較アプリの話をしていたのに、最後は公式ですか。
野村:比較アプリは「価格を見つける道具」で、「買う場所」としてはベストとは限らないんですよ。公式と代理店の差が数百円から1,000円程度なら、僕は迷わず公式で買います。座席指定、日程変更、欠航時の振替、マイル加算、そのすべてが公式のほうがスムーズだからです。
欠航したときに代理店経由だと、航空会社は「代理店に聞いてください」、代理店は「航空会社の回答待ちです」と言い出して、あなたは空港で伝言ゲームの審判をやることになります。1,000円で審判を回避できるなら安い。あと、ピーチ、ジェットスター、エアアジア、スクートみたいなLCCは、公式のセールがそもそも比較サイトに反映されない場合があります。行き先が決まっているなら公式も直接見たほうがいい。
使い分け早見表
| アプリ | 得意なこと | 使うタイミング | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Skyscanner | 行き先未定の検索、月間カレンダー、価格アラート | 一番最初の相場チェック | 販売元は提携先。手荷物代別に注意 |
| Momondo | マイナー代理店、往復で別航空会社の組み合わせ | Skyscannerの結果を裏取りするとき | 同じく販売元は提携先 |
| Googleフライト | 検索速度、価格推移グラフ、日程の当たりをつける | 計画の初期段階 | 一部LCCが非掲載 |
| Kiwi.com | 提携のない便をつなぐ独自ルート | 変わったルートで安さを狙うとき | 自己責任の乗り継ぎ。時間に余裕を |
| Trip.com | アジア路線、LCC、アプリ限定価格 | 日本発アジア圏を探すとき | クーポン条件の確認を |
| 航空会社公式 | 変更・キャンセル・欠航対応・マイル | 最後の購入判断 | 最安ではない場合もある |
「値段より先に、検索の作法を直したほうが安くなります」
斉藤:アプリの話は分かりました。そのうえで、安く買うコツはありますか。
野村:あります。しかも、どのアプリを使うかより効きます。4つあります。
1つめ、日付を動かす。 これが最強です。同じ路線でも、1日ずらすだけで2〜3万円違うことがふつうにあります。Skyscannerの月表示やGoogleフライトのカレンダーで、まず「安い日」を見てから予定を組む。休みの日程が固定の人は、代わりに次の2つで戦ってください。
2つめ、空港を動かす。 成田と羽田、バンコクのスワンナプームとドンムアン、ロンドンに至っては選択肢が多すぎて地図が必要なレベル。出発地・目的地の候補空港を広げるだけで、選べる便が一気に増えます。Skyscannerは都市単位でまとめて検索できるので、そこは楽です。
3つめ、先にアラートを仕掛ける。 探し始めた日がたまたま高い日だっただけ、というケースが本当に多い。行きたい路線が決まったら、買うかどうかは置いといて、まず価格アラートをセットする。1〜2週間眺めていれば、その路線の「ふつうの値段」が分かります。相場を知らないと、安いのか高いのかの判断すらできませんから。
4つめ、片道2枚に分けてみる。 往復で検索して高いとき、往路と復路を別々の航空会社で取ると安くなることがあります。MomondoやKiwiが自動でやってくれることもありますが、手動でも試す価値あり。
斉藤:シークレットモードで検索すると安くなる、という話をよく聞きますが。
野村:あれ、僕も信じてた時期がありました。何度も検証しましたけど、体感では誤差でしたね。閲覧履歴で値段を釣り上げられているというより、そもそも運賃の在庫がリアルタイムで動いてるだけです。シークレットモードで開く3秒があるなら、日付を1日ずらして検索したほうが100倍効きます。
斉藤:買うタイミングの目安は。
野村:国際線なら出発の2〜4か月前くらいが無難なゾーンです。ただし年末年始、お盆、ゴールデンウィークは別ゲームで、そこは半年前でも「高い」が正常値。逆に直前で暴落するのを狙うのは、年々おすすめしづらくなってます。昔ほど投げ売りされないので。
あと、これは声を大にして言いたいんですけど、「安いから買う」ではなく「行くから安く買う」の順番を守ってください。
斉藤:さっきご自身がビリニュスに行きかけていた気がするのですが。
野村:……その話はやめましょう。
予約する前に、ここだけは確認してほしい
斉藤:最後に、購入ボタンを押す前のチェックポイントを教えてください。
野村:僕が痛い目を見て学んだやつを並べますね。
- 預け荷物が込みかどうか。 LCCの表示価格はほぼ別料金です。空港で払うと一番高くなります。事前購入が鉄則。
- 乗り継ぎ時間と、同一予約かどうか。 別々の予約(セルフ乗り継ぎ)なら、遅延の責任は自分持ちです。
- 乗り継ぎ地でビザや入国が必要ないか。 国によっては、空港の外に出なくても手続きが要ります。
- 到着が深夜すぎないか。 「深夜1時着、空港から市内までタクシーのみ」で、浮いた3,000円が消えるどころかマイナスになる、という経験を私は3回しています。
- 名前のスペル。 パスポートと1文字でも違うと、修正に手数料がかかる会社があります。僕は自分の名前を打ち間違えて5,000円払ったことがあります。人生で一番むなしい5,000円でした。
斉藤:最後の話は記事に載せても大丈夫ですか。
野村:どうぞ。同じ過ちを繰り返す人が1人でも減るなら、僕の5,000円も浮かばれます。
編集部まとめ
今回の取材で見えてきたのは、「最強のアプリを1つ選ぶ」という発想そのものが古い、ということでした。
- Skyscannerで相場と安い日を掴み、価格アラートを仕掛ける
- Momondoで裏を取り、組み合わせ運賃を拾う
- Googleフライトで日程の当たりをつける
- Kiwi.comとTrip.comで変化球を試す
- 最後は航空会社の公式で、安心して買えるほうを選ぶ
この順番なら慣れれば数分で回せます。そして節約のコアは、アプリ選びよりも「日付と空港を動かす」「先にアラートを仕掛けて相場を知る」という作法のほうにありました。
なお、現地に着いてからの通信手段も、航空券と同じで事前に決めておくとラクです。到着が深夜だと空港のSIMカウンターが閉まっていることもあるので、eSIMを出発前に入れておく派の人が最近は増えています。このあたりは別記事でまとめているので、あわせてどうぞ。
(取材・文/Arigatrip編集部 斉藤)

