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スプリット完全ガイド:ローマ皇帝の宮殿が息づく街で、時を超える旅を

紺碧のアドリア海に抱かれ、燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びて輝く白い石畳の街、スプリット。クロアチア南部、ダルマチア地方の中心に位置するこの街は、ただの美しい港町ではありません。その心臓部には、なんと約1700年前のローマ皇帝の宮殿が、ほぼそのままの形で街として息づいているのです。古代ローマの遺跡がカフェやブティック、人々の住居と渾然一体となり、過去と現在が当たり前のように共存する風景は、世界中どこを探しても類を見ません。城壁に一歩足を踏み入れれば、そこは歴史という名の迷宮。皇帝が歩いたであろう大理石の道を踏みしめ、地下宮殿のひんやりとした空気に触れ、鐘楼のてっぺんからオレンジ色の屋根瓦と青い海のコントラストを眺める。そんな時を超えた体験が、ここスプリットでは日常なのです。この記事では、単なる観光スポットの紹介に留まらず、あなたがこの生きた歴史の街を心ゆくまで歩き、味わい、暮らすように旅するための、あらゆる情報をお届けします。さあ、古代ローマ皇帝が夢見た理想郷への扉を開きましょう。

この魅力あふれるスプリットの旅をより深く、より快適に満喫するために、クロアチア旅行の基本情報やベストシーズンも併せて確認しておくことをおすすめします。

目次

スプリットとはどんな街?アドリア海の宝石の素顔

クロアチアのアドリア海沿岸に広がる都市群の中でも、スプリットはひときわ個性的な存在です。首都ザグレブに次ぐ国内第2の都市でありながら、その発祥は非常に特異です。街の起源は西暦305年頃、ローマ皇帝ディオクレティアヌスが引退後の隠居地として巨大な宮殿を築いたことに遡ります。彼はこの地で生まれ、世界の頂点に立った後、再び故郷の風を感じるこの場所を選びました。

皇帝の死後、宮殿は一時的に主を失いますが、7世紀に入ると近隣の都市サロナ(現在のソリン)が異民族の襲撃で破壊され、多くの難民がこの堅固な宮殿の城壁内へ逃れました。彼らは宮殿の広間や回廊を住まいとし、通路を街路として生活を始めたのです。こうして、かつて皇帝一人のためにあった宮殿は、多くの人々が暮らす「街」へと変貌を遂げました。この奇跡的な歴史が、スプリットを他に類を見ない特別な場所にしています。

その後、ヴェネツィア共和国、オーストリア=ハンガリー帝国、ユーゴスラビアといったさまざまな支配を経て、スプリットは多層的な文化を育んできました。宮殿のローマ建築の隣にはヴェネツィア様式の窓が並び、オーストリア時代の建物が街に風格を添えています。こうした街並みの中を歩くだけで、まるで歴史の教科書をめくっているかのような感覚を味わえます。

1979年には「ディオクレティアヌス宮殿とスプリトの歴史的建造物群」としてユネスコ世界遺産に登録され、その歴史的重要性が国際的に認められました。しかし、スプリットは単なる過去の遺産として静かに眠っているわけではありません。城壁の内側では今なお約3000人が生活し、洗濯物が風にはためき、子どもたちの笑い声が響き渡り、カフェは常に賑わいを見せています。歴史地区の重厚な趣と、ヤシの木が立ち並ぶ海岸通り「リヴァ」の開放的な空気が織りなす対比も、この街ならではの大きな魅力と言えるでしょう。

時の迷宮へようこそ!ディオクレティアヌス宮殿の歩き方

スプリット観光の目玉であり、街そのものを象徴するディオクレティアヌス宮殿。多くの人は「宮殿」と聞くと、一つの壮麗な建物を思い浮かべるかもしれませんが、スプリットにおいてはそのイメージは当てはまりません。このディオクレティアヌス宮殿は、東西約180メートル、南北約215メートルの堅固な城壁で囲まれた、ひとつの要塞都市なのです。内部には碁盤目状に道が巡り、かつて皇帝の居城や儀式の場だった場所が、現在では大聖堂や広場、さらには無数の細い路地裏に隠れるレストランやショップへと姿を変えています。

この宮殿を効率的かつ深く楽しむには、まず全体の構造を把握することが重要です。宮殿は大きく分けて、皇帝の居室があった南半分と、兵士の宿舎や倉庫などがあった北半分から成り立っていました。中央を縦横に貫く二本の主要な通りが交わる場所が宮殿の核心部、ペリスティル(列柱広場)です。まずはこのペリスティルを目指し、そこから放射状に見どころを巡るのが効率的な回り方と言えるでしょう。

宮殿の中は基本的に24時間出入り自由で、入場料もかかりません。まるで普通の街並みを散策するように、古代ローマの遺構の中を気ままに歩けるのです。ただし、大聖堂や地下宮殿といった特定の施設に入る際は、別途入場料が必要となります。

宮殿の中心、ペリスティル(列柱広場)

宮殿の中心地、ペリスティルは訪れる者すべてに感動を与える場所です。コリント式の列柱が厳かに立ち並び、その正面には皇帝の居住区へと続く玄関口「プロティロン」が構えています。ここは、皇帝が民衆の前に姿を現し、神格化された儀式を行う神聖な舞台でした。広場を囲む石の階段に腰を下ろせば、まるで古代ローマの時代へと時を遡ったような気分に浸れます。

広場の東側には、かつて皇帝の霊廟であった聖ドムニウス大聖堂が、その威容を見せています。西側にはかつて神殿だった建物が洗礼室として使われています。広場の一角には、ディオクレティアヌス帝がエジプトから持ち帰ったと伝わる、本物のスフィンクスが鎮座。3500年以上の時を超えて今なお静かに広場を見守るその姿は、この場所が歩んだ悠久の歴史を雄弁に語っています。

訪問者へのおすすめ:ペリスティルでの過ごし方

ペリスティルは単に観光するだけの場ではありません。広場に面したカフェ「LUXOR」のテラス席に腰掛ければ、クッションの上でゆったりくつろぎつつ、歴史的空間を独り占めできます。コーヒー片手に行き交う人々や荘厳な建物を眺めているだけで、あっという間に時間が過ぎるでしょう。

夏の夜には、この広場でオペラやコンサートなどの催しが行われることもあります。ライトアップされた列柱の中で響き渡る音楽は、心に残る忘れがたい体験となるはずです。昼間はローマ兵の衣装をまとったパフォーマーが訪問者と記念撮影に応じてくれます。彼らと写真を撮れば、旅の素敵な思い出がひとつ増えますね。広場はいつも賑わっていますが、早朝に訪れれば静まり返る空間で朝日を浴びる幻想的なペリスティルを味わえます。

聖ドムニウス大聖堂と鐘楼:天空の絶景を求めて

ペリスティルの東側にそびえるのが、スプリットの象徴である聖ドムニウス大聖堂です。この建物には非常に皮肉な歴史が隠されています。そもそもディオクレティアヌス帝は、キリスト教徒を激しく迫害したことで知られていますが、自らの霊廟として八角形の建物を建設しました。しかし、帝の死後キリスト教が国家宗教となると、その霊廟は破壊されることなく、逆にキリスト教の大聖堂に生まれ変わったのです。しかも祀られている聖ドムニウスは、実はディオクレティアヌスの迫害により殉教した人物であり、迫害者の霊廟が殉教者の聖堂となる歴史の皮肉には深い感慨があります。

内部はローマ時代の円柱と後代のキリスト教装飾が美しく融合しています。特に13世紀に製作されたロマネスク様式の木製扉や精緻な彫刻を施した説教壇は必見です。

大聖堂に隣接し、高さ約57メートルの鐘楼が堂々と立っています。12世紀から16世紀にかけて造られたこの鐘楼は、スプリットの街並みを見渡せる絶景スポットです。ただし、その登頂は容易ではありません。

鐘楼登頂のポイント

鐘楼に登るには、まずチケットを購入しましょう。オフィスは大聖堂向かいにあり、大聖堂、宝物庫、洗礼室、鐘楼の入場がセットになったコンバインチケットが一般的です。料金や種類は季節で変動することがあるため、訪問前に最新情報をチェックしてください。

  • 準備・服装:
  • 歩きやすい靴を着用。狭い石段や透けて見える金属の急階段が続くため、サンダルやヒールは避けましょう。
  • 手荷物はできるだけ少なく。リュックなどは壁に当たりやすいので軽装が望ましいです。
  • 高所恐怖症の方は注意が必要。吹きさらしの部分や足元が見える場所があるため、心構えをして臨みましょう。
  • 夏場は水分補給を忘れずに。
  • 服装規定:

大聖堂は神聖な場所です。鐘楼に登る際も敷地内を通るため、露出の多い服装(タンクトップや短パンなど)は避けてください。肩や膝を覆う服が望ましく、軽装の場合は入り口で貸し出されるショールを利用しましょう。

階段を上り切った先には、思わず息を呑む絶景が広がります。眼下にオレンジ色の屋根瓦が連なる旧市街、煌めくアドリア海に浮かぶ船影、そして遠くフヴァル島やブラチ島のシルエット。皇帝が築いた宮殿が活気ある街として生き続ける姿を、まるで鳥の目線で眺めることができます。この光景は苦労して登る価値が十分にあります。

地下宮殿(ポドゥルミ):皇帝の暮らしを支えた広大な地下空間

ペリスティルから海側、南にある青銅の門へ続く通路の両脇に、地下宮殿(ポドゥルミ)への入り口があります。ここは広大な地下空間で、地上の皇帝居住区とほぼ同じ間取りで造られており、宮殿全体の土台としての役割を果たしました。海に面した傾斜地に建てられたため、この地下構造により建物の水平が保たれたのです。ワインやオリーブオイルの貯蔵庫、作業場として使われていたと推測されています。

この空間がこれほど良好に保存されている理由には興味深い背景があります。中世になると、宮殿上層に住んだ人々がこの地下をゴミ捨て場にした結果、長年の生活廃棄物で塞がれて外気が遮断され、まさにタイムカプセルのように古代ローマの建築が保護されたのです。20世紀に発掘され、再び歴史の光を浴びることになりました。

薄暗く涼しい地下空間には巨大な石柱が林立し、重厚なアーチ天井が続きます。その静謐で荘厳な雰囲気に誰もが圧倒されるでしょう。近年では世界的ヒット作『ゲーム・オブ・スローンズ』の女王がドラゴンを飼育するシーンのロケ地としても知られ、多くのファンが訪れる聖地となっています。

地下宮殿見学のポイント

地下宮殿は大きく二つのエリアに分かれます。

  • 無料エリア(東側): ペリスティルから青銅の門へ抜ける中央通路は自由に通行可能。沿道には土産物店やアートの露店が軒を連ね、地下の雰囲気を気軽に体感できます。
  • 有料エリア(西側): 発掘されたホールをそのまま見学できる博物館エリアで、入場にはチケットが必要です。入り口カウンターや大聖堂等とのセットチケットに含まれる場合もあるため要確認。
  • 見学時の注意:
  • 文化財保護のためフラッシュ撮影は禁止されています。暗い場所での撮影設定に注意しましょう。
  • 床は石畳で凹凸や濡れた箇所があるため、歩きやすい靴がおすすめです。
  • 広大で似た空間が続くため、案内表示に従い迷わないよう注意してください。

皇帝の生活を文字通り地下から支えたこの空間は、古代ローマ建築の高度な技術を実感できる貴重な場所です。喧騒から離れて、古の石が伝える静かな息遣いを感じてみてください。

四つの門:金の門、銀の門、鉄の門、青銅の門を巡る

ディオクレティアヌス宮殿は東西南北に一門ずつ、計四つの門が設けられていました。これら門は単なる出入口にとどまらず、それぞれに役割と格式がありました。四つの門を巡ることで宮殿の構造や当時の社会背景を理解する興味深い旅となります。

  • 金の門(北門): 宮殿の正門であり、皇帝のみが通行を許された最高位の門です。かつては彫像など豪華な装飾が施され、その名の通り黄金に輝いていたと言われています。ここから真っ直ぐ南へ伸びる道が宮殿のメインストリートでした。
  • 銀の門(東門): 金の門に次ぐ格式をもつ門で、ここからもペリスティルへ続く道が伸びています。この門を出ると新鮮な野菜や果物、地元の特産品が並ぶ青空市場(パザール)が広がり、古くから市民の生活と密接な場所です。
  • 鉄の門(西門): 宮殿の西側に位置する出入口で、主に兵士や一般市民が利用していました。門の上には24時間時を刻む時計塔が建ち、その下には古い教会や貴族の館が立ち並ぶナロドニ広場(人民広場)が広がっています。
  • 青銅の門(南門): 海に面した門で、皇帝が船で出入りする際のプライベートな入口でした。また、宮殿内のゴミを海へ運び出す出口としても使われていました。現在では、この門を抜けるとヤシの木が並ぶプロムナード「リヴァ」に出られ、多くの観光客が行き交う人気の門です。

おすすめスポット:幸運のグルグール・ニンスキ像

金の門外にはスプリットで最も有名なランドマークの一つ、グルグール・ニンスキの巨大像があります。10世紀のクロアチア司教で、ミサをラテン語から民衆の言葉であるクロアチア語に変える権利を主張した国民的英雄です。この像の左足親指に触ると幸運が訪れるという言い伝えがあり、多くの人に撫でられて指先は光り輝いています。スプリットに訪れた際には、ぜひ触れて旅の安全と幸運を祈ってみてはいかがでしょうか。

宮殿の外へ!スプリットの魅力を味わい尽くす街歩き

ディオクレティアヌス宮殿の迷路のような路地を散策するだけでも十分魅力的ですが、スプリットの楽しみは城壁の中にとどまりません。ひとたび外に出ると、アドリア海の爽やかな風が感じられる開放的な空間や、地元の人々の活気あふれる日常の様子が広がっています。

リヴァ(Riva):潮風とカフェ、そして人々の笑顔

宮殿の南側、青銅の門をくぐった先に広がるのは、ヤシの木が立ち並ぶ美しい海岸通り「リヴァ」です。白く磨かれた石畳の遊歩道には、おしゃれなカフェやレストラン、バーが軒を連ね、昼夜を問わず多くの人たちで賑わいます。ここはスプリット市民にとって最も愛される憩いの場。友人と語らう若者や散歩する家族連れ、ゆったりと海を眺める高齢者など、そんな穏やかな日常の風景を眺めるだけで心が和みます。

リヴァでの楽しみ方

リヴァで最もおすすめなのは、カフェのテラス席に腰掛け、何もしない贅沢な時間を過ごすことです。クロアチア語には「ポラコ(polako)」という言葉があり、「ゆったり、のんびり」を意味します。カプチーノを一杯注文して、1時間、2時間と会話を楽しむのがクロアチア流。アドリア海の紺碧の海や行き交う船を眺めながら、「ポラコ」の精神を味わってみてください。

夕暮れ時には空と海が黄金色に染まり、ロマンチックな風景が広がります。ベンチに座り、刻々と変わる空の色を眺める時間は、忘れがたい思い出になるでしょう。また、夏場はコンサートやフェスティバルなどのイベントが盛んに行われ、リヴァは一層華やかな雰囲気に包まれます。

  • トラブル回避のポイント:

リヴァ沿いのカフェは観光客向けで価格がやや高めの場合があります。注文前に必ずメニューの料金を確認してください。クロアチアではチップは義務ではありませんが、サービスに満足した際は料金の5%〜10%程度を置くのが一般的です。

青空市場(パザール)と魚市場(ペシュカリヤ):地元の台所をのぞく

スプリットの活気ある日常に触れたいなら、市場を訪れるのが最適です。宮殿の東側、銀の門の外に広がるのが「パザール」と呼ばれる青空市場。色とりどりのパラソルの下には、朝採れの新鮮な野菜や果物、芳醇な香りのオリーブオイル、ラベンダーのポプリ、自家製のはちみつやチーズなどがぎっしり並びます。元気な売り手のおばさんたちの威勢の良い声も、この市場の魅力のひとつです。

一方、旧市街の西側には「ペシュカリヤ」という魚市場があります。アドリア海で獲れたばかりの新鮮な魚介類が豊富に並び、その種類の多さには驚かされるでしょう。レストランのシェフや地元の主婦が真剣な眼差しで魚を選ぶ姿は、まさに市民の台所そのものです。

市場でのショッピングのポイント

市場はスプリットの味や文化を五感で感じられる最高のスポット。旅の記念にお土産を探したり、滞在中に食べるフルーツを買ったりしてみましょう。

  • 準備・持ち物:
  • 現金(クーナやユーロ): 市場ではクレジットカードが使えない店が多いので、小銭や少額紙幣を用意しておくとスムーズです。
  • エコバッグ: たくさん買う予定があれば、持参すると便利です。
  • ウェットティッシュ: フルーツの試食もあるため、あると重宝します。
  • 買い物時の注意点・コツ:
  • 市場は午前中が最も活気にあふれ、品揃えも豊富です。特に魚市場は新鮮な魚を求めるなら早朝の訪問がおすすめです。
  • 値段交渉はあまり一般的ではありませんが、多く買った時や閉店間際には値引きしてくれることもあります。
  • 試食を勧められたら、ぜひ味わってみてください。地元の人との交流も旅の楽しみの一つです。
  • 多くの人で賑わう場所ですので、スリや置き引きに十分に注意しましょう。バッグは体の前で持ち、貴重品から目を離さないようにしてください。

市場で買った新鮮なイチジクやチェリーを頬張りながらの街歩きは、まるでスプリットの住人になったかのような気分を味わえます。

マルヤンの丘:スプリットの息を呑む絶景パノラマ

旧市街の喧騒を離れて、静かに街の景色を楽しみたい時は、西側に広がるマルヤンの丘へ足を運びましょう。ここは緑豊かな自然公園で、松林の中にはハイキングコースや遊歩道が整備されています。地元の人々にとっては、ジョギングやサイクリング、犬の散歩を楽しむ憩いのスポットです。

リヴァの西端から階段を登ると、最初の展望ポイント「ヴィディリツァ(Vidilica)」に到着します。ここにはカフェもあり、眼下に広がるスプリット旧市街と港のパノラマを見ながら一休みできます。ディオクレティアヌス宮殿の城壁、聖ドムニウス大聖堂の鐘楼、オレンジ色の屋根が連なる光景は、まるで絵葉書のような美しさです。

マルヤンの丘ハイキングのポイント

ヴィディリツァからの眺望も素晴らしいですが、体力に自信がある方はさらに頂上を目指すのもおすすめです。

  • アクセスと所要時間:

旧市街からヴィディリツァまでは徒歩約15〜20分。頂上まで登る場合はさらに30分から1時間程度を見てください。道は整備されていますが、坂や階段が続くため、自分のペースで無理なく歩きましょう。

  • 持ち物・準備:
  • 歩きやすい靴: スニーカーなど滑りにくく疲れにくい靴が必須です。
  • 飲み物: 特に夏は日差しが強いので水分を十分に用意してください。
  • 日焼け対策: 帽子、サングラス、日焼け止めを忘れずに。
  • カメラ: 絶景を撮れるようスマートフォンやカメラの充電は満タンにしておきましょう。
  • マナーと注意事項:

マルヤンの丘は地元の人たちに愛される自然公園です。タバコのポイ捨てや火の不始末には厳重に注意し、ゴミは必ず持ち帰りましょう。

特に夕暮れ時の訪問がおすすめです。夕日に染まる旧市街とアドリア海の景色は息を飲む美しさ。疲れも吹き飛ぶ感動的なひとときを過ごせることでしょう。

スプリット滞在を成功させるための実践ガイド

魅力あふれるスプリット旅行を思い切り楽しむためには、アクセス方法や市内交通、食事、安全面に関する実用的な情報をしっかり把握しておくことが大切です。準備が旅の満足度を大きく左右します。

スプリットへのアクセス

日本からスプリットへは直行便が存在しないため、フランクフルト、イスタンブール、ウィーン、ヘルシンキなどヨーロッパ主要都市を経由してスプリット空港(SPU)に向かうのが一般的です。

空港は市の中心部から西に約25km離れています。空港から市内へは主に以下の方法があります。

  • 空港シャトルバス: もっとも経済的かつ便利な移動手段で、到着便に合わせて運行されています。市内のバスターミナル(フェリー乗り場の隣)まで直通で、所要時間は約30〜40分。チケットは空港到着ロビーのカウンターやバス乗り場で運転手から直接購入可能です。
  • タクシー・Uber/Bolt: 荷物が多い場合やグループ移動に便利です。シャトルより料金は高めですが、ホテルまで直接行けるメリットがあります。料金は事前に確認するか配車アプリで目安を把握しておくと安心です。
  • 路線バス: 市内と空港を結ぶ37番線の市バスがあります。シャトルバスより時間はかかりますが一番安価な方法。ただしバス停が多く、大きな荷物があると少し不便かもしれません。

市内の交通と歩き方

ディオクレティアヌス宮殿を中心とした旧市街は道幅が狭く、車両の進入が禁じられているため、基本的に徒歩での観光がおすすめです。石畳の細い路地を散策し、迷路のような旧市街を歩き回るのがスプリット観光の醍醐味といえるでしょう。

遠くの場所へ移動する際は市バスが便利です。バスのチケットは「Tisak」や「iNovine」と書かれたキオスク(タバコや新聞の販売所)で購入可能。車内で運転手から買うこともできますが割高でお釣りが出ない場合もあるため、事前にキオスクで入手するのが安心です。

また、スプリットはフヴァル島、ブラチ島、ヴィス島など美しい島々へアクセスする玄関口でもあります。港からは多数のフェリーや高速船(カタマラン)が発着しており、日帰りのアイランドホッピングも気軽に楽しめます。

  • 公式情報の確認: フェリーの運行スケジュールや料金は季節や曜日で大きく変動します。特に夏のピークシーズンは混雑が激しいため事前の計画が欠かせません。主要フェリー会社のJadrolinijaや高速船運航のKrilo (Kapetan Luka)の公式サイトで最新の時刻表をチェックし、オンライン予約をしておくことを強くおすすめします。

おすすめの食事とグルメ

アドリア海に面したダルマチア地方の料理は、新鮮な海産物、質の良いオリーブオイル、地元ハーブがふんだんに使われる地中海料理の真髄です。スプリットには高級レストランから、地元の人に愛される大衆食堂「コンバ(Konoba)」までバラエティ豊かな飲食店があります。

  • ぜひ味わいたいダルマチア名物料理:
  • ツルニ・リジョット(Crni rižot): イカスミを使ったリゾット。濃厚な海の旨味が口いっぱいに広がります。
  • ブザラ(Buzara): スカンピ(手長エビ)やムール貝などを、白ワイン、ニンニク、トマト、パセリで煮込んだ伝統的な漁師料理。ソースをパンに付けて食べるのが絶品です。
  • ペカ(Peka): 肉や魚介と野菜を、鉄製のドーム型蓋「ペカ」をかぶせて炭火でじっくり蒸し焼きにした料理。素材の旨みが凝縮されており、事前予約が必要な場合が多いです。
  • パシュティツァダ(Pašticada): 牛肉をワインや香味野菜で長時間煮込んだ伝統的な肉料理で、お祝いの席などに供されます。一般的にはニョッキと一緒にいただきます。

特に夕食時や人気店では予約をしておくことをおすすめします。

旅のヒントと注意点

  • ベストシーズン: スプリットを訪れるのに最も快適なのは、気候が穏やかで観光客もほどよく落ち着いている5月~6月および9月~10月です。7月~8月はピークシーズンで世界中から観光客が押し寄せ、非常に混雑し気温も高くなります。冬は静かですが雨が多く、休業する施設も多くなります。
  • 通貨と支払い: クロアチアは2023年1月よりユーロを公式通貨として導入しました。レストランやホテル、大型店舗ではクレジットカードが広く利用可能ですが、市場や小規模カフェ、個人経営店などでは現金払いのみの場合もあります。一定額のユーロ現金を用意しておくと安心です。
  • 安全面: スプリットは比較的安全な都市ですが、観光客が多い場所ではスリや置き引きなど軽犯罪に注意が必要です。貴重品はホテルのセーフティボックスに預け、外出時はバッグを体の前に抱えるなど、基本的な防犯対策を心掛けましょう。特に夜間の人通りの少ない路地の一人歩きは避ける方が賢明です。
  • トラブル時の対処: 万が一パスポートを盗まれた場合は、まず最寄りの警察署で盗難証明書(ポリスレポート)を取得してください。その後、ザグレブにある在クロアチア日本国大使館に連絡し、パスポート再発行や「帰国のための渡航書」発給の手続きについて指示を仰ぎましょう。緊急連絡先(警察:192、消防:193、救急:194)も控えておくと安心です。
  • 持ち物リスト:
  • 必需品: パスポート、航空券(Eチケット)、ユーロ現金、クレジットカード、海外旅行保険証
  • 服装: 季節に応じた服装、夏でも朝晩や冷房対策の羽織物、教会訪問の際に肩や膝を隠せる服またはショール、石畳を歩くための歩きやすい靴、水着(夏季)
  • その他: 日焼け止め、サングラス、帽子、変換プラグ(Cタイプ)、モバイルバッテリー、常備薬、虫よけスプレー(夏場)

スプリットから足を延ばすアイランドホッピングのすすめ

スプリットの大きな魅力の一つは、アドリア海に点在する個性豊かな島々への便利なアクセス拠点である点です。日帰りでも数日間滞在しても、賑やかな街とは異なる、穏やかで美しい島の時間を満喫できることでしょう。

ラベンダーと陽光の島、フヴァル島

「アドリア海の女王」と称されるフヴァル島は、クロアチアで特に人気の高い島の一つです。年間を通して多くの日照時間を誇り、島内にはラベンダー畑やオリーブ畑が広がっています。島の中心であるフヴァル・タウンはヴェネツィア時代の美しい街並みを今に残し、お洒落なレストランやバーが点在し洗練された雰囲気を醸し出しています。丘の上にそびえる要塞からは、赤い屋根の街並みとパクレニ諸島の絶景を眺めることができます。スプリットからは高速船(カタマラン)で約1時間の好アクセスです。

黄金の角「ズラトニ・ラット」で有名なブラチ島

スプリットから最も近く、日帰りで訪れるのに適した島がブラチ島です。この島を代表するのが、南岸の町ボルにある「ズラトニ・ラット(黄金の角)」と称されるビーチです。風や潮の流れによって形が変わるユニークで美しい岬のビーチとして知られています。また、ブラチ島は高品質の白い石灰岩の産地としても名高く、スプリットのディオクレティアヌス宮殿や遠くはワシントンのホワイトハウスにもこの島の石材が使われています。

行動ガイド:フェリーチケットの購入方法

アイランドホッピングを計画する際に最も重要なのは、フェリーのチケット手配です。

  • オンライン予約: 特に7月〜8月のピークシーズンは、当日に港でチケットを求めても希望の便が満席になることが多いです。事前に各フェリー会社の公式サイトで運行スケジュールを確認し、オンラインでの予約・購入を強くおすすめします。これにより港で長蛇の列に並ぶ手間を省くことができます。
  • 港のチケットオフィス: オンラインでの購入が難しい場合は、スプリット港にあるフェリー会社のチケットオフィスを利用しましょう。出発直前ではなく、余裕を持って前日などに購入しに行くのが賢明です。
  • トラブル時の対応(欠航など): アドリア海では、稀に「ブーラ」と呼ばれる強風などの悪天候によりフェリーが欠航または遅延することがあります。その場合は、まずフェリー会社の公式サイトやSNSで最新の運行情報を確認してください。チケットの払い戻しや代替便の案内に関しては、購入元のチケットオフィスや公式サイトに従うと安心です。旅程には予備日を設けて余裕を持たせておくと、万一の際にも落ち着いて対応できます。信頼性の高い情報源としては、クロアチア政府観光局の公式ウェブサイトも参考になります。

古代と現代が交差する街角で

スプリットへの旅は、ただ美しい景色を楽しみ、歴史的な建造物を巡るだけのものではありません。それは、かつてローマ皇帝が夢見た宮殿の石畳を、現代を生きる人々と共に歩むという、まさに特別な時間旅行なのです。

ペリスティルの石段に腰を下ろし、長い年月にわたり行き交う人々を見守ってきたスフィンクスに想いを馳せます。地下宮殿のひんやりとした空気の中で、皇帝の時代の息吹を感じ取ろうとするのもまた一興です。鐘楼の頂からは、オレンジ色の屋根越しに広がる深い青の海を見渡し、この街が海とともに歩んできた歴史を実感します。

路地裏のコンバからは、ニンニクとオリーブオイルの芳ばしい香りが漂い、リヴァのカフェでは人々の陽気な笑い声が響きます。パザールでは元気いっぱいの売り子たちの声が賑やかに響き渡り、これらすべてが、古代ローマの遺跡という壮大な舞台の上で繰り広げられる、生き生きとした日常の風景なのです。

スプリットは訪れる人に静かに語りかけてきます。歴史とは博物館のガラスケースに収められるものではなく、人々の生活の中に溶け込み、今なお息づいているものだと。この街角で、あなただけの物語を見つけ、時の刻みが織りなす迷宮をさまよう旅に、ぜひ挑戦してみてください。アドリア海の陽光が、きっとあなたを温かく迎えてくれることでしょう。

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