「ヨーロッパ最後の秘境」。そんな言葉を聞いて、胸が高鳴らない旅人はいないでしょう。アドリア海とイオニア海に抱かれ、古代遺跡とオスマン帝国時代の街並み、そして手付かずの雄大な山々が共存する国、アルバニア。かつては鎖国政策により謎に包まれていましたが、今、そのベールを脱ぎ、世界中の旅人たちを魅了し始めています。日本からはまだ馴染みが薄いかもしれませんが、だからこそ、そこには新鮮な驚きと感動が待っています。この記事では、日本からその神秘の国アルバニアへどうやって辿り着くのか、航空券の探し方から現地の空港での動き方、さらには旅の準備まで、あなたの冒険を完璧にサポートするための全てを、余すところなくお伝えします。さあ、地図を広げて、まだ見ぬ絶景への旅を始めましょう。
このアルバニアへの旅を皮切りに、アドリア海に面した魅力的な国々の周遊も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
なぜ今、アルバニアなのか?旅人を惹きつけるその魅力

アルバニアへのアクセス方法を説明する前に、まずはこの国の魅力について少しお話しさせてください。なぜ多くの旅慣れた人たちが、次の旅行先としてアルバニアを熱心に選ぶのか。その理由は一つには留まりません。
まず第一に、息をのむような美しい海岸線が挙げられます。南部のサランダやクサミルを中心に広がる「アルバニアン・リビエラ」では、ターコイズブルーのイオニア海と白い砂浜が続き、その透明度はギリシャやクロアチアの有名リゾート地にも引けを取りません。さらに、まだ観光地化が進みすぎておらず、素朴な魅力が色濃く残っているのも大きな魅力です。静かな入り江を探してプライベートビーチのように過ごす贅沢も、決して夢ではありません。
次に、何層にも重なった深い歴史も見逃せません。古代ギリシャやローマ帝国、ビザンツ帝国、そして約500年にわたるオスマン帝国の支配を経て、20世紀後半には極端な共産主義体制下で鎖国状態にありました。この複雑な歴史が街のあらゆる場所に刻まれています。世界遺産のベラトは「千の窓を持つ街」として知られ、ジロカストラでは石葺き屋根の家々が丘を埋め尽くし、まるで時間を超えたような感覚に浸れます。また、首都ティラナでは共産主義時代の無機質な建物と、民主化後の自由なアートが見事に調和しています。
さらに、ヨーロッパの中でも物価が非常に安い点も大きな魅力です。新鮮なシーフードや地元料理を驚くほど手頃な価格で味わうことができ、宿泊費も他のヨーロッパ諸国に比べて大幅に抑えられます。限られた予算でも、心ゆくまで滞在を楽しめるのは嬉しいポイントです。
そして何より、アルバニアの旅を特別なものにしているのは、そこで暮らす人々の温かさです。古くから伝わる「ベサ(Besa)」という習慣が今も息づいており、客人を神からの賜り物として丁寧にもてなす気持ちが根付いています。旅人に対して非常に親切でフレンドリーなため、道に迷えば誰もが助けてくれ、レストランでも心のこもったサービスを受けられます。この人懐っこさが、旅の思い出を一層鮮やかに彩ってくれるのです。
日本からアルバニアへの道:直行便はない、乗り継ぎが鍵!
それでは、本題に入りましょう。残念ながら、2024年現在、日本からアルバニアへの直行便は運航していません。そのため、必ずいずれかの都市で最低1回の乗り継ぎが必要となります。この「乗り継ぎ」がアルバニア旅行の第一歩であり、旅の快適さや費用に大きく影響を及ぼす重要なポイントです。
主要な乗り継ぎハブ空港をチェックしよう
乗り継ぎ地となるハブ空港には複数の選択肢があります。それぞれに特徴がありますので、ご自身の旅のスタイルや予算に合った空港を選びましょう。
イスタンブール(トルコ)
最も利用されているのが、トルコのイスタンブール空港(IST)です。ターキッシュ・エアラインズは日本(成田・羽田)から毎日運航しており、イスタンブールからアルバニアの首都ティラナへも頻繁に便があります。世界有数の巨大ハブ空港であるイスタンブール空港は設備が充実しており、長い乗り継ぎ時間でも多様なレストランやショップ、快適なラウンジで充実した時間を過ごせます。さらに、乗り継ぎ時間が6時間以上の場合、無料の市内観光ツアー「Touristanbul」に参加できる点も大きな魅力です。時間に余裕があれば、本格的なアルバニア旅行の前にトルコ観光を楽しむことも可能です。
フランクフルト、ミュンヘン(ドイツ)
ルフトハンザドイツ航空を利用し、ドイツのフランクフルト(FRA)やミュンヘン(MUC)経由も利便性の高いルートです。ルフトハンザはスターアライアンスに加盟しているため、ANAマイレージクラブ会員にはマイルの獲得や利用の面でメリットがあります。ドイツの空港は効率的で機能的なことで知られており、乗り継ぎもスムーズです。特にフランクフルトはヨーロッパの中心に位置するため、ティラナだけでなく他のヨーロッパ各都市への接続も良好です。アルバニアと合わせて他国も巡りたい方に適したルートと言えます。
ウィーン(オーストリア)
オーストリア航空を利用し、ウィーン(VIE)で乗り継ぐ方法もあります。ウィーンは「音楽の都」として有名な美しい街で、乗り継ぎ時間にゆとりがあれば、優雅なカフェでザッハトルテを楽しんだり、市内散策をするのもおすすめです。東欧やバルカン半島への便が充実しており、ティラナへの接続も便利です。
ローマ(イタリア)
アルバニアの隣国イタリアのローマ(FCO)を経由するルートも選択肢の一つです。ITAエアウェイズ(旧アリタリア航空)を利用し、地理的に近いためローマからティラナまでは約1時間半と短いフライトです。イタリア旅行と組み合わせて、アドリア海を挟む2国の文化の違いを楽しむ旅も魅力的でしょう。
ドバイ、ドーハ(中東)
エミレーツ航空のドバイ(DXB)、カタール航空のドーハ(DOH)経由ルートもあります。ヨーロッパ経由より飛行時間は長くなりますが、これらの航空会社は高いサービス品質で定評があります。機内での快適性を重視したい方や、中東の巨大ハブ空港の雰囲気を味わってみたい方には魅力的な選択肢です。
航空券探しのコツ
乗り継ぎ地の選択肢がわかったら、航空券探しに取りかかりましょう。工夫次第で費用を大幅に抑えられる可能性があります。
ステップ:比較サイトを賢く活用する
まず「スカイスキャナー」や「Googleフライト」などの航空券比較サイトを利用しましょう。これらは複数の航空会社や旅行代理店の料金を一度に比較でき、最安値の航空券探しにとても役立ちます。
ここで実用的なポイントを一つ。検索時、出発地を「東京(すべて)」、目的地を「ティラナ」とし、日程は「1ヶ月間」や「最も安い月」の設定で調べてみてください。特定の日付に拘らず最安の時期を見つけられ、日程調整が可能なら数万円の節約も珍しくありません。
また、乗り継ぎ時間にも注意が必要です。安価なフライトは乗り継ぎ時間が極端に長かったり、逆に短すぎて乗り遅れリスクがある場合があります。国際線の乗り継ぎには最低2時間、できれば3時間以上の余裕を確保すると安心です。空港の規模や入国審査の有無(シェンゲン圏内かどうかなど)によって必要時間は変わる点も理解しておきましょう。
旅行の最適シーズンは?
航空券の料金は需要と供給で大きく変動します。ヨーロッパのバカンスシーズンである7〜8月は、航空券や宿泊費が高騰します。一方、春(4〜6月)や秋(9〜10月)は気候が穏やかで過ごしやすく、観光客もピークほど多くないため、旅行に最適な時期です。航空券も比較的安定しています。冬季(11〜3月)は最も料金が安くなるものの、内陸や山岳地帯は寒さ厳しく日照時間も短いため、海岸リゾート目当ての旅行には向いていません。
航空券購入から搭乗までのポイント
理想的な航空券が見つかったら、いよいよ購入へと進みます。
ポイント:公式サイトでの購入を推奨
比較サイトで最安値を確認した後、掲載している旅行代理店のサイトで買うことも可能ですが、航空会社の公式サイトと価格差がほとんどない場合は、公式サイトからの直接購入をおすすめします。万が一フライトのキャンセルや変更などがあった際、航空会社と直接やり取りできるため、対応がスムーズに進むことが多いからです。代理店経由の場合は手続きに時間がかかったり、複雑になることがあります。
購入時には、パスポート記載の氏名、生年月日、パスポート番号などを正確に入力しましょう。誤りがあると搭乗拒否のリスクがありますので、入力後は必ず再確認してください。
予約完了後、Eチケット(電子航空券)がメールで送られてきます。このメールは必ず印刷するか、スマートフォンに保存してオフラインでも見られるようにしておきましょう。空港のチェックイン時や乗り継ぎ時の入国審査で提示を求められる場合があります。
アルバニアの玄関口、ティラナ国際空港(TIA)を徹底解説

長時間のフライトを経て、ついにアルバニアに到着です。入り口となるのは、首都ティラナに位置する「ティラナ・マザー・テレサ国際空港(TIA)」。この空港の名前は、アルバニア出身でノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサに由来しています。
この空港はヨーロッパの主要な空港と比べると非常にコンパクトで、その構造もシンプルですので迷うことはほとんどありません。ただ、到着後の流れをあらかじめ把握しておくと、よりスムーズに行動できます。
到着後の流れ:空港での手続き
入国審査
飛行機を降りたら、「Passport Control」または「Immigration」という表示に従って進んでください。アルバニアはシェンゲン協定には加盟していませんが、EU加盟候補国であり、多くの国籍に対して比較的親切な入国審査が行われますので、「Non-EU」のカウンターに並びましょう。
審査官にパスポートを提示します。簡単な質問を受ける場合もありますが、落ち着いて対応してください。 「What is the purpose of your visit?(訪問の目的は?)」→「Sightseeing(観光です)」 「How long will you stay?(滞在期間は?)」→「For 10 days(10日間です)」 「Where will you be staying?(宿泊先はどこですか?)」→ 予約したホテルの名前を答えられるよう準備しましょう。
審査が終わるとパスポートに入国スタンプが押されます。まれに押し忘れもあるので、その場でスタンプがあるか確認しておくと安心です。
手荷物の受け取り
入国審査を通過したら、手荷物受取所(Baggage Claim)に向かいます。搭乗した便の便名が表示されたターンテーブルで預けたスーツケースが出てくるのを待ちましょう。 もし荷物が出てこなかったり、破損している場合(ロストバゲージやダメージなど)は、すぐ隣にある航空会社の手荷物サービスカウンター(Lost and Found)へ向かいましょう。搭乗券の半券や手荷物タグの控えを提示し、PIR(Property Irregularity Report:手荷物事故報告書)を作成してもらいます。この書類は、荷物の追跡や保険請求の際に重要となるため、控えは必ず受け取り、大切に保管してください。
税関
手荷物を受け取った後は、税関(Customs)を通過します。特に申告するものがなければ、「Nothing to Declare(申告なし)」と書かれた緑のゲートを通過するだけで構いません。アルバニアの税関規定によると、タバコは200本まで、ワインは2リットルまで、蒸留酒は1リットルまで、現金は1,000,000レク(約150万円)相当額までが免税範囲内となっています。
空港からティラナ市内へのアクセス
到着ロビーに出たら、次はティラナ市街地へ移動しましょう。主な移動方法は3つあります。
空港バス(Rinas Express)
最も安く便利なのが空港バス「Rinas Express」です。到着ロビーを出てすぐ左側にバス乗り場があります。市内中心部のスカンデルベグ広場近く、国立歴史博物館の裏手にある停留所まで運行しており、所要時間は約30分です。料金は400レク(約600円)ほどで、バスに乗車後、車内で係員に現金(アルバニア・レク)で支払います。運行は日中20〜30分間隔で、観光客にとって最も利用しやすい交通手段でしょう。
タクシー
荷物が多い場合や、深夜や早朝でバスが運行していない時間帯にはタクシーが便利です。空港の公式認可タクシーは「ATEx(Airport Taxi Express)」という黄色の車体が目印で、到着ロビーのすぐ外に乗り場があります。市内中心部までの料金は固定制で25〜30ユーロ程度が相場です。乗車前に行き先と料金を確認してから乗ると安心です。非公式の白タクはトラブルの原因となることがあるため、必ず正規の乗り場から利用してください。
レンタカー
アルバニアの美しい海岸線や山岳地帯を自由に巡りたい方にはレンタカーもおすすめです。空港内にはHertz、Sixt、Europcarなどの有名レンタカー会社のカウンターが並んでいます。日本で事前に予約しておくとスムーズに手続きができます。ただし、アルバニアで運転する際は国際運転免許証が必須です。また、ティラナ市内は交通量が多く運転マナーも日本と異なるため、海外での運転に慣れている方に向いています。地方の道路はまだ整備が十分ではない箇所も多いため、十分に注意して運転してください。
旅の準備を万全に!アルバニア旅行の持ち物&基本情報
快適で安全な旅行は、入念な準備から始まります。アルバニアへ向かう前に、必ず確認しておきたい基本的な情報と持ち物リストをお伝えします。
パスポートとビザに関する重要ポイント
アルバニアへ観光目的で90日以内の滞在を予定する日本国籍の方は、ビザは不要です。ただし非常に重要なのは、パスポートの有効期間が「アルバニア出国予定日から少なくとも3ヶ月以上」残っている必要があることです。出発前にご自身のパスポートの有効期限を必ずチェックしてください。もし有効期限が足りない場合、空港のチェックインカウンターで搭乗を断られてしまう可能性があります。渡航に関する規定は随時変更されることがあるため、出発前には外務省海外安全ホームページなどの公式な最新情報を必ず確認する習慣をつけましょう。
お金に関するポイント:通貨、両替、クレジットカードの利用状況
アルバニアの通貨単位は「レク(Lek、通貨コード:ALL)」です。補助通貨として「チンダルカ(Qindarka)」も存在しますが、現在はほとんど使用されていません。
日本の銀行や空港ではアルバニア・レクへの両替はほぼ対応していないため、ユーロ(EUR)を現金で持参し、アルバニア到着後に現地の銀行や両替所でレクに替えるのが一般的です。ティラナの空港や市内中心部には両替所(Kambim Valutor)が多数あり、レートも比較的良好です。少額のユーロ紙幣を多めに用意すると、必要に応じて少しずつ両替できるため便利です。
クレジットカードは、ティラナの主要ホテルや高級レストラン、大型スーパーマーケットなどでVISAやMastercardが利用可能な場所が増えています。しかし、地方の小規模な店や市場、バスなどでは依然として現金が主流です。クレジットカードは補助的な支払い手段として考え、常に一定額の現金を持ち歩くことをおすすめします。
ATMはティラナをはじめ主要観光地に設置されており、国際キャッシュカードやクレジットカードで現地通貨の引き出しが可能です。ただし、手数料がかかる場合や、一度に引き出せる金額の上限があるケースもあります。
完全版持ち物リスト
旅の成功を左右する必需品から便利グッズまで、必要なものをまとめました。
必需品
- パスポート:有効期限の確認を必ず。コピーやスマホで撮影したデータも保存しておく。
- 航空券(Eチケット):印刷したものとスマートフォンの両方にデータを保存。
- 現金(ユーロ):現地での両替用の予備資金として。
- クレジットカード:複数枚あると、磁気不良や紛失の場合に備えられます。
- 海外旅行保険証:万が一の病気や事故、盗難に備えて必ず加入し、証券番号や緊急連絡先を控えておく。
衣類
- 季節に応じた服装:夏季(6〜8月)は日差しが強いため、Tシャツやショートパンツに加え、薄手の長袖や帽子、サングラスが欠かせません。冬季(12〜2月)は内陸部で氷点下になることもあるため、防寒用のダウンジャケットやヒートテックなどを用意しましょう。
- 歩きやすい靴:ベラトやジロカストラなど石畳の美しい街が多いので、長時間歩いても疲れにくいスニーカーなどが必須です。
- フォーマルな服装は基本的に不要:高級レストランに行く予定がない限り、カジュアルな服装で問題ありません。
- はおりもの:夏でも朝晩や冷房の効いた場所で寒く感じる場合があるため、カーディガンやパーカーが一枚あると重宝します。
電子機器
- スマートフォン:地図、翻訳、情報収集に必須です。
- カメラ:美しい風景を記録するために持参をおすすめします。
- モバイルバッテリー:外出先でスマホの充電切れを防ぐために必携です。
- 変換プラグ:アルバニアのコンセントは丸ピン2本のCタイプまたはSEタイプが主流です。マルチ変換プラグがあると安心です。
- 海外用Wi-Fiルーター、SIMカード、eSIM:通信手段を確保するのは重要です。空港や市内のキャリアショップでプリペイドSIMカードを購入するのが安価で便利です。近年は、物理カード交換が不要なeSIMも便利に使えます。
その他
- 常備薬:胃腸薬や頭痛薬、絆創膏など、普段使い慣れた薬を持参しましょう。
- 日焼け止め、サングラス、帽子:特に夏季の海沿いでは強い日差しに注意が必要です。
- ウェットティッシュ、除菌ジェル:屋外の飲食店や公共トイレで役立ちます。
- 翻訳アプリ:Google翻訳などをオフラインでも使えるように事前にダウンロードしておくと、緊急時に便利です。
アルバニアの文化とマナー:旅をより深く味わうために
現地の文化や習慣を少し学んでおくだけで、現地の人との交流がスムーズになり、旅の体験がより豊かになります。
禁止事項や注意点
- 宗教施設での服装:アルバニアはイスラム教とキリスト教(正教会、カトリック)が共存しています。モスクや教会を訪れる際は敬意を払い、肌の露出を控えた服装で臨みましょう。男性は長ズボン、女性は肩や膝を隠す服装が望ましく、特に女性はモスク入場時に頭を覆うスカーフを携帯すると便利です。
- 写真撮影のマナー:軍事施設や国境付近、一部の政府関連建物は撮影禁止です。博物館、美術館、教会内部も撮影不可の場合があるため案内表示を確認しましょう。人物を撮る際は無断でカメラを向けず、笑顔で一言声をかけるのが世界共通のマナーです。
特徴的なジェスチャー
アルバニアを含むバルカン半島の一部地域では、日本とは異なるジェスチャーが使われることがあります。例えば、「はい」を示す際に首を横に振り、「いいえ」を示す時に首を縦に上下に動かす(あごを少し上げるように)ことがあります。こうした習慣を知らないと誤解や混乱が生じる場合があるため、念頭に置いておくと良いでしょう。ただし近年は国際的なジェスチャーも広まっているため、状況に応じて柔軟に対応してください。
もしもの時に備える!トラブルシューティングガイド

旅のトラブルは避けがたいものですが、あらかじめ対処方法を知っていれば、慌てずに落ち着いて対応できます。ここでは、旅行中に起こりがちなトラブルと、それに対する具体的な解決策を詳しくご紹介します。
フライト遅延・欠航への対処法
日本からアルバニアへ行く際は乗り継ぎが必要なため、フライトの遅延は乗り継ぎ便に間に合わないリスクへと直結します。
トラブル発生時の対処ポイント
- まずは情報収集を:遅延や欠航が判明したらすぐに、航空会社のカウンターに行くか、公式アプリやウェブサイトで最新情報をチェックしましょう。振替便の日時や利用可能な補償内容を把握することが大切です。
- 振替便の手配を依頼:航空会社は自社便や提携航空会社の次便への振替を手配してくれます。カウンターで相談し、必要に応じて自分から代替便を提案するのも効果的です。
- 補償内容を確認しよう:遅延の時間や原因によっては、食事や飲み物のクーポン、長時間の遅延の場合は宿泊ホテルの提供を受けられることがあります。遠慮せずしっかりと要求しましょう。
- EUの旅客権利を知る:EU域内の空港(フランクフルト、ウィーン、ローマなど)から出発する便、あるいはEUの航空会社が運航するEU内行きの便で大幅な遅延や欠航が発生した場合、強力な旅客保護規則「EU261/2004」が適用される可能性があります。この規則により、遅延時間や距離に応じて一定額の補償を航空会社に請求できることがあります。詳細は欧州連合(EU)公式サイトの旅客の権利をご覧ください。知識として持っておくだけでも、交渉を有利に進められます。
- 海外旅行保険を活用する:加入中の海外旅行保険に「航空機遅延費用補償」が含まれているか確認しましょう。食事代や宿泊費など、遅延による追加費用を後から請求できる場合があります。領収書は必ず保管してください。
手荷物紛失(ロストバゲージ)の場合
旅の初めに荷物が届かないと、大変な気持ちになりますが、冷静に対処すればほとんどの場合、無事に見つかります。
ロストバゲージ時の対応策
- すぐに手続きを行う:荷物がターンテーブルに出てこないと分かったら、すぐにその場から離れず航空会社の手荷物サービスカウンター(Lost and Found)に向かいましょう。
- PIR(手荷物事故報告書)を作成:搭乗券と預けた手荷物のタグ控え(クレームタグ)を提示して、PIR(Property Irregularity Report)を作成してもらいます。スーツケースの色や形、ブランド、滞在先の住所や連絡先も正確に伝えましょう。このPIRに記載された照会番号は荷物追跡に不可欠です。控えの書類は荷物が見つかるまで、あるいは保険請求が完了するまで必ず保管してください。
- 必要な生活必需品の購入:多くの航空会社は、荷物が届くまでの間に必要となる下着や洗面用具などの購入費用を補償します(上限あり)。また、海外旅行保険の「航空機寄託手荷物遅延費用」でも補償対象となる場合があります。補償範囲や上限をカウンターで確認し、購入した際の領収書はすべて保管してください。
- 荷物の追跡と連絡:PIRに記載されているウェブサイトや電話番号で、荷物の追跡状況を自分でも確認できます。通常は1~2日で見つかり、宿泊先のホテルまで届けられます。
現地での緊急連絡先
万が一パスポートを紛失したり、事故や事件に巻き込まれたりした場合は、日本大使館への連絡が必要です。アルバニアには日本大使館はなく、在イタリア日本国大使館が兼轄していますが、ティラナには名誉総領事館があり、限定的なサポートを受けられます。
緊急連絡先の準備
渡航前に必ず、緊急連絡先をメモしておくか、スマートフォンにオフラインでも閲覧可能な形で保存しておきましょう。
- 在イタリア日本国大使館(アルバニアも兼務)
- 在アルバニア日本国名誉総領事館
これらの連絡先や対応可能な業務内容は、在イタリア日本国大使館の公式サイトで確認できます。また、現地の緊急連絡先は、警察(129)、救急(127)、消防(128)です。覚えておくと安心です。
アルバニア国内の移動手段とモデルルート
ティラナに到着すると、いよいよアルバニア国内での冒険が始まります。この国の魅力を十分に楽しむための移動手段と、おすすめの旅のルートをいくつかご案内します。
都市間バス(フルゴン)を活用する
アルバニアの都市間移動で多くの旅行者が利用するのが、「フルゴン(Furgon)」と呼ばれるミニバスです。これは定められた路線を走る乗り合いバスであり、地元の人々にとって欠かせない交通手段となっています。
フルゴンの利用方法には少し特殊な点があります。多くの都市では方面ごとに発着場所がおおよそ決まっているものの、はっきりしたバス停や時刻表がほとんどありません。基本的には乗客が集まるまで出発を待つスタイルです。乗車したい場合は、発着所へ行き、行き先を叫んでいる運転手や客引きに声をかけるか、バスのフロントガラスに掲げられている行き先表示を確認しましょう。料金は非常にリーズナブルで、乗車時または降車時に運転手へ直接現金で支払います。この少しルーズな雰囲気も、アルバニア旅行の醍醐味のひとつ。時間に余裕を持ち、地元の雰囲気を味わいながら楽しんで利用してください。
レンタカーで自由自在な旅を楽しむ
フルゴンの移動も魅力的ですが、公共交通機関ではアクセスが難しい美しいビーチや山間の村に行きたい場合は、レンタカーが最適です。自分のペースで好きな場所に立ち寄りながら旅ができる自由さは、何物にも代えがたい魅力です。レンタカーはティラナの国際空港や市街地中心部で手軽に借りられます。ただし、前述のとおり国際運転免許証の所持が必須であり、特に地方の道路状況や現地の運転マナーには十分な注意が必要です。
おすすめのモデルルート
世界遺産と歴史を巡る旅(5〜7日間)
- 1〜2日目:ティラナに到着後、カラフルな街並みやスカンデルベグ広場、共産主義時代の秘密警察を記録した「バンクアート」博物館などを散策。
- 3日目:バスでベラトへ移動。「千の窓を持つ街」と称される美しい旧市街や、丘の上にそびえる城塞からの素晴らしい眺望を楽しむ。
- 4〜5日目:バスでジロカストラへ。石葺きの屋根が連なる「石の街」を歩き、独裁者エンヴェル・ホッジャの生家や壮大な城を訪問。
- 6日目:ティラナに戻り、帰国の準備を進める。
紺碧の海を満喫するリビエラの旅(7〜10日間)
- 1〜2日目:ティラナ着後、バスで南部の港町ヴロラへ移動。
- 3〜4日目:レンタカーを借りるかバスを乗り継ぎ、風光明媚な海岸線沿いをドライブしながらヒマラへ。途中、ロゴハラ国立公園の絶景スポットにも立ち寄る。
- 5〜7日目:アルバニアン・リビエラの中心地サランダを拠点に、天国のようなビーチが広がるクサミルや、古代ローマの遺跡が残る世界遺産ブトリント国立公園を訪問。
- 8日目以降:内陸ルートでティラナへ戻るか、サランダからフェリーでギリシャのコルフ島へ渡る選択肢もあります。
アルバニアへの扉を開く、最後のひと押し

日本からアルバニアへ向かう道のりは、決して短いとは言えません。直行便は存在せず、乗り継ぎも必要となるため、少々手間がかかります。しかし、その小さな障壁を乗り越えた先には、まだ多くの日本人旅行者が知らない、手つかずの自然や幾重にも重なる歴史、そして何よりも心温まる人々の笑顔が待っています。アドリア海の青は限りなく深く、世界遺産に登録された街並みは訪れた人の心に静かな感動を刻みます。
本記事では、航空券の探し方から旅のスタートを切り、現地での移動方法や万が一のトラブルに備えるポイントまで、アルバニアへの旅を具体的にイメージできるよう、一つひとつのステップを丁寧に紹介してきました。旅を成功に導くためには、準備が何より重要です。パスポートの有効期限をチェックし、自分に最適な航空券を探し、持ち物リストを確認する。その一つひとつの行動が、未知の国への不安を楽しみへと変える過程なのです。
それでは、準備は整いましたか? ヨーロッパの秘境、アルバニアは、新たな訪問者であるあなたを両手で迎え入れています。このガイドを頼りに、ぜひその一歩を踏み出してみてください。そこにはきっと、あなたの人生の頁を鮮やかに彩る、忘れがたい冒険が待ち受けていることでしょう。

